Gabriel Martinelli Arsenal future GFXGetty/GOAL

ガブリエウ・マルティネッリの正念場:エゼとマドゥエケの加入でアーセナルでキャリアを守る戦いに直面

ほんの2年ほど前、アーセナルは2023-24シーズンのプレミアリーグ開幕戦で、エミレーツ・スタジアムにノッティンガム・フォレストを迎えた。試合開始から25分は慎重な展開が続いたが、ガブリエウ・マルティネッリがチーム待望の魔法のような瞬間を生み出した。左サイドで2人のDFに厳しくマークされながらボールを受けたブラジル代表選手に、チャンスがあるようには見えなかった。しかし、彼はサイドライン沿いをドリブルで進み、敵のDFをかわすとつま先で見事にボールを展開させ、かかとでエディ・エンケティアにパスを出した。エンケティアは内側に切り込んでシュートを放ち、かすかに方向の変わったボールがネットに刺さって、アーセナルが先制点を挙げたのだった。

このアシストはシーズン最高の決定的なものであり、そのおかげでアーセナルは2-1で勝利した。それは、ほとんどの選手が挑戦することすらできない崇高なスキルであり、マルティネッリはもともとそれを持ち合わせている選手だ。問題は、彼がそれを安定して発揮できないことにある。

マルティネッリがイングランドの観客に対して衝撃的なデビューを果たしてから6年、次の土曜にアーセナルは再びフォレストをホームに迎える。ところが、マルティネッリはまだその潜在能力を完全に発揮できないでいる。捉えどころのない24歳は、今でも試合を決定づける力を持っていながら、多くの場合、その判断力や実行力に問題がある。

今や彼には、そうした状況を変えるための時間があまり残されていない。この夏、エベレチ・エゼとノニ・マドゥエケがアーセナルに加入し、攻撃陣の競争が激化した。レアンドロ・トロサールも新しい契約に合意しており、マルティネッリが決定的な結果を出せなければ、その立場は深刻な脅威にさらされることになるだろう。イトゥアーノで天才少年と呼ばれたマルティネッリは、これまでミケル・アルテタ監督の革命において重要な役割を果たしてきたが、アーセナルが次のステップに進み、主要なタイトルを手に入れるために、彼にもっと多くのことが求められるのは間違いない。

  • Liverpool v Arsenal - Premier LeagueGetty Images Sport

    信頼の危機

    マルティネッリにとってプラスの面を見れば、彼は相変わらずアルテタ監督から完全に信頼されている。このウイングの将来について、夏の移籍期間中ずっと憶測が飛び交い、バイエルン・ミュンヘンも彼の獲得に関心を持っているクラブのひとつだと報じられたが、アーセナルの監督は彼を手放すことをまったく考えていなかった。

    「ガブは我々にとって非常に重要な選手であり、今後も非常に、非常に、非常に重要な存在であり続けるだろう。彼は、特に前線で、試合を始めるのにも終わらせるのにも必要な選手だ。だから、私は現在の状況に非常に満足している」

    マルティネッリが新シーズンをどのようにスタートしたかを考えれば、これほど強い信頼の表明は驚くべきことだった。アーセナルが1-0で勝ったマンチェスター・ユナイテッド戦、マルティネッリは効果のないプレーを見せた後、60分に交代。エミレーツ・スタジアムで行われたリーズ・ユナイテッド戦は大勝だったが、この試合でもアルテタ監督は彼をベンチから出さなかった。ブカヨ・サカの負傷も重なり、マルティネッリは8月31日のアンフィールドでのアウェイ戦の先発に復帰したが、またしても彼はこのチャンスを活かせなかった。

    マルティネッリは70分の出場でたった15回しかボールタッチが記録されず、ドリブルも1回も成功しなかった。特に懸念された前半のプレーでは、アーセナルの中盤から走りだしてカウンターを仕掛け、ヴィクトル・ギェケレシュに簡単にパスを出すことができたにもかかわらず、ひとりでの突破を試み、結局ボールをアウトさせてゴールキックとなってしまった。

