Antoine Semenyo Man City GFX 16:9Getty/GOAL

得点力抜群のセメンヨがマンチェスター・シティの試合の流れを変える存在になる理由:ハーランドの負担を軽減できる。

マンチェスター・Cはシーズン序盤からセメンヨ獲得に動いており、多くのファンや専門家を困惑させていた。ペップ・グアルディオラ監督のチームは表向き、FW陣が充実しているように見えたからだ。ジェレミー・ドクは今シーズン、決定力と魅惑的なプレーで監督とファンの心を掴み、ラヤン・シェルキも輝かしい瞬間を幾度となく見せていた。

サヴィーニョは決定力に課題はあるものの、控えの選手としては常に刺激的な選択肢であり、ベルナルド・シウヴァやオスカー・ボブといった、サイドに配置できる選手もマンチェスター・Cには数多く存在する。

しかしセメンヨは、そうした選手たちにはないものがある。アーリング・ハーランドの負担を軽減し、マンチェスター・Cの戦術をより予測不能にする、安定した得点力だ。

セメンヨはマンチェスター・Cの試合の流れを変える補強となる可能性を秘めている。今シーズンのタイトル争いを後押しするだけでなく、今後数年にわたってチームの戦術的なダイナミズムを変える存在となり得るのだ。

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    エティハドまでの道のりは過酷だった

    セメンヨの新たなチームメイトの大半は、20代前半、あるいはそれ以前からトップレベルでプレーし、ヨーロッパの名門アカデミーの出身である。ところがこのガーナ代表選手は、エティハド・スタジアムに至るまで、それとは全く異なる、はるかに過酷な道を歩んできた。アーセナルとトッテナムのトライアルを受けたが拒否され、ミルウォールでも合格基準に達しなかった。クリスタル・パレスはセメンヨの評価に8週間をかけたが、やはりノーだった。

    しかし元選手で監督のデイブ・ホッカデイは、そうした不合格となったトライアルのひとつで彼を観察し、選手としての素質を感じ取っていた。彼は『ジ・アスレチック』で、セメンヨの家族に会い、セメンヨ本人に対して、ロンドンのグリニッジにある自宅からスウィンドンへ移り、ウィルトシャー・スポーツ・アカデミーでスポーツ科学を学びながら、サウス・グロスターシャー・アンド・ストラウド・カレッジでプレーするよう勧めた経緯を語った。

    彼がある試合でブリストル・シティの若手選手たちを圧倒すると、ホッカデイはついにクラブを説得し、このFWを獲得させた。ノンリーグのバース・シティやリーグ2のニューポート・カウンティ、当時リーグ1だったサンダーランドへのレンタル移籍を経て、イングランドの2部リーグにあたるチャンピオンシップのサッカーに対応できる力を身につけ、ブリストルに戻った。復帰してすぐのシーズンに監督に就任したナイジェル・ピアソンは、セメンヨに非常にシンプルだが効果的な助言を与えた。「君の最大の武器は走力とシュートだ。だから走ってシュートだけすればいい!」。

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    世界に挑む

    セメンヨはその助言を受け入れ、翌シーズンにはリーグ戦で20得点に貢献した。さらに次のシーズンの半ばに1,000万ポンド(約21億円)でボーンマスに移籍する。

    「強い人間でなければならなかった」と、マンチェスター・Cに加入したセメンヨは、過酷な道のりを振り返った。

    「感情的にも精神的にも、本当に強くなる必要があった。家族や友人、婚約者がそばにいて、僕を励まし、常に背中を押してくれた。数多くの困難を乗り越えるため、自らをかなり追い込む必要があった。それが今の僕を作った。強く、恐れ知らずで、世界に挑む準備ができた人間になれた」

    世界に挑む——まさにそれをボーンマスで実現した。プレミアリーグで初めてのフルシーズンは8得点2アシストを記録し、昨シーズンは11得点5アシストだった。今シーズンは折り返しを待たずしてほぼそれに迫る成績を挙げており、10得点は、ハーランドやブレントフォードのイゴール・チアゴといったセンターフォワード2人に次ぐ数字である。

