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【インタビュー】クロップの衝撃的なリヴァプール退団とレッドブルのサッカー帝国を率いるという物議を醸した決断の内幕を盟友が語る

「多くの人々が今この瞬間、突然この話を聞いて衝撃を受けただろうことは理解できる。当然だが、私は説明するし、少なくとも説明しようと思っている」と、クロップはクラブの公式サイトで語った。

「私はこのクラブのすべて、この街のすべて、サポーターのすべて、チームやスタッフも愛している。私はすべてを愛している」。

「それでもこの決断を下したのは、これが取るべき道だと確信しているからだ。どう言えばいいだろう…私はエネルギーが枯渇しつつある」。

サポーターたちは呆然とした。その前年には疲労や苛立ちの兆候があったものの、クロップの突然の退任を予見していた者は誰もいなかった。クロップのアシスタントであるピーター・クラビーツさえも…

  • AFC Bournemouth v Liverpool FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    「ユルゲンの説明は理解できた」

    「当時ユルゲンは私に電話をかけてきて、ぜひとも会いに来て欲しいと言った。話し合う必要があることがあると言っていた」と、クラビーツはGOALの独占インタビューで語った。

    「その内容を聞いた時、最初は驚いたが、5分後には納得し、結局、話し合いは2時間ほど続いた。ユルゲンの説明と主張はすべて完全に理解できた。論理的で一貫しており、私でもそう考えるだろうと思った」

    「私たちは、それぞれ自分自身のことを長い時間をかけて客観的に考え、その結果、この職業が要求することをすべて考慮すれば、次のシーズンの課題に立ち向かうには4週間の休みでは不十分だという、難しい結論に至ったのだった」

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  • F1 Grand Prix of AustriaGetty Images Sport

    物議を醸したクロップの決断

    実際、クロップが疲弊している理由を理解するのはさほど難しくなかった。何しろ彼は、その強烈な情熱で知られていたのだから。

    マインツ、ボルシア・ドルトムント、リヴァプールと、クロップはどのクラブでも常に100%以上の情熱を注いできた。そうした熾烈な仕事倫理がいずれ彼自身に跳ね返ってくるのは必然だったのかもしれない。

    彼がサッカーから離れて長期の休息を取るに値する人物であることに疑いをもつ者は誰もいなかった。しかし、まさに同じ理由で、アンフィールドでの最後の試合から半年も経たないうちに、レッドブルのグローバルサッカー部門の責任者として復帰すると発表した際には、多くの人が眉をひそめたのである。

    クロップは常に伝統を重んじ、サッカー界の商業主義に幻滅した古風なロマンチストだと自称してきた。そのため、エナジードリンクメーカーのスポーツ部門での役職を受け入れた決断は、偽善的だ、魂を売ったのだという非難を招いたのである。

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    レッドブルでなら、枠にとらわれずに考えることができる

    だがクラビーツは、クロップの復帰時期や雇用主がレッドブルであることに全く驚かなかったと主張する。

    「もし彼が、『いつもと同じ役割でどこかのクラブに入りたいか』と尋ねてきたら驚いただろう」と、彼は言う。

    「だが、そんなことは、まず起こらないと確信していた。彼は以前と全く異なることをするだろうと常に思っていた。ユルゲンは監督という仕事とは違うものを求めていただけだ」

    「彼は常に好奇心旺盛で、サッカー以外のことにも熱心だった。レッドブルでなら、枠にとらわれずに考え、新たな経験を積み、実際に深く関与することができる。一カ所に縛られることなく、毎日の広報業務からも解放される。深さは減ったが、広さは変わらない」

    「批判は承知しているが理解できない。(ドイツの)ファンのほうに、少し誤解があると思う」

    「イングランドでは、投資家が資金提供者として戦略的な決定を行い、クラブを運営するのがごく普通のことだ」

    「それがなぜドイツではまだ定着していないのかと問うなら、それはサッカーがどのようにプロ化され、商業的に運営されているかへの問いでもある。非常に興味深い議論だが、サッカーそのものと同じくらい古い問題だ」

    「しかし結局のところ、ユルゲンがどこで働けば許され、何になれば人々は容認しただろうか? 仮定の話だが、彼がバイエルン・ミュンヘンやマンチェスター・ユナイテッドの監督になったとしても、批判の声は数多く上がったはずだ。もちろん、そうなったら職業選択の自由が阻害されることになる。個人の判断には敬意が払われなければならない。ファンが何を望んでいるか、一般投票で決めるわけにはいかないのだ」

