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元アウクスブルク指揮官バウムが語る監督業。ドイツのユース育成における課題とは?/インタビューvol.2

ほんの数年前までマヌエル・バウムは教師をしながら、ベツィルクスオーバーリーガ(当時7部相当)のSFシュタルンベルクでは監督に、1860ミュンヘン(3部相当)でキーパーコーチに就いていた。そんなバウムだが、今年4月にアウクスブルクの監督を解任され、現在はフリー。ただ言えることは、この数年間でブンデスリーガの監督を任されるに至ったということだ。

インタビューの後半では、スタジアムの無秩序な状態について、一部のメディアが監督業の複雑さを理解していないことについて、選手が成長するためには首を突っ込みすぎない方がよいとする理由について語ってくれた。

39歳のバウムはさらに、ドイツがユース世代のトレーニングで他国に追いつくためにするべきことについて、持論を展開している。

(vol.1は こちら から)

■監督業に求められるものは?

MANUEL BAUM AUGSBURGGetty Images

――バウムさん、あなたのサッカークラブでの職歴は多岐に渡っていますね。とりわけ、チームプランナー、スポーツディレクター、テクニカルディレクターなどはあまり通ってこない道でもあります。これだけ多岐に渡る職種を行うリスクは、あなたにとってどの程度あるのでしょうか?

スポーツディレクターのような上位のマネジャー職では、全ての関係者がまとまって、調和の取れたチームになるように細やかな配慮をしなければならない。そのような環境があってこそ、一緒に仕事を続けていけるのだからね。結局は、監督が本来の仕事から離れる時間が長くならないためにも、そういう立ち回りをするポストが必要なんだ。しかもその仕事内容は最近どんどん多岐に渡ってきている。例えば、セバスティアン・ケール、シモン・ロルフェス、それからトーマス・ヒッツルスペルガーのように、選手としての過去の経験を活かすだけではなく、そのような仕事をするためにはチームワークが必要だと気付かせてくれる人が必要となる。

――最近の監督はより順応性が求められているのですね?

まさにその通り。ユース世代の監督は、戦術の構築や実践にあたって常に堅実にやっている。ユース世代でも比較的異質なチームだといえるが、少なくとも一括りの世代で構成されているグループだ。それに対して、プロのチームでは全体を見渡して考えなければいけない。というのも、31歳と19歳が同じチームにいるのだから、彼らの思考回路の中にある経験やルーティンは全く異なるものだ。監督が持っているアイデアが選手に合わなければ、チームはすぐに道に迷ってしまう。そこで監督の状況への対応力や、臨機応変な対応が必要だという理解そのものがプロの世界では必要になるんだ。サッカーには最高や最強と呼べるような唯一の戦術というものはないが、頂点に至るための方法はたくさんある。一番大切なことは、練習や試合から離れていても選手が「いい感じだ」と言える環境を作ることだね。

■監督とメディアの良好な関係に必要なこと

MANUEL BAUM AUGSBURGGetty Images

――昨シーズンは1部、2部リーグともにたくさんの監督が解任されました。監督業に対して尊敬の念がなくなってしまっているのでしょうか?

そういう面もあるけれど、監督の仕事が複雑だということは認識されていても、週末の結果以外で監督業の成果を評価することは難しいからね。ただ、確かにソーシャルメディアでは余計に敬意を感じられないし、スタジアムでも部分的にはそうなってしまっている。時々スタジアムが無秩序な場所のように思えるし、選手や監督に罵声を浴びせて、家に帰っていくところを見ると、観客も古代ローマの闘技場にいるように振る舞っているようだ。

――監督の仕事について意識を向けるためにするべきことについて、提案はありますか?

まず言えるのは、すべての人が責任を持ってやっているということ。我々監督も、メディアもだ。だから両サイドが手を取り合って、自由に語り、話し合うんだ。例えば「チームが突然8連勝したらどうなるでしょうか?成功を収めた次のシーズンはプレッシャーが増すものですか?」とかね。このような良い関係になっているケースはあまり多くはないよね。監督とメディアが良い関係を築ければ、悪いニュースだけが紙面を賑わすこともなくなるだろう。

――ですが、あけっぴろげに話をする監督はあまりいません。

そうだね。それについては我々に悪い点がある。私たちは、他の監督たちに自分の仕事をできるだけ見せないようにしているんだ。それは自分の思考が盗まれ、あらゆるところで使われるのではないかという、ある種の恐怖心から来るものだ。けれど個人的には、違う考えを持っているよ。

――どういうことですか?

もしメディアが、監督の試合の見方についてもっと理解して知識を蓄えられたら、そして監督の考えをもっと簡単に汲むことができたら、監督に対する評価もしやすくなるだろう。そうすればメディアも監督の判断を理解することができるし、試合後の称賛も批判も正しくできるようになる。しかし、もしそうした判断基準を何も知らず、しかも何も知らされずにいたのであればどうだろう。芸術家がただ描きたくて絵を描いただけかもしれないのに、「この絵は何を意味しているのだろう?」と批評家が無闇に考察するような状況になってしまいかねないんだ。

■学校、監督、選手――タレント育成のための改善点

U21 Germany Amiri Henrichs Nübel medal ceremony

――エリート養成やジュニア育成の面で、近年ドイツは他国に追い抜かれつつあります。以前ジュニアの監督だった経験から、改善点はありますか? 他国に追いつくためには、どういった変化が必要ですか?

3つの領域を見る必要があると思う。学校、コーチ自身の成長、そして選手だ。

――それでは、ひとつずつお聞きします。学校に対して要求したいことは何でしょうか?

