Eli Junior Kroupi.jpgGetty/GOAL

イーライ・ジュニア・クルーピ:ボーンマスの18歳の新星はキリアン・エンバペの足跡をたどれるか

『デイリー・メール』紙によると、レアル・マドリー、トッテナム、RBライプツィヒは、冬の移籍市場でイーライ・ジュニア・クルーピを獲得したがっていた。ところが、リーグ・ドゥのロリアンと1,000万ポンド(約19億円)の契約を交わして、この18歳の選手の獲得レースを制したのはボーンマスだった。

ボーンマスのビル・フォーリー会長は、1月初頭に自身のブラックナイト・フットボール・アンド・エンターテインメントLLCを通じてロリアンFCの株式の33%を取得。これにより最終的にクルーピの獲得交渉でチェリーズことボーンマスが優位に立つこととなった。この若きFWは今季終了までスタッド・ドゥ・ムストワでプレーするが、夏にバイタリティー・スタジアムに移籍し、プレミアリーグでのキャリアをスタートさせることとなる。

クルーピは、すでにボーンマスのテクニカルディレクター、サイモン・フランシスから大きな期待を寄せられており、クラブの公式移籍会見でフランシスは次のように述べた。「このようにポテンシャルの高い選手を獲得できて、非常に興奮している。彼は若くして高いレベルの技術と状況判断力を発揮しており、シニアのサッカーへの適応も非常に速かった」。

フランシスの言葉は決して大袈裟ではない。クルーピは、フランスの1部リーグへの1年での昇格を目指すボーンマスの姉妹クラブで最も注目される選手として活躍し、非常に組織立った相手に対しても、その才能と自信を存分に発揮してきた。ロリアンは真の宝石を発掘したのである。以下、ボーンマスのファンが彼の南海岸への到着になぜそんなに興奮するのか、GOALがその理由を詳しく解説しよう。

  • すべての始まり

    ボーンマスが新たに獲得した選手は、ロリアンの元FW『イーライ』・ザヒ・ベルジェス・ナポレス・クルーピの息子である。父親はクラブのクープ・ドゥ・フランス制覇に貢献し、2005-06シーズンにはASナンシーの一員としてクープ・ドゥ・ラ・リーグ優勝を果たした。イーライ・ジュニアは、そのシーズンの終了直後に生まれ、フランスのブルターニュ地方で育ちながら、すぐに父親と同じくサッカーを愛するようになっていった。

    クルーピは6歳でロリアンのアカデミーに入団すると、急速に頭角を現し、2021-22シーズンにリザーブチームに昇格した。この才能豊かな若き選手は、ロリアンのBチームで18試合で9得点をマークし、翌シーズンも同じ得点を記録。これにより、当時ロリアンの監督だったレジス・ル・ブリの目にとまったのだった。

    驚きの決断で、ル・ブリは2022-23シーズン最終節のストラスブール戦(2-1)でクルーピにトップチームデビューを果たさせ、途中出場で7分間プレーさせた。この試合でクルーピは、アーセナルの元スター選手マテオ・ゲンドゥージがロリアンで打ち立てた記録を破り、わずか16歳345日でクラブ史上最年少出場選手となったのだった。

    その快挙を受けて、クルーピには欧州選手権に向けたフランスU17代表チームに招集されるいう夢をかなえるチャンスが巡ってきたが、運命の皮肉な巡り合わせで負傷により出場を断念することとなり、決勝進出を果たしたチームに名を残すことはできなかった。しかし、この挫折はクルーピの決意をさらに固め、プレシーズンにロリアンのチームに復帰して実力を証明することとなる。

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  • 大躍進

    ル・ブリは2023-24シーズンもクルーピにチャンスを与え続けたが、この若きFWへの信頼は大きく報われることとなる。2023年9月23日、ナントに5-3で敗れた試合でクルーピは得点を決め、アンドレ・アイェウの記録を破ってロリアン史上最年少の得点者となった。さらに2週間後、リヨンに3-3で引き分けた試合で2得点を挙げ、1974年以降リーグ・アンで複数点を決めた最年少選手となった。

