January winners & losers GFXGetty/GOAL

2025年1月の移籍市場、勝者と敗者:大型補強のマンチェスター・シティ&グアルディオラ、一方でアーセナルは補強ゼロに…

2024-25シーズン冬の移籍市場が幕を閉じた。最も動いたのはマンチェスター・シティであり、オマル・マーモウシュら4選手の獲得へ総額1億8500万ポンド(約356億円)を投資。一方で最終日にも興味深いディールがいくつか成立しており、トッテナムがバイエルンからFWマティス・テルを獲得した一方で、アクセル・ディザジの説得には失敗。チェルシーDFはアストン・ヴィラ移籍を選択した。

また例によって、イングランド以外の市場は静かに閉幕している。それでもミランが攻撃陣の総入れ替えを図ったほか、サウジ・プロリーグではクリスティアーノ・ロナウドも所属するアル・ナスルがFWジョン・デュランを獲得。ビッグディールも成立している。

今回『GOAL』は、2024-25シーズン冬の移籍市場全体を分析しつつ、「勝者」と「敗者」をピックアップする。

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    敗者:アンス・ファティ

    サッカー選手という職業は厳しい。重傷を負えばすべてが変わってしまうこともある。アンス・ファティを見てみよう。16歳の頃には次世代を担う特別な才能であったが、22歳になった今、欲しがるクラブはないようだ。

    バルセロナ側がファティへのオファーを受け入れる意思をはっきりと示したにも関わらず、移籍は成立しなかった。そして、バルセロナでポジションを掴むのは非常に厳しいだろう。ここまでハンジ・フリック監督の下で先発したのは1試合のみ、プレー時間はわずか186分だ。

    デビュー直後に次々と最年少記録を塗り替え、あのリオネル・メッシの10番も受け継いだファティだが、度重なる重傷がキャリアを狂わせてしまった。今ではバルセロナでだけではなく、トップレベルにおいてもその未来は不確かなものになっている。

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  • Arsenal FC v Manchester City FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    勝者:ジョゼップ・グアルディオラ

    偉大なキャリアを築いてきた彼だが、現在指導者キャリアで最も苦しい時期を過ごしているだろう。チャンピオンズリーグのビッグマッチで「考えすぎ」と非難されていた時でさえ、国内ではタイトルを積み重ねていた。しかし、今季はキャリア最大の危機に抗えないでいる。

    それでも、6度のプレミアリーグ制覇やチャンピオンズリーグ優勝という実績により、クラブの全幅の信頼は揺るがない。この移籍市場でクラブは、高齢化と負傷に悩むチームを若返らせるために4選手を獲得、総額1億8500万ポンドを費やした(支出総額はプレミアリーグ他19クラブの総額とほぼ同じ)。さらに、エースFWアーリング・ハーランドとも10年間という異例の長期契約を結んでいる。

    つまり、メディアでは騒がれているものの、グアルディオラへオーナー陣からのプレッシャーは皆無だ。契約を更新した彼は、全力のバックアップを受けて挽回を目指す環境を与えられている。

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    敗者:ルベン・アモリム

    ポジティブな要素もある。懸念材料だったマーカス・ラッシュフォードが退団したこと、さらにシステムにフィットできそうなパトリック・ドルグを獲得できたこと。これら2つは評価できる。だが、苦境に立たされている中では、別のビッグネームが必要だったことは否めない。

    ホームでクリスタル・パレスに敗れてリーグ戦11敗目を喫したが、この試合ではクオリティ、創造性、結束力、そして決定力不足が再び残酷なまでに露わになった。さらに、リサンドロ・マルティネスが長期離脱を余儀なくされている。11月に指揮を執って以降、プレミアリーグの順位も全体のパフォーマンスも向上できたとは言い難い。

