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ベリンガムとエンバペ。レアル・マドリー指揮官アンチェロッティは2大スターをどう共存させるのか

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とうとう、この時が来た。キリアン・エンバペがついにレアル・マドリーの選手になったのだ。サッカー界最大の移籍のひとつが成立し、契約がかわされ、「公式発表」が行われた。

おそらく全当事者にとって、よかったことだろう。歴代最高の選手を失ったパリ・サンジェルマンは必ずしも嬉しくないだろうが、フランス王者は長期的な成功のために新しいチームを構築中であり、エンバペがいなくなっても成長できるよう、どんどん選手を集めているように見受けられる。

一方のレアル・マドリーは白鯨を手に入れた。ずっと以前から知られているとおり、エンバペは少年時代、クリスティアーノ・ロナウドがアイドルだったレアル・マドリーのファンであって、このスペインの首都のチームにいつか所属することが夢だと言ってはばからなかった。

これについて、多くの夢物語が語られてきた。考えてみるといい。ヴィニシウス・ジュニオール、エンバペ、ジュード・ベリンガム、ロドリゴが同じチームにいるのだ。だが、ある時点で夢物語は終わりをつげ、現実が始まる。事実、レアル・マドリーの前線はすでに渋滞しており、現在のシステムのどこにエンバペを配置するのが最善なのかは、カルロ・アンチェロッティ監督が解決しなければならない問題のひとつである。

エンバペの獲得は決して悪いことではない。だが、ヴィニシウスやベリンガムといったバロンドール有力候補に悪影響を及ぼすことなく、全員をチームにフィットさせることは簡単なことではないだろう。

  • Kylian Mbappe Neymar Lionel Messi PSG 2022-23Getty

    以前の銀河系軍団で抱えていた問題

    エンバペをあるチームに入れて、チームメイトたちと共に成功させるのはそれほど簡単ではない。実際、最近の事例を見ても、それがまったく良い考えでなかったことは明らかだ。

    リオネル・メッシとネイマールとエンバペのトリオは、パリにヨーロッパ最強の攻撃をもたらすと思われたが実際は機能性を発揮したとは言えなかった。3人の攻撃はまったく連携を欠き、ケガやエゴ、守備での手抜きが相まって、欧州最高を誇るはずのチームはチャンピオンズリーグを勝ち取れなかった。

    エンバペだけが問題だったわけではない。メッシは決してパリに来たかったわけではなく、ネイマールのマナーや足首のケガも事態を悪化させた。だが、エンバペはPSGの副キャプテンとしてチームを牽引し、まとめるべきだった。それでも、まだ20代半ばの若者に背負わせるには大きすぎたのかもしれない。いずれにせよ、エンバペはチームの中心となって活躍することができず、権力闘争にはまり、パリで約束した期間は失望に変わってしまった。

    これらのことは、レアル・マドリーにとって少し不吉なことである。PSGと異なりこの上なく有能な監督に率いられたチームであるとは言え、同じ問題が起こりうる。ベリンガム、ヴィニシウス、ロドリゴは、おおかたの見方によれば、良きチームメイト同士である。だが、ビッグネームが複数関わってくると、毒素が回ってくる可能性がある。それに、彼自身が原因であろうとなかろうと、エンバペには常に騒ぎがつきものだった。

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  • Jude Bellingham Real Madrid 2023-24Getty

    成功するシステム

    ここでまず考えなければならないのは、レアル・マドリーの現在のプレースタイルと、ベリンガムから如何に最高のプレーを引き出すかということである。このイングランド代表選手は、ストライカーとして起用されたことがなく、実際は攻撃的ミッドフィルダーである。アンチェロッティ監督はベリンガムを陰の背番号9と表しているが、それも正確ではない。ほとんどの場合、ベリンガムは初めは深目のポジションにいて、そこからドリブルで相手ディフェンスに向かっていく。

    ここで注意しなければならないことがある。ベリンガムの役割はレアル・マドリーがラ・リーガでしばしば低く守られると変わってきた。ピッチを自由に動きまわることもあるし、時には最前線に陣取ることもある。それでも、ベリンガムはストライカーではない。ただ、多くのゴールを決めているだけだ。そうした役割はエンバペが包括していく可能性がある中、ポジションを維持していくことは簡単なことではない。

  • Jude Bellingham Vinicius Jr.Getty Images/GOAL

    ベリンガムは背番号9なのか

    ベリンガムをピッチの前目に配置するのが、おそらくエンバペ加入後のレアル・マドリーで、最も簡単に構築できる新スタイルだろう。エンバペは左サイドでプレーするのが最も合っていて、ベリンガムはペナルティーエリア内でスペースを見つけるのが得意な素晴らしいゴール・スコアラーであるし、ヴィニシウスが逆サイドに対応することはほとんど問題ないはずだ。

    それでも、解消すべきいくつかの問題はある。ヴィニシウスは右サイドでプレーする経験がなく、ベリンガムが本当に純然たるストライカーとして成功できるのか確かではない。ロドリゴが締めだされてしまう可能性もある。それこそが、ここ数週間の移籍をめぐる話題の中心だった。だが、アンチェロッティ監督がサッカー界最高の11人を手中にするという考えを描きたいのなら、これがそれを実現する理想的な方法だ。

