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レヴァークーゼンを魅力的なチームにしたシャビ・アロンソ。将来はレアル・マドリーの監督に?

今月上旬、レヴァークーゼンのトレーニング風景を収めたビデオが公開された。数分間の映像の中で、チームはパス練習で期待に応えられず、シャビ・アロンソ監督が不満をぶつけていた。フラストレーションがたまったのか、41歳の監督は、大声で指示を出しながら、練習場のピッチにメトロノミックにボールをまき散らした。

それは、アロンソがレヴァークーゼンというチームをどのように扱ってきたかの縮図だった。2022年10月の就任以来、アロンソはクラブ再建のためにほぼ無制限の権限を与えられてきた。そしてスペイン人指揮官は、その権限で驚くべきことをやってのけた。レヴァークーゼンは12か月の間に、ブンデスリーガで下位に沈んでいたチームから、ヨーロッパリーグでの活躍が期待されながらバイエルンの挑戦者へと変貌を遂げた。

このようなことが起こったのは、クラブの入れ替わりが激しかったからだ。何人かのスター選手は退団し、スター候補生たちと入れ替わった。その一方で、他の選手たちは改革され、より適切な役割に配置された。その結果、危険なチームはさらに良くなっており、このままいけば、シャビ・アロンソは来年もっと大きなクラブで仕事をすることになるだろう。

  • XABI ALONSO BAYER LEVERKUSENGetty Images

    低迷するチームを引き継ぐ

    アロンソの前任者であるジェラルド・セオアネは、ブンデスリーガ開幕から不振にあえぎ、8試合でわずか1勝しかできなかった。バイエルン戦で結果を残せば、事態を打開できるかもしれない、見込みのない好転が始まるかもしれないという期待もあった。しかし、レヴァークーゼンはバイエルンに打ちのめされた。バイエルンは5分で1-0とし、ハーフタイムまでに3点を奪った。セオアネは1週間後に解任され、アロンソが24時間以内に新監督に就任することが発表された。

    元々期待は低かった。その時点でアロンソが監督を務めたのは、レアル・ソシエダのリザーブチームのみで、スペイン2部への昇格を果たしただけだった。高い評価を得ていた監督ではあるものの、経験が足りずヨーロッパの野望を抱くクラブですぐに成功するとは必ずしも期待されていなかった。

    しかし、ラファ・ベニテス、ペップ・グアルディオラ、ジョゼ・モウリーニョ、カルロ・アンチェロッティらの下でプレーし、ヨーロッパ屈指のミッドフィルダーとしてキャリアを積んだアロンソは、すぐにその実力を見せつけた。

    就任初戦でシャルケを打ちのめし、降格候補のチーム相手に4点差をつけた。その後の成績は芳しくなかったが、ウニオン・ベルリンとケルンに勝利し、チャンピオンズリーグではアトレティコ・マドリーと2-2の引き分けに終わった。

    ムサ・ディアビは、かつては正真正銘のワンダーキッドでありながら、道を踏み外したかのように見えたが、調子を取り戻し、電光石火のウイングバック、ジェレミー・フリンポンとともに、レヴァークーゼンを危険なカウンターチームとした。

    しかし、レヴァークーゼンの改善が最も顕著だったのは、守備面だった。セオアネが解任されるまで1試合あたり2失点以上を喫していた。アロンソは3バックを採用し、失点を減らすことに成功したのだ。

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  • Xabi Alonso Mourinho CGTN Sports Scene

    圧倒的な春

    それは、2022-23シーズンの魅惑的な後半戦に顕著に表れていた。チャンピオンズリーグのグループリーグで敗退した後、アロンソ率いるレヴァークーゼンは国内と欧州の両方でジャイアントキラーとしての地位を確立した。ヨーロッパリーグでは、優勝候補のモナコと対戦すると、アウェーでのセカンドレグを3-2で制し、PK戦の末に勝ち進んだ。

    膝の大ケガから復帰したフロリアン・ヴィルツの活躍がこの試合を決定づけた。10番ヴィルツは中盤で指揮を執り、1ゴールを決め、さらに2ゴールをお膳立てした。彼は数週間後にも同じような影響を与え、ユニオンSGを相手に4点を奪って勝利した。

    準決勝でジョゼ・モウリーニョ率いるローマに敗れたものの、アロンソのレヴァークーゼンは再びヨーロッパで戦えることを証明した。

    国内ではさらに好調だった。3月にはバイエルンをホームに迎える。当時の相手はパリ・サンジェルマンをチャンピオンズリーグで敗退させてからわずか5日しか経っておらず、リーグ戦ではドルトムントが急浮上していたものの、ディフェンディング・チャンピオンは9年連続で優勝している国内リーグを支配しているように見えた。

    しかし、その後に起こったことは、彼らのシーズンを危うく狂わせるものだった、後半からレヴァークーゼンはバイエルンを圧倒し、カウンターから得点を挙げて2-1の勝利を収めたのだ。

    バイエルンのハサン・サリハミジッチSD(当時)は、「こんな試合は見たことがない」と語った。「我々はすべてを誤り、木曜日にプレーしたチームにボコボコにされた」と認めた。

