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2024-25シーズンの最大の勝者と敗者は? 初の欧州王者PSG、クロップ後任で快挙のスロット、無冠脱却のケインなど…

ヨーロッパの2024-25シーズンはミュンヘンで行われた一戦で衝撃的な終わりを迎えた。パリ・サンジェルマン(PSG)がチャンピオンズリーグ(CL)決勝でインテルを5-0で打ち破り、初のビッグイヤーを掲げた。

トロフィーを渇望していた選手たちやルイス・エンリケ監督、そして会長であるナセル・アル=ケライフィ氏にとって、圧巻の勝利だった。

ヨーロッパリーグ(EL)決勝もトッテナムにとって重要なものとなった。PSGと同様、彼らは長年重要な試合で勝利を収められなかった。カンファレンスリーグ(ECL)では、チェルシーが優勝を飾り、国内リーグではリヴァプール、バイエルン、バルセロナが成功を収めた。

しかし、イタリアではインテルがセリエAでも失望を味わうことに。第37節のラツィオ戦では90分に与えたPKから失点し、ナポリに事実上のタイトルを譲る形となった。

というわけで、今回は2024-25シーズンの最大の勝者と敗者は誰だったのか? GOALがまとめた。

  • TOPSHOT-FBL-EUR-C1-PSG-INTER-FINAL-TROPHYAFP

    勝者: ルイス・エンリケ監督(PSG)

    パリ・サンジェルマン(PSG)のプロジェクトについてどう思うかはともかく、皆が賛同できることは、ルイス・エンリケ監督が偉大なコーチであるだけでなく、人間としても素晴らしいということだ。CL決勝でPSGファンがアリアンツ・アレーナで、6年前に9歳で亡くなった娘・サナに捧げた巨大なティフォは美しいものだった。

    また、元バルセロナ指揮官でもあるルイス・エンリケ監督が、2つの異なるヨーロッパクラブで3冠を達成した2人目の監督となり、称賛を受けたのも喜ばしいことであった。

    「彼がカルロ・アンチェロッティ、ジョゼ・モウリーニョ、ジョゼップ・グアルディオラと同じレベルで語られるに値するか? その答えはイエスだ」と元リヴァプール主将スティーヴン・ジェラード氏は『TNT Sports』で語った。「彼がこの1、2年で作り上げたチームは、あらゆる方法で相手を打ち負かすことができる。このチームは才能、特別な選手たちのグループであり、そんな彼らがまた特別な人間によってまとめ上げられている」

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  • Real Betis Balompie v Chelsea FC - UEFA Conference League Final 2025Getty Images Sport

    敗者:お金で成功は買えないという考え

    通常、エキサイティングな若いチームが登場することは祝うべきことである。そして、今シーズン、チェルシーがCLに復帰し、その後ECLで優勝したことで自分たちが無視できない力を持っていることを証明したことは間違いない。モイセス・カイセド、エンソ・フェルナンデス、そしてコール・パーマーには多くの魅力がある。だが、チェルシーの成功は、一部の人たちにとって違和感を感じるものとなっているかもしれない。その理由は、彼らのやり方によるもの。

    クラブのオーナーたちは自らを「ディスラプター(破壊者)」と称し、多くの若手選手を獲得するために莫大な金額を投入し、できる限り長い契約を与え、不要な選手を容赦なく追い出す「ボムスクワッド」を作ることで、移籍市場を一変させた。

    そして、この無計画な戦略が効果を発揮した。他のクラブが財政規制に縛られていたのに対し、チェルシーは抜け道を利用して、実質的に自分たちの資産を自分たちに売却することでそれを回避した。

    そのため、中立の立場の人々がECL決勝でベティスを倒すサッカー界で最も高価なチームを見て興奮することは難しかったかもしれない。チェルシーはマヌエル・ペジェグリーニ監督のチームよりも高額な選手(カイセドとE・フェルナンデス)を2人も擁しており、お金が成功を買えることを再認識させる結果となった。

  • FBL-ESP-LIGA-BARCELONA-VILLARREALAFP

    勝者: ハンジ・フリック監督(バルセロナ)

