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【NXGN】レナート・カール:“NEXT エジル”?バイエルン期待の17歳の挑戦

「僕はいつだってプレーしたいし、自分を証明したいと思っている。それがトップチームであろうと、U-19やU-17であろうともね。常に全力を尽くし、成長するために努力するんだ」

バイエルン・ミュンヘン期待の17歳、レナート・カールはこう語った。素晴らしい活躍を見せたこの夏を経て、2025-26シーズンは開幕から公式戦2試合連続で途中出場。「アカデミーをうまく活用できない」と批判されてきたヴァンサン・コンパニ監督の下で、その才能を開花させようとしている逸材だ。

今回は、バイエルンの次世代を担う17歳を紹介する。

  • すべての始まり

    2008年2月、ドイツ中部フランクフルト近郊のフラムメルスバッハに生まれたレナート・カール。7歳で故郷からほど近いビクトリア・アシャッフェンブルクに加入してフットボーラーとしての道を歩み始め、2年後にはフランクフルトのユースチームに加入。各カテゴリーで見事な活躍を見せ、若くして注目を集める存在となった。

    当然、ドイツ最大のクラブがその才能を放って置くわけがない。アシャッフェンブルクへの一時的な復帰を経て、2022年にバイエルンが獲得。FCバイエルン・キャンパスアカデミーに所属することになっている。

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  • ブレイクのきっかけ

    ドイツ最大のクラブへ加入を果たしたレナート・カールだが、本人は当時を振り返って「正直、前回のU-16のシーズンはうまくいかなかったんだ。パフォーマンスに波があって、ゴールも奪えなかった。それを変えたかったんだ。U-17シーズンに向けて、個人トレーニングを追加したよ。それがメンタル的にも、フィジカル的にも大きな助けになったんだ」と語っている。

    その言葉通り、U-17シーズンの活躍は目覚ましかった。14試合で33ゴールと驚異的な結果を残すと、クラブ側も2024年末に2つ上のU-19カテゴリーに昇格させる。するとデビュー戦でゴールを奪うなど期待に応え、U-17とU-19合わせて30試合34ゴールと素晴らしいシーズンを終えた。

    この結果は当然コンパニが無視できるものではなく、クラブワールドカップでトップチームデビュー。あっという間にスター選手への道を駆け上がっている。

  • トップチームへ

    そんな彼の勢いは留まるところを知らない。クラブワールドカップ後の短い休暇を経て迎えたプレシーズン、リヨン戦では後半から出場すると、続くトッテナム戦では出場7分で素晴らしいゴールを奪ってみせた。アリアンツ・アレーナに詰めかけたサポーターへ強烈なアピールに成功している。また最終戦となったグラスホッパー戦では、1ゴール1アシストと全ゴールに絡んで見せた。

    そんなレナート・カールにはアヤックス、レアル・マドリーなどといった強豪の関心が伝えられていたが、バイエルンがこの逸材を放出したくないのは当然だ。18歳になる2026年2月のプロ契約を視野に、ユース契約を3年間延長。そして、ジャマル・ムシアラの42番を継承することが決まった。

    「フレンドリーマッチはすべてが順調だったね。今は、絶対に大きな試合でプレーしたいんだ」

    本人も自らのパフォーマンスに手応えを感じている。望んだシュトゥットガルトとのDFBスーパーカップでは1分間の出場に留まったが、ブンデスリーガ開幕戦では21分間ピッチに立っている。

  • FC Bayern München v Olympique Lyonnais - Pre-Season FriendlyGetty Images Sport

    最大の強み

    攻撃的MFやウイングを主戦場とするカールは、特にハーフスペースに飛び込む力が抜きん出ている。狭いスペースでパスを受けながらビルドアップに関与するほか、高い技術力に裏打ちされたドリブルや反転で状況を打開、自ら強烈なシュートも狙っていける。右サイドからのカットインとシュートは、バイエルンのレジェンド、アリエン・ロッベンとも比較されるほどだ。本人も「シーズン開幕前にあの動きを特訓したんだ。今では自然とできるようになってきたね」と明かしている。