    つまりセメンヨは、ハーランド以外のマンチェスター・Cの全選手を上回る得点貢献力をもってチームに加入したのだ。その数字は他のウイングのFWを圧倒している。シェルキは7アシストが目立つが得点は2で、ドクは1得点4アシスト。ベルナルド・シウヴァ、オマル・マーモウシュ、サヴィーニョ、オスカー・ボブはプレミアリーグでいまだ無得点だ。

    フィル・フォーデンは7得点でハーランドとセメンヨに次ぐ得点者だが、最近のパフォーマンスは低迷している。マンチェスター・Cが直近3試合を無得点で引き分け、優勝争いでアーセナルに勝ち点6の差をつけられる中、精彩を欠いているのだ。

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    ハーランドの負担を減らす

    アーセナルが優勝の最有力候補であることに変わりはないものの、セメンヨの加入は、マンチェスター・Cがアーセナルを追撃する可能性を即座に高める。また、チャンピオンズリーグ制覇への期待にも拍車をかけるだろう。しかし彼の真の影響は長期的に現れるはずだ。かのノルウェー代表FWが沈黙させられても勝利を収められるよう、マンチェスター・Cのエースへの依存度を減らすことに貢献するに違いない。

    ハーランド加入前のグアルディオラ体制下でマンチェスター・Cが4度の優勝を果たした最大の強みは、得点源が多岐にわたるため相手チームが誰をマークすべきか判断できなかった点にある。セルヒオ・アグエロが決められなければ、ラヒーム・スターリングが決める。ガブリエウ・ジェズスがアグエロの代わりになることもあったし、そのジェズスが調子を落としてもレロイ・サネやリヤド・マフレズが常に頼りになった。

    2017-18シーズンにマンチェスター・Cが史上初の勝ち点100を達成した時、8得点以上を記録した選手が6人もいた。サネが10得点、ラヒーム・スターリングが18得点した裏で、セルヒオ・アグエロは21得点、ガブリエウ・ジェズスは13得点をあげていた。翌シーズンに勝ち点98で連覇を果たした際も、7得点以上を記録した選手は6人。サネが再び2桁得点を達成し、スターリングが17得点を挙げた一方、アグエロが21得点で再び得点王に輝いた。

    2019-20シーズン、リヴァプールに王座を明け渡した際には得点源がさらに分散して、6人の選手が11得点以上を記録したが、スターリングがアグエロを抜きチームの得点王となった。アグエロはマンチェスター・Cでの最終シーズンに、試合にほとんど出られないでいたが、6人の選手がリーグ戦で7得点以上を挙げ、マンチェスター・Cはタイトル奪還を果たした。

  • FBL-EUR-C1-MAN CITY-SCHALKEAFP

    スターリングやサネを彷彿とさせる

    2021-22シーズン、マンチェスター・Cはしばしばセンターフォワード不在で戦ったが、8人の選手が7得点以上を記録し、再び優勝を果たした。その夏にハーランドが加入して攻撃陣の構成が変わり、ハーランドが主に得点を担うこととなったが、それでも6人の選手が7得点以上を記録。マンチェスター・Cは3年連続優勝を達成し、三冠を成し遂げた。

    2023-24シーズンに7得点以上を記録した選手は5人に減ったが、フォーデンが19得点、フリアン・アルバレスが11得点、ロドリが8得点だった。昨シーズンになるとこのバランスは崩れ、7得点以上を記録した選手がわずか3人となった。昨年の11月初旬までを見ると、1試合で2つのオウンゴールを献上したバーンリーのマクシム・エステーヴが、リーグ戦におけるマンチェスター・Cの得点ランキングでハーランドに次ぐ2位となっている。その後フォーデンとタイアニ・ラインデルスが奮起したが、アタッキングサードでセメンヨのような冷徹さを発揮する選手の必要性が叫ばれていた。