    我々はシーズンが始まる前、ハンジ・フリック監督のことを心配していた。なにしろ、バルセロナは、クラブのレジェンドであるチャビ氏を無作法な形で解雇していた。しかも、ラ・リーガ優勝からまだ1年以内のことであったにも関わらず。そのため、フリック監督のチームが好調なスタートを切らなければ、何が起こるか本当に懸念していた。

    しかし、その心配をする必要はなかった。フリック監督と彼のコーチングチームは迅速にバルセロナを形作り、彼の前任者たちよりもうまくフィットさせ、改善させた。我々が最後に見た強いバルサの姿はルイス・エンリケ監督が三冠を達成した時。これほどエキサイティングなチームを見ることは何年もなかった。

    彼らのハイラインと素晴らしい攻撃陣がハマれば、バルサはほぼ確実にゴールを約束してくれる。それはインテルとの壮大なCL準決勝で強調された。その撃ち合いに敗れはしたものの、ハイリスクなアプローチはスペインで報われた。バルサはラ・リーガ、コパ・デル・レイ、スーペル・コパを制し、宿敵レアル・マドリーに何度も勝つことで、ファンにとって今年の成功はより甘美なものとなった。

    バルサは依然としてピッチ外では多くの問題を抱えているが、フリック監督によりピッチ内ではほとんど問題を抱えていない。彼はクラブを取り巻く混乱と論争の中で素晴らしい仕事をこなしている。

  • FBL-NED-EREDIVISIE-AJAX-TWENTEAFP

    敗者: アヤックス

    ニューカッスルの1995-96シーズン、インテルの2001-02シーズン、レアル・マドリーの2003-04シーズン、リバプールの2013-14シーズン、ボタフォゴの2023シーズン、そしてアヤックスの2024-25シーズンも、最大のボトルジョブ(プレッシャーに怖気づき、様々な言い訳を残して敗れる)のリストに追加されなければならない。

    厳しい言葉であり、チーム事情も考慮すべきだが、タイトルがかかるプレッシャーの中、チームが崩壊することもある。そして、それが今季のアヤックスに間違いなく当てはまる。

    フランチェスコ・ファリオリ監督のチームが3月30日にPSV相手に2-0で勝利した時、7試合を残して2位のPSVに勝ち点9差をつけて首位に立っていた。アヤックスの選手たちは「何も決まっていない」と主張していた。そして、PSVのルーク・デ・ヨングでさえ、追いつくには難しいことを認めていた。「残りの試合が少ない中で、これほどのリードを追い抜かれるチームが今まであったかどうか分からない」と言った。

    4月13日にアヤックスがウィレムIIを相手に1点ビハインドから勝利を収め、残り5試合で9ポイントのアドバンテージを維持した後、PSVがアヤックスを追い抜く可能性はより減少した。しかし、その後に起きたのは壮大な崩壊であり、アヤックスは以降の4試合で一つも勝てなかった。それにより、最終節前にPSVが首位に立ち、そして最後、スパルタ・ロッテルダムに勝利してタイトルをPSVが逆転での栄冠を手にした。

    デ・ヨングは喜びを爆発させた。「9ポイント差になった時、我々はすでに諦めていた!」一方、ファリオリ監督は大涙を流し、すぐに辞任した。

  • kvaratskheliaGetty Images

    勝者: ウイング・ウィザード

    モハメド・サラーが33歳になるわずか数ヶ月前に新しい契約を結んだ時、アルネ・スロット監督は「現代のゲームではウインガーがますます重要になってきている」と指摘した。それは真実であると同時に、胸を躍らせた。

    今シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)では、サイドからの侵入の重要性が目立った。ブカヨ・サカがフィットネスを取り戻したことは、アーセナルが準々決勝でレアル・マドリーを撃破するためには不可欠であったし、ラミン・ヤマルとハフィーニャはバルセロナをベスト4まで導く主因となった。ヤマルは非常に優れており、インテル指揮官シモーネ・インザーギは、CL準決勝1stレグでティーンエイジャーに3人のマークをつけなくてはならなかった。

