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Anrie Chase, rising Stuttgart starGetty Images

追跡開始!アメリカと日本から注目されるシュトゥットガルトで急成長のチェイス・アンリ。彼はどちらの代表を選ぶのか?

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チェイス・アンリをフィールドで見分けるのは簡単だ。もちろん髪の毛も目立つのだが、本当に目立つのはそれだけではない。最初に目に入るのは速度とサイズの純粋な組み合わせ。身体は大きいのに動きはそれを感じさせない。センターバックとしては珍しい組み合わせであり、その組み合わせは通常、ディフェンダーが高いレベルに達することにつながっている。

まだ20歳のチェイスは、すでにシュトゥットガルトのトップチームでプレーしており、ブンデスリーガと欧州チャンピオンズリーグの両方で活躍している。彼はキリアン・エムバペやヴィニシウス・ジュニオールといった相手とCLの大舞台で対決したが、これはまだ彼にとっての始まりにしか過ぎない。

そして、必然的な質問に行き着くのだーー国際レベルでの次なるステップは?

チェイスは日本で生まれ米国で育ったが、人生の大半を日本で過ごし、どちらの国の代表でもプレーする資格がある。これまで彼は日本代表のみでプレーしてきたものの、米国男子代表を追っているなら、このような議論がどのように進むかは明白だ。シュトゥットガルトでの躍進以来、チェイスはアメリカのサッカー界で重要な話題となっている。そう、アメリカ代表のサポーターたちは、SNSでチェイスをマウリシオ・ポチェッティーノのチームでプレーさせようとする声を上げているのだ。

今のところ、チェイスはどちらに影響を受けたわけでもなさそうだ。育成年代の日本代表経験があるにもかかわらず、彼は最近アメリカ代表でプレーすることに対してオープンであることを明らかにした。しかし、まだ決定はしていないとしている。

「今はクラブのために全力を尽くすことにしか集中できません」と彼はGOAL Japanにも語っている。「今は自然に任せてどこに導かれるかを見ているところです」。

なぜアメリカと日本のファンはチェイスに興奮しているのか? そして、現実的に彼は今後数年間で国際的にどのような貢献ができるのか? GOAL USAが調査を開始する。

  • Real Madrid CF v VfB Stuttgart - UEFA Champions League 2024/25 League Phase MD1Getty Images Sport

    始まりの場所

    「選手は急激に成長する」というのはよくある言い回しだが、チェイスについてはまさにその言葉が当てはまる。彼はこのスポーツを始めてまだ10年も経っていない。日本人の母とアメリカ人の父の間に日本で生まれ、3歳の時にテキサスに移り、12歳までそこに住んでいた。

    テキサスに住んでいた間はバスケットボールなど他のアメリカンスポーツに惹かれており、サッカーに転向したのはそれより後だった。シュトゥットガルトの監督であるセバスティアン・ヘーネスは「実際(サッカーを始めるには)かなり遅いほうだ」と発言する。

    チェイスがサッカーを自分のスポーツとして選んだのは12歳の時だったが、能力を示すのに時間はかからなかった。10代半ばを迎えるころには、海外のクラブやJリーグのチームから興味を持たれていたが、自分がより快適に過ごせるヨーロッパの環境を選び、シュトゥットガルトにやってきた。

    「僕のレベルではJリーグではすぐに試合に出場できなかったでしょう。英語も話せますし、サッカーに集中できる環境にいたほうがいい、海外に行くことは悪くない考えだと思いました」と振り返っている。

    シュトゥットガルトでの生活を始めたチェイスは現在、このクラブにおける日本人選手の伝統に加わる最新メンバーだ。岡崎慎司や酒井高徳、浅野拓磨、そして遠藤航、伊藤洋輝といった日本代表選手の足跡を辿り、同クラブでブンデスリーガに出場した8人目の日本人選手となった。

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  • FBL-EUR-C1-JUVENTUS-STUTTGARTAFP

    大きな転機、ワイスコーチとの出会い

    すべての選手と同様、チェイスは持ち前の能力によって成長を続けている。しかし、それだけでは十分ではない。チェイスの成長には彼のために尽力するコーチが必要だった。

    現在バイエルン・ミュンヘンⅡのインディビデュアルコーチとして働くアメリカ生まれのナサニエル(ネイト)・ワイスがその人だ。以前シュトゥットガルトのテクニカル・コーチだったワイスは最初からチェイスに何か特別なものを感じており、二人はアメリカの出自やトレーニング後のワークアウトで絆を深め、サッカーを始める時期が遅かったことを補う努力をした。

