久保建英の進化が止まらない。
3カ月の中断をはさんだ後、再開後のラ・リーガ3試合すべてに先発した久保。マジョルカはいずれの試合も勝利がなかったが、スペインメディアからはそのすべてで高い評価を受けた。今や、ラ・リーガで最も輝きを放つティーンエージャーと言っても過言ではないだろう。
そんな19歳の日本代表を、スペイン大手紙『as』の試合分析担当ハビ・シジェス氏は「フットボール界の主役になれる逸材」と表現する。24日の所属元レアル・マドリーとの大一番を前に、久保のプレーと現状を紐解いてもらった。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
■El futuro se llama Kubo(未来、その名は久保)
(C)MutsuFOTOGRAFIAフットボール界の主役になれるかもしれない逸材には、その人だけの個性があるものだ。ほかと比較して確かめる必要などない。ただピッチ上でプレーする姿を目にするだけで、一線を画す選手であることが分かる。久保建英であれば、そうした極上の才能をラ・リーガの中断期間を挟んだことで一際輝かせるようになった。まだ19歳なのだから当たり前ではあるが、彼は成長を続けている。逸材らしく、ぐんぐんと。
中断期間に入る直前からマジョルカで定位置を確保しつつあった久保は、再開後にマジョルカの攻撃を一手に担い始めている。その存在感は、相手チームに驚異を感じさせるまでになった。バルセロナ下部組織出身MFのスペイン再上陸からまもなく1年が経とうとしているが、まだ伸び代があるとはいえ、選手としての力量にもはや疑いの余地はない。
ラ・リーガ再開後に臨んだバルセロナ(0-4)、ビジャレアル(0-1)、レガネス(1-1)戦で、マジョルカは久保を中心とした攻撃を見せた。チームの面々がこの日本人の特徴に合致しているとは決して言えないものの、それでも攻撃の重心を彼に置くことが最も効果的なのだろう。相手を惑わす左足、力強いドリブルの進行、攻撃を解決する上での創造性、決断力……。そうした彼の長所は、一試合におけるあらゆるフェーズで目にすることができ、それによってチームの攻撃はより深みを取れ、より危険となった。
■高まる名声
(C)Getty Images再開初戦のバルセロナ戦は大きな試練だったが、久保が怖気づくことはなかった。1-4-4-2の右サイドハーフを出発点とした彼は、その力量を存分に発揮している。守備から攻撃のトランジションにおいて、一体どこでボールを受ければいいのかを把握し、相手ゴールまでたどり着くために欠かせなかった。サイドに大きく開くか、バルセロナの左インサイドハーフ、フレンキー・デ・ヨングの後方に位置して、そこから守備網を突破していった。シュート数4本、ラストパス4本という記録は、この試合において最も決定的な役割を担ったことを表している。
久保がバルセロナにとっても脅威だったことを表す場面は多々あった。例えばジョルディ・アルバとのマッチアップである。世界を代表する左サイドバックは、眼前でボールをさらす久保を前にして、デュエルを恐れるがあまりに自陣ペナルティーエリア内まで後退することを強いられた。彼がドリブル突破、スルーパスのどちらも高い精度で実現できることで、尋常ならざる警戒心を覚えていたのだ。その光景は試合を通じて見られたものであり、久保が相手選手に与える脅威をまざまざと表していた。加えて、久保のドリブルは利き足の左だけでなく、右から抜く選択肢もあり、それも警戒心を増幅することにつながっている。
バルセロナ戦後の2試合でも、久保はその名声を高めていった。試合がまだ30分残っていたにもかかわらず不可解な交代を強いられたビジャレアル戦では、3バックのシステムの中でラゴ・ジュニオールとともにトップ下に配され、より自由にプレーしている。ピッチ中央では相手DFとMFのライン間で活発に動き回り、1~2タッチでの簡潔なプレーが求められるならば速やかにそうして、キープするときにはキープした。