  • Kylian-Mbappe(C)GettyImages

    エンバペは中盤か

    それでもベリンガムのマルチぶりを考えると、チームのためにポジションを変えるという考え方もある。ユース時代、バーミンガム・シティで背番号22をつけていたのは有名な話で、4、8、10のポジションでもプレーできるだろう。プロ入りしてからの短いキャリアの中でも、さまざまなポジションに容易に適応できることは証明されている。

    ボルシア・ドルトムントでの最後の数カ月や、ここ最近のイングランド代表でベリンガムは3トップの下で背番号8と10を合わせたような役割を担っている。チームの司令塔として頼りにされ、必要ならばその無限のエネルギーを発揮して自陣に戻り、守備の手助けもする。

    確かに、レアル・マドリーの中盤のトリオの一角として同じ役割を与えることも考えられないことではなく、レアル・マドリーに加入した時に最も想定されていた役割であるとも言える。そうすればロドリゴは先発の役割から解放され、ヴィニシウスに得意な左サイドでのプレーのチャンスを与えられるかもしれない。だが、エンバペをサイドでなく中で起用することは最善策なのか。

    エンバペがベルナベウでカリム・ベンゼマのようにゴールを量産できるだろうことは確実だが、ベンゼマと同じ役割を悠然と果たせるかどうかはわからない。25歳のエンバペは広いエリアから切りこんでくることの方がずっと得意だ。

  • Endrick Palmeiras 2023Getty

    エンドリッキは?

    ロス・ブランコスに新たに加入する攻撃的選手はエンバペだけではない。パルメイラスにブラジル国内のタイトルをもたらしたエンドリッキもこの夏、18歳となってついにスペインの首都のチームへの移籍を成し遂げるだろう。アンチェロッティ監督は、このブラジルの神童にチームでの役割を見つけてやらなければならない。

    エンドリッキに最適なポジションがどこかはまだ議論の余地があり、成長過程のさまざまな段階で、センターのストライカーとしても、ワイドのフォワードとしても、背番号10としてもプレーしてきた。その度に高く評価されてきたエンドリッキは、まだ17歳であることをすっかり忘れさせる。ヨーロッパでの最初のプレ・シーズンで充分に活躍できれば、すぐにトップチームにあがることもできるだろう。

    その場合、最も考えられるのはエンドリッキが背番号9としてプレーし、エンバペとヴィニシウスが両脇を固める布陣だ。同じフォーメーションをロドリゴとベリンガムで形成することも可能だろう。エンドリッキが背番号10向きなら、ベリンガムを深めの中盤の位置に下げてもいい。そうなるとベリンガムのアタッキングサードでの破壊力は制限されてしまうかもしれないが、これは潜在するベリンガムの後退を補うという目的を充分に果たせるラインナップとなるだろう。ただし、ヨーロッパの最強チームと戦うのに充分なバランスのとれたチームになるかどうかは、確かに議論の余地があるかもしれない。

  • Kylian Mbappe Jude Bellingham 2022Getty Images

    理想的な解決策

    だが、こうしたことすべてはそれほど複雑ではないかもしれない。現在のレアル・マドリーのシステムは良く機能してきており、アンチェロッティ監督がベリンガムにヴィニシウスとロドリゴという気鋭のストライカーを支える役割を与えたことは、見事な策だったことが証明されている。そう、2人のブラジル代表は少しでもポジションが変わると調子が悪かったが、今や2人とも成功への道を見つけたように思えるのだ。

    ロドリゴの代わりにエンバペをチームに入れれば、レアル・マドリーの新しい前線となりそうな2人の最重要選手のベストを引き出すのに最高の方法となりそうだ。ヴィニシウスは再び調整を強いられるかもしれず、ロドリゴは気分を悪くするかもしれない。しかし、結局のところ、ベリンガムとエンバペにかかった費用を考えれば、2人が優先されるのは仕方がないだろう。

  • Ancelotti Bellingham Real Madrid 2023-24Getty Images

    その仕事に最適な男

    しかしながら、レアル・マドリーが2024-25シーズンを前にやるべき最も重要な仕事は、おそらく12月に起こっていた。世界中がアンチェロッティはブラジル代表の監督になるだろうと思っていた時に、レアル・マドリーとの契約延長に同意したのは、常勝チームでスーパースターを育てるに際し、もともといる監督のもとで安定しているチームにエンバペを迎えるためだった。

    アンチェロッティ監督は、カカやアンドリー・シェフチェンコ、エルナン・クレスポ、アンドレア・ピルロがいたミランというスーパーチームをまとめあげた監督である。2000年代終盤には我の強い選手が多かったチェルシーを率いてタイトル獲得を果たした。現在のレアル・マドリーでの成功も、個性の強い選手たちを監督し、勝ち続けさせているからである。ヨーロッパの「五大」リーグのすべてで優勝し、チャンピオンズリーグを5回制したサッカー史上唯一の監督となったのは伊達ではない。

    そう、レアル・マドリーの今後の課題は、ベリンガムやエンバペ、他のすべての選手を輝かせる方法を見つけることである。だが、ブロンコスにはすでに、そうした問題を解決する最善の策をチームに与えてくれる完璧な指揮官がいる。

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