    「他の選手たちは、彼より7年の経験がありましたが、この青年は上手くなりたいという思いでいっぱいでした」とワイスはスカイスポーツに語っている。「トレーニングをしないことは一度もありませんでした。私がいないときでも、彼は一人で外に出てトレーニングをしていました」。

    トレーニングには、プレッシャーに対処する方法も含まれていた。

    「最初、チームメートたちは彼が不十分だと彼に怒鳴っていました」とワイスは言う。「常に悪いパスを出してしまい、いつもプレッシャーを受けていました。うまくいっていなかったのです。でも、最終的には彼は追いつき、私の目の前で成長を見せました。振り返ると思わず鳥肌が立つほどです」。

    最終的にヘーネス監督もチェイスの才能を理解し、この若いディフェンダーに信頼を寄せるようになった。シュトゥットガルトのユースチームとリザーブチームでプレーし、今シーズン初めの昨年8月、フライブルクとの試合でブンデスリーガデビューを果たす。彼は徐々にスターティングラインナップにも食い込み始め、ウインターブレーク前までに12試合に出場しうち7試合で先発出場している。

    また、チャンピオンズリーグにも4試合に出場。アタランタ戦で先発し、ユヴェントスやレアル・マドリードとの試合では交代出場した。

  • stuttgart-anrie-chase-20241213©Taisei Iwamoto

    彼が成長できると信じられる理由

    シュトゥットガルトでのキャリア初期、チェイスのプレーは身体的な才能ありきだった。身長188cmのサイズからその特長は簡単に見て取れる。スピードも同様だ。これらの属性が彼をドイツにまで導いたが、技術面で埋めなければならない差は大きかった。

    しかし、ワイスが感銘を受けたのはその身体的な強さではない。何よりも向き合う姿勢(アティテュード)が際立っていたという。

    「選手にできるだけ速く100メートルを走るように指示すると、ほとんどの選手はそれが何を意味するか理解します」と彼は言う。「その選手たちに次のポゼッション練習で3分半の間集中するように言っても、『100%力を出す』という意味を本当に理解していません。でも、アンリは集中する方法や回復する方法、そのすべてを理解していました。いまの若い選手の中で本当にそれを理解している人は非常に少ないのですが、彼は理解していました。私はコーチングの際にアンリを例に出します。そういう選手こそ成功するのです」。

    チェイスにとって今最も重要なのは「一貫性」だろう。技術的な能力不足が頻繁に議論される一方で、チェイスはヨーロッパの主要5大リーグにおけるセンターバックの中で、パス成功率が上位13%(87パーセンタイル)に位置している。単に正確性だけでなく、パスの本数でも際立っており、成功したパスの数では上位36%(64パーセンタイル)に入っている。また、まだ20歳という若さながら、多くの守備指標では約50パーセンタイルに位置している。シュトゥットガルトのような強豪チームでプレーする選手を分析する場合、これらの指標はやや偏ることがあるとはいえ、注目に値する。

    彼が成長できると信じられる理由は十分にある。恵まれた体格と運動能力を持つチェイスは、足元のスキル、そして何よりも「考える力」を磨き続けているからだ。

    「現在、多くの選手がネイマールのようにドリブルできるCBになりたがっています」とワイスは言う。「みんな、あらゆる面で世界トップクラスになりたいと思っています。でも、もし若い選手が1つか2つのことに集中してそれを世界クラスのレベルに引き上げれば、トップに到達するチャンスが生まれるんです」。

    「アンリは、若い選手たちに1つか2つのことを卓越して行なうことに集中する大切さを教える良い例です。守備やヘディング、デュエル(1対1の勝負)において、世界クラスの能力を持っている。それが彼の武器。だから他の部分をきっちりとこなすことができれば、それで十分なんです」。

  • Niklas Sule Borussia Dortmund 2023-24Getty

    ワールドクラスのCBとの比較

    CBが大柄で力任せの守備者だった時代は過ぎ去った。このポジションは今や、より洗練され現代的になっている。しかし、根本的な役割として、守備者は守ることが最優先だ。チェイスの第一の仕事は、自分の持つ能力を活かして相手選手をゴールから遠ざけること。