    すでにアモリムへのプレッシャーは高まっている。嫌な流れを変える選手も獲得できなかった今、彼はその重圧を跳ね返せるのだろうか。

  • Neymar Santos 2025Getty Images

    勝者:ブラジル代表

    サウジアラビアでネイマールが唯一得をしたことと言えば、銀行口座の残高だけだった。関係者全員にとってこの移籍は大失敗だったが、とりわけ9000万ユーロ(約143億円)の移籍金と、7試合の出場に2億ユーロ(約320億円)を超える報酬を支払ったアル・ヒラルにとっては悲惨な移籍だった。

    そして大幅な減俸に応じ、ネイマールは古巣サントスへ帰還。セレモニーでは、いかに彼にとってすべての始まりの場所が特別であるかが世界中に伝わっている。この移籍は両者にとって幸せな再会になるだろう。

    さらにこの移籍は、ブラジル代表にとっても大きな後押しとなる。2026年ワールドカップ南米予選でエースの不在を痛感している中、歴代最多得点記録保持者が戻ってくればチームの状況は大きく変わるかもしれない。“セレソン”の重圧に苦しむヴィニシウス・ジュニオールも、他取れるエースがいればその才能をいかんなく発揮できるはずだ。ネイマールは、再びブラジル国民に笑顔をもたらすことができるだろうか。

  • Aston Villa FC v Celtic FC - UEFA Champions League 2024/25 League Phase MD8Getty Images Sport

    敗者:アーセナル

    確かに、リヴァプールも補強を行わなかったことで大きなリスクを背負っている。昨年も負傷や疲労に襲われパフォーマンスが低下した試合はあったし、特に守備陣の選手層は不安が残る。だが、彼らは少なくともプレミアで首位に立っており、チャンピオンズリーグでもリーグフェーズを首位で突破した。

    だが、彼らと優勝を争うアーセナルも補強ゼロだったことは懸念すべきだ。センターフォワードを欲しがっていたことは周知の事実であり、彼らの動き出しがあまりに遅すぎたことは否定できない。ガブリエウ・ジェズスが負傷していなかったとしても、アーセナルはオリー・ワトキンスの獲得に動くべきだったはずだ。ジョン・デュランが移籍する前に決めるべきだった。

    結局アーセナルは、カイ・ハヴァーツに頼りきりで残りのシーズンを戦うことになる。1試合消化の少ないリヴァプールと6ポイント差、もう失敗は許されない。

  • Ben-Chilwell(C)Getty Images

    勝者:チェルシーの“余剰戦力”

    エンツォ・マレスカ監督がずっと反対していたにもかかわらず、結局クラブ側は異常とも言える金額を昨夏に費やし、必要以上に選手が溢れるスカッドが生まれてしまった。ラヒーム・スターリングやロメル・ルカクは去っていったものの、この6カ月間を無駄にした選手も多いはずだ(減俸を避けるために自ら望んで残った選手もいるかもしれないが)。

    しかし、その選手たちの多くが1月に退団。ベン・チルウェル、アクセル・ディザジ、カーニー・チュクエメカ、チェザーレ・カサデイ、ジョアン・フェリックスら“余剰戦力”は、切望していた移籍を果たしている。

    直近数年間で10億ポンド(約1945億円)以上を費やしたチェルシーだが、選手たちにとっても様々な意味で厳しい環境であることは間違いない。ここまで入れ替わりが激しいチームは過去にあまり例がなく、今季もプレミアリーグタイトルに挑戦できるかは不透明だ。

  • Vlahovic Napoli Juventus Serie AGetty Images

    敗者:ドゥシャン・ヴラホヴィッチ

    3年前に7000万ユーロ(約111億円)とされる移籍金でユヴェントスへやって来たヴラホヴィッチ。2021年のリーグ戦でキリアン・エンバペ、リオネル・メッシ、モハメド・サラーよりも多くの得点を決めたセルビア代表FWには、輝かしい未来が待ち受けているはずだった。

