フットボールの世界はたった数カ月で大きく変わる。今年4月、チェルシーはトップ5フィニッシュへ向けて苦戦を強いられており、エンツォ・マレスカ監督は厳しい批判にさらされていた。
しかしそれからたった4カ月で、チェルシーは「世界一」の称号を含む2つのトロフィーをキャビネットに飾り、マレスカの評価は過去最高に達した。移籍市場でも再び活発な動きを見せ、問題点を整理しつつ余剰戦力を整理。新シーズン開幕を控えた今、この魅力的なチームには大きな期待が寄せられている。
Getty/GOALフットボールの世界はたった数カ月で大きく変わる。今年4月、チェルシーはトップ5フィニッシュへ向けて苦戦を強いられており、エンツォ・マレスカ監督は厳しい批判にさらされていた。
しかしそれからたった4カ月で、チェルシーは「世界一」の称号を含む2つのトロフィーをキャビネットに飾り、マレスカの評価は過去最高に達した。移籍市場でも再び活発な動きを見せ、問題点を整理しつつ余剰戦力を整理。新シーズン開幕を控えた今、この魅力的なチームには大きな期待が寄せられている。
GOAL新オーナー就任後、これほどポジティブな雰囲気は初めてだ。昨季はマレスカ曰く「予定よりかなり早く」チャンピオンズリーグ出場権を獲得し、カンファレンスリーグ優勝も達成。そして様々な意味で注目を集めたクラブワールドカップで、欧州王者パリ・サンジェルマンを撃破し「予想外」の優勝を達成している。パフォーマンス自体も素晴らしく、特にPSG戦の圧勝は全世界に衝撃を与えた。
今、このクラブはリーグ内でも確固たる地位を築き上げ、ファンも「あるべき姿に戻った」と大満足だろう。クラブ周辺にはポジティブなムードが漂っており、これから始まる新シーズンにもワクワクしているはずだ。
Getty Images新オーナー就任後のチェルシーは、移籍市場での「散財」が「正当に」批判されてきた。このアプローチ自体は今夏も変わっていない。しかし過去の教訓を活かし、よりターゲット選定は洗練されている。また売却時にも高額を回収できる構造が出来上がりつつある。若手に焦点を当てた“チェルシーモデル”は着実に成果を上げているのだ。
今夏はリアム・デラップ(イプスウィッチ)、ジョアン・ペドロ(ブライトン)の獲得に9000万ポンドを投資。イングランド注目のウインガー、ジェイミー・ギッテンスにブラジルの超新星エステヴァン・ウィリアンと、将来が明るいアタッカーをさらに加えた。しかしこれにはとどまらず、シャビ・シモンズ(RBライプツィヒ)やアレハンドロ・ガルナチョ(マンチェスター・ユナイテッド)の獲得に動いていることが伝えられている。一方で中盤では、ダリオ・エスーゴ獲得に関して事前合意を取り付けた。守備陣では、大注目の19歳オランダ代表DFヨレル・ハトを獲得している。一方でレヴィ・コルウィルが前十字靭帯断裂の重傷を負ったため、代役確保の可能性もあるようだ。
すでに選手獲得へ2億5000万ポンド近くを投じているチェルシーだが、その支出を放出で賄っている。最も注目すべきは、ノニ・マドゥエケをアーセナルへ5200万ポンドで売却したこと。さらにジョアン・フェリックス、キアナン・デューズバリー=ホールは獲得に費やした金額のほぼ全額を回収し、ジョルジェ・ペトロヴィッチ(ボーンマス)は2500万ポンドとほぼ倍額で放出。バシール・ハンフリーズ、アルマンド・ブロヤ(共にバーンリー)、レスリー・ウゴチュク(サウサンプトン)を計5500万ポンドで売却するなど、紙面上の収支を見れば驚異的な夏となっている。
しかし、ラヒーム・スターリング、ベン・チルウェル、アクセル・ディサシ、クリストファー・エンクンク、カーニー・チュクエメカ、レナト・ベイガの放出は未だ進んでいない。この夏まだまだやるべきことは多そうだ。
GOAL今夏のクラブワールドカップを優勝したことで、チェルシーはプレシーズンの日程を短縮。大会終了後に3週間の休暇を取ったが、これは懸命な判断だろう。さらに遠征はせず、9日にレヴァークーゼン(2-0)と、10日にミラン(4-1)と本拠地スタンフォード・ブリッジで対戦した。この2試合ではエステヴァンを筆頭に新加入選手が輝きを放ち、ジョアン・ペドロは加入4試合で5ゴール目をマーク。デラップもゴールを奪っている。この2試合だけでチームを測ることはできないが、現時点で仕上がりは順調なように感じさせている。