    しかし、初優勝に輝いたのPSGほど、破壊力のあるドリブラーの価値を見事に示したチームはない。ルイス・エンリケ監督はウインガーを非常に愛している。先発メンバーに3人(ブラッドリー・バルコラ、ウスマン・デンベレ、デジレ・ドゥエ)を配置し、さらに1人(クヴィチャ・クヴァラツヘリア)を1月の移籍ウィンドウで獲得したほどだ。その結果は驚異的で、ゲームに対する「グアルディオリズム」の影響について深く懸念を抱いていたすべての人々から広く称賛された。

    過去10年間、戦術的な均一性を引き起こしたNo.10の悲しい死の後、ウインガーの復活が歓迎された展開となった。

  • FBL-GER-BUNDESLIGA-MAINZ-LEVERKUSENAFP

    敗者: レヴァークーゼン

    すべての良いことには終わりがある。そして現代サッカーにおいて、その終わりはこれまで以上に早く訪れる。ちょうど1年前、我々はレヴァークーゼンの無敗でのブンデスリーガ制覇とカップ戦優勝を称賛していた。シャビ・アロンソ監督の天才的な戦術、シモン・ロルフェスSDの賢明な補強、そして偉大な選手たちの輝きと忍耐力のおかげで、'Neverkusen(ネヴァークーゼン)'が'Neverlusen(ネヴァールーゼン)'になった。

    残念ながら、そんな素晴らしいチームは、ヨーロッパのエリートたちによって分解される運命にあった。現時点で、すでにシャビ・アロンソ監督がレアル・マドリー指揮官となり、ヨナタン・ターがフリーでバイエルンへ。ジェレミー・フリンポンのリヴァプール移籍も決まり、フロリアン・ヴィルツがその後を追うかもしれない状況だ。

    それもあり、元マンチェスター・ユナイテッド指揮官エリック・テン・ハグ監督の就任は、数多くの衝撃的な退団に落ち込んでいるサポーターたちを励ますものにはなっていない。

  • Napoli v Cagliari - Serie AGetty Images Sport

    勝者:アントニオ・コンテ監督(ナポリ)

    20チーム制のセリエAの歴史で、10位という低い順位から翌シーズンにタイトルを獲得したチームはなかった。アントニオ・コンテ監督がナポリに就任するまでは。

    そして、それに誰も驚かなかったのは、これがコンテ監督の得意とすることだからでもある。彼は混乱状態にあるチームを引き継ぎ、チャンピオンに変えることができるのだ。ユヴェントスでも、チェルシーでもそうだった。そして今季、ナポリでもそれを再び成し遂げた。基本的に、彼に1週間、試合の準備のために時間を与えられたら、ほぼ無敵である。

    もちろん、この夏に彼がナポリを去る可能性はあり、アウレリオ・デ・ラウレンティス会長のような人物の下で、彼のように矛盾したキャラクターがどれだけ働くことができるかはわからない。しかし、ある意味それは重要ではない。コンテ監督はすでにナポリの人々に4回目のタイトルを届け、イタリアサッカーの歴史の中で3つの異なるチームでタイトルを獲得した初の人物としての地位を確固たるものにした。

    そのコンテの偉大さに対する疑問がまだある場合、このことについて考えて欲しい。彼はセリエAで6シーズンをフルで指揮し、そのうち5回のスクデットを獲得している。

  • AC Milan v Bologna - Coppa Italia FinalGetty Images Sport

    敗者:ミラン

    まずは良いニュースから。ミランは今シーズン、インテルと5回対戦し、一度も負けなかった。そして、それ以外のすべてが悪いニュースだ。

    ミランの2024-25シーズンは散々で、セリエAでは8位に終わり、欧州カップの出場権を逃した。1月のスーペルコッパ・イタリアーナの勝利が多く語られたが、それはクラブのアメリカ人オーナーの下でのまた一つの偽りの始まりに過ぎなかった。