    その1得点目は見事に美しく、ゴールから20メートル以上離れた地点でボールを受けると、DFを軽々とかわしてネットの上隅にカーブのかかったシュートを決めたのだった。あのような得点を決めるのは真に特別な選手だけである。その夏チェルシーを退団してロリアンにフリーで加入したティエムエ・バカヨコは、クルーピのパフォーマンス全体に大きな衝撃を受けたという。

    「彼は怪物だ」と、バカヨコはリーグ・アンの公式ウェブサイトで語った。「彼の成熟したプレーは、キリアン・エンバペを少し連想させる」。

    ル・ブリもロリアンのアカデミー出身のクルーピを絶賛し、次のように付け加えた。

    「彼はサッカーを純粋に楽しんでいる。その楽しみがこのまま続いていけば――私はできると思っているが――彼には、それして我々にも明るい未来が待っている。疑いようのない才能を持ったサッカー選手だから注目を浴び、人々が彼の周りに引き寄せられてくるが、彼自身はサッカーを楽しむことに集中している。それが他の選手と違うところで、彼の良いところだ!」

    クルーピは31試合に出場して5得点3アシストを記録してシーズンを終えたが、その印象的なパフォーマンスをもってしても、ロリアンをリーグ・ドゥへの降格から救うには至らなかった。ル・ブリはその後、イングランドのサンダーランドでの新たな挑戦のためにクラブを去り、アジャクシオの元監督オリヴィエ・パンタローニが後任として即座に招聘された。

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    その後

    その夏、クルーピはあまり休息をとれなかった。U19欧州選手権のフランス代表に招集され、決勝まで進出したためである。彼自身はスペインとの決勝戦でフル出場を果たしたが、フランス代表はヨニ・ゴミスがレッドカードで退場し、最後の15分を10人で戦った末に0-2で痛ましい敗北を喫した。

    しかし、この大会はクルーピにとって貴重な学びの場となり、2024-25シーズンは開幕直後からロリアンで即戦力として活躍。リーグ・ドゥの最初の10試合で7得点をマークしたが、その中には4ー2で勝利したFCアヌシーとのホームゲームでの素晴らしい2得点もあった。パンタローニ監督は彼のポテンシャルに疑いの余地はないと確信した。

    「彼は高い才能の持ち主だ。ストライカーは自信に満ちている時に一番良いプレーをすることが多く、彼は私たちにその自信を与えてくれる」と、ロリアン監督は試合後の記者会見で語った。「彼には自分自身に忠実で、求められていることを聞き入れ、自分のプレーを歪めないことが重要だ。彼は冷静で、頭がしっかりしている。チームによく馴染み、高く評価されている。まだサッカーを愛する若者に過ぎないが、ストライカーに最も重要なのは効率性だと自覚していると思う」。

    クルーピは足を負傷してロリアンでの次の5試合を欠場したが、ピッチに戻ってからは徐々に鋭さを取り戻し、12月から1月にかけての7試合で3得点に貢献。その後、プレミアリーグへの移籍が実現すると、ボーンマスのアンドニ・イラオラ監督は大いに喜んだ。

    「彼のキャリアは通常の選手よりも先を行っている」と、イラオラ監督は述べた。「彼のパフォーマンスは非常に優れていて、ロリアンと代表の双方で成功を収めている。私は非常に嬉しい」。ボーンマスとの移籍が確定した後のクルーピは、契約終了までのんびりすることもできたが、逆にエマニュエル・アデバヨールの記録を破ってリーグ・ドゥで11得点以上を記録した最年少選手となり、そのおかげでロリアンを首位で昇格を決めた。クルーピが少年時代を過ごしたクラブを去るにふさわしい最高の形だろう。

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    最大の強み

    ロリアンのローラン・アベルジェル主将が「動じない」と評するクルーピは、前線のどこででもプレーできる万能選手である。しかし、彼が最も効果を発揮するのは、とりわけ「偽の背番号9」やセカンドストライカーとしてだ。彼はターンしながらボールを受け取り、素早いパス交換で守備を崩すのが好きなのである。

