Saki Kumagai compositeGetty Images/GOAL

【独占】熊谷紗希が語るヨーロッパにおける日本人選手の人気と、新進気鋭のローマと共に目指すもうひとつのUWCLタイトル

2016年に熊谷紗希が5度目のチャンピオンズリーグ優勝を果たしたとき、現在彼女が所属しているローマには、まだ女子チームがなかった。それが今や、熊谷はこのイタリアのクラブで6度目の欧州タイトルを手にすることができると信じていると、自信をもってGOALに語った。2018年に設立されたローマの女子チームは、それだけ進歩したのである。

直近2回のセリエAでタイトルを獲得したローマは、2022-23シーズンにチャンピオンズリーグに初出場し、多くの人を驚かせたが、その中には熊谷自身も含まれていた。2度の欧州王者を誇るウォルフスブルクとのグループステージでの2試合を観戦したこの日本代表選手は、ローマが、最大の舞台での経験不足にもかかわらず、ヨーロッパのエリートチームのひとつと対等に戦い、最終的に優勝したバルセロナには敗れたものの準々決勝に進出したのを見て、「大きな可能性」を感じた。

  • Saki Kumagai Lucy Bronze Lyon UWCL trophy 2019-20Getty Images

    連続優勝

    20歳の新人としてヨーロッパの地に足を踏み入れて以来、熊谷は、日本が生んだ最も成功したサッカー選手のひとりとなっている。フランクフルトでの2シーズンで、チームのチャンピオンズリーグ決勝進出に貢献した後、その決勝で自分たちを破ったチーム、リヨンに加入した。

    そこで、リヨンが5年連続のヨーロッパタイトル獲得という驚異的な成功を収めることに貢献し、重要な役割を果たした。2016年にヴォルフスブルクをPK戦で破った際には、勝利を決定づけるシュートを決め、2020年に再びドイツのチームを打ち負かした際には、センターバックや守備的MFとして起用されながら90分内で得点を決め、大いに注目されたのである。

    それらの経験は、彼女がローマの即戦力となる助けとなっている。バイエルン・ミュンヘンで2年を過ごした後、熊谷はイタリアで得られる喜びを満喫している。イタリアには天気のよさ、美しい都市、美味しい食べ物があり、「とても幸せ」にしてくれると語っているが、もちろん、ヨーロッパで最もエキサイティングなチームのひとつとなったローマのサッカーも彼女に喜びを与えている。

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  • Saki Kumagai Roma Women 2024-25Getty Images

    「ローマでチャンピオンズリーグに勝ちたい」

    熊谷はミュンヘンにいる間に、実際にローマのサッカーを見ていた。「ヴォルフスブルク戦を観ました。2試合とも観たと思います」と、ローマが初めてチャンピオンズリーグ出場した2022-23シーズンのことをGOALに語った。「ローマには多くの発見があり、チームには大きな可能性があると感じました。その後、クラブからオファーを受けて、私もローマと一緒にチャンピオンズリーグ優勝を目指したいと思って、だからここに来ると決めました」。

    「私たちはチャレンジャーです」と、このチームがヨーロッパのチャンピオンになれると自信を持つ理由について尋ねられた34歳は答えた。「もちろん、多くのことをしなければなりませんが、私たちには可能性があります。クラブとして、チャンピオンズリーグを勝ち取るための大きなプロジェクトを持たなければなりません。今年、私たちはヴォルフスブルクを倒し、昨年も大きなクラブを倒しました。まだ十分ではありませんが、私たちはそれを成し遂げることができるのです。私はそう信じています」。

    「私が来た年から今年にかけて、私たちのクラブは成長しており、設備もすべて良くなっています。もちろん、一歩一歩です。今年のセリエAでも、あらゆるチームが進歩しています。最近の結果が示すように、セリエAで勝つのは簡単ではありません。すべてのチームが進歩しています。これはイタリアにとって良いことであり、私たちはもっと努力し、ハードワークをし、すべてに取り組む必要があります。今、それが必要です。私たちは前進しようとしているのです」。

