Kane Cristiano gfxGetty

サウスゲートはEURO2024準決勝で絶不調のハリー・ケインを先発に選ぶべきなのか

【期間限定】今だけお得!EURO2024&CL/EL 24/25シーズン 全試合見られて14,500円(税込)の特別価格

イングランドのメディアは打ちひしがれる男を足蹴にするのが好きで、7月5日にクリスティアーノ・ロナウドとポルトガルのEURO2024敗退が決まると、大いに騒ぎ立てた。だが、それも致し方ない。

世界一とは言わないまでもヨーロッパの2強たるチーム同士のファン垂涎の試合は、ベスト16でのポルトガル対スロベニア戦とまったく同様に、クリスティアーノ・ロナウドひとりに注目が集まった。

「C・ロナウドは自身の幻想の中で迷子になってしまったようだった」と、『デイリー・テレグラフ』紙は書いた。

「銀河系最高の戦いはひとりの男のエゴのブラックホールに落ちてしまった」と、書いたのは『ガーディアン』紙である。

「クリスティアーノ・ロナウドは彼自身のためにポルトガル代表から引退すべきだ」と『アイ』紙は書き、C・ロナウドは引退すべき時期がわからずに自身のレガシーを汚していると主張した。

結果的に、ポルトガルは絶頂期を過ぎたキャプテンを優遇しようとした代償を払うこととなり、ワールドクラスの才能ある選手たちであふれたチームは無慈悲なPK戦の末に大会を去った。

だが、それから24時間も経たないうちに、イングランドはスイス戦でハリー・ケインを盲信したためにポルトガルと同じような運命に屈するところだった。ケインがチームを阻害しているという明らかな事実を突きつけられたのである。

  • Cristiano Ronaldo Harry KaneGetty

    チームの足を引っ張る

    ケインとC・ロナウドは多くの点で対照的な選手かもしれない。イングランド代表FWは、ポルトガル代表FWのそびえたつほど高いエゴに比べれば、ずっと謙虚な人物に思える。

    だが、2人には明らかな類似点もいくつかある。2人とも母国代表のキャプテンであり、それぞれの国の歴代最多得点者だ。主要大会でゴールデン・ブーツ賞を獲得したことがあり、チームをEURO決勝に導いたこともある。それぞれの国で殿堂入りすることは、すでに確定的だ。

    しかしながら、今大会ではチームの足を引っ張りつづけている。はっきりと衰えが見えているにも関わらず、両国の監督は2人を頑固として先発で使いつづけ、できるだけ長くピッチに居させており、その結果チーム全体のパフォーマンスは落ちてしまった。

  • 広告
  • Harry Kane England 2024Getty Images

    「怠けていてイライラする」

    それでも、サウスゲート監督が最後の最後でケインを交代させ、イングランドがPK戦でスイスに勝った後、新聞ではケインがチームに与えたマイナスの影響についての言及はほとんどなかった。重い足取りのケインとC・ロナウドを比較しようとした解説者はただひとりだった。

    トッテナムのMFからtalkSPORTラジオのチーフ・アジテーターになった、元FWのジェイミー・オハラはこう言った。

    「彼はチームにフィットしていない。怠けている。彼を見ていると本気でイライラする。チームにC・ロナウドがいるのではないかと心配になる。彼にプレーをさせなければならない。今大会の問題は彼だ。まったくもって、ひどいプレーをしている。試合をスローダウンさせてばかりいる」

    オハラはガレス・サウスゲート監督は準決勝のオランダ戦でケインを外すべきだと主張して、司会のジェイソン・カンディを驚かせた。元チェルシーのカンディは、準決勝でキャプテンを外すなんて「とんでもないこと」だといい、イングランドがオランダに負けることがあればサウスゲート監督を「大いなる混乱」に陥れるだろうと指摘した。

  • Harry Kane Gareth SouthgateGetty

    「大きな決断」

    しかしながら、カンディにもスイス戦でのケインのプレーを擁護することはできなかった。

    「今日のハリー・ケインのプレーはひどかった。何もしてなかった」と、カンディは言った。

    「サカがサイドでボールを持つ時、ケインは(マークを)外す動きを求められる。ところが彼はペナルティ・スポットにいたんだ! ケインにはゴールエリアにいてほしい。2度か3度、そういうことがあった。ケインは足に根が生えたようだった。私にはわけがわからない。どうしたら彼がチームにフィットするのか、私にはわからない」

