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Rice Vieira Arsenal heir GFXGetty/GOAL

デクラン・ライスという「カリスマ」:アーセナルが20年待ち望んだヴィエラの“後継者”

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パトリック・ヴィエラがアーセナルを去ったのは2005年。伝説的な「インビンシブルズ」のキャプテンが退団して以降、アーセナルは常に偉大な主将の“後継者”が必要だと言われ続けてきた。だが、心身ともに世代最高の選手の穴を埋めるのは、決して簡単ではない。偉大な主将を作り上げたアーセン・ヴェンゲルでさえ、最後まで彼の不在に苦しんでいる。

それでもあれから20年、アーセナルはついに正当な“後継者”を見つけた。2023年夏、1億500万ポンドという移籍金が物議を醸したデクラン・ライスは、今や「俺たちは半額で手に入れた」と歌われるほどサポーターの信頼を獲得した。彼のプレーとカリスマは、確かにあのレジェンドと並ぶほどの輝きを放っている。

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  • West Ham United v Leeds United - Premier LeagueGetty Images Sport

    驚異的な成長

    ライスがデビューした当時、彼がこれほどの選手になると想像できた人は多くないだろう。チェルシーのトップチームに上がれずウェストハムユースへ加入し、2017年5月にトップチームデビューを飾ったが、いわゆる守備的MFとして平凡な選手との評価だった。彼がユース年代でアイルランド代表を選択したのも、イングランド代表から声がかからなかったことも要因の1つだ。

    しかし、そこから数年間の成長はまさに驚異的だった。恵まれたフィジカルを軸に技術を磨き、ただのボールハンターからプレーメーカー、そしてボックス・トゥ・ボックスのモンスターへと変貌を遂げている。また当時のウェストハムが降格候補だったことは、彼のメンタル面の成長を大いに助けている。ライスは2022年、『HYPEBEAST』でこう語っている。

    「おそらく、最も困難だったのは2018-19シーズンだね。リヴァプールに0-4で負けた試合で、僕はハーフタイムで交代させられた。次の2試合はメンバー外だ。僕はレンタル移籍を希望したけど、これも却下された。こういう苦しい時期は、45分間の出来が悪かっただけで『自分には向いていないかも』と思ってしまう。それでも次のエヴァートン戦でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれ、それからは後ろを振り返ることはなかったね。自分のメンタルと能力を信じるだけだった」

    そして彼の特徴の1つとして、自分の能力とポテンシャルを冷静かつ客観的に把握できていること。『スカイスポーツ』のインタビューでは、「僕はもう単なる守備的MFじゃない。以前には4バックの前に居座っているだけというレッテルも貼られた。でも今は、上下に動き回って攻撃をしかけ、チームを助けるボックス・トゥ・ボックスの選手として自分自身を評価したいね」と語っている。

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  • ACF Fiorentina v West Ham United FC - UEFA Europa Conference League Final 2022/23Getty Images Sport

    1億ポンドプレイヤーに

    そしてライスは2022年、デビュー時には残留争いを強いられていたウェストハムをヨーロッパリーグの準決勝へ導いている。その1カ月後には、マーク・ノーブルの引退に伴い23歳という若さでキャプテンに就任。翌シーズンはカンファレンスリーグに参戦すると、クラブに43年ぶりとなる悲願のタイトルをもたらしている。あの優勝は、彼なしでは絶対にありえなかった。

    この時にはイングランド代表でも絶対的な存在となり、母国でのEURO2020準優勝やカタール・ワールドカップにも出場。ウェストハムが彼の評価額を1億ポンド以上に設定したのは、彼を知るものであれば正当なものだっただろう。

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  • Declan Rice Arsenal 2023-24Getty Images

    アーセナルの「本気」

    2023年夏、激化したライス争奪戦で頭1つ抜けていたのは2チームと言われていた。プレミアリーグ王者だったマンチェスター・シティと、ブンデスリーガの強豪バイエルン・ミュンヘンだ。特に後者は、当時の指揮官トーマス・トゥヘルが電話や直接訪問で話し合いを行っている。一方で本人はイングランドに残ることを希望していたため、マンチェスター・Cが最有力候補とも見られていた。

    しかし本人は『The Athletic』の取材に対し、マンチェスター・Cよりもアーセナルの方のプロジェクトの方が「よりエキサイティングだ」とコメント。当時もマンチェスター・Cとの熾烈な争いの末にタイトルを逃していたアーセナルは、このイングランド最高の才能を絶対に逃すまいと、アルテタや当時のエドゥSDを筆頭に、あらゆる努力を水面下で行っている。

    また、支払った移籍金からも彼らの「本気」が伺える。アーセナルはこれまで、5000万ポンド以上の移籍金を支払ったのはベン・ホワイト(5000万ポンド)、ピエール=エメリク・オーバメヤン(6500万ポンド)、カイ・ハヴァーツ(6500万ポンド)、そしてニコラ・ペペ(7200万ポンド)の4人だけだった。だが、ライスの獲得に支払ったのは1億500万ポンド。金額は一気に9桁に跳ね上がり、もちろんクラブ史上最高額だ。それほどライスという存在に賭けていたと言える。