  • James Milner Liverpoolgetty

    「真の王者」ミルナー

    もちろん、クロップはずっと以前から、リヴァプールのレジェンドとしての地位を確立していた。彼はファンと素晴らしい信頼関係を築いてきたし、それは今なお存在する。

    何と言っても優勝トロフィーの獲得数がすごい。レッズを6回もチャンピオンズリーグ優勝に導いただけでなく、30年ぶりのイングランドのリーグタイトル獲得も成し遂げた。

    しかし、クラビーツは率直に認めている。成功の多くは素晴らしい選手たち――クラブで卓越した基準を築き、それを維持した真の人格者である男たちのおかげである、と。

    「誰も特別扱いしたくないし、ひとりひとりの選手の話を1時間ずつ語ることができるだろう」と、クラビーツは言う。「しかし、毎日の生活や仕事に集中し、それらに対して完璧に確信をもって取り組んでいたという点で、私が会ったすべての選手の中で最も輝かしい模範であり、最もプロフェッショナルなのはジェイムズ・ミルナーだ」。

    「彼はそうした姿勢でチーム全体をまとめ上げ、真の王者となる方法を示した」

  • FBL-EUR-C1-LIVERPOOL-BELGRADEAFP

    フィルミーノの成長

    クラビーツは、ミルナーのような選手たちが確立した更衣室でのリーダーとしての基準が、他の選手たちの精神と肉体の両方の成長を促したと言う。

    「真っ先に思い浮かぶのはロベルト・フィルミーノだ」と、クロップ体制下で最も変化した選手は誰かと問われて、クラビーツは答えた。「彼の成長は極めて興味深いものだった。最初のうち彼は、クリスマスパーティーにサングラスをかけて現れ、最高級のスーツを着こなし、誰よりも派手に騒いでいた」。

    「ところが後に彼は信仰心を見出しキリスト教徒となった。彼がそれを受け入れ、そこから力と確信を引き出す姿は実に非凡だった。彼は常に他の選手のことを考え、彼らのロールモデルとなった。ブラジル流のプレースタイルと、サッカーに必要な真剣さや献身的な姿勢を完璧に融合させたのだ」

    「他にも、トレント・アレクサンダー=アーノルドが、15歳の長身でひょろひょろの少年だった頃、まだ体が成長途中で筋肉も全然ないまま、初めてピッチを駆け回った姿を今でも覚えている。だが、その当時から、ユースのコーチたちは彼を非常に才能のある選手だと評価しており、結局、彼はリヴァプールで地元育ちの右サイドバックとなり、リヴァプールのプレーを形作り、チームの発展を象徴する存在となった」

  • Liverpool FC v Crystal Palace FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    「夢のような」結果

    批評家の中には、クロップがマージーサイドで指揮を執っていた間、チームの戦力を考慮すればもっと多くの主要なタイトルが獲得できたはずだと主張する者もいる。しかしクラビーツは、本当に大きな失敗はひとつだけだと言う。

    「あのシーズン、私たちは勝ち点97を獲得したが、結果的にあと1ポイント足りなかった」と、彼はため息をついた。「今でも、あのタイトルは取りたかったと心から思う」。

    とは言えクラビーツは、クロップの退任直後にリヴァプールがタイトルを獲得したこと、そして今後何年にもわたってイングランドサッカーを支配する絶好の位置にいることに大きな慰めを見出している。

    そのため、リヴァプールに関心のある多くの第三者たちは、クロップがあのタイミングでクラブを去ったことを後悔しているのではないかと勘繰っている。しかし、クラビーツは、アルネ・スロットが即座に成功したことは「夢のような」結果だったと語る。

    「私たちが手渡したチームは完全には成熟していなかったが、多くの要素はすでに整っていた」と、彼は説明する。「新監督は新たなエネルギーと、3つ、4つ、あるいは5つ、大小の調整を加えるだけで、即座に成功を収めることができた」

    「理想的には、クラブに基盤を残し、そこから発展していけるようにすることが私たちの願いだった。それを達成できたと確信しているし、結果として非常に満足している」

    だからクラビーツは、クロップがアンフィールドを去ったことは衝撃的だったかもしれないが、当時者全員にとって正しい決断だったと確信しているのである。