    カンディは、うかつにも問題の総括としてサウスゲート監督のケインをめぐるジレンマと、ポルトガル代表のマルティネス監督のジレンマを比較し、こう言った。

    「それは大きな決断だ。ポルトガルのマルティネス監督が昨夜の試合でC・ロナウドを外すようなものだ。だけど、監督がC・ロナウドをプレーさせないで、それでチームが負けたら『どうしてC・ロナウドを外したんだ?』と騒ぎになるだろう。難しい問題だ。正しい答えなどない。君の言いたいことはわかるし、君の言うとおりだ。ケインは外したほうがいい」

    「それはまさに大きな決断だ。今ここで、それが正しいかどうか、わからない。言ってしまったことは取り消せない。準決勝で外して、それで決勝に進出して、そしたら決勝で彼を先発させるのか?彼はキャプテンだよ?とても難しい問題だ」

  • Cristiano Ronaldo Roberto MartinezGetty

    マルティネス監督最大のミス

    だが今や、ポルトガルはいない。マルティネス監督に、フランス戦の先発からC・ロナウドを外す勇気があったら、と、ポルトガルの人々は思っていることだろう。または、少なくとも試合中にC・ロナウドを外してディオゴ・ジョッタかゴンサロ・ラモスを入れるべきだった、と。

    C・ロナウドにはクロスに合わせたり、相手DFを振り切ったりするだけのスピードもパワーもなかった。スルーボールに追いつく脚がなかったため、常にボールを足元にくれと要求していた。ポルトガルが獲得したFKのほとんどすべてを蹴り、得点になりそうもない角度からでも常にゴールを狙っていた。

    だが39歳のC・ロナウドが、準々決勝でケインよりも必死でプレーしていたことは事実だ。イングランドのキャプテンはボールタッチ数が27だったが、C・ロナウドは41だった。シュート数もケインの2本に対して3本だったし、ケインと違って少なくとも相手GKを苦しめようとしていた。ケインのシュートは、1本はブロックされ、もう1本は枠を外れた。C・ロナウドのパスの成功数は、たった10しかなかったケインの2倍である。

  • Harry KaneGetty

    実力を発揮したとは言い難い

    それでもケインは今大会で2得点をあげている。初めて無得点で主要大会を去ることとなったC・ロナウドとは大違いだろう。だが、ケインの2得点は短距離からの簡単なシュートを決めたもので、実力を発揮したとは言い難い。

    スイス戦でのイングランドのプレスを牽引することができず、それまでの試合と比べればわずかに改善したものの、依然として相手に充分なプレッシャーをかけることができなかった。

    ケインは、イングランド代表の中で随一のブカヨ・サカを生かすこともできなかった。アーセナルのウィングがスイスDFの裏をとって何度駆け上がっても、無駄になってしまっていた。

    前半のあるプレーを見れば、問題がよくわかるだろう。サカがサイドラインを駆け上がってペナルティーエリア内に低いクロスをあげた時、ケインはボールに向かって動くことができなかった。

    「あれはいいクロスで、ブカヨ・サカは『どこにいたんだよ!』と言っていい。サカは誰かがボックス内に入るのを待っていたのに、ハリー・ケインはまったく動かなかった」と、BBCのコメンテーター、アラン・シアラー.は言った。

  • Harry Kane EnglandGetty

    イングランドの最善の利益のために

    「ケインはまったく動かない」はドイツでの5試合におけるケインにピッタリの描写であり、イングランドにケインを起用し続ける余裕はない。バイエルン・ミュンヘンでのケインは素晴らしい活躍をし、ヨーロッパで他の誰よりも多くの得点をしたかもしれないが、無理がたたり、シーズン終盤に向けて背中の痛みをずっと感じていることは明らかだ。

    ケインはC・ロナウドより9歳年下だが、今大会は体力を消耗しているように見える。ドイツでのプレー時間は463分で、C・ロナウドより20分少ないだけだが、サウスゲート監督はスイス戦でケインを長く起用し続けた。どうやら、監督にぶつかって箱につまずいたために交代となったようだ。

    ケインはオランダ戦に向けて準備は出来ていると明言したが、イングランドの最善の利益のためには彼を先発から外すべきだろう。オリー・ワトキンスなら、オランダDFを牽引する32歳のフィルジル・ファン・ダイクとステファン・デ・フライからチャンスを引き出すに違いない。試合終盤か延長戦で2人が疲れてきたら、その時こそケインの出番だ。

    カンディが警告したとおり、ケインを出さないというのは口先だけのことだと解釈されるかもしれないが、そうである必要はない。サウスゲート監督はケインを見せしめにする必要はない。監督がやるべきことは、オランダを倒して決勝に行くチャンスを最も高める選手を選んでチームを構成することだ。そして今は、歴代最多得点者に休息を与え、マルティネス監督がC・ロナウドでしたのと同じ過ちをしないようにすることである。

0