    アーセナルのファンは、マルティネッリのこうした無駄遣いにすっかり慣らされてしまっている。本来のマルティネッリなら、この試合で臨時にフルバックを務め、リヴァプールの決勝点を見事に決めたドミニク・ソボスライを簡単に打ち負かすことができたはずだ。だが実際のところソボズライにしてみれば、明らかに自信喪失の危機に陥っている選手を相手に気楽な試合だったことだろう。

  • 広告
  • Liverpool v Arsenal - Premier LeagueGetty Images Sport

    マドゥエケの活躍

    マルティネッリの凡庸さは、リヴァプール戦におけるアーセナルのチーム全体のプレーを象徴しており、アルテタ監督の保守的な戦術は、チャンピオンチームにとって思うつぼだった。しかし、ガナーズには、負傷したサカに代わって右ウイングを務めたマドゥエケという明るい存在があった。

    チェルシーでスターだったマドゥエケは、そのスピードと巧みな技でミロシュ・ケルケズを苦しめ、マルティネッリにフルバックを翻弄する方法を伝授した。アーセナルの最高の瞬間はすべて、マドゥエケから生まれた。フルデビューで緊張していただろうが、それを見事に振り払っていた。数週間後にサカが復帰するまで、その地位を維持するのに十分な働きだった。リーズ戦で見られたように、アルテタ監督は2人を同時に先発で起用することも躊躇しない。

    マルティネッリと違って、マドゥエケは両足が使える選手であり、アウトサイドでもインサイドでも危険な選手である。今、左サイドでアルテタ監督のシステムにうまく適合している。DFを引きつけて中央のエリアにスペースを作り、主な点取り屋であるマルティン・ウーデゴールとデクラン・ライスのためにチャンスを作ったり、ギェケレシュにクロスを供給したりする。

    最近では、マルティネッリを試合でマークするのは対戦相手にとって簡単すぎる仕事だ。なにしろ彼は、常に得意の右足で切り込もうとして、頭を上げて周囲を見渡すことが滅多にないのだから。

  • Arsenal v Leeds United - Premier LeagueGetty Images Sport

    衝撃のエゼ

    もっとも、マルティネッリの代わりを務める可能性が最も高いのは、8月23日にクリスタル・パレスから6,000万ポンド(約199億円)でアーセナルに加入したエゼだろう。27歳のエゼは、リヴァプール戦の終盤の20分間にマルティネッリと交代して出場し、鋭いドリブルと巧みなパスでたちまちチームを活性化させた。

    エゼは決定的な得点チャンスを逃したが、アーセナルに新たな風を吹き込み、マルティネッリよりもはるかに危険な存在となっていた。マドゥエケと同様、エゼもバランス感覚に優れ、一見すると強そうには見えないが、常にライン突破を成功させる多才な選手である。また、瞬時に膠着状態を打開できる熟練した司令塔でもある。

    今のままではマルティネッリは、想像力や突破力という点で、エゼにまったく及ばない。今でもスピードのあるハードワーカーではあるが、アーセナルでの初期の頃、見る者を興奮させた、恐れを知らない一面を失ってしまっているようだ。

  • Arsenal FC v Newcastle United FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    変革の犠牲者

    マルティネッリに対して公平を期すならば、アーセナルは彼の強みを生かすような戦術を立ててこなかった。彼がクラブで最高のシーズンを過ごしたのは2022-23シーズンで、アルテタ監督が今よりはるかに攻撃的なサッカーを展開していた時、プレミアリーグに36試合に出場して20得点に関与した。

    マルティネッリは、ドリブルで切り込むための広いスペースを活かし、同僚のガブリエウ・ジェズスとテレパシーのような連携を築き上げた。マンチェスター・シティからやってきたジェズスは、しばしばタッチライン方向に流れ、マルティネッリが中央の位置に入って敵を大混乱に陥れることを可能にした。しかし、ジェズスにはケガがついてまわり、そのせいでマルティネッリの影響力は低下した。

