Raphinha Declan Rice Conor Gallagher GFXGetty/GOAL

下位クラブのスターにも日の目を!プレミアリーグ「ビッグ6」以外のベストイレブン

劇的なクライマックスでプレミアリーグが終了し、『GOAL』では先日リーグのベストイレブンを選出した。

やはり、選手の大半は限られたクラブから選出される傾向にある。今シーズン選出された11人のうち10人は、「ビッグ6」として知られるようになったマンチェスター・シティ、リヴァプール、チェルシー、トッテナム、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッドの6クラブのいずれかに所属している。

この6クラブが揃って上位6位以内でシーズンを終えたのは2019年以来のことだ(しかも全く同じ順位だ)。つまり、11人を選出しようとすると、昨シーズンに比べてずっとビッグクラブの独占傾向が強くなってしまうということだ。

そこで『GOAL』ではあえて「ビッグ6」の選手たちを選ばず、下位で活躍する選手たちが日の目を浴びることのできるようなベストイレブンを選出した。

  • Jose Sa Wolves 2021-22Getty Images

    GK:ジョゼ・サ(ウォルヴァーハンプトン)

    ウルヴスで今シーズン輝かしいパフォーマンスを発揮したのは夏に加入したサだ。彼の活躍が功を奏し、ブルーノ・ラージ監督率いるチームはターンオーバー時でもなんとか切り抜けることができたのだ。

    サは合計セーブ数でプレミアリーグ4位(120回)につけ、セーブ率では1位(79.3%)だ。最も印象的なのは、被シュートに対する失点期待値(ゴールキーパーがシュートを防ぐ機会がどれほどあるかを示す)から実際の失点数を引いた値で1位に輝いたことだ。この数値は、ゴールキーパーが平均よりどれほど秀でたパフォーマンスを挙げたかを示す指標だ。

    この統計指標はゴールキーパーにとっての「xG」(※(訳注)チャンス創出数等から割り出されたクラブの得点期待値)に相当すると考えてよい。サの+9.32という数値は2位のダビド・デ・ヘアの+6.7を大幅に上回っている。この数値から言えるのは、サがウルヴスのゴールを9点分以上守っているということだ。

    さらに、サは優れたスイーパーとしての役割も果たしている。ペナルティエリアでの守備的アクションの合計数では3位(アリソン・ベッカーとエデルソンに次ぐ)につけている。

  • 広告
  • Matty Cash Aston Villa 2021-22Getty Images

    RB:マティ・キャッシュ(アストン・ヴィラ)

    アストン・ヴィラの年間最優秀選手はバーミンガム以外ではあまり紙面を賑わわせてこなかったが、サイドバックに前線での働きを多く要求するスティーブン・ジェラードの下、キャッシュは静かに突出したパフォーマンスを残した。

    ポーランド代表ではレギュラーの座をつかんでおり、カタールW杯で印象を残せば、来年は自身の地位を大きく高めることになるだろう。

    オーバーラップ時の勢いやクロスの能力(供給回数94回はリーグ5位)で知られているが、キャッシュは守備面の強さも持ち合わせている。タックル回数ではリーグ5位(90回)につけており、ディフェンシブサードで相手に与えたプレッシャーの回数では2位(268回)、ブロック回数は3位(91回)だ。

    デビューシーズンとなった2020-21シーズンはゴール関与数とアシスト数は共に2つしか記録できなかったが、2021-22シーズンは4得点3アシストを計上した。キャッシュがまだ成長し続けている明確な証拠だ。

  • Marc Guehi Crystal Palace 2021-22Getty Images

    CB:マルク・グエイ(クリスタル・パレス)

    クリスタル・パレスはパトリック・ヴィエラ監督の指揮下で素晴らしいシーズンを過ごした。チームはボールを保持するプレースタイルを導入し、センターバックのヨアキム・アンデルセンとグエイのコンビは攻撃の起点として大きなプレッシャーを受けていた。

    この点を表現する数値が、ボトムハーフのクラブの選手でトップ20に入っている選手が3人しかいない、ボールタッチ数だ。グエイとアンデルセンはそれぞれ10位と14位につけている。

    ヴィエラはセルハースト・パークでチームを驚異的な速度で変革させてきたが、グエイはそのチーム状況を体現している。ロイ・ホジソン時代から戦術をすぐに変化させたことで、クリスタル・パレスは苦しむだろうとほとんどの人が予想していた。だが、グエイのような選手を巧妙に補強したことで、幾分戦術転換はスムーズになったのだ。

    元チェルシーのDFは高いリーダーシップを誇り、また守備時の落ち着きは素晴らしい。同世代最高の選手の一人と長らく評価されてきたこの21歳が、自身の潜在能力を十分に発揮する過程にあることは間違いない。

