プレミアリーグ2連覇を達成したマンチェスター・シティが、その優勝トロフィーを引っ提げて世界中のファンと交流するグローバルツアーを、およそ4カ月にわたって実施。11月、その最終目的地となる日本へやって来た。世界最高峰リーグともいわれる銀色の光沢が眩いプレミアリーグのトロフィー・ツアーに関連したイベントが開かれ、2010年のワールドカップ南アフリカ大会でイングランド代表として出場したマンチェスター・Cのレジェンド、ショーン・ライト=フィリップス氏も参加した。
そこで、GOALではショーン氏への独占インタビューを実施。19年に現役を引退し、初めて選手ではなく、オーディエンスとして迎えるW杯について、またベスト8進出を目標に掲げる日本代表についてなど、様々なアングルからレジェンドの声に耳を傾けた。第1回は、プレミアリーグでプレーする日本人選手についてお届けする。(インタビュー日:11月12日 聞き手: Yukifumi TANAKA/田中幸文)
【第2回】カタールW杯について「初戦を勝てば日本のスカイハイな自信にもなる」
■冨安はどの試合も存在感抜群だった
Getty Images――初来日ということですが、日本の印象はいかがですか。
親切ということが真っ先に浮かびます。日本のみなさんの温かさや優しさを感じています。明らかに言葉の壁があるというのに、日本人は助けようとしたりますし、相手へのリスペクトも感じる。これって、外国人に対して、なかなかできないことだと思います。こういう日本人の親切心が、世界から愛される理由だと実感しています。今回のスタッフともジョークで話しているのですが、来年のトロフィー・ツアーに僕を呼ばなくても、自分で日本に来るからねって(笑)。そのくらい、大好きな国になりました。
――日本の選手にも注目してくださっていますよね。カタール大会に向けて、プレミアリーグでプレーしながら日本代表に選ばれた選手について、ショーンさんの目にはどのように映っていますか。たとえば、アーセナルの冨安健洋選手は?
彼は本当に素晴らしい選手です。強力なライトバックになると思います。冨安がアーセナルに移籍してきたばかりの頃、どの試合を見ていても存在感が抜群だった。それは簡単なことではないです。前に出る安定感も持っていますよね。ゲームの流れをすぐに掴んで、自分のポジションに戻り、ディフェンダーとしての役割を果たす。彼がいたからこそ、相手のゴールチャンスを阻んだ場面がたくさんありました。
ケガのせいで今季は出遅れてしまい、出場機会が少なくなってしまったのは残念ですが、アーセナルは戦略を変え、ベン・ホワイトを起用しました。そして、今アーセナルはリーグ首位に立っています。冨安は、今は我慢の時だと思う。必ず、チャンスが巡ってくるから。とにかく、それだけ、彼が素晴らしいディフェンダーということですね。
■三笘は現役時代の自分を思い出す
Getty Images――では、ブライトンの三笘薫選手についてはいかがでしょうか。ショーンさんと同じサイドのアタッカーですね。
正直に言うよ(笑)。三笘のこと、最初は全然知らなかったんだ。でも、ブライトンの今のチームが好きで、よく観戦しています。彼らのスタイルや、サッカーに対する姿勢を見ていると、なんだかマンチェスター・シティにいた頃の自分を思い出させてくれるのです。だから、ブライトン戦はいつも本当に楽しみ(笑)。
その中で、三笘のことを注目するようになりました。特にこのワールドカップ前1カ月のリーグ戦では、チームメイトに積極的にボールを回して、自分から何か起こそうとしていたよね。初めて彼を見た時もそうだった。自分からチャンスメイクを創ろうとしていた。もちろん、どの選手にとっても大抵はうまくいかないものです。でも、直近の2試合で、彼のアクションは全て成功した。僕の記憶が間違っていなければいいけれど、たしかアシストやゴールも決めて、チームの勝利に貢献していたよね。
彼の純粋に挑戦する気持ちが本当に好きだよ。それから、誰を相手にしても恐れないプレーも。ゲームの中で「自分から何かを起こすんだ」っていう強い信念があるから、彼の自信にもつながっていると思う。だから、三笘を見ていると現役時代の自分自身を思い出すんだ。僕も、誰が相手だろうと気にしなかった。とにかく、ただチームのためにチャンスメイクすることが大事だって。彼のプレースタイルが本当に好きだよ。間違いなく、日本のキープレーヤーになると思います。
――それは嬉しい評価ですね。私たちも楽しみです。もう一人、今シーズンよりモナコへ移籍しましたが、昨季までリヴァプールに所属していた南野拓実選手については?
南野が素晴らしいプレーヤーであることに疑う余地はないよ。でも、あの時のリヴァプールでは、彼は難しい状況だったよね。だって、絶好調のマネとサラーにチームが頼っていたから。どのチームも、どの選手も、プレミアリーグでレギュラーでプレーすることを重要視している。
そんな中でも、南野が試合出場した時に、ハングリーな気持ちでゴールに向かう姿や、他の人とは違うものを生み出そうしているプレーを見て、彼が努力家であるこということはすぐに感じたよ。努力は必ずいい結果をもたらす。そして、彼には、その素質がある。 だからこそ、南野がW杯でいいプレーをすれば、彼の今後の活躍にもつながっていくと思うよ。
――ほかに気になる日本人プレーヤーはいますか?
若くて真っ直ぐに試合と向き合っていて、ハングリー精神のある選手であれば、プレミアリーグに限らず、ブラジルでもドイツでも、どこの国のリーグであろうと注目しています。でも、やっぱり、三笘のことをW杯でも注目すると思います。残りのシーズンも含めてね。
彼にとって、このカタール大会は重要になると思うし、おそらく、大会のサプライズにもなると思う。だって、世界はまだ三笘のことをよく知らないだろうから。彼はきっと、W杯で輝くと思うよ。
【第2回】カタールW杯について「初戦を勝てば日本のスカイハイな自信にもなる」
■Profile
ショーン・ライト=フィリップス(Shaun Cameron Wright-Phillips)
1981年10月25日生まれ。イングランド・ロンドン出身。現役時代はスピードとドリブルを持ち味とするサイドアタッカーで右サイドを主戦場としていた。英国サッカーのレジェンド・イアン・ライトの養子。99年マンチェスター・シティ、05年チェルシー、08年シティに復帰、11年にQPR、15年アメリカ・MLSにプレーの場を移し、19年に現役を引退した。イングランド代表36試合出場6得点。息子はストーク・シティでプレーするディマジオ・ライト=フィリップス。


