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【現地発】「レアル・マドリーはシャビ・アロンソを早く解任しなかったことを後悔している…そういうことじゃないだろう」

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■指笛

1月17日、レアル・マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウに吹き荒れたブーイングが、今も耳を離れない。

マドリー首脳陣はシャビ・アロンソの監督解任を決断し、カスティージャ(Bチーム)を率いていたアルバロ・アルベロアを後任とした。アルベロアは初陣となったコパ・デル・レイのラウンド16、アウェーでのアルバセテ戦を2-3で落とし、その3日後のベティス戦で初めてベルナベウのテクニカルエリアに立ったが、マドリーの大多数のサポーターは選手たちと首脳陣に怒りをぶつけるのに夢中だった。

その怒りの矛先は、コパ敗退という事実以上に、X・アロンソ解任という名の“冤罪”に向けられていた。彼に人一倍反発していたというフェデ・バルベルデ、ジュード・ベリンガム、そしてヴィニシウス・ジュニオールには、ボールに触れる度に多量の指笛が飛ぶ有様。『マルカ』紙が実施したアンケートでは、チーム低迷の原因はX・アロンソではないという意見が70%以上を占めていたが、監督解任に対してこれほどの拒否反応を示すベルナベウは初めてだった。

あの指笛、あの感情は、今もなおベルナベウに潜んでいる。マドリーがつまずくとき、それはすぐさま表層に現れて、スタジアム全体に響き渡るのだ。

■弱体化する伝統xabi alonsoGetty Images

昨季のマドリーは無惨だった。2シーズン前にラ・リーガ、チャンピオンズリーグ(CL)優勝の二冠を達成して、そこで一つのサイクルは終わりを迎えていたのだろう。CL準々決勝のアーセナル戦はモチベーション的にも戦術的にも完敗で、マドリーの伝統ながらも弱体化していく一方の“個の力に頼ったプレー”は、進化著しい現代フットボールで通用しないことを痛感させている。シーズンが終わると、カルロ・アンチェロッティはすぐさまブラジル代表監督に就任したが、選手たちの心に自分の言葉が届かなくなったこと、ロッカールームを完全に掌握し切れなくなったことも、マドリー退団を決断する要因の一つだった。

だからこそ、マドリー会長フロレンティーノ・ペレス、ゼネラルダイレクターのホセ・アンヘル・サンチェスはX・アロンソを招聘して、新たなプロジェクトをスタートしたわけだが……。それは見込みが甘かったと言わざるを得ない。

X・アロンソは現代フットボールの旗手になるべき指導者であり、欧州のライバルと比べて明らかに不足し始めた戦術的組織力を、マドリーに植え付けられる存在だった。もちろん、監督としてはまだ若い彼のアプローチ方法にも問題やミスはあったのだろう。レヴァークーゼンの選手たちと違って、マドリーの選手たちはプライドが高い。長時間にわたるビデオセッションや多量なデータを基にしたプレーの修正、戦術的な動きの落とし込み、プレスの徹底などを、欧州の頂点に立ったことのある選手たちが簡単に受け入れるはずもない。

かつて、ルカ・モドリッチにアウトサイドのパスを控えるよう言ったラファ・ベニテスが選手たちから「背番号10番様」と陰口を言われていたとの報道もあったが、マドリーの選手たちにとって監督からの細か過ぎる指示は、個人技の制限と捉えられてしまうのだ。

X・アロンソと選手たちの溝が決定的となったのは、ベルナベウで行われたラ・リーガ前半戦のクラシコ(◯2-1)だった。あのバルセロナ戦は会心の勝利を飾った一戦になるべきだったが、早期交代に対して激しく憤ったヴィニシウスが、ポジティブな空気をすべて飲み込んでいる。

マドリー首脳陣はメディアに対して「チームのトップはシャビだ」と強調していたものの、ヴィニシウスに言って聞かせたり懲戒処分を科したりするなど、監督に対する実質的なバックアップは皆無だった。この出来事をきっかけに、X・アロンソと選手たちのパワーバランスは逆転し、統率が取れなくなったマドリーはプレーレベルも成績も一気に落とすことになった(あのクラシコまでの成績は12勝1敗。それ以降の成績は8勝3分け4敗)。そしてスーペルコパ決勝でバルセロナに敗れた後、サウジアラビアからの帰りの飛行機で、ホセ・アンヘルがX・アロンソに「もうここらへんにしておこう」と言い渡し、シーズン途中の解任劇が成立している。

■責任vinicius1Getty Images

だがしかし、だ。X・アロンソを解任したとしても、マドリーが抱える根本的な問題は変わらない。トカゲの尻尾のように監督を切ったとて、首脳陣にも責任があるのは火を見るより明らかだ。

例えば、キリアン・エンバペとヴィニシウスの併用問題である。昨季にエンバペが加入する前から、彼らは共存できるのかと誰もが疑問視していたが、今現在も明るい材料は見当たらない。エンバペはやはり純粋な9番タイプではなく、足元で受けたがる2選手が中央、または左サイドにいれば、スペースを生かさなければならないポジショナルな攻撃は手詰まりになってしまう。ベリンガムら中盤の選手たちに走り込むスペースを与えるにしても、トレント・アレクサンダー=アーノルドのクロス能力を生かすにしても、前線でCBを引きつけられる9番がいるのが最適解だろう(ゴンサロ・ガルシアには大きな期待をかけたいところだが、まだ荷が重いのではないか)。