  • Craig Dawson West Ham 2021-22Getty Images

    CB:クレイグ・ドーソン(ウェスト・ハム)

    ロンドン・スタジアムで熱狂的な支持を受けるドーソンは、屈強なセンターバックのヒーローだ。ドーソンのチームを救うタックルやブロックは、デイヴィッド・モイーズの導入する強固な守備陣形の重要な要素だ。

    そして今シーズン、ドーソンはこれまで以上に重要な存在となっている。同僚のCBクルト・ズマ、イッサ・ディオプ、アンジェロ・オグボンナがケガに見舞われ、代わる代わるチームから離脱してしまうという問題があったからだ。

    ドーソンがウェスト・ハムで愛されている理由の一つは、その稀有な成功物語にある。ウェスト・ブロムウィッチで一年間チャンピオンシップ(イングランド2部)を戦ったあと、ワトフォードではプレミアリーグからの降格を経験。その後2020年にイーストロンドンに到着したときには、チームの一員以上の存在になるとは予想だにしなかった。

    だが、ボール保持時に驚くほど高いクオリティを見せる上、ディフェンシブサードでは積極的にバトルを仕掛ける伝統スタイルの守備を披露した。これらの能力によって、ドーソンはモイーズにとって最も重要な選手の一人になっている。

  • Marc Cucurella Brighton 2021-22Getty Images

    LB:マルク・ククレジャ(ブライトン)

    ブライトンの左ウイングバックは最近クラブの年間最優秀選手に選出されたが、これは至極当然の結果であるように思われる。

    「ビッグ6」以外のクラブの選手の中では最もインテリジェンスに溢れ、判断に優れた選手だ。左サイドバックでも左センターバックでも同じレベルでプレーすることもできる。

    ククレジャは、グラハム・ポッター監督の敷く複合的なフォーメーションやポジションのローテーションを多用する戦術を他の誰よりも体現している。この23歳は常にセンターバックとしてオーバーラップを試みたり、ウイングバックでの起用時には中盤のエリアに入っていくこともある。ククレジャの試合中の業績はスタッツにも表れている。

    ククレジャは前方へのパスで10位(175回)につけている。そしてプレッシャー下でのパス数では4位(327回)を誇る。

    この二つの統計値からは、彼が攻撃志向の持ち主であることと、ポゼッションの技術に優れていることが伺える。だがククレジャの全体的な影響力が垣間見えるのは、今シーズン「ビッグ6」以外では彼以上にボールに触れた選手がいないという事実だ(2691回)。

  • Declan Rice West Ham 2021-22Getty Images

    CM:デクラン・ライス(ウェスト・ハム)

    『GOAL』が選定した二つの「プレミアリーグベストイレブン」の両方に選出された唯一の選手。デクラン・ライスはウェスト・ハムにおいて、お守りのようなセントラルMFだ。6番と8番の両方の働きを一人でこなし、すでにワールドクラスに近づきつつある。

    完全にディフェンシブな選手だと誤解されがちであるが(実際、今シーズンのブロック数は95回で首位)、ライスを90分間見た人は誰であれ彼の才能に衝撃を受けるだろう。

    ファイナルサードの持ち運び回数では、ベルナルド・シウバとケヴィン・デ・ブライネに次ぐ3位にランクインしている。また、ファイナルサードへのパス数でも3位につけており、ライスより上位の選手は共にディフェンダーで、アイメリク・ラポルテとジョアン・カンセロだ。

    ライスは単にどこにでも姿を現し、素晴らしい精度でボールを扱えるミッドフィルダーなのだ。

  • James Ward-Prowse Southampton 2021-22Getty Images

    CM:ジェームズ・ウォード=プラウズ(サウサンプトン)

    ウォード=プラウズがプレミアリーグベストイレブンに選出されているのを見て、眉をひそめる人もいるだろう。だがサウサンプトンが今シーズン低調であったことは彼のパフォーマンスのためではない。むしろその逆だ。

    ウォード=プラウズは10得点5アシストを記録。一年間苦しんだチームでプレーしたことで、この結果はより印象的なものになっている。

    オールラウンドに活躍するMFウォード=プラウズだが、ルーズボールのスペシャリストでもある。ピッチの幅40ヤード(約36.6m)以上のパス回数(116回)で3位につける一方で、ルーズボールのリカバー数では3位(414回)、1試合あたりのキーパス数では全体8位(2.0回)にランクインしている。

    つまり、セインツがほとんど主導権を握れていなかった一方で、ウォード=プラウズ自身は完璧に試合を仕切っていたということだ。

  • Conor Gallagher Crystal Palace 2021-22Getty Images

    CM:コナー・ギャラガー(クリスタル・パレス)

