C・ロナウドが多くの有名選手たちが自分に続いてサウジアラビアに来るだろうと言った時、少なくともヨーロッパではそんなことはないとの意見が広まった。だが、ほどなくC・ロナウドが正しかったことが証明された。
レアル・マドリーの2022-23年シーズンの最終戦が近づくにつれ、スター・ストライカーのカリム・ベンゼマがフリーでアル・イテハドに移籍することを考えているとの噂が巻き起こった。このニュースに、ロス・ブランコスのフロレンティーノ・ペレス会長やカルロ・アンチェロッティ監督も大いに驚愕した。2人とも、ベンゼマがもう1年サンティアゴ・ベルナベウにいる契約を結んでくれると完全に期待していたのである。
だが、ベンゼマはチームを去ることを決めた。これによりレアル・マドリーの移籍計画がズタズタになる一方、サウジ・プロリーグはあっという間に信頼性を大いに高めたのだった。C・ロナウドは5回のバロンドール受賞者ではあるが、ベンゼマは今まさに引っ張りだこの選手である。ベンゼマの移籍は世界中に明確なメッセージを発信した。突然、水門が開いたのである。
サウジアラビアの4大クラブ(アル・ナスル、アル・イテハド、アル・アハリ、アル・ヒラル)を管理するパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は、すぐさま、ビッグネームを擁する「ビッグ・フォー」を創設した。エンゴロ・カンテ、カリドゥ・クリバリ、ロベルト・フィルミーノ、ジョーダン・ヘンダーソン、ファビーニョ、リヤド・マフレズといった選手たちが、プレミアリーグを離れてサウジ・プロリーグに行き、さらに、アル・ヒラルがパリ・サンジェルマンからネイマールを9,000万ユーロ(約147億円)で獲得して、サウジアラビアの高額移籍記録を更新した。
「すべてのきっかけがクリスティアーノ・ロナウドだったと思う。みんな彼のことをクレイジーだと言ったが、今日、皆さんはこのリーグがますます成長していく姿を目にしているのだ」と、ネイマールは新しいクラブのメディア・チャンネルで語った。「私はこのリーグがますます成長するのを助けるためにここへ来た。この夏の移籍で多くの契約をして、このリーグは非常に競争力が高くなるだろう」
しかしながら、ネイマールのようなスーパースター30人以上との契約以上に重要なのは、フランク・ケシエやセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ、ガブリ・ベイガといった選手たちを獲得したことだった。全員が今が全盛期、またはこれから全盛期を迎える選手たちである。
こうした契約によって、サウジ・プロリーグが移籍市場を席巻するプレミアリーグを本格的に脅かす存在になりうることが強調されるようになった。事実、キリアン・エンバペやモハメド・サラーを移籍させるという野望は最終的には失敗したかもしれないが、夏の移籍市場で、サウジ・プロリーグ(7億100万ポンド(約1,300億円))以上に多くのカネを使ったのは、イングランドのトップリーグ(15億9,000万ポンド(約3,000億円))だけだった。