    しかしトリノでは、加入前に描いたプランが思うように進んでいないのだろう。チアゴ・モッタ監督就任でさらに飛躍が期待されたが、結局1月に加わったランダル・コロ・ムアニに押されて再びベンチに座っている。

    そして心配なのは、多くのビッグクラブが1月にストライカーを探していた中で、声がかからなかったことである。今後の5カ月間は彼にとって厳しいものになるだろう。

  • Marcus Rashford Aston Villa 2024-25Getty Images

    勝者:アストン・ヴィラ

    移籍市場終盤にアーセナルがワトキンスへ正式オファーを出したとき、アストン・ヴィラのファンは最悪の事態を恐れた。クラブの財政状況が厳しいことは周知の事実であり、そのためにスター選手の売却が必要なこともわかっていたからだ。しかし、最終的にはジョン・デュランを6450万ポンド(約124億円)という巨額の移籍金でサウジアラビアに放出。この退団でクラブは救われている。

    そしてそれだけでなく、ドニエル・マレンに加え、ラッシュフォードとマルコ・アセンシオという才能あるアタッカー2人を獲得。しかも現時点で移籍金を支払わないレンタル移籍だ。また、トッテナムとの争奪戦を制してディザジを獲得し、ケガで弱体化した守備陣の強化にも成功している。

    現在5位マンチェスター・シティと4ポイント差に迫る8位だが、この移籍市場で5位以内(来季チャンピオンズリーグ出場枠になる可能性が高い)に入る可能性は一気に開けている。

  • AFC Ajax v Galatasaray A.S. - UEFA Europa League 2024/25 League Phase MD8Getty Images Sport

    敗者:ジョーダン・ヘンダーソン

    ジョーダン・ヘンダーソンの評判は、2023年夏にリヴァプールを離れ、サウジ・プロリーグのアル・イテファクに移籍したことで大きく落ち込んだ。結局すぐにサウジアラビアを離れ、現在はアヤックスのキャプテンを務めているが、シーズン中にモナコへの移籍を強行しようとしたと、再び非難されることに。そして先日の記者会見では、ジャーナリストと激しい対立を繰り広げた。

    「木曜(ガラタサライ戦)の僕は僕じゃなかった。内部事情を知っている人は99%が試合に出られないと言うはずだ。だが、この部屋にいる人は僕のプロ意識と人間性を疑っている。まったくの筋違いだと思う」

    「こんなことで落ち込まないよ。これまでもっとひどいこともたくさんあった。でも、僕には家族がいる。妻や子供たち、そして両親が、メディアを通じて、あなたたちのでたらめな話を読んでいる……。移籍の話は、ただただクラブが置かれている状況によるもの。僕が話せるのはそれだけだ」

    その後もアヤックス広報担当が介入するまで、ヘンダーソンは詳細な情報を話すことを繰り返し拒否し、最悪のやりとりが続いた。クラブが最終的にこの状況についてより詳細な情報を開示することを期待するが、既に明らかなのはヘンダーソンが幸せではないということ。彼は自分の人格に対して、再び厳しい視線が注がれていることにひどく動揺している。

  • Naomi Girma, ChelseaGetty Images

    勝者:チェルシー女子

    ほとんどの女子チームは冬の移籍市場で苦戦したが、チェルシーは2件の契約を成立させた。

    1月26日、2024年のパリ五輪でアメリカ代表を金メダルに導いた24歳DFナオミ・ギルマを獲得。移籍金は女子選手では異例の89万ポンド(約1億7000万円)だ。そしてその5日後、今度はバルセロナからキーラ・ウォルシュを獲得している。彼女は家族が移籍の理由の1つと認めているが、チェルシーの抱く野心も同じくらい重要であったはずだ。

    現在、チェルシーは女子スーパーリーグ(WSL)6連覇に大きく近づいており、今後も長きに渡ってイングランド女子サッカー界を支配するだろう。そして世界屈指の2人を獲得したことは、ヨーロッパ最強であるバルセロナを追い越すという明確な意思の表れでもある。