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「初戦を勝てば、日本のスカイハイな自信にもなる」。元イングランド代表ショーン・ライト=フィリップスインタビュー第2回

 プレミアリーグ2連覇を達成したマンチェスター・シティが、銀色に輝く優勝トロフィーとともに世界中のファンと交流するグローバルツアーを、およそ4カ月にわたって実施。11月、その最終目的地となる日本へやって来た。このトロフィー・ツアーに関連したイベントが都内で開かれ、2010年のワールドカップ南アフリカ大会でイングランド代表として出場したマンチェスター・Cのレジェンド、ショーン・ライト=フィリップス氏も参加した。

GOALではショーン氏への独占インタビューを実施。前回に続いて、今回はカタール大会における日本の目標「ベスト8進出」の可能性について、レジェンドのヒントを傾聴した。(インタビュー日:11月12日 聞き手: Yukifumi TANAKA/田中幸文)

■シーズン中に行われる大会の特殊性

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――2010年の南アフリカ大会では、イングランド代表としてワールドカップに出場されました。W杯をご経験されて、その後のプレースタイルや考え方に変化はありましたか?

以下に続く

 大きな変化はなかったです。監督の指示に従い、戦略に基づいてチームをどのように作り上げていくかということは、通常の試合であれ、W杯のトーナメントであれ、変わりはないですから。

 ただ、今回のカタール大会は、初めてシーズンの最中に行われるので、かなりレベルの高い国際マッチが繰り広げられるのではないかと思います。この大会が、シーズンのフィナーレになる訳ではないですし、大会が終われば、選手たちは自分たちのチームに戻る必要があります。メンタルの側面から見ても、必ずしもバーンアウトすることはないだろうと考えます。いつものハードで長いシーズンの途中に、フレッシュな気持ちでW杯に出場することができる。しかも、フィジカルがピークの状態で。こういった観点でみれば、見ごたえのある試合がたくさん展開されるのではないかと、個人的に想像しています。

 あと、自分が現役だった頃も同様でしたが、W杯の前後で代表やクラブの監督たちがどのように選手たちをケアして、マネジメントしていくのかがとても重要になると思います。シーズン終わりでも、シーズン中でも、クラブの監督たちは、W杯でピークに達した選手たちのモチベーションを再び盛り立てて、どのように次の目標へと向かわせていくのか、大きな関心事です。

 今大会はシーズンの最中に行われるので、メンタルの側面については、チャレンジが多いかもしれない。結果に落胆する選手もいるでしょうし、達成感の喜びに溢れる選手もいるでしょう。全く異なる気持ちを抱えた選手たちが、一つのクラブに戻って来ることになる。戻ったときに、その選手たちを同じ方向へと向かわせるマネジメントは大変だと思います。

■日本が萎縮する必要は全くない

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――代表選手ならではの着眼点だと思います。W杯のグループステージについてお伺いしたいのですが、ショーンさんの母国イングランドはグループB、第1節でイラン、第2節でアメリカ、第3節でウェールズと対戦します。どのような試合を期待されますか。

 長い間W杯を見てきて、代表として出場した経験から言っても、初戦は最も重要です。初戦で勝つことができれば、その後の対戦相手がどんなチームであれ、そんなに大きな問題ではなくなります。たとえ、第2節で負けたとしても、まだ決勝進出の可能性が残っています。第2戦がドローなら、決勝進出はほぼ確実でしょう。でも、首位通過したいので、第3節は勝ち星を取りに、戦略を練って臨むことになります。

 コーチも選手も、イングランド代表チームはこの点を理解しているはずです。初戦で必ず勝つという重要性を。第2節のアメリカ戦、あるいは最終節のウェールズ戦をドローで終わったとしても、初戦を勝っていれば、イングランドはいい雰囲気でグループステージを通過できると信じています。

――イングランドは優勝候補にあげられていますが、その実現のために最も必要なことは何でしょうか?

 優勝は簡単じゃないですよ、僕は現実主義ですから(笑)。W杯には世界の強豪チームが顔を揃えます。ドイツはリベンジに燃えていることでしょう。スペインは、この10年以上ずっと手強いチームですよね。(前回優勝の)フランス代表のスカッドは、明らかに層が厚いですし、ブラジルもアルゼンチンも警戒すべきチームです。

 このような世界の強敵を相手に、イングランドは戦わなければならない。わずかなペナルティが命取りとなる場合もある。運もあるけどね。イングランド出身者として、イングランドの優勝する姿をもちろん見たいけれど、決して簡単なことではない。日本だって、優勝を狙っているでしょう? それと、同じだよ。

――日本の場合、ベスト8進出を目標に掲げています。日本の準々決勝進出のために必要なことは何だと感じていらっしゃいますか。

 日本の属するグループ(ドイツ、コスタリカ、スペイン)が厳しいグループであるのは事実だと思います。だからといって、萎縮する必要はありません。誰もがそう感じているように、「自分たちは厳しいグループにいるんだ」と理解することが、ポジティブな原動力とメンタリティに変わります。

 僕からすれば、日本はこの大会で世界にアピールできる完璧なタイミングだと思います。前の質問でもお答えした通り、初戦がとにかく重要。日本が初戦(ドイツ戦)を勝利し、勝ち点3をスコアボードに載せることができれば、グループステージ通過も、ベスト8進出のチャンスも、巡ってくるでしょう。

 そして、初戦を勝ったという結果は、日本のスカイハイな(=天も貫く)自信にもなるでしょう。また、他のチームは日本を恐れ、警戒することにもつながります。まず、初戦を制すること。このW杯で、日本にもチャンスは間違いなくあると思います。

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■Profile
ショーン・ライト=フィリップス(Shaun Cameron Wright-Phillips)
1981年10月25日生まれ。イングランド・ロンドン出身。現役時代はスピードとドリブルを持ち味とするサイドアタッカーで主戦場は右サイド。英国サッカーのレジェンド・イアン・ライトの養子。99年マンチェスター・シティ、05年チェルシー、08年シティに復帰、11年にQPR、15年アメリカ・MLSにプレーの場を移し、19年に現役を引退した。イングランド代表36試合出場6得点。息子はストーク・シティでプレーするディマジオ・ライト=フィリップス。

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