  • FBL-ENG-PR-ARSENAL-MAN UTDAFP

    止まらない進化

    「シティを断ってアーセナル」と、加入直後からファンに愛される理由を持っていたライスだが、彼の加入によってチームは本格的に別次元へ突入する。2023年9月のマンチェスター・ユナイテッド戦(3-1)、後半アディショナルタイムにネットを揺らした彼は「とにかく信じられないようなゴールだった。ユナイテッド相手に、96分に決めたんだからね。クレイジーだった。信じられないよ」と振り返っているが、本人にとってこの試合が飛躍のキッカケになったという。ライス加入から数カ月後、アルテタはこう語っている。

    「彼の存在感が大好きだ。特別な何かを持っているね。彼と対戦したときにそれを実感したんだ。だからこそ、獲得できて本当に嬉しかったよ」

    アルテタ・アーセナルはライス加入前まで、「美しいが脆い」というヴェンゲル時代のレッテルを剥がしきれないでいた。だが、ライスがクラブに最も必要だった「強さ」をもたらしている。その結果は、長年苦しみ続けたビッグチームとの対戦成績が物語っている。昨季から今季にかけて“ビッグ6”相手に1敗もしていないのはアーセナルだけだ。2024年4月、ライスはインタビューでビッグゲームについて語っている。

    「僕自身もビッグゲームで本当に良いプレーが出来たと思うし、クラブとしてもそうだね。大事な試合で多くの勝ち点を獲得することができた。そういう試合では、奮起して活躍したいんだ。リヴァプールのようにね。彼らの試合はカオスだ。トレント・アレクサンダー=アーノルドが常に背後を狙い、チームでセカンドボールを拾って二次攻撃を仕掛け、それが第2段階、第3段階、第4段階と進んでいく。それをひたすら繰り返すんだ。そしてアンフィールドでは、吸い込まれるようにゴールが決まる。でも、僕らも彼ら相手に素晴らしいゲームはできたと思うよ」

    キャリアで400試合以上の出場を誇るライスだが、ここへ来てさらなる成長を続けている。2023-24シーズンは公式戦7ゴール10アシスト、いずれもキャリアハイの記録だ。トーマス・パーティの存在によりインサイドハーフでの起用が増加すると、これまで以上に積極的にゴールに関わるようになっている。アルテタの起用に見事に応え、今ではボックス内でストライカーのようにクロスに合わせるのが当たり前になっている。そうした進化と役割を、本人も気に入っているようだ。『CBS Sports』で語る。

    「(攻撃的な役割は)大好きだよ。8番としてプレーして、ゴールやアシストを決める能力があると感じている。必要なのは自分自身を信じること、自信を持つことだ。加入した当時は6番で多くプレーしたけど、そのシーズン終盤に8番へ移った。開幕時に監督と話し合ったんだ。彼は『もっと多くのことができると感じているんだろ? 運動能力が高く強靭で、左足でも右足でもゴールを奪えるのは知っているんだ』と言ってきた。彼が自信を与えてくれたんだ」

    「ボールを奪って、それをキープしながら、チームメイトのために何かを起こすのが大好きだよ。今のところ、8番は自分にあっていると思う」

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  • Arsenal FC v Real Madrid C.F. - UEFA Champions League 2024/25 Quarter Final First LegGetty Images Sport

    伝説の一夜

    そしてライスが圧倒的なカリスマを持つ存在へと昇華したのは、やはりチャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグだろう。王者レアル・マドリー相手に叩き込んだあの2つのフリーキックは、今後何十年にもわたって語り継がれるはずだ。特に2本目が決まった後、エミレーツ・スタジアムの雰囲気は言葉に出来ないほどだった。サポーターは感情を爆発させ、前体制では「静か」と揶揄されたスタジアムに轟音が響き渡った。その熱狂を生み出したのは、他でもないライスである。

    もちろん技術的にもとんでもないFKだったが、アーセナルにとっては別の意味でも大きなゴールだった。直近3年間はプレミアリーグで最も安定した成績を残してきたが、タイトルに届かずもどかしい日々を送っていたチームにとって、真の意味で「強豪チーム」と呼べるにふさわしい勝利を掴んだからである。あの理不尽なゴールは、クラブを一歩前へと進めるものだった。

  • TOPSHOT-FBL-ENG-PR-ARSENAL-BRENTFORDAFP

    “後継者”

    選手としては間違いなく世界最高峰の選手だが、未だ主要なトロフィーはカンファレンスリーグだけ。だが、彼はこのまま終わることはないだろう。年齢を重ねるごとに成長してきた26歳は、今やアーセナルサポーターにとっての新たなアイコンとなりつつある。彼の飛躍とともにチームも成長を続け、ついにヨーロッパの舞台でも「優勝候補」の一角に数えられるまでになった。

    仮に今季アーセナルがビッグイヤーを獲得すれば、バロンドールを手にするのは誰だろうか? もちろん、ライスの名前は真っ先に上がるはずだ。まだ準々決勝の途中であり、並み居る強豪が残る今季のチャンピオンズリーグを制すのは、彼にとってもキャリアで最大の挑戦となる。それでも、今の彼とアーセナルにはそう期待できるだけのものがある。そしてたとえ今季も無冠に終わったとしても、やや停滞気味だったチームが前に進んだことは間違いなく、来季以降はチャンピオンズリーグに加えてプレミアリーグのタイトルに本当の意味でも挑戦できるだろう。

    そしてそうした栄光を掴むことができれば、ライスは真の意味で「レジェンド」と呼ばれるようになるだろう。アーセナルが20年も待ち望んだヴィエラの正当な“後継者”として、彼の名前が歴史に刻まれる日は遠くない。そう確信させるほどのカリスマが、今の彼にはある。

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