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今から25年前、アトレティコ・デ・マドリーがテレビで流した有名なコマーシャルがある。
赤信号で止まっている車の中、右手の人差し指で握っているハンドルをトントンと叩く父親と、後部座席で窓の外を眺めている幼い息子。息子が父親の後頭部に顔を向けると、こんなやり取りを交わすのだ。
息子「ねえ、パパ」
父親「どうした息子よ」
息子「なぜ僕たちはアトレティのファンなの?」
この問いかけに、ハンドルを叩き続けていた人差し指がピタリと止まった。答えに窮した父親は目を細めて窓の外を見やり、映像はそこで暗転。次のようなメッセージが浮かび上がる。
「説明するのは難しい。しかしそれは何か、とても、とても大切なことなのだ」
このコマーシャルが流れたのは2001年8月。クラブ史上初の2部降格に苦しんだアトレティコが、2部で2シーズン目を迎えるときのことだ。彼らは同シーズン、まだ17歳だったフェルナンド・トーレスを希望の担い手として1部復帰を果たすことになるのだが、その当時はあまりに安定感がなかった。名物会長だった故ヘスス・ヒルが下部組織を解体したり、1シーズン中に監督の首を何度も挿げ替えたりと破天荒なクラブ運営を行ったことで、1部で優勝して間もない内に2部に降格するような、非常に浮き沈みの激しい存在だったのである。
スペインの首都にはそんなアトレティコがいる一方で、ご存知の通り、世界一の常勝軍団であるレアル・マドリーもいる。マドリーのファンになれば喜びを享受するのはより簡単だ。勝利や優勝の回数は圧倒的で、「私たちこそ世界最高のクラブ(これを言う人は本当に多い。スペイン人のマドリーファンに会う度、最初にこう口にされる)」「CL優勝回数ナンバーワンだ」「どうして、わざわざアトレティコのファンになって苦しむんだ?」と誇らしげに語ることもできる。事実、現地の学校でもマドリーは大人気で、アトレティコファンは30人のクラスで5人以下、ということも珍しくない。そのためにあのコマーシャルのように、なぜ自分がアトレティコのファンであるのか分からなくなる子供だって「いる」。……いや、過去には「いた」のだろう。