    「我々は常に世界中の選手を観察している」と、セメンヨを獲得した後にマンチェスター・Cのスポーツディレクター、ウーゴ・ヴィアナは語った。

    「アントワーヌこそ我々が最も欲した選手だ。彼はプレミアリーグで通用することを証明している。謙虚で勤勉、プロ意識が高く、より優れた選手になることに完全に集中している。我々にとって理想的な存在だ。彼は圧倒的な才能を備えている。両足が使え、スピードとパワーがあり、常に試合に影響を与えるプレーをし、何より成長と発展の余地が十分にある。これから数週間、数カ月、数年かけて、アントワーヌがどんな選手に成長するか、楽しみにしている」

  • FBL-ENG-PR-BOURNEMOUTH-TOTTENHAMAFP

    どちらの足も同じくらい危険

    セメンヨの最大の強みのひとつは、どちらの足も技術が高く、左右どちらのウイングでも同じような効果を発揮できることである。ボーンマスでは、右サイドの攻撃的選手として出場した次の試合で、左サイドに配置されることもあった。試合中にサイドを交換することさえあり、例えば左サイドでスタートしたマンチェスター・ユナイテッド戦は4対4の激闘だったが、右サイドでルーク・ショーを翻弄して突破し、3カ月ぶりの得点を決めている。

    グアルディオラ監督は獲得した直後、彼が両足使いであることを指摘した。

    「右でも左でもプレーでき、両足を信じられないほど巧みに使う」と述べ、「過去数年間、ボーンマスで非凡な活躍を見せていた。ストライカーとしてもスピードを活かせる。プレミアリーグを熟知しており、多くのクラブが彼の獲得を望んだが、彼は我々を選んでくれた。感謝しかない」

    セメンヨの加入で最も影響を受けるのはサヴィーニョとオスカー・ボブだ。2人とも現在は負傷中だが、クラブはボブのレンタル移籍先を探している。サヴィーニョはサンダーランド戦で筋肉を損傷し、少なくとも2カ月は離脱する見込みだが、セメニヨの加入はマンチェスター・Cで最もスリリングな選手のひとり――エリア内に入るまでは――の終焉を意味する。

    サンダーランド戦で負傷する直前に立て続けに2度のチャンスを逃したことは、エティハドでのサヴィーニョの姿を象徴していた。DFを抜き去ってチャンスを作る能力は何度も見せながら、得点を決めることができないのだ。

  • Fulham v Manchester City - Premier LeagueGetty Images Sport

    サヴィーニョに残された時間はわずか

    サヴィーニョは、2024年の夏にフランスのトロワから加入して以来、全公式戦通算で5得点しか挙げておらず、そのうちプレミアリーグでの得点は1点のみである。昨シーズンは8アシストを記録したが、今シーズンはリーグ戦で1アシストにとどまり、リーグ戦でもチャンピオンズリーグでも得点を挙げられていない。得点したのはカラバオ・カップだけで、直近のブレントフォード戦での得点は大きなディフレクションに助けられたものだった。

    グアルディオラ監督はブレントフォード戦の後、こう語った。「確かに最後の決定力に関しては改善の余地があるが、私は常に、彼の仕事ぶりを評価している。とりわけ彼が常に全力でプレーし続ける姿勢は素晴らしい。時間をかけて最後の決定力を向上させれば、彼はトップクラスの選手になるだろう」。

    しかし、どんな言葉よりも行動が大事だ。マンチェスター・Cがセメンヨ獲得を決断したことは、サヴィーニョのチームでの残された時間が限られていることを意味する。サヴィーニョは夏にトッテナムが獲得オファーを出した際、移籍に興味を示していたが、マンチェスター・Cは代替選手を確保する必要があるとして拒否した。セメンヨがサヴィーニョの後継者と見なされるのは間違いない。かのブラジル代表選手と異なり、新加入選手の決定力に疑いの余地はないのだ。

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