少し傲慢で時には独りよがりなところがあるようにも見える。
それがアラン・サン=マクシマンだ。
が、実際は人としても選手としても申し分ない男だ。生まれ故郷のフランスを離れ、およそ3シーズン前からニューカッスルに在籍。すると、プレミアリーグ屈指のドリブラーへと成長した。
『GOAL』の独占インタビュー第1弾では、山あり谷ありのキャリアについて率直に語り、ニューカッスルへの“義理堅さ”についても明かす。ニューカッスルへの愛を公言するサン=マクシマンのキャリアを振り返っていく。
■「誰も僕にお膳立てをしてくれなかった」
(C)Getty Images――あなたのキャリアにおいて、しばしば自分を表現するのに十分な場所や時間を与えられていないと思うことがあったのではないですか? 特にサンテティエンヌやモナコでは…。
サッカー選手というは、クラブに所属し、集団の一員になって、プレーをして、試合に出続けて、得点して、最後にやっと個性が発揮できるようになるんだ。僕はそうしたチャンスを一度も得たことがない。誰も僕にお膳立てをしてくれなかった。サンテティエンヌでの僕は若くて、いくらかプレーしたけど、大きなチャンスは1回で、それだけだった。サンテティエンヌではとても難しかった。
その後、モナコに入って、当時のチームはトップ中のトップだった。ファビーニョ、(ティエムエ)バカヨコ、ベンジャミン・メンディ、トマ・レマル、キリアン(エンバペ)、ベルナルド・シウバがいて、リーグチャンピオンになった。そんな特別なチームにいて、僕は厳しい状態にあった。サンテティエンヌで全くプレーしていなかったから、モナコでも練習ではいい調子だったけど、レギュラーにはなれなかった。プレーする時間を全くもらえず、キリアンのようにチームの中心にはなれなかった。誰も僕の実力を知ろうとしなかった。僕に直接レンタル移籍の話をするようになって、ハノーファーに行くことになったんだ。
――ただ、ドイツでも、期待していたようなことは起こらなかったんですね。
あそこでも、厳しい状態だった。ハノーファーは僕にレンタルで2年間プレーさせたがっていたけど、僕は1年だけでモナコに戻りたいと思っていた。ハノーファーでの成績は期待されたほどではなかった。ハノーファーはブンデスリーガの2部に降格しそうになって、もう1年契約するしかなくなってきた。僕が嫌だと言うと、レンタル期間が終わるまでプレーさせないと言われた。つまり、僕は何年も、実力を示したりチャンスをものにしたりすることすら全くできなかったんだ。
モナコに戻って、バスティアにレンタル移籍すると決めたとき、すべてが変わった。僕は少しだけ長く試合に出ることができるようになり、実力を示せるようになった。バスティアにはとてもいい思い出ができたけど、その素晴らしい1年が終わって、ニースに行くことになり、そこでまた新たにもう少し実力を示すことができた。だけど、僕はまだ見習い期間中の状態だった。まだ、僕自身について、自分のポテンシャルについて、もっと学ばなければならない状態にあった。
――あなたは2シーズンまるまるニースにいた後、2019年にニューカッスルへ行くことを選びました。この選択は間違っていると多くのファンは思いましたが、どうしてマグパイズ(ニューカッスルの愛称)を選んだのですか?
正直言うと、オファーはたくさんあったよ。イタリアやスペインやイングランドからだって、ビッグクラブからオファーがあった。だけど、僕が本当に必要なのは、ニューカッスルのように本気で僕を必要としてくれて、僕を獲得するために何でもしてくれるクラブだった。監督と十分に話をしたよ。とても誠実なクラブだった。これまでに感じてきたのと同じ不安を抱くことは、もうこりごりだった。僕は選手があり余っているようなクラブに入りたくなかった。だからニューカッスルはうってつけだった。僕はプレミアリーグで、今まで自分のすべてを見せることができている。
■「チャンスがあっても出て行かないことに決めている」
Getty――あなたは今シーズンもニューカッスルにいますが、チームは大型補強のプランを立てているのではないかと期待されています。実際、冬の移籍市場ではブルーノ・ギマランイス、キーラン・トリッピアー、クリス・ウッドという選手が加入しました。あなたはどう思っていますか?
あまり知られてないけれど、僕がニューカッスルに来る前にも、このクラブに誰が加入するか、すでにいろいろ噂されていた。僕がここと契約したかったのもそのためだ。とても楽しみな計画があることを知っていた。誰がいつ入ってくるかは知らなかったけど、すごい投資家がいっぱいいることを知っていた。だから最終的に、僕は今あるようなチャンスを手にすることができた。この冬以降、計画を実行できるようになったんだ。夏になったら、とても素晴らしい契約が結ばれるだろうと思っている。その計画の中心に僕がいることは、とても大きなチャンスなんだ。
――次の移籍市場で選べるとしたら、あなたは誰にニューカッスルに来てほしいですか?
それは選手たちや監督、投資家たちで話していくことになるだろうね。監督は、チームに何が必要か、とてもはっきりした考えを持っている。僕が選ぶなら、ものを言うのはハートだろう。親友たちがクラブに入ってくれればいいと強く思っている。たとえばリュドヴィク・ブラス。僕は彼の性格が大好きだし、ナントで活躍している(※32試合9ゴール)。ナントのチームには欠かせない存在だね。他に僕が知っているところでは、ブルーノ(ギマランイス)はルーカス・パケタが好きみたいだ。
――シーズン途中に、スティーヴ・ブルースからエディー・ハウへの監督交代もありました。彼が監督になって変わったものは何ですか?
僕はハウ監督が大好きだ。まだお互いよく知りあう必要があるけど、彼の思慮深いところが大好きだ。たとえば、監督が来て、ジョエリントンはすっかり変わった。信頼を取り戻して、今や、僕らのチームで最も重要な選手のひとりとなった。たくさんのことが変わった。僕のプレースタイルもそうだし、ウィロック、ライアン・フレイザー、ファビアン・シェアもそうだ。多くの選手がピッチの上で実力を示そうとし始めている。これは監督のおかげだよ。監督が来て、明らかに良い結果を出しているけれど、僕らがピッチの上でも外でも良い人間になるような手助けもしてくれている。弱点を克服して長所を伸ばせるようにしてくれている。今までとは大きな違いだと思う。
――あなたは2026年までニューカッスルと契約しています。それまでずっとニューカッスルにいたとしても、あなたにはまだ「最後の大きなチャンス」まで時間があるでしょう。プレーしてみたいチームはありますか?
正直言うと、今のところ、僕はニューカッスルを離れる気はないよ。その後は、たくさんのことが変わるだろう。今後の移籍に関しては、たくさんのビッグクラブからアプローチがきている。だけど、彼らは、僕がニースにいたときには僕を探しに来なかったクラブだ。ニューカッスルは僕のキャリアにおいてとても重要な時に声をかけてくれた。ニューカッスルは僕に大きな信頼を寄せてくれた。僕はとても義理堅い人間なんだよ。だから、昨シーズンみたいにクラブがとても難しい事態に陥っている時だって(編集部注・ニューカッスルは昨シーズンのプレミアリーグで12位だった)、チャンスがあったとしてもチームを出ないことを決めていた。ここはとてもいい所なんだ。
独占インタビュー第2弾へ続く――