    2022年8月に、レッドバードはスクデットを獲得したばかりのクラブを引き継いだが、彼らは過去3年間で、元テクニカルディレクターのパオロ・マルディーニ氏のような人物を退任させた。彼はわずかな予算でタイトルを勝ち取るチームを作り上げた。

    ステファノ・ピオリ監督は昨夏、2位になったことで解任された。彼の後任であるパウロ・フォンセカ氏は、最も無礼な方法で解任され、その後任となった同胞のセルジオ・コンセイソン氏も今季終了後、わずか6カ月で契約解除となった。

    サン・シーロを取り巻く終わりなき不確実性にもかかわらず、ミランは先月ローマでコッパ・イタリアを持ち上げてシーズンを締めくくるチャンスがあった。しかし、彼らはボローニャから屈辱を受け、チームの給与の約3分の1で運営されているクラブに敗れた。

    結果、ミランの経営陣の全員が辞任するように要求されることに。「みんな去れ!」と最後のリーグ戦を前にサン・シーロの外で広げられた横断幕に書かれていた。「この苦痛からミランを解放せよ」

  • Napoli v Cagliari - Serie AGetty Images Sport

    勝者: マンチェスター・ユナイテッドから見放された者たち

    マテウス・クーニャは非常に勇敢な男だ。 マンチェスター・ユナイテッドに向かうブラジル人は、「ポテンシャル」を発揮したいと語っているが、彼は、退団することで状況を好転させている選手たちが数多くいるクラブに加わろうとしている。

    過去、このシーズンだけを見ても、アルバロ・カレーラスは昨夏マン・Uからベンフィカに移籍し、現在ではレアル・マドリーのターゲットになっている。アーロン・ワン=ビサカはウェストハムでプレミアリーグ最高の右サイドバックの1人としての評価を取り戻した。

    その他では、マーカス・ラッシュフォードがアストン・ヴィラで活気を取り戻し、ジェイドン・サンチョも同様にチェルシーでプレーしたECL決勝でゴールを奪った。

    もちろん、ベティスに移籍したアントニーもその一人。このウインガーはマン・Uの歴史の中で最も無駄な支出と見なされている(9500万ユーロ+ボーナス500万ユーロ 計:約139億円)が、彼は1月にスペインに移籍して以来、非常に良いパフォーマンスを見せており、2年ぶりのブラジル代表メンバーにも招集された。

    そして、オールド・トラフォードからの追放者の中で、最も運命の逆転を遂げたのはスコット・マクトミネイ。彼は、PSGから加入したマヌエル・ウガルテにより、夏の移籍市場閉幕直前にナポリに3000万ユーロで売却された。

    だが、マクトミネイは、アントニオ・コンテ監督の下でキャリア最高のシーズンを楽しんだ。マン・Uが1974年以来の最も悲惨なシーズンを終えた数時間後、マクトミネイはスクデット獲得の立役者として、セリエAのMVPに選ばれた。

    これらを考慮すると、クーニャがマン・Uに加わるのは勇敢な行為ではなく、愚かな行為かもしれない。

  • Kylian Mbappe Real Madrid 2025Getty

    敗者: キリアン・エンバペ(レアル・マドリー)

    昨季ラ・リーガとチャンピオンズリーグを制したレアル・マドリーは昨夏、キリアン・エンバペをチームに加えました。紙の上では、彼らは止められないように見えた。だが、ピッチ上では、バルセロナに繰り返し打ち負かされた。

    サンティアゴ・ベルナベウでのスタートが困難なものとなったエンバペは、シーズンの終わりにヨーロッパでの得点王に贈られるゴールデンシューを獲得した。しかし、マドリーは無冠で終えた。

    エンバペの加入は間違いなくチームのバランスを乱したが、それだけがヴィニシウス・ジュニオールとジュード・ベリンガムの不発を説明する理由にはならない。負傷も大きな問題で、マドリーはシーズンの大部分を、特に守備陣の主要メンバー抜きでやりくりをしなければならなかった。