    また、その輝かしいシーズンには、左サイドでグラニト・ジャカやオレクサンドル・ジンチェンコとも良い連携を見せていたが、今や2人はアーセナルにいない。その一方、この2年間、アルテタ監督は守備の安定性を高めるため、中盤のコンパクトさを優先しながら、ビルドアップのプレーをより慎重に行うことをチームに求めている。この戦術的な調整により、マルティネッリはその場その場の判断で行動する型破りな選手ではなく、よく調整された機械の歯車のひとつにすぎなくなっていった。

  • Viktor Gyokeres Arsenal 2025Getty Images

    ギェケレシュとのコンビ

    だが、マルティネッリにとってまだすべてが失われたわけではない。アルテタ監督のシステム変更は、主に昨シーズン、チームに壊滅的な打撃を与えた負傷者続出のせいだった。その後、2億5,700万ポンド(約513億円)を移籍市場に投じたアーセナルは、今夏、再びリスクを取るだけの戦力、つまり、クリスティアン・モスケラ、マルティン・スビメンディ、クリスティアン・ノアゴール、ピエロ・インカピエといった選手たちを獲得した。

    とりわけスポルティングCPから加入したギェケレシュは、より直接的な策を強いられるようになったため、マルティネッリにとって最も重要な存在となるかもしれない。アーセナルは、今シーズンこれまで、ボールを保持するよりも、攻撃の素早い切り替えに重点を置いて、相手の守備の背後を走り込むギェケレシュの特徴を活用しようとしている。

    マルティネッリは、ジェズスと築いたような関係を、同じく左サイドに抜け出す傾向のあるギェケレシュとも築きたいと望んでいるだろう。一方、インカピエは、攻撃的なオーバーラップのできるサイドバックであり、マルティネッリのためによりゴールの近くにスペースを作る手助けができる。新加入選手たちがチームに溶け込むには時間がかかるだろうが、彼らなら、このブラジル代表のスターの能力を最大限に引き出すことができるかもしれない。

    また、カイ・ハヴァーツが膝の手術から回復中であることから、アルテタ監督にはマルティネッリを背番号10の役割で起用する選択肢もある。マルティネッリは昨シーズン、リヴァプールに2-2で引き分けした試合でトップに上げられた後に得点を決めたし、ウナイ・エメリ監督の時代にはそのポジションでレギュラーとしてプレーしていた。

  • Arsenal v Athletic Club: Emirates CupGetty Images Sport

    最後のチャンス

    マルティネッリもまた、インターナショナル・ブレイク中にブラジル代表としてプレーした後、アーセナルのキャンプに復帰したばかりである。彼は早くも、新たにブラジル代表の監督となったカルロ・アンチェロッティのお気に入りとなり、先週のワールドカップ予選のチリ戦では2試合連続で先発出場を果たした。

    マルティネッリは、ハフィーニャ、エステヴァン・ウィリアン、ジョアン・ペドロとともに恐るべき攻撃の4人組のひとりとして、3-0の快勝に貢献し、試合後に「2020年に(ブラジルのオリンピック代表のキャンプに)初めて招集されたときや、2022年のワールドカップに出場したときよりも、自分の実力が向上していると感じている」と語った。ただし、その発言は実際のところ真実とは言いがたい。

    結局のところ、彼は昨年3月から9月にかけて、アーセナルで17試合に出場しながら、1得点も記録できなかった。最終的にはリズムを取り戻したが、2024-25シーズンは全公式戦で51試合に出場し、10得点・6アシストという成績に終わっている。

    それでも彼の能力に疑いの余地はないが、トップクラスのウイングの成績としては心もとない。実際のところ、マルティネッリの成長は2022-23シーズン以降停滞しており、今シーズンが彼の恒久的な価値を証明する最後のチャンスとなる可能性も十分にある。

    土曜のフォレスト戦でエゼを差し置いて出場できるかどうかに関わらず、マルティネッリは与えられた1分1秒を最大限に活用するようにしなければならない。彼のアーセナルでのキャリアは今、危機に瀕していると言っても過言ではないだろう。