AFPマレスカは最近、Youtubeチャンネル『Men in Blazers』で「1年前はこのリーグを支配しているチームとは遥かに離れていた。しかし今は、非常に近づいていると思う。さらに改善を続けて、タイトル争いに挑戦できることを願っている」と語った。昨季途中に「優勝争いにはほど遠い」と何度も強調していた時と比べると、チーム全体が自信を深めている。
マレスカは就任以降、チームは様々な役割をこなす選手を複数必要とする流動的な4-2-3-1を採用。サイドバックや中盤、ウイングがピッチの様々なポジションへと移動するこのシステムは、今季も大きな変更はなさそうだ。ジョアン・ペドロやハトの補強はその表れ。絶対的エースであるコール・パーマーの後ろに強固な中盤2枚を並べるうえで、モイセス・カイセド、ロメオ・ラヴィア、エスーゴの3枚がいるのは心強いだろう。また噂されるシャビ・シモンズの移籍が決定すれば、パーマーとの併用によってチームはさらなる進化を遂げるかもしれない。
Getty Images Sport昨季開幕時点でも『GOAL』はモイセス・カイセドを推したが、今季も彼以外の候補は見つかりそうにない。
DFラインの前で休みなく働き、驚異的な仕事量をこなす彼の存在によってチェルシーの守備は大幅に改善された。ボール奪取能力はもちろんだが、そのバランサーとしての感覚やビルドアップ時の配球も素晴らしく、今やロドリと並ぶ世界最高の守備的MFと言えるかもしれない。さらにコルウィルが長期離脱を強いられるため、経験の不足するハトらのサポートも彼が担当することになりそうだ。ますます替えの効かない存在になりそうだ。
Getty Images素晴らしい若手選手が溢れているチェルシーだが、その中でも「エステヴァン」という名前だけは覚えておいたほうがいい。これまでブラジルにいたため彼のプレーを実際に目にした人は多くないかもしれないが、パルメイラスの選手として出場したクラブワールドカップでの輝きは圧巻だった。特にチェルシー戦で奪ったゴールは驚異的である。そのチェルシーに合流した後も、デビューとなったレヴァークーゼン戦でもいきなりゴール。適応に時間がかからないことを証明している。
ブラジル出身アタッカーらしく、テクニックとスピードに恵まれ、またそのプレービジョンと決定力もハイレベル。まだ線は細いかもしれないが、プレミアリーグでも間違いなくインパクトを残せるはずだ。
Getty確かに昨季終盤は驚異的な強さを見せ、PSG相手の圧勝はチームに対する評価を劇的に変えるものだった。しかし、シーズンを通してリヴァプールやアーセナルと戦えるかどうかはまだ未知数でもある。マレスカは「チェルシーは常に勝利を目指し、タイトル獲得を狙うクラブだ。これが最低限の要求である。我々は挑戦する」と意気込んでいるものの、年間を通して安定した成績を残せるかは、彼らにとって大きなチャレンジとなる。
一方でファンにとっては、チャンピオンズリーグ出場権の獲得は最低限。そして昨季を上回る3位以内が現実的な目標になるだろう。またチャンピオンズリーグでも、準々決勝進出を達成できれば「成功」と言っていいはず。しかしこれほどの選手層を抱えていることもあり、国内カップ戦にはチャレンジすべきだ。
そんなチェルシーだが、彼らの「最大の敵」はなんといっても「過密日程による疲労」になりそうだ。
AFPでは最後に、これまで分析した結果に関係なく、チェルシーの2025-26シーズンで起き得るかもしれない大胆な予想を行ってみる。
シーズン最優秀選手:コール・パルマー
昨季苦しんだ時期もあったが、PSGを粉砕したあのパフォーマンスは、今季の大活躍を予感させるものであった。
期待外れ選手:リアム・デラップ
3000万ポンドを投じて獲得したものの、ジョアン・ペドロの大活躍によって先発を外れる可能性が高い。
最高の補強:シャビ・シモンズ
若手路線に合致しながらもすでに経験豊富なトッププレイヤー。加入すればチェルシーの攻撃を劇的に変化させる可能性を秘めている。
得点王:コール・パーマー
ストライカーを2人も獲得したが、やはりこのチーム最大の得点源は彼のままで変わらないだろう。
欧州カップ戦の結果:チャンピオンズリーグ準々決勝進出
欧州最高峰の舞台に復帰した彼らだが、若く経験の浅いチームにとってはベスト8進出は大成功だ。
リーグ順位:3位
昨季終盤の結果によって、確かな期待が持てるようになった。マンチェスター・シティを上回って終えられれば、非常に良いシーズンだったと振り返られるはずだ。