    同じミスは二度と繰り返されないだろう。マドリーはすでにアンチェロッティ監督からシャビ・アロンソ監督に替え、先発メンバーを強化するためにディーン・ハイセンとトレント・アレクサンダー=アーノルドを獲得した。ここからの数週間でさらに多くの選手獲得が期待されており、昨夏の移籍が正しい決断だったかどうかを考えているエンバペに、より大きな安心をもたらすだろう。

  • FC Bayern Muenchen Teams Celebrate Winning The LeaguesGetty Images Sport

    勝者: ハリー・ケイン(バイエルン)

    ハリー・ケインの呪いはついに解かれた。彼の成功を喜べない人は、かなりのひねくれ者かもしくはアーセナルファンかもしれない。

    ケインは長い間、世界で最も優れたストライカーの一人だったが、彼が獲得すべきだったタイトルをこれまで一つも手にすることができなかった。

    彼が地元のクラブを去るという苦渋の決断を下し、バイエルンに活躍の場を移すと、不幸に見舞われた。レヴァークーゼンがブンデスリーガ史上最高の国内シーズンを展開し、バイエルンは大混乱のシーズンを迎えた。こういった出来事によって、ケインは本当に呪われているかのように映された。

    しかし、彼は自分の得意とすること、つまりゴールを決め続け、31試合で26ゴールを挙げた後に、ブンデスリーガのタイトルを手にした。

    「人々が今、何を話すか見てみよう!」31歳で汚名を返上したストライカーが、『The Times』に喜びの声を語った。

  • InzaghiGetty Images

    敗者:インテル

    来シーズンもシモーネ・インザーギ監督がインテルにいるのかどうかはわからない。彼には多くのオファーがあり、サウジアラビアからのオファーは、彼を最も高給な監督にするだろうと報じられている。

    たとえ彼がサン・シーロにとどまることを決断したとしても、インテルの時代がCL決勝で屈辱な終焉を迎えたことは明らかである。そこでは、インテルの高齢化したチームが、PSGの若き俊英たちに圧倒され、一方的な戦いで衝撃的な結果に終わった。

    インテルはより良い結果を得るに値した。彼らは過去3シーズンにわたりヨーロッパで最高のチームの一つであり、数ヶ月前にはトレブル(3冠)に迫っていたが、コッパ・イタリアを宿敵ミランに、セリエAをナポリに譲り、そしてミュンヘンで歴史的で敗北を喫した。

    チームは大幅な刷新が必要であり、インテルは再び移籍市場の名匠ジュゼッペ・マロッタ会長の手腕に頼らざるを得ない。クラブに潤沢な資金があるわけではないからだ。

    もちろん、インテルは依然として名門の一つ。彼らは復活を遂げるだろう。ただ、それは今いる選手たちではないかもしれない。指揮官もインザーギではないかもしれない。

  • Liverpool FC v Crystal Palace FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    勝者: アルネ・スロット監督(リヴァプール)

    ユルゲン・クロップ監督の後を継いでリヴァプールの監督になることは、不可能な仕事だと言われてた。しかし、アルネ・スロット監督はいとも簡単にそれを成し遂げた。

    もちろん、クロップもその手助けをした。昨シーズンの最終日には、後任者の名前をアンフィールドに歌わせ、前年の夏に成功した中盤の大改造を行い、リヴァプールを良好な状態のまま引き渡した。また、自身が最後のシーズンでプレミアリーグやCLを制覇できなかったことで、スロットの後任としての仕事をほんの少し楽にしたと冗談も言い放った。

    それでも、2024-25シーズン前には、レッズがタイトルを獲得すると予想する者はいなかった。長年クロップ監督の下でプレーし、勝利を重ねてきた選手たちが新指揮官にどう反応するのか、誰も分からなかったからだ。しかし、リヴァプールは徹底的な調査から、スロット監督が理想的な後継者であると確信し、それを証明した。

    3人のスター選手(フィルジル・ファン・ダイク、モハメド・サラー、トレント・アレクサンダー=アーノルド)の契約に関する気を散らす話題があったにもかかわらず、オランダ人指揮官は重要な戦術的修正、決定的なポジション変更、そして落ち着きのある冷静さによって、リヴァプールを2度目のプレミアリーグタイトルに導いた。