  • Moeka Minami Saki Kumagai Roma Women 2024-25Getty Images

    もはや特別ではない

    ローマの女子チーム設立だけでなく、ユヴェントス、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッドなどを見ても、熊谷が2011年にヨーロッパに初めてやってきたときと比べて、現在のヨーロッパの女子サッカーは大きく変化している。スポーツの進化とプロ化だけでなく、現在、彼女が海外でプレーする日本人選手として珍しい存在ではなくなったことも、目立った変化と言える。

    フランクフルトに移籍する直前、熊谷は2011年の女子ワールドカップを制した歴史的な女子日本代表チームの一員だった。その素晴らしい偉業を達成した23人の選手のうち、当時海外でプレーしていたのはわずか4人。だが、今では状況は大きく変わった。実際、日本代表の最新のチームにはマンチェスター・シティやチェルシーに所属する選手が名を連ね、日本以外のクラブに所属する選手が16人もいる。「やっとここまで来ました」と、熊谷は笑顔で言った。「今、とても幸せです」。

  • Saki Kumagai  Momoko Tanikwa Japan Women 2024Getty Images

    需要がある

    それは熊谷が故郷から約8,000キロ離れて孤独を感じていたからではなく、多くの日本人選手が最高レベルで活躍することが代表に影響するからである。今なぜ、多くの日本代表チームの選手たちが海外に移籍しているのかと聞かれ、日本代表キャプテンはこう答えた。「代表のユニフォームを着ている時は、もちろん、日本人同士で争っているわけではありません。いつだって相手は外国人選手で、だからみんな、成長したいと思い、日々高いレベルの素晴らしい選手と対戦することが重要だと気づいたんだと思います。それが理由だと思います」。

    最初にフランクフルトへの移籍を決める前から熊谷はすでにヨーロッパへの移籍に興味を持っていたため、すでにドイツにいた安藤梢と永里優季に、その経験について尋ねていた。2人は、自分と同じようなチャンスを追求することを熊谷に勧めた。今、34歳の熊谷は、自分と同じ道を進みたいと思う選手たちの背中を同じように押したいと考えている。「その選手が行きたいと思うなら、多くのことを伝えますが、本人が行きたくないと思ったら、不可能だと思います。厳しい世界ですから」と言う。

    とはいえ、多くの選手が飛躍を望んでいることを熊谷は非常に喜んでおり、それが日本人選手の質の高さゆえであり、トップクラブがそのような選手を獲得したがっていることも喜んでいる。「日本の選手たちはちょっと...うまく言えないけれど、ちょっとした特別な存在だと思います」と、熊谷は考えながら言った。最後に選んだ「特別」という言葉には複雑な意味が込められている。「私たちのプレースタイルは、ヨーロッパの選手やアメリカの選手と大きく違います。チームに馴染むことができれば、チームのために多くのことをすることができるかもしれません。それが多くのチームが日本の選手を獲得したい理由だと思います」。

    「でも、もちろん、私たち日本人選手は、日本代表が勝つためにフィジカル的に多くのことを進化させる必要があります。選手が成長するにつれて、当然、日本代表も成長します。それが重要なことだと思います」。

  • Saki Kumagai Roma Women 2024-25Getty Images

    貴重なベテラン

    日本から遠く離れたローマで、同じ日本人の南萌華と一緒のチームにいるのは嬉しいかどうかを尋ねると、熊谷はユーモアを交えながら、簡潔に自身の経験してきたことについて語った。「本当のところ、あまり関係ありません」と、熊谷は笑いながら答えた。「もちろん、萌華と一緒にプレーできて、たくさんの時間を過ごせることは、とても嬉しいですが、私はヨーロッパにもう14年近くいるので、あまり関係ありません。実際、私にとって、さほど重要なことではありません」。

    その経験と、これまでに達成してきた勝利の数々に加え、明らかな才能と多才さによって、熊谷はローマにとって非常に役に立つ存在となっている。イタリアの女子サッカーはここ数年で成長してきており、特に2019年にイタリア女子代表がワールドカップの準々決勝に進出して以来、ますます注目を集めている。しかし、それはまだ5年前のことであり、イタリア代表のスター選手たちが多くいるローマがチャンピオンズリーグに出場するのも、まだ3回目である。

    自身の経験が成長を目指すチームの役に立っているかどうか尋ねられた熊谷は、「そうだといいですね」と、微笑んだ。「私の仕事は経験を伝え、ピッチ上でゲームをコントロールするためのすべてを発揮することだと感じています」。