    ローンで移籍中のチェルシー所属MFギャラガーはシーズン前半に活躍を見せたが、後半はそれほどでもなかった。実際、2022年は得点の面では2ゴールしか挙げていないのだ。

    だが、今シーズン8ゴール3アシストを挙げたことを評価し、このリストにランクインした。ギャラガーはファイナルサード以外のところで大きくクリスタル・パレスに貢献している。

    アグレッシブなボックス・トゥ・ボックスのMFであるイングランド代表選手は、フィールド中央でボールを奪うチャレンジに秀でており、この能力は、中盤にコンパクトなブロックを作り、攻撃へのトランジションを活用するパトリック・ヴィエラ監督の戦術にとって重要な要素だ。ギャラガーの推進力はクリスタル・パレスの成功に必須であった。

    チャート上位に入る数値でギャラガーの特徴を最も捉えた統計データは、ダーティーな選手ではないにも関わらずファウルの数が最多(84回)であることだ。同時にプレッシャーの数(781回)と成功したプレッシャーの数(221回)は他の追随を許さない。アグレッシブさを持つギャラガーは来シーズンのチェルシーにとって非常に便利な存在だろう。

  • Jarrod Bowen West Ham 2021-22Getty Images

    RW:ジャロッド・ボーウェン(ウェスト・ハム)

    ボーウェンを評価するためには、詳しいスタッツを見る必要はない。

    プレミアリーグで記録した得点とアシストの合計「22」は、モハメド・サラー、ソン・フンミン、ハリー・ケイン、ケヴィン・デ・ブライネに次ぐ数字だ。なお、この4人は全チームのベストイレブンで選出されている。

    今シーズン、新たなレベルに到達したボーウェン。ファイナルサードでの切れ味はエリートクラスのFWそのものだ。

    ボーウェンの「ゴールを生み出すアクション」は21回を記録しているが、これを上回るのはサラーのみ。この数値を見れば、トップチームであればアシスト数をもっと稼げたかもしれないということになるかもしれない。ディオゴ・ジョタがそうであったように、リヴァプールのようなトップクラブに所属することができれば、ボーウェンのプレーは新たなレベルに到達することだろう。

  • Ivan Toney Brentford 2021-22Getty Images

    ST:イヴァン・トニー(ブレントフォード)

    ブレントフォードのプレミアリーグデビューシーズンは驚異的なものであった。この結果はトーマス・フランク監督の戦術的な采配によるところが大きい。ブレントフォードは入り組んだビルドアップをこなしながら、ファイナルサードにボールを運ぶとダイレクトプレーを使うスタイルを作り上げた。

    ビーズ(ブレントフォードの愛称)がリーグで予測不能な存在であったのは、この独特のハイブリッド戦術が理由だが、この戦術を誰よりも体現していたのがトニーだ。古典的なターゲットマンとしてプレーしながらも、同時にモダンなセンターFWとしての役割も柔軟にこなしていた。

    ロングパスを早めに放り込みセカンドボールを拾うというブレントフォードの戦術的傾向と合わせて、トニーは被ファウル数で3位(84回)、空中戦の勝利数はFWの中で1位(150回;全体で3位)という数値を叩き出した。

    だが、同時にトニーは冷酷無比なゴールスコアラーでもあり、同僚のブライアン・ムベウモとよい関係を築き息の合った連携を見せた。トニーは12得点5アシストでシーズンを終え、ブレントフォードの得点の実に25%に貢献した。

    クリスティアン・エリクセンが東ロンドンのユニフォームを着て復活を遂げたことがブレントフォードのシーズンに大きな影響を与えたことは知られている。だが、エリクセンの加入とブレントフォードの調子が上向いた時期が、トニーのケガからの復帰とちょうど重なったのは偶然ではない。

  • Raphinha Leeds United 2021-22Getty Images

    LW:ラフィーニャ(リーズ・ユナイテッド)

    ブレントフォードのスタンドで、ラフィーニャとアウェーに乗り込んだリーズのサポーターが共に行ったセレブレーションは、今シーズンを象徴する瞬間だ。そして、この瞬間は彼にとってエランド・ロード(リーズの本拠地)の期間を締める完璧なエンディングとなってしまうかもしれない。これほどにも才能のある選手は、長くチャンピオンズリーグ圏外のチームに在籍しないかもしれないからだ。

    このブラジル人ウインガーは今シーズン、「ビッグ6」以外の選手の中で「シュートを生み出すアクション」で1位につけた(119回)。最終節でようやく残留を決めたチームの中にあって、突出した創造性を見せつけたことを反映したデータだ。

    自身の記録した11得点と3アシストが雄弁にそれを語っているが、ラフィーニャの面白さはその特徴的なセンスにある。シーズン通して15回以上の股抜きを達成した選手は、彼以外に一人しかいない。