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ダニ・オルモはペップにとって最適な選手に。マン・Cがスペイン代表のスターを最優先の補強候補とすべき理由

ユーロ2024準々決勝スペイン対ドイツで、開始5分もしないうちにトニ・クロースとペドリが激しく接触した時、スペインのベンチでは皆が一斉に息をのんだ。バルセロナのスター選手は必死に痛みをこらえようとしていたが、どうしようもなく号泣し、シュトゥットガルトのスタジアムから去ることとなった。

ペドリに代わってピッチに立ったのはダニ・オルモだった。試合前、2人の攻撃的MFのどちらを起用するかはルイス・デ・ラ・フエンテ監督にとって最も難しい決断だった。だがオルモは、最初から自分が先発で選ばれるべきだったことを証明しようと明らかにやる気満々だった。前半45分を活発に動きまわったRBライプツィヒのスターは、ハーフタイムが明けてすぐ、試合の流れを変える働きをした。

ラミン・ヤマルがお手本となるような見事なアシストをした。ワイドのスペースをドリブルで駆けあがると、ペナルティーエリアの端から平行なパスを通したのだ。そこへ走りこんできたオルモがゴールの下隅に流しこんで見事な初ゴールを決めた。彼の活躍はそれにとどまらず、延長戦も残りわずかとなった時、最後の魔法を発揮した。高くあげたクロスがミケル・メリーノの頭にドンピシャで合い、決勝点となったのである。

オルモのプレーは明らかなメッセージを示した。確かに、スペインの神童の大会は終わったかもしれない。だが、状況はそれまでと変わらなかった。スペイン代表は他国に差をつけて、ユーロ2024で最高のチームであり続けている。

  • Spain's Dani OlmoGetty Images

    フランスを沈める

    ドイツ戦で試合を決めたオルモのプレーは、それまでの大会最高のシーンと言ってよいかもしれないが、この夏はオルモの評判を変える夏となった。ドイツを破る決定的なプレーをした後、オルモは準決勝でも同じように大活躍したのだ。

    誰にもどうしようもできないヤマルのゴールで1対1の同点に追いついた後、前半のうちに試合を決めたのがオルモだった。何がどうなったのかよくわからない、だが間違いなく美しいゴールだった。ヘスス・ナバスのクロスは相手にクリアされかけたが、ルーズボールを拾ったオルモは見事すぎるファーストタッチでボールを受けると、セカンドタッチでオーレリアン・チュアメニをかわした。直後に極上のテクニックで放たれた鋭いシュートは、ジュール・クンデをかすめてゴール下隅に吸いこまれた。

    UEFAがこのゴールをオウンゴールではなくオルモのゴールであると認定するのに少し時間はかかったが、最終的にオルモのゴールであると認められた。今大会3得点目となり、他に2アシストを記録していることもあって、ゴールデン・ブーツ争いのトップに踊り出た。決勝で何が起こるかわからないにせよ、今大会のベスト11に選ばれることは確実であり、最高殊勲選手争いにも加わるかもしれない。

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  • Dani Olmo RB Leipzig 2023-24Getty Images

    人生最大の夏

    そして、ドイツでの大会が終わったとしても、オルモの名前が今後数週間ヨーロッパのサッカーファンの口にのぼりつづける可能性は高い。ライプツィヒに在籍して4年半、そろそろ新天地への移籍があるかもしれないのだ。昨年の夏にも噂はあったが、1度の移籍期間でドミニク・ソボスライ、クリストファー・エンクンク、ヨシュコ・グヴァルディオルを失ったライプツィヒがもう1シーズン、オルモをキープしておきたいと切望したことは理解できる。そうしてオルモは2023年6月に早々と契約を更新した。

    その時彼が示した忠誠心は、今後の数週間に多くのトップクラブの関心を引くという意味で、大いに報われることだろう。7月20日に満了となるオルモの契約には6,000万ユーロ(約103億円)の契約解除条項があるが、The Athleticの報道によると、期限を過ぎた後であっても、提示価格に見合う取引は受け入れられる可能性が高いようだ。

    この話は、オルモを強く追い求めるクラブの耳には心地よく響くことだろう。その中にはマンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘン、バルセロナといった名前があがっている。オルモがこうしたクラブから注目されているのは、彼がその素晴らしいキャリアを通して、常に型にはまらない生き方をしようとしてきたことが報われているにすぎない。

  • Dani Olmo Dinamo Zagreb 2023Getty Images

    特異なルートでトップへ

    オルモが、よくある道をたどってトップにたどり着くことを好まないことが初めて示されたのは、まだ10代の頃だった。当時、オルモはバルセロナの有名なラ・マシアのアカデミーで将来有望な宝石とみなされていたひとりだった。各年代のチームでトップスコアラーだったのである。

    16歳になって、チームを去ることを決め、クラブや友人たちを驚かせた。しかも、移籍先がいわゆる「ビッグ」クラブではなかった。オルモが選んだのはディナモ・ザグレブだったのだ。2015年に自身のこの決定について、こう語っている。

    「僕の年齢では、ディナモほど多くのチャンスをもらえそうなクラブは他になかった」と、クロアチアの日刊紙『ユータルニ・リスト』で言ったのだ。

    「他のところに行っていたら、またはラ・マシアでもこんなに速く成長できなかったと思う。バルセロナでチームメイトだった友人たちは最初は驚いたけど、ディナモへ行くという僕の決心が正しいことを理解してくれた。僕はシニアでプレーしていたけど、彼らはシニアデビューできたとしても、2、3年は待たなければならなかった」