    クルーピは若いながら非常にサッカーIQが高く、ボールのない時の動きやボールを持った時の判断力にそれが表れている。また、フィニッシャーとしても優れており、ゴールを目前にした場面でほとんどミスをしないことは、今季のリーグ・ドゥで対戦した相手DF陣が痛感しているとおりである。

    小柄ながら空中戦でも脅威となっており、天性の跳躍力とタイミングの良さで、背の高いマーカーを翻弄している。さらに、10メートル走では誰にも負けない速さと、それに匹敵する素早い足さばきを兼ね備えており、全力で走るクルーピを止めるのはほぼ不可能だ。

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    伸びしろ

    クルーピの唯一の大きな欠点は、右足に頼りすぎることだ。左サイドでプレーする際、常に内側に切り込む傾向があり、サイドラインを突破する攻撃を選択しないため、非常に予測されやすい。また、不得手な左足ならボールを素早くリリースできる状況でも得意な右足に持ち変えようとして、相手に読まれてしまうリスクがある。

    このことは、プレミアリーグで大きな問題になる可能性がある。というのも、ボールを保持できる時間が今までよりはるかに少なくなることが予想されるからだ。フィジカル面でも、イングランドの屈強なサッカーに対応するため、少し筋肉を付ける必要があるが、クルーピは意欲的な選手であり、90分間を通じて広範囲をカバーできる持久力を持っている。

  • Kylian Mbappe Real Madrid HICGetty

    キリアン・エンバペの再来か

    バカヨコによってエンバペと比較されたことはクルーピには迷惑だろう。エンバペはレアル・マドリーとフランス代表の双方でスター選手であり、同世代で最も優れた選手のひとりで、26歳にして伝説的な地位に値するキャリアを築いているからだ。実際、クルーピとしては、エンバペが到達した高みに近づくだけでも非常に素晴らしい成果と言えるだろう。

    しかし、2人には確かに共通点がある。まず、両者とも右足が非常に鋭く、あらゆる角度と距離からゴールネットを揺らす技術を持っている。エンバペはDFが一瞬でも自分にゴールを見せることを許せば容赦なく仕留めることが可能で、それによってキャリアを築いてきたが、クルーピも同じように冷徹なプレーができる能力を秘めている。

    クルーピはエンバペと同じくらい爆発的な加速力を持ち、ピッチの最も狭いエリアでも相手を突破できる自信ももっている。ボーンマスに移籍予定のこの若者は、まだエンバペほど強靭ではないが、現在の軌道を維持すれば、ワールドカップ優勝者のエンバペとフランスのフル代表で肩を並べる日も遠くないだろう。

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    今後への期待

    「子どものころからずっと、プレミアリーグでプレーすることを夢みてきた」と、すでに英語のレッスンを開始しているクルーピは、『ウエスト・フランス』紙でボーンマス加入の理由を説明するよう求められて言った。「ボーンマスは非常に魅力的なクラブだ。それに、2、3年かけてフィジカルと戦術を磨くためのプロジェクトが用意されている点も、本当に気に入った」。

    クルーピは自身のプレーの中で改善が必要な点を十分に認識しており、今や、次のレベルへ進むのに最適な監督の下でプレーすることとなっている。イラオラ監督は2023年6月にボーンマスの監督に就任して以来、降格争いをしていたチームをチャンピオンズリーグの出場権争いができるようにするなど、驚異的な成果を挙げている。ミロス・ケルケズやジャスティン・クライファートのような若手選手から、ライアン・クリスティーやルイス・クックのようなベテラン選手まで、多くの選手が監督の指導の下で成長を遂げている。

    イラオラ監督が自ら「ロックンロール」と表現するプレースタイルは、クルーピにもメリットをもたらすだろう。このスペイン出身監督の4-2-3-1のフォーメーションには、クルーピが先発イレブンになれる複数の道が開かれている。新しい国とヨーロッパ最大のリーグに適応し、成長するには時間がかかるだろうが、ボーンマスの大きな戦力となる可能性を秘めており、将来的にはエンバペのような道をたどって世界的スターになれるかもしれない。