    カールは自身の強みについて「最初の数メートルのスピードと一対一、あとはフィニッシュかな」と語ったが、おそらく絶妙なボールコントロールとパスセンスは過小評価しているのかもしれない。

    クリストフ・フロイントSD(スポーツディレクター)は、「彼は非常に、非常に自信に満ちている。それが彼の最大の強みのひとつだ。自分の能力を良く知っている。ピッチ上の質も明らかだ」と期待を寄せた。

  • Lennart KarlImago Images

    改善すべき点は?

    おそらくトップレベルで活躍するためには、彼の細身の体格(約168cm)が不利に働くと考える人は多いだろう。実際、高いアスリート能力が求められる現代フットボールにおいて、フィジカは絶対的な要素だ。だが本人は、自身の身長について「確かに低いと思うけど、重心が低いおかげで、ドリブルする時に相手を負かすことができるんだ。この特徴を活かすことを早く学んだ。もちろん、その分筋力トレーニングなどフィジカル面の努力は必要になるけどね」と決して体格が不利に働かないような術を学んでいる。

    また攻撃面だけでなく、守備面の貢献度は改善の余地は多い。特に試合中のワークレートはデータ上でも物足りないものであり、ミカエル・オリーズの控えとして数えられる今季はその点を大幅に改善しなければならないだろう。

  • Mesut OzilGetty Images

    “NEXT エジル”?

    右サイドから自由に内側に入り込んでいくスタイル、そして国籍やピッチ上での振る舞いなどを考慮すると、最も近いのはメスト・エジルだろう。圧倒的なゲーム&パスセンス、驚異的な視野と華麗なプレーを披露し続けた一方で、守備面に難を抱えた“天才”と今の彼は多くの部分で共通点を持っている。

    一方でカーン本人は、最も参考にしている選手として現アーセナルのスター選手の名前を挙げた。

    「マルティン・ウーデゴールだよ。彼も左利きで、プレイメーカーの位置でプレーし、視野が広く、シュートも素晴らしい。早い段階からビッグクラブ(レアル・マドリー)に加入し、数回のレンタルを経て、最終的にはワールドクラスの選手へと成長した。そして彼は、その才能と同じくらい忍耐力とメンタリティが重要だと示しているね。僕はバイエルンで自分の地位を確立し、いつかチャンピオンズリーグでプレーしたい」

  • Lennart KarlGetty

    バイエルンでの成長を

    コンパニはDFBスーパーカップ後、ドイツ『スカイ』に対し「幸いにも私も若い頃は良いレベルでプレーできていた。チャンピオンズリーグも経験できた。だから、彼の気持はよく分かる。あの瞬間にどう感じるかも理解している」と1分間の出場に留まったカールについて言及。そのうえで「常に適切なタイミングが重要だ。彼はこのチームにいて、他のチームの選択肢はない。これは明らかな信頼の証だよ。シーズンは50試合以上ある。彼が10試合だけプレーして去るのではない。ここでキャリアを築いて欲しい」と語っている。

    また『Sport1』では、「我々は全員がプレータイムを争うチームだ。6カ月前にU-16から上がってきたばかりの彼にとって、今経験していることは新たなステップだ。私にとって最も重要なのは、彼がバイエルンでキャリアを築くこと。正しいステップを踏むことだ。今は素晴らしいパフォーマンスを見せている。ゴールだけでなく、全てにおいてね」と期待を込める。指揮官はレンタルで経験を積ませるのではなく、戦力として彼をカウントし、長いシーズンを戦う上でチームでの成長を促している。

    コンパニの言うように、カールはどれだけ才能にあふれていようと、半年前にはU-16にいた選手だ。トップチームでの生活は初めてであり、ピッチ内外での適応に時間がかかることは当然である。だからこそ今すぐ過度な期待をかけるのではなく、長い目で見て彼の輝きを追いかけたいところだ。