またマドリーの十八番であるカウンターを仕掛けるにしても、エンバペとヴィニシウスは役割が被っている上に、ともに守備意識が低いためにボール奪取そのものを困難にしている。守備をある程度免除するにしても、その対象はどちらか1人に絞るべきだが、2人とも自分が特別な選手と感じているかのように守りの献身性、もっと言えばプレス技術が不足している。この花形2人の禁じられた併用問題について、X・アロンソはエンバペをアンタッチャブルな存在とし、ヴィニシウスの序列を下げることで解決を目指した。が、それが「(ベンチに下がるのは)いつも俺だ! もう出て行ってやる!」と叫んだ、クラシコでのヴィニシウスの爆発につながった。

■フットボールkroos modricGetty Images

ゲームメーカー不在の問題も相変わらずだ。いや、2シーズン前のトニ・クロースの引退に加えて、昨夏にはルカ・モドリッチとの契約を延長せず退団の扉を開いたことで、状況はさらに悪化している。これまでマドリーが抱えてきた戦術的な欠陥はプレービジョン、圧倒的なテクニック、チームメートを従わせるキャプテンシーを兼ね備えた彼ら2人が補ってきたのだから。クロースとモドリッチが中盤にいないのに、属人的なフットボールを続けていくのは無理がある。

X・アロンソはその問題を解決すべく、マルティン・スビメンディの獲得をホセ・アンヘルに要請。だがクラブがしたことと言えば、スビメンディのアーセナル移籍が内定している状況で、「マドリーはスビメンディ獲得に興味」とスポーツ紙に観測気球を出すことだけだった。そもそも首脳陣はアルダ・ギュレルの台頭でゲームメーカーを補えると考えていたようだが、ギュレルはあくまでトップ下の選手で、自陣ゴールの方を向くビルドアップのプレーは苦手だ。マドリーの中盤は個人レベルでも戦術レベルでも“フットボール”が足りていない。

さらにDFラインについて、常に人員が足りなかったセンターバックにはディーン・ハウセンが加わったものの、彼はパスは一級品でも肝心の守備についてはまだ成長の必要がある。エデル・ミリトンをはじめ負傷者やコンディション不良の選手は絶えず、ティボー・クルトワの超絶セーブに助けられている状況は、昨季と何ら変わっていない。結局のところマドリーは、昨季深刻と捉えられた問題をずっと抱え続けている。

■忖度arbeloaGetty Images

クラブ首脳陣は、X・アロンソの後任に据えたアルベロアが“ニュー・ジダン”になることを期待している。今から10年前、解任したベニテスの後任にジネディーヌ・ジダンを据えて、チャンピオンズリーグ優勝を成し遂げたシーズンの再現を狙っているのだ。

アルベロアは期待される役割をこなしている。選手たちの自尊心やタレントを可能な限り尊重し(ヴィニシウスのことは公で何度も称賛)、攻守のバランスを重視しながら、個の力を最大限生かそうと試みている。また、その戦術は手堅いだけではない。トレント、バルベルデ、ギュレルが流動的に動く右サイドには可能性を感じさせるし、カンテラーノを積極的に登用していく胆力もある。……とはいえ、彼の率いるマドリーが昨季より進歩しているかどうかと言えば、そこは疑わしいところだ。ヴィニシウスとエンバペの共存問題はいまだ解決しておらず、なおかつ彼ら2人は不可解なほど、ずっと出番を手にしている。クラブが自分の後ろ盾にならないことを知るアルベロアの采配は、誰かに対する“忖度“も存分に感じさせる。

そもそも、今のマドリーとジダンが率いていた頃のチームは、ずいぶんと質が異なっている。あの頃は「マドリディスモの体現者」セルヒオ・ラモス、バイエルン&トッテナムで地位を確立してマドリーにやって来たクロース&モドリッチ、最強の点取り屋クリスティアーノ・ロナウド、C・ロナウドのためにスペースをつくっていたカリム・ベンゼマがいた。青田買い戦略で獲得した若手選手たちと、第一線で結果を残してから獲得した選手たちでは、メンタリティー含めた経験値に大きな隔たりがあるような気がしてはならない。あの頃との差を埋めるためにも……やはり、今のマドリーにはX・アロンソが必要だったのではないだろうか。

『アス』紙の報道によれば、マドリー理事会は2025年の内にX・アロンソを解任して、アルベロアにさっさとチームを任せるのが最善だったと後悔しているという……しかし、そういうことじゃないだろう。レアル・マドリーの問題は、監督を通り越した先にあるのだから。

ベルナベウに集まる観客は今、気を取り直してマドリーを応援している。世界最高だと誇る我がクラブが、新たな成功をつかむことを願っている。だがそれと同時に、彼らの指はいつでも笛を吹く用意をしている。

「それ見たことか」という感情は、今も薄い膜の下に潜んでいる。

取材・文=江間慎一郎

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