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サガン鳥栖は23日に行われる明治安田生命J1リーグ開幕節で名古屋グランパスと対戦する。ルイス・カレーラス新体制となった今季は、元教え子のイサック・クエンカを獲得するなど、上位進出へ着々と準備を進めている。鳥栖の代名詞である泥臭さをベースにしながらも、スペイン仕込みの“ポゼッションサッカー”を上積みする新スタイルは、果たしてチームに浸透するのか。【文＝荒木英喜】
■カレーラスが目指す新たなスタイル
©J.LEAGUEスペイン出身のルイス・カレーラス新監督が今季から率いるサガン鳥栖。就任当初から自らが育ったバルセロナのような、パスをつないで主導権を握るサッカーを掲げ、練習から細かいポジショニングを指示してその土台を少しずつ作ってきた。もちろん、これは昨季までの鳥栖らしさである、相手より走り、球際で激しくプレーするなどのハードワークを捨てるのではない。これら鳥栖のアイデンティティは残しつつ、パスを中心としたポゼッションサッカーを積み上げるということだ。
しかし、2月16日にホームの駅前不動産スタジアムで行われたアビスパ福岡との練習試合では、福岡の前線から積極的にボールを奪いに来るプレッシングに苦しめられ、パスサッカーの片鱗を見せることができなかった。「前半に関しては福岡のほうが非常にいいプレーをしていました。インテンシティ、そしてボールをしっかりと動かしていたところ。そして、しっかりとチャンスを作っていました」と、カレーラス監督が振り返ったほど、J2の福岡に主導権を握られる結果となってしまった。
しかし、後半は5バックに変更したことや、福岡の足が止まったこともあり、サイドからの攻撃が機能しはじめ、逆転勝利に結びつけた。ただ、内容的にはまだまだ目指すサッカーが浸透したとまでは言えない。
高橋義希は「やりたいことをなかなか出せなかったというのが試合全体を通しての正直な印象。（中略）自分たちがやるべきことをやろうとしていましたが、それができなかったのが現状」と反省の弁を述べれば、アンカーに入った高橋秀人は「課題とできた部分と両方あるので、本当にあと一週間で開幕なので、出た課題について改善していきたいなと思います」と振り返った。
高橋秀が言うように、完全非公開となったこの1週間でどこまで修正できたかが、鳥栖にとってのポイントになる。
今節迎え撃つ名古屋は、風間八宏監督体制となって3年目で戦術は浸透し、戦力的にも充実している。昨季J1得点王のジョーは言うに及ばず、ガブリエル・シャビエルや大宮から獲得したマテウスなど、鳥栖にとっては厄介なメンバーが揃っている。彼らの巧みな技術をベースにした人とボールが動くサッカーを鳥栖がいかに止めるかも見どころの一つだ。
■迫力のある前線。得点力不足解消なるか
©Goal一方で鳥栖が勝つためには、当たり前のことだがゴールを奪わなければならない。そんななか、前述の福岡戦で金崎夢生が先発に名を連ねたのは嬉しいニュースだろう。ゴールこそなかったが、動き自体は悪くなく、チャンスに絡んでいた。また、新加入のイサック・クエンカはスペイン時代（サバデル）にカレーラス監督の指導を受けており、戦術を理解している。鳥栖でもサイドからのクロスでアシストするだけでなく、ゴールも奪って存在感を示している。
金崎とクエンカ、彼ら両ウイングがその役割を果たせば、中央に構えるフェルナンド・トーレスはもちろん、インサイドハーフに位置する高橋義や原川力などもゴール前で絡み、見ている者をワクワクさせる攻撃が展開されるだろう。
福岡戦で見せたような、相手サイドバックの背後を使った攻撃を表現できれば、昨季の課題だった得点力不足は解消されるに違いない。万が一、思うような展開にならなくても、福岡戦の後半で見せた新監督の手腕でその流れを変えてくれるはずだ。
新たに「駅前不動産スタジアム」として生まれ変わったホームスタジアムで、これまでのハードワークをベースにした“泥臭い”とも言えるサッカーに、洗練された“ポゼッションサッカー”を上積みするという新たなスタイルへの挑戦を続けている鳥栖。トーレスが言った「今シーズンは本当にビッグなシーズンにしたいと思っています」という言葉を実現させるためにも、この開幕戦で難敵である名古屋にどんな形でも勝利することが大きな第一歩となる。
文＝荒木英喜
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