20231029_Nadeshiko1(C)Nishina Taka

【条件おさらい】なでしこジャパン、ウズベキスタン戦のパス回しはなぜ? 五輪予選のルールと戦略的選択

 なでしこジャパン(日本女子代表)は10月29日、ウズベキスタンで行われた女子オリンピック サッカートーナメント パリ 2024 アジア2次予選2戦目で、ウズベキスタン女子代表に2-0で勝利した。前半10分に南萌華が先制点を決めて、15分に千葉玲海菜がゴールを奪うと追加点を狙わず、パス回しに終始。そのまま試合終了を迎えた。この試合内容が世界中で議論されている。【文=砂坂美紀】

■1位3チーム、2位1チームが最終予選へ

 なぜ、このような展開になったのだろうか。端的にいえばパリ五輪切符をかけてオーストラリア女子代表と直接対決をしたくないからだ。JFA公式サイトによれば、なでしこジャパンの池田太監督は、最終予選の第2戦をホームで戦う(ホーム&アウェイ方式のため)ことや暑熱順化の問題などを避け、少しでもオリンピック出場権を高めたいとしている。もちろん実力的にも女子ワールドカップ(W杯)4位の相手との争いは避けたいところだ。

 あらためてパリ五輪出場へのレギュレーションを説明したい。3次予選に出場できるのは2次予選の12チーム3グループの各組1位と、2位チームのうち成績最上位チームの計4チームだ。3次予選の組み合わせは、2位チームがどのグループから進出するかによって確定する。3次予選では4チームが2チームずつ2組に分かれて来年2月にホーム&アウェイで対戦、各勝者のみが本大会に出場決定する。

 よって、グループCの日本が2次予選1位で通過するとして、各グループから2位進出チームが出た場合に想定する相手は以下の通りとなる。

【2位進出チーム:グループC1位の対戦相手】

20231101_AFCAFC公式Yotubeチャンネル「AFC Asian Cup」▲2次予選2位通過チームのパターンごとの最終予選のカード
  • グループAからの場合:グループA1位
  • グループBからの場合:グループB2位
  • グループCからの場合:グループB1位

 つまり、グループAのオーストラリアと当たりたくなければ、グループAから2位を出さないことだ。

 2次予選前の予想では、グループCの2位はW杯に出場したベトナム女子代表が有力だとみられていた。国内合宿最終日、池田監督は「3次予選でどこと当たるかが、2次予選の結果で決まる。3試合目(対ベトナム)は他のグループの結果をみながら、どう戦うのかを準備する必要がある」と話していた。

■アジアの五輪出場権は2枠

20231029_Nadeshiko2(C)Nishina Taka

 しかし、1戦目でウズベキスタンがベトナムに1-0で勝利したため、2戦目から次のステージを考えた戦い方をしなければならなくなったのだ。グループCから全体2位を出すためには、ウズベキスタンに最終戦でインド女子代表から大量得点をしてもらう必要がある。そこで、冒頭で紹介したように、日本はできるだけ少ない得点で勝つことを戦略的に選択した。

 ウズベキスタンは日本人の本田美登里監督が率いているため、日本との対戦結果をいぶかしがる声があがってしまうのも当然だ。しかしながら、あくまで相対的に考え抜いた最善の方法だったことには間違いない。

 ただ、今のところ全体で2位抜けになりそうなのはグループBの朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)女子代表である。グループBは2戦目で韓国女子代表と北朝鮮が0-0で引き分けたため、両者は勝ち点4で並んでいる。最終戦でタイ女子代表に勝てば勝ち点7となる。グループCのウズベキスタンが勝利しても勝ち点6。現在、グループA2位のフィリピン女子代表も同様に6で追いつくことは難しそうだ。

 現在、3次予選でなでしこジャパンと対戦の可能性が高そうなのはB組2位の北朝鮮だ。ただ、北朝鮮がタイに大量得点して得失点差でB組1位の韓国を上回ったり、韓国が敗戦したりすれば、日本の相手は変わってくる。アジア2枠のパリ五輪出場権をめぐってドラマはまだまだ続く。11月1日の3戦目、なでしこジャパンはベトナム戦のキックオフを19:00に控えているが、12チームそれぞれの結果に注目したい。

広告