    オルモは、それまでのディナモ出身選手のサクセスストーリーのいくつかに影響されたことも述べている。エドゥアルド・ダ・シルヴァやルカ・モドリッチ、マテオ・コヴァチッチといった選手たちは、クロアチアの首都のチームでサッカー教育を受けた後、超大型移籍を果たしていた。

    この移籍が賢明だったことは証明されている。まだ10代のうちにトップチームに昇格したオルモは、バルセロナでメディアに激しく追い回されることなく、多くの時間をテクニックを磨くことに費やせたのだった。

    2020年になると、バルセロナはオルモを何とかしてカンプ・ノウに戻そうとしてきた。だがまたしてもオルモは普通とは違う決断をし、その年の1月ライプツィヒと契約した。その理由はディナモに加入した時と同じで、ライプツィヒが「若い才能を信頼してくれる」からだという。

  • Dani Olmo RB Leipzig 2023-24Getty Images

    次のステップへ

    その後、オルモはライプツィヒでもスペイン代表でも活躍した。ケガで短期間チームを離れることはあっても、ライプツィヒの監督は誰もみなオルモを高く評価し、オルモは2022年と2023年のライプツィヒのDFBポカール制覇や、加入したばかりのシーズンでのクラブ史上初のチャンピオンズリーグ準決勝進出にも貢献した。

    代表でも同じように活躍した。ルイス・エンリケ元監督と現在のデ・ラ・フエンテ監督は、必ずしも代表で目立った活躍をしていたわけではないオルモを必ず代表に選んだ。これには彼の謙虚な性格が関係しているかもしれない。それまでの、大きなニュースとなるような移籍からは距離を取るという姿勢から分かるように、オルモは決して派手好きではない。

    だが、ここ数シーズン、ライプツィヒのチームメイトの多くがキャリアの次のステップへ向かうのを見てきたオルモが、自身の姿勢を変える可能性はある。The Athleticの報道によると、オルモは昨年の夏、ピッチ外での自身の評判を高めるべく、トップレベルのPR会社と契約したという。

    ピッチの上では、すでに成功への道を確実に進もうとしているのは明らかだ。あらゆるクラブが彼を獲得しようと争っているが、オルモが真に優れたMFになりたいと思うのならば、最も正しい選択と思われる移籍先はただひとつ、マンチェスター・シティである。

  • Pepp-Guardiola(C)GettyImages

    ペップのお気に入りになれる素材

    ペップ・グアルディオラ監督もオルモの加入を喜ぶだろう。2019年、マンチェスター・Cは大いにオルモに関心があると言われ、チャンピオンズリーグのグルーブステージでディナモを破った後、グアルディオラ監督はオルモを大いに褒めた。

    「彼は素晴らしい選手だ。もちろん彼には輝かしい未来がある」と、監督は言った。

    「今日の彼のパフォーマンスがその証拠だ。彼は信じられないほど素晴らしい。ヨーロッパ最強のリーグでもプレーできると私は確信している」

    その試合以降、オルモは飛躍的に成長した。彼の並外れた技術と戦術的能力が合わされば、ボールがある時もない時もグアルディオラ監督が求める複雑な要求に完璧に応えられるだろう。

    オルモは何をするにしても大抵トップクラスのレベルにあり、ボールをスムーズに運んだり、ゴールの匂いをさせたり、守備ラインから攻撃ラインへのパスで敵を切り裂いたりできる。基本的に前線のどこででもプレー可能で、中盤の幅広い役割をこなせることもマンチェスター・Cが注目する点だ。ライプツィヒにいたどの選手もそうであるように、オルモはプレスのかけ方もよくわかっている。

  • Dani Olmo Man City 2023-24GOAL

    価値ある選手

    エティハド・スタジアムに彼のための空きがあるのも明らかだ。ケヴィン・デ・ブライネの力は衰えつつあり、ベルナルド・シウヴァとの現行の契約はあと2年しか残っていない。現代において、マンチェスター・Cが国内で圧倒的な力を誇っている主な理由のひとつは、主力選手の力が衰えてきたことを気づかれる前に、その代わりとなる選手を準備できることにある。

    だが、マンチェスター・Cが行ってきた独特の補強をもってしても、この夏何もしなければ中盤に問題が起こる可能性がある。2年前4,500万ポンド(約92億円)という高額を費やして獲得したカルヴァン・フィリップスへの投資は悲惨なものとなり、昨年の夏に5,300万ポンド(約108億円)をかけたマテウス・ヌネスも、チームが必要とするレベルには至っていない。

    昨シーズン、フィル・フォーデンがより中心的な役割を担うようになったとは言え、デ・ブライネ監督の肩の荷は軽くなっていない。マンチェスター・Cは、とりわけケガ人が多いせいで相変わらず中盤の層が薄いようだ。早急に手を打つ必要があるとは言え、オルモはそんな懸念を大幅に軽くすることができるだろう。理想的には、契約満了前に契約解除条項を発動させるべきである。

    もしバイエルンのようなチームがオルモの獲得競争に加わるようなことになれば、高額の費用が飛び交う争いに巻きこまれることになる可能性がある。勝つ可能性の高い戦いだとしても、ぐずぐずする必要はないはずだ。オルモがマンチェスター・Cに完璧にフィットすることは間違いない。