「シティを断ってアーセナル」と、加入直後からファンに愛される理由を持っていたライスだが、彼の加入によってチームは本格的に別次元へ突入する。2023年9月のマンチェスター・ユナイテッド戦(3-1)、後半アディショナルタイムにネットを揺らした彼は「とにかく信じられないようなゴールだった。ユナイテッド相手に、96分に決めたんだからね。クレイジーだった。信じられないよ」と振り返っているが、本人にとってこの試合が飛躍のキッカケになったという。ライス加入から数カ月後、アルテタはこう語っている。
「彼の存在感が大好きだ。特別な何かを持っているね。彼と対戦したときにそれを実感したんだ。だからこそ、獲得できて本当に嬉しかったよ」
アルテタ・アーセナルはライス加入前まで、「美しいが脆い」というヴェンゲル時代のレッテルを剥がしきれないでいた。だが、ライスがクラブに最も必要だった「強さ」をもたらしている。その結果は、長年苦しみ続けたビッグチームとの対戦成績が物語っている。昨季から今季にかけて“ビッグ6”相手に1敗もしていないのはアーセナルだけだ。2024年4月、ライスはインタビューでビッグゲームについて語っている。
「僕自身もビッグゲームで本当に良いプレーが出来たと思うし、クラブとしてもそうだね。大事な試合で多くの勝ち点を獲得することができた。そういう試合では、奮起して活躍したいんだ。リヴァプールのようにね。彼らの試合はカオスだ。トレント・アレクサンダー=アーノルドが常に背後を狙い、チームでセカンドボールを拾って二次攻撃を仕掛け、それが第2段階、第3段階、第4段階と進んでいく。それをひたすら繰り返すんだ。そしてアンフィールドでは、吸い込まれるようにゴールが決まる。でも、僕らも彼ら相手に素晴らしいゲームはできたと思うよ」
キャリアで400試合以上の出場を誇るライスだが、ここへ来てさらなる成長を続けている。2023-24シーズンは公式戦7ゴール10アシスト、いずれもキャリアハイの記録だ。トーマス・パーティの存在によりインサイドハーフでの起用が増加すると、これまで以上に積極的にゴールに関わるようになっている。アルテタの起用に見事に応え、今ではボックス内でストライカーのようにクロスに合わせるのが当たり前になっている。そうした進化と役割を、本人も気に入っているようだ。『CBS Sports』で語る。
「(攻撃的な役割は)大好きだよ。8番としてプレーして、ゴールやアシストを決める能力があると感じている。必要なのは自分自身を信じること、自信を持つことだ。加入した当時は6番で多くプレーしたけど、そのシーズン終盤に8番へ移った。開幕時に監督と話し合ったんだ。彼は『もっと多くのことができると感じているんだろ? 運動能力が高く強靭で、左足でも右足でもゴールを奪えるのは知っているんだ』と言ってきた。彼が自信を与えてくれたんだ」
「ボールを奪って、それをキープしながら、チームメイトのために何かを起こすのが大好きだよ。今のところ、8番は自分にあっていると思う」
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