    ブンデスリーガ王者を2019年以来初めて破り、レヴァークーゼンにとって大きな一歩となった。シーズン終盤には失速し、5月は1勝もできなかったが、それでもアロンソは、降格の危機に瀕していたチームを6位フィニッシュへと導いた。その一方で、アロンソは見ていて目を見張るようなシステムを導入していた。

  • Bayer Leverkusen celebrate 2023-24Getty Images

    スマートな戦術的調整

    必然的にヨーロッパの目はチームに向けられた。夏には移籍の話題が目立ち、アロンソが退団する可能性もあった。トッテナムが招聘を熱望したものの、最終的にアンジェ・ポステコグルーが就任した。一方、アストン・ヴィラがディアビを6000万ユーロで獲得し、レヴァークーゼンにとってはベストプレーヤーが引き抜かれた。他にもフリンポンはマンチェスター・ユナイテッドとの噂があり、ヴィルツはマンチェスター・シティのターゲットに浮上した。センターバックが必要なリヴァプールは、ピエロ・ヒンカピエの獲得に乗り出していたという。

    結果としてディアビを除き、キープレーヤーは残ったが、チームには新たなリクルートが必要だった。グラニト・ジャカ、ナサニエル・テッラ、ヨシップ・スタニシッチ、ヴィクター・ボニフェイスが加入し、ヨナス・ホフマンとアレックス・グリマルドという実力者も加わった。

    すると、アロンソはシステムを調整。ジャカは中盤でエクセキエル・パラシオスと並び、ヴィルツとホフマンはディアビがいなくなったことに対抗するため、「ダブル10番」として起用された。アロンソは、ワイドなアタッカー陣が幅を利かせなくなったため、攻撃的なベストプレーヤーに中に入ってもらい、センターフォワードをサポートすることを選択したのだ。

    アロンソの新しい3-4-2-1システムは、守備の堅さとトランジションでの縦への速さを保ちつつ、チームの長所を増やした。その結果、開幕から3連勝を飾り、11ゴールを挙げ、バイエルン相手にも2-2のドローを演じた。

  • Victor Boniface Bayer Leverkusen 2023-24Getty Images

    スターストライカー

    しかし、おそらく本当の発見は、前線の新ストライカーだろう。ナイジェリアでスター選手となったボニフェイスは、欧州でのキャリア最初の2年間はケガに悩まされた。靭帯を2度損傷し、ボデ/グリムトのレギュラースターターになったのは2021年のことだった。欧州で100試合しかプレーしておらず、18歳でナイジェリアから移籍してきた22歳にしては、驚くほど少なかった。

    とはいえ、その少ないサンプル数にもかかわらず、彼の紛れもない攻撃的クオリティから目をそらすことはできなかった。昨シーズン、ユニオンSGで7得点7アシストを記録すると、レヴァークーゼンが2000万ユーロを支払って獲得。そして、その投資は今のところ実を結んでいる。

    ボニフェイスはプレシーズンのウェストハム戦で、ハーフボレーで見事なゴールを決め、有望株であることを示した、しかし、それ以来、彼は爆発的に成長している。ブンデスリーガでの先発出場4試合で4得点2アシストを記録し、タイトル候補と目されるチームの主軸を担うという高い期待に応えている。

    アロンソは『プラネットスポーツ』で、9番について「彼は単なる古典的なストライカーでもなく、爆撃機でもない。完璧なんだ。満足しているし、4ゴールも決めている。だが、我々はもっと期待している」と話した。直近のバイエルン戦では決定機を逃す場面もあったが、得点数が今後伸びていくことは間違いない。

  • 20230622_Xabi_Alonso(C)Getty images

    いずれスペインへ?

    すべてはアロンソに始まり、アロンソに終わる。アロンソはチームを掌握し、その無制限ともいえる権力を最大限に活用した。監督が影響力を行使しすぎてチームに不利益をもたらすような状況は、これまでにも数多くあった。モウリーニョ、アントニオ・コンテ、アーセン・ヴェンゲルはいずれも、意思決定がうまくいかず、マキャベリスト的な振る舞いのレベルの差こそあれ、最終的にプロジェクトが崩壊した。

    しかし、アロンソは適切なバランスを見つけたようだ。苦境に立たされたチームを率い、新システムを開発した。獲得した選手は「タイトルを争う選手」とは言えないかもしれないが、レヴァークーゼンが競争力を維持できるよう、十分に賢明な投資を行っている。

    これはレヴァークーゼンのピッチ上のパフォーマンスにとっては朗報だ。しかし、より広い意味では問題がある。この成功を続ければ、アロンソは長くチームにとどまることはないだろう。アロンソはこの夏、2026年までの新契約にサインした。だが、今夏にカルロ・アンチェロッティとの別れを控えたレアル・マドリーの新監督探しでも、アロンソの名前が浮上する可能性は高い。彼はすでにスパーズを断っているが、より大きなチャンスは必ずやってくる。

    レヴァークーゼンは今シーズン、バイエルンにタイトルを譲ることはないかもしれない。しかし、成功を収め続ければ、この先もバイエルンを追い詰めることができるだろう。もちろん、そのためにはアロンソがクラブに長く残る必要がある。もちろん、そのためにはアロンソがまだクラブにいる必要があるが、それはクラブにとって最大の贅沢となっているかもしれない。