今季の明治安田生命J1リーグが2月22日に開幕する。2019シーズンのオープニングゲームを飾るのは、セレッソ大阪とヴィッセル神戸の関西ダービー。他クラブを凌駕する大型補強で今オフの話題をさらった神戸は、新たな新勢力誕生の予感をも生み出している。躍進へのシナリオを描くスペイン人指揮官、フアン・マヌエル・リージョの下、いよいよ迫るC大阪戦へ万全の態勢で臨むつもりだ。【文=小野慶太】
■リージョが推進する“ポジショナルプレー”

アンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキ、そして、新加入のダビド・ビジャ。世界をシンボリックに表現するプレーヤーが、いよいよJリーグのピッチで同時出場する時が迫ってきた。22日にヤンマースタジアム長居に乗り込む神戸のJ1開幕戦は、世界中から多くの関心を寄せられる一戦になるだろう。三人の英傑は果たして、どんなプレーを披露するか。その根底となるチームスタイルは攻撃サッカー。昨季途中から指揮官の任に就いた、フアン・マヌエル・リージョ監督が推進する“ポジショナルプレー”だ。
数的優位などの“優位性”を作りながらボールを前に運ぶポジショナルプレー。後方から相手ディフェンスを動かし、適切なポジションを取りながらアタッキングサードに迫っていく。ピッチの11人全員がボールを動かすイメージを共有することが大切だ。前線からSBまでをこなす三原雅俊は、そのイメージについて「監督がいつも言っているのは『ポジションではなく、相手と味方をしっかり見てプレーしろ』ということ」と説明する。
この三原の言葉は、“リージョ流”を紐解く大きなカギとも言える。左右のウイングはときにインサイドのMFとなり、SBはときに中盤にポジションを取る“偽SB”の役割もこなす。重要なのは徹頭徹尾のポジショニング。ピッチに立った一人ひとりが、様々な局面で求められるプレー要素を千変万化にこなせることが原則だ。
■“色々やらせる”指揮官の狙い

開幕戦までのトレーニングで、左右のウイングやインサイドMF、守備ではSBもこなしてきた郷家友太は18日の練習後、リージョ監督に積極的に話を聞いていた。「サッカーには“ここ”っていうポジションを作らせない。だから、色々やらせている」との回答を得た郷家は「それを脱却するためにやらせている、そういう意図が伝わりましたね。自分にとって良い経験にもなっているし、少しは成長したんじゃないかな」と受け止める。新たな方法論との出会いに19歳の目は輝く。
そのリージョ監督の指導のもと、今季のブレイク候補に躍り出ている一人がGK前川黛也だ。神戸には図抜けた守備力で他を圧倒する韓国代表GKキム・スンギュがいるが、ビルドアップを重視するなら前川の非凡さは魅力的。
昨季終了後には独ハンブルガーSVに練習参加し、「GKからゲームを組み立てる戦術が浸透している」と確認。「神戸はそれをやっているし、自分の武器もそこ。ミスをしながらもいかに良くして、高みに近づけるか。自分はやっていけると自信をもっている」と豪語する。プロ3年目GKも開幕先発を狙う。
■ビジャ、イニエスタ、ポドルスキ。三人の英傑の共演は?

ポジショナルプレーでボールを運んだ先には、ビジャやポドルスキが待っている。敵ディフェンスをあざむく動き出しで7番が躍動すれば、10番は驚愕のドリブルやキック力でアタッキングサード攻略を司る。優れた判断力と圧巻の技術でゲーム支配をけん引するイニエスタを含め、彼らが生み出すコンビネーションがスタジアムを揺らすことは確実だろう。
ただ、対戦相手のC大阪にも技術がしっかりした選手がそろう。今季から新たに就任したミゲル・アンヘル・ロティーナ監督もまた、ポジショナルプレーが信条。昨季までの2シーズン、東京VをJ1昇格プレーオフに導いた実績を持っており、神戸にも我慢の時間帯は必ず訪れる。
郷家は「ビジャから(プレスの)スイッチを入れると思うので、その動き出しを見て出て行く。後ろが準備できていないのに前が行ってもダメ。CBの声を聞きながら、狙いどころをはっきりさせることが大切」と引き締める。あわせて「攻→守」の素早い切り替えも大原則だ。
そして、今季C大阪から移籍した山口蛍にとっては古巣戦であり、スペイン時代にも対戦している指揮官対決、さらに神戸は2季連続となる金曜単独開催の開幕ゲームだ。粘り強く勝点3をつかみ取り、目標とするACL出場権獲得へ力強く踏み出したい。
文=小野慶太
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