    もちろん、彼のパス能力も大きな武器になり得る。パスに優れた大柄なCBは数多く存在し、彼が参考にできる選手も少なくない。ブンデスリーガにも手本となり得る選手がいる。それがニクラス・ズーレ(ドルトムント)だ。ズーレは約195cmあり、188cmのチェイスよりさらに大きな体格を持つ選手で、統計的にもエリート級のパス能力を誇る。万全の状態であれば守備で大きな存在感を発揮するだけでなく、ボール扱いにも優れている。彼はパス成功率94%を記録し、1試合あたり約85本のパスを試みている。ズーレのように冷静さを持った選手は、地道な守備の仕事と同じくらい貴重な存在だ。

    ズーレはブンデスリーガで5回の優勝、チャンピオンズリーグ優勝、そしてドイツ代表として49試合に出場した実績を持つ。「ワールドクラス」という評価には至らなかったとしても、その経歴は驚異的でチェイスがこのレベルに到達できれば、クラブでも代表でも彼を擁するチームはとてつもない守備者を手にすることになる。

    ズーレ以外では、マンチェスター・シティのジョン・ストーンズやマヌエル・アカンジのような、冷静さを持つ長身CBを手本にすることもできるだろう。しかし、彼が注目しているのは別の選手だ。それは「世界最高」と広く認められているリヴァプールのスター、フィルジル・ファン・ダイク。

    「Jリーグや海外のサッカーを見ていました」と彼はJ Sportsインタビューで語っている。「サッカーIQを上げるために、好きなCBの動きをじっくり観察し、彼らの動きを学びました。特に、リヴァプールのファン・ダイク。ヘディングがうまく、1対1でも負けず、ロングパスを出せて、すべてにおいて素晴らしい。プレミアリーグの試合をたくさん見ています」。

    もちろん、チェイスがそのレベルに到達するにはまだ長い道のりがある。しかし、身体能力と技術の両方に優れた選手の例は存在する。チェイスは技術的な部分ではまだ追いつく途中だが、日々成長しており、その姿にシュトゥットガルト内外の多くの人々が期待を寄せているのだ。

  • Borussia Mönchengladbach v VfB Stuttgart - BundesligaGetty Images Sport

    アメリカ代表、日本代表の視点から

    チェイスの現在の焦点はまだ国際舞台ではないが、それには正当な理由がある。彼はシュトゥットガルトでキャリアのブレイクスルーの真っ最中にあり、アメリカや日本の注目を集めている今も、成長を続けることを最優先にして取り組んでいるからだ。

    アメリカ代表側から見ると、チェイスはすでに競争が激しいCB陣に割って入る貴重な選手となる可能性がある。マーク・マッケンジー(トゥールーズ)、ティム・リーム(シャーロット)、クリス・リチャーズ(クリスタル・パレス)、オーストン・トラスティ(セルティック)、キャメロン・カーター=ヴィッカーズ(セルティック)、マイルズ・ロビンソン(シンシナティ)が競争に加わっているが、これらのCBのポジションはまだ確定されていない。チェイスがコミットすれば、彼はすぐにその競争に飛び込むことになるが、ポチェッティーノ監督はすでに「代表入りを懇願するつもりはない」と明言しており、二重国籍を持つ選手には話し合いの場を持つ意思があるとしている。

    「もし、その選手がチームを助け、強化できると本当に信じているならば、その状況に100%関与するつもりだ」とポチェッティーノは昨年11月に語っている。「具体的な名前は挙げないが、他の選手にもアプローチして我々とコミットしたいかどうかを見極めるために取り組んでいる」。

    日本の視点から見ると、チェイスが年代別代表で日本代表に貢献してきた経歴を武器にする。彼はU-17から選出され、U-20、U-23日本代表でもプレーしている。また、A代表の森保一監督からも賞賛を受けている。

    両国は彼の成長を注視し続けるが、最終的にはチェイス自身の意思に委ねられるだろう。彼はこれまで両国に対して前向きな姿勢を示しているが、2026年のワールドカップが近づくなかで、どちらを選ぶか公には明らかにしていない。一つ確実なことは、最終的にチェイスを獲得する代表チームは、ワイスが「大きな可能性を秘めた」と断言する、素晴らしい才能あるCBを迎えることになる。

    「2年前にはこれは信じられないことでした」とワイスは言う。「彼が当時いた場所から今いる場所へのステップは、これから頂点に向かうステップよりもはるかに大きかった。12歳で白紙の状態でスタートした少年が、20歳でチャンピオンズリーグに出場しているんです。本当に素晴らしい物語だと思います。心に思い描ける限り、彼はどこまでも遠くへ行けると信じています」。

    アメリカか日本か? チェイス(追跡)は確かに始まっている。

  • チェイス・アンリ本人が語る