残留争いの直接的ライバルであるレガネスとの一戦では再び右サイドハーフを出発点として、中央に寄ったりプレーサイドを変えたりと、自主的に効果的なプレーを見せられるところを探し求めている。ただしサルバ・セビージャの直接FKが決まってからマジョルカはラインを下げ過ぎてしまい、久保の役割は攻撃のトランジションの起点となることに限定されてしまった。そうしたプレーのほとんどを的中させてはいたが、より際立っていたのは守備面のタスクだ。レガネスの左サイドバック、ケビン・ロドリゲスが頻繁に上がってくるために苦戦していた自チームの右サイドバック、ポソをカバーするために袖をまくって、ボール奪取に奔走していた(奪取数は7回にのぼる)。攻撃面で輝かしい特徴がある選手は守備意識を疑問視されることが常だが、久保にはもう当てはまらない。レガネス戦は1-1のドローに終わったが、それはマジョルカ全体の保守的過ぎるプレーに責任があり、久保の貢献度の高さに疑義を挟むようなものではなかった。
久保の成長は、フィジカル的な変化にも関連づけることができるだろう。彼の肉体が日増しに逞しくなっているのは明らかだ。積んでるエンジンがいくら素晴らしいものでも、デュエルやドリブル突破においてフィジカル的な劣勢が不利な要素となるのは明白。しかし、久保はその点でも確かな成長を見せており、加えて足の増強が加速や短・長距離のスピードアップにつながっているようだ。また、ここまではボルシア・ドルトムントのアーリング・ハーランドのように負傷に苛まれることもない。久保同様に衝撃的な若手選手として扱われる彼の場合は、リオネル・メッシと同じ道を歩んでいるようにも思える(たとえ、メッシに匹敵する者はいないとしても……)。
■レアル・マドリーでの「将来」
Getty Images結論を言うと、ラ・リーガ再開後に久保の進化、マジョルカにおける立ち位置の確立はまざまざと示されている。今ではセットプレーのキッカーを務めるほか、ピッチ中央でラインを破るパス、または大外でサイドチェンジのボールを待つ動きなど戦術的ポジショニングも素晴らしい。惜しむらくは、マジョルカに彼を生かしきれるだけの読みと技術を持つチームメートがいないことだろう。クチョ・エルナンデスとは同じセンスを分かち合えるかもしれないが、彼はいつも最前線と遠い場所におり、右ウィングからウィングバック及びサイドバックにコンバートされたポソが唯一連係の取れる存在と言える。ポソがサイドを走り抜けて囮になり、久保がダイアゴナルなドリブルを仕掛けるのは見慣れた光景である。
久保はプレーの幅をどんどんと広げているが、それはレアル・マドリーがボールを使って決定的なプレーを見せられる若手を獲得した後に放流し、守備のタスクもないがしろにしないフットボーラーを将来的に享受することを意味している。ただし、彼がスペイン首都に戻るその「将来」は、まだ先のことだ。今現在、マドリーは似たようなタイプの選手(アザール、ロドリゴ、ヴィニシウス、イスコ、アセンシオ、ハメス……)を多く擁しており、日本人を来季も貸し出す考えを固めている。今度は残留を争うクラブではなく、欧州カップ戦にも出場する力があるクラブへと。もちろん、その方針はウーデゴールの扱い方を踏襲したものであり、実際的にレアル・ソシエダで彼と久保が共演する可能性は高い。試合の主導権を握る攻撃的戦術が最たる特徴のラ・レアルは、久保にぴったりとはまる指輪となるはずだ。
久保はラ・レアルのほか、スペイン以外の複数のクラブからオファーを受けており、その中には欧州王者に何度も輝いた存在すら含まれている。しかしそうした誘惑も、スペインで成長を続けるという選手本人の願望を変えるものにはならないだろう。いずれにしてもマドリーとジネディーヌ・ジダンは彼に大きな期待を寄せており、しかしながら一歩一歩、着実なキャリアを構築していくことも望んでいる。彼らは久保が競争の中で埋もれていくことを恐れているわけではない。そうではなく、最上級の才能が自然な軌跡を描くことを願っているのだ。
▶ラ・リーガ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう
【関連記事】
● DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
● DAZN(ダゾーン)をテレビで見る方法7つを厳選!超簡単な視聴方法を紹介
● DAZNの2020年用・最新取扱説明書→こちらへ ┃ 料金体系→こちらへ ※
● 【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説 ※
● DAZN番組表|直近のJリーグ放送・配信予定 ☆
● DAZN番組表|直近の海外サッカー放送・配信予定 ☆
● Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です
「☆」は提携サイト『 DAZN News 』の提供記事です