    スロット監督がリーグ制覇すること自体が傑出した業績であったため、彼がタイトル争いを圧勝したことは驚嘆すべきであった。

    これは、リヴァプールの国内外のライバル全てにとって大きな懸念となるべきです。最小限の支援でスロットがこれを可能にするものであるなら、フロリアン・ヴィルツ、ジェレミー・フリンポン、ミロシュ・ケルケズといった選手たちを操る来シーズンに彼が何を成し遂げるかを想像してみてほしい。

  • Pep GuardiolaGetty

    敗者:ジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)

    ジョゼップ・グアルディオラ監督がコミュニティ・シールド獲得をどれだけ強調しようとしても、事実として、2024-25シーズンを無冠で終えたことは、これまでの輝かしい監督キャリアにおける最大の失敗と見なされるだろう。

    たしかに、シティにはいくつかの重大な負傷アクシデントがあったが、プレミアリーグで彼らを上回ったアーセナルや、チャンピオンズリーグのプレーオフラウンドで彼らを圧倒したレアル・マドリーほどではなかった。そういう意味では、今季は言い訳ができないだろう。

    グアルディオラ監督自身は、フィル・フォーデン、カイル・ウォーカー、ジャック・グリーリッシュなどの多くの主力のスターがパフォーマンスを大きく落としているのに、若手の才能たちを長い間無視していたことを認めている。そしてこれは、昨夏にチームを刷新しなかった指揮官の責任だろう。

    結果として、彼らは冬の移籍市場で約1億7500万ポンド(約338億4600万円)を新戦力に費やした。しかし、その成果はあまり多くなかった。シティはシーズン最終日にCL出場権を確保したが、FAカップ決勝ではクリスタル・パレスに屈辱的な敗北を喫した。その後、グアルディオラ監督は、来シーズンに向けてクラブが小さいスカッドを与えなければ、エティハド・スタジアムを去ると奇妙な脅迫も残した。

    「5人か6人の選手を冷凍庫に入れたくない」「私の魂には、スタンドにいる選手たちに試合に出られないと言うのは不可能だ」と彼は記者たちに語った。

  • Tottenham Hotspur Fans Watch The UEFA Europa League Final In North London PubsGetty Images Sport

    勝者:トロフィーを求めるファン

    それは必ずしも“アンダードッグ(かませ犬、勝ち目の薄い人やチームを指す言葉)”の年ではなかったかもしれないが、2024-25シーズンは長年苦しんできたサポーターたちにとって確かに美しいシーズンだった。

    2020年のパンデミックの影響で見送られていたリヴァプールのファンは、1990年以来初めてアンフィールドでタイトルの勝利を祝うことができた。クリスタル・パレスのファンは、オリヴァー・グラスナー監督率いるイーグルスがFAカップ決勝でマンチェスター・Cを1-0で下し、クラブ史上初の主要タイトルを手にした。

    その2カ月前の同じ会場では、ニューカッスルがカラバオカップ決勝でリヴァプールを上回った。これは70年ぶりの国内タイトルだった。

    ドイツではシュトゥットガルトが28年ぶり4度目のDFBポカールを制覇し、イタリアではボローニャがミランを1-0で下して、1974年以来初めてコッパ・イタリアを手にし、街全体を歓喜に包んだ。

    最も重要な勝利はおそらくPSGがチャンピオンズリーグを初めて手にしただが、トッテナムも特筆すべきものだ。彼らは失敗と同義語になり、「スパージー」という言葉が肝心なところで失敗することを指すまでになっていた。しかし、ついに運がスパーズに微笑み、ヨーロッパリーグ(EL)の決勝でマンチェスター・ユナイテッドを下して栄冠を手に。プレミアリーグでは17位と苦しんだが、来シーズンのCL出場権を獲得した。

    ソン・フンミンはトッテナムが最後にトロフィーを獲得した2008年を指して、「17年!」「これは私がいつも夢見てきたことです。今日はついにその日が来たのです!」と歓喜した。