私の若い頃は、午後1時に学校を出ていた。その後家に帰って、友達と会い、週に2回はクラブでの練習があった。個人トレーニングはほとんどしなかったから、そのせいで選手の独創性がほとんど育たなかったのだと思うけれどね。一方、今の子供は一日中学校にいるし、共働きの親も多い。午後の時間は一人ひとりが外に出てクリエイティブになれるはずなのに、その時間がどんどん失われているんだ。昔良かった頃のようにまた戻れる、時間は巻き戻せると多くの人が思っている。その結果ほとんどすべてが変わってしまった。今の状況をどうやったら変えることができるのか、考えてみたほうがいいんじゃないかな。日々の暮らしの中から自由な時間を取り戻してやって、子供たちがどこかに遊びに行けるようにしてやるべきだ。

――監督の成長の面はどうでしょうか?

監督を取り巻く環境も近年とてつもない変化があった。私が1860ミュンヘンでU17の選手だった頃、監督はアルバイトでやっていた。正式な職業は教師だったんだ。だから、彼の中で監督業の占めるウェイトはかなり低かった。一方今は、ジュニアのパフォーマンスセンターでも監督業はもはや副業ではなく、主業務たりうるものだ。そして誰もがブンデスリーガの監督になれる。私がそうだったようにね。しかし、もしコーチになった後で監督になりたいと思うのであれば、確実に、結果がついてくるかどうかを気にする必要がある。選手の成長は二の次だ。

――どういうことでしょうか?

私としては、ジュニアのコーチにとってはこういうことを言う監督が必要だと思う。「私の使命は一生U17の監督で居続けることだ」とね。そして、成功できる人なら「それはチームの発展のためであって、もっと高い地位に行きたいからじゃないんだ」と言うだろうね。より良い給与が得られるよう、監督の給与体系を考え直した方がいいだろう。そういう人たちの中でトップに行ける人が出てくるようにね。ただ、経済面の理由だけでプロの世界で働いて欲しいと言っているわけではないよ。

――これまでにそういうコーチに会ったことはありますか?

もちろん。たとえばアウクスブルクにもいたし、他のチームにもいたよ。私自身は常に100%の力を自分の仕事に投じてきた。そうしたら、誰かが私のところにやってきた。しかもそれは私がドアをノックしたからではなく、私に監督になってほしいからだということだった。本当に偶然の賜物だったんだ。私は3部リーグの監督になっただけではなく、アウクスブルクのジュニア・パフォーマンスセンターにも行くことができた。フットボールにはエキサイティングな仕事がたくさんあるね。

――最後に、選手に欠けている点についてもお伺いします。

対応力を上げられればいいと思う。育成に従事してきた監督たちならわかると思うが、最近のパフォーマンスセンターは岐路に立たされている。セレクションの規模はどんどん大きくなっている。昔に比べれば、多くを得るためになすべきことは少なくあるべきだ。今私が働きかけているところだけれど、おそらく一流の才能を一箇所に集める必要がある。そうすれば、究極的には3つの領域を十分なレベルに高めることができるはずだ。もちろん、これらの問題への他国の取り組みを調べていく必要はあるし、それがドイツにフィットするかどうかも考えなくてはいけない。例えば、パリのような大都市にある社会的に不安定な地区出身の人にとっては、プロ選手になることが唯一の手段になる。一方で、そういったことはドイツでは滅多に起こらないだろう。

■選手の創造性を養うために監督がすべきこと

Manuel Baum

――戦略的に育成された選手が増えた一方で、ストリートサッカーのDNAを持つ選手は非常に少なくなりました。

戦術と同時に創造性も必要だ。選手たちはチームのネットワークの中での振る舞いを知る必要があるが、ある局面を打開するアイデアがあるならば、それを実現させるべきだ。1対1がそういった局面の中心になるけれど、監督はミスを許容するメンタリティを持つ必要がある。創造性とは、最初から成功を保証するものではないのだからね。最初はたくさんの失敗を犯すだろうけれど、その失敗は監督が許容しなくてはいけないね。

――しかし、ジュニアの監督が結果や成功に固執するならば、ミスを認めてやることは難しくなります。

残酷な悪循環だね。戦術的なアプローチだけに取り組めば、もちろんミスの確率は増える。私の考えでは、ジュニアでもプロの世界でも監督が深入りしすぎずに、問題の解決を選手自身に委ねた方がいいと思っている。試合形式になればなるほどそれは当てはまる。コンタクトの多い3対3形式の練習がユースでは流行っているけれど、1対1の感覚をどこで使えばいいのかは選手たちが理解しなくてはいいけない。しかし、同時に誰もが振り返らないようなオープンスペースを活用する必要もある。そうすることで同時に勇敢さを養うことができるし、非難もされない。次世代のトレーニングにはいろんなバランス感覚が詰まっているんだ。

――DFBはどの程度これらの課題に取り組んでいるのでしょうか?

分かっているのは、我々が育成領域の事情を他の国と比較したり、この領域でまめに働いたりしていることを知ればDFBは心を動かされるということだ。でも最終的には、全ての関係者が一緒に働かなくてはいけない。簡単ではないことは想像できると思う。例えば、学校のやり方を変えるようなことは特にね。極論、タレントや才能豊かな選手は我が国にまだ埋まっている。我々は十分にターゲティングできていないから、トップクラスの国になっていないということなんだ。

インタビュー・文=ヨヘン・ティットマール/Jochen Tittmar

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

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