ルイス・エンリケ、アントニオ・コンテ…2024-25シーズン欧州リーグの監督トップ10

コヴァチが1月29日にボルシア・ドルトムントの監督に就任した際、チームはブンデスリーガの順位表で11位に沈み、19試合でわずか7勝しか挙げておらず、首位でライバルのバイエルン・ミュンヘンに22ポイント差をつけられていた。前任者のヌリ・シャヒンはチャンピオンズリーグのノックアウトステージ進出を導いたが、クラブの規模を考えると、シーズン前半は間違いなく大惨事だった。

コヴァチの下でも状況はすぐには好転しなかった。新監督は最初の6試合で4敗を喫し、トップ4フィニッシュは遠のいていった。しかし、重要なのは、クロアチア人監督がシャヒンの4-2-3-1フォーメーションを3-4-3に変更したこと。これによりドルトムントの守備は格段にまとまり、結果も徐々に改善された。

ドルトムントの戦術変更は攻撃陣にも活気を注入し、特にセルー・ギラシが得点ラッシュを開始。ドルトムントは最終8試合で7勝1分（26得点）をマークし、シーズン最終日にフライブルクをかわして4位を確保した。

コヴァチはクラブを危機から救っただけでなく、ドルトムントを欧州で最も効果的なトランジションチームの一つに変貌させた。チャンピオンズリーグ準々決勝進出の過程でも、欧州のエリートと互角に戦えることを証明。突然、イエローアンドブラックの未来は再び明るくなった。復活を遂げたBVBのフォワード、カリム・アデイェミが雄弁に表現したように、それはすべてコヴァチが与えた「一喝」のおかげだ。

ヌーノはノッティンガム・フォレストで素晴らしい仕事をした！ 2023-24 シーズン半ばに厳しい状況に陥ったにもかかわらず、クラブをプレミアリーグに残留させたことで十分な評価は得られなかったが、ほとんどの外部関係者は、今回もまた残留争いになるだろうと予想していた。

しかし、ヌーノは急速な成長のための計画を立て、それを完璧に実行した。夏にはニコラ・ミレンコヴィッチ、エリオット・アンダーソン、モラトを補強し、クリス・ウッド、アンソニー・エランガ、カラム・ハドソン・オドイ、モーガン・ギブス＝ホワイトが活躍できる効果的なカウンターを展開し、フォレストはすぐにトップ4争いに加わった。

フォレストのチャンピオンズリーグ出場権獲得は、終盤で力尽きたが、2025-26 シーズンのカンファレンスリーグ出場権は、決して軽視できるものではない。シティ・グラウンドのファンは30年間大陸の舞台を見ることはなかったが、ヌーノは、物議を醸しているオーナー、エヴァンゲロス・マリナキスとの関係悪化により退団する見通しとなったものの、チームをここまで急速に成長させたことで、フォレストの殿堂入りを果たした。

元レスター・シティ監督のラニエリは、どこへ行っても「奇跡の男」としての評判が先立つ。1000倍の圧倒的劣勢からプレミアリーグ優勝に導いた経験が、その理由だ。イタリア人監督は2023-24シーズンにカリアリで「大逆転劇」を演じ、キャリアを華々しく締めくくったが、6か月後に引退を撤回した。

その理由は、ラニエリが愛するローマが危機的状況に陥っていたから。彼はただ手をこまねいて見ているわけにはいなかった。11月にスタディオ・オリンピコに戻り、3度目の監督就任を果たした際、ローマはセリエAで12位に沈んでおり、ダニエレ・デ・ロッシとイヴァン・ユリッチが、1979年以来最悪のシーズンスタートの代償を払う形となった。

ラニエリの復帰は当時絶望的な措置と見られ、最初の4試合で3敗を喫したことでその印象はさらに強まった。しかし、彼はすぐにローマの主要な選手たちから最高のパフォーマンスを引き出し、特にマッツ・フンメルス、レアンドロ・パレデス、ジャンルカ・マンチーニ、マティアス・スーレが活躍し、チームは12月15日から5月12日までセリエAで19試合無敗の驚異的な連勝を記録した。

信じがたいことに、ローマはシーズン最終日にトリノに勝利し、ユヴェントスがヴェネツィアで勝利を逃せば、トップ4フィニッシュが確定する状況で最終戦に臨んだ。ラニエリのチームは任務を果たしたが、結局ユヴェントスも勝利を収め、オリンピコスタジアムのファンは落胆した。しかし、ラニエリは73歳という年齢にもかかわらず、再びすべての予想を覆し、世界中に自身のモチベーターとしての比類ないスキルを再確認させ、英雄として引退する。

グラスナーは、昨年 2 月にロイ・ホジソンに代わってパレスの監督に就任すると、プレミアリーグの最初の13試合で7勝を挙げ、チームを予想外の10位に導いた。しかし、夏の移籍期間にミカエル・オリーズ、ジョルダン・アイェウ、ヨアキム・アンデルセンといったチームの中心選手が相次いで退団し、グラスナーはチームの核を失った。

パレスは新シーズンに向けて、エディ・エンケティア、マクサンス・ラクロワ、イスマイラ・サールを獲得してその穴を埋めることができたが、8試合を終えた時点で順位は最下位に転落し、グラスナーは自身の将来について厳しい質問を浴びた。しかし、CEOのスティーブ・パリッシュをはじめとするイーグルスの経営陣は、決断を下すことを避け、その忍耐がすぐに報われた。

年明け後、パレスはプレミアリーグで8勝を挙げ、チャンピオンのリヴァプールと並ぶ成績を収め、危険圏から大きく離れた。実際、グラスナー率いるチームはヨーロッパの出場権獲得圏内にも近づいており、FAカップ決勝進出のためフラムとアストン・ヴィラを破るなど、驚異的な努力を払ったことを考えると、驚くべき結果だった。

イーグルズはウェンブリーでの決勝戦で、エベレチ・エゼの素晴らしいカウンター攻撃からマンチェスター・シティを破る、大会史上屈指の番狂わせを成し遂げた。グラスナーはパレス初の主要タイトルをもたらしたことで即座に伝説に。彼が2025-26シーズンのヨーロッパリーグ参戦に留まるなら、これは非常に特別なものの始まりとなるかもしれない。なぜなら、彼のチームは現在、最高峰のチームと互角に戦えるハイパワーな強豪チームに成長したからだ。

ボローニャにチャンピオンズリーグのサッカーを初めてをもたらしたマネージャーの後をどう継ぐのか？ それが、昨年夏にスタディオ・レナート・ダッラ・ラでチアゴ・モッタの座を引き継いだイタリアーノが直面した質問だった。

イタリアーノの立場は、キープレーヤーのリッカルド・カラフィオーリ、ジョシュア・ザークツィーの売却でさらに困難を極めたが、彼はレモ・フロイラーやフアン・ミランダなど、一連の賢明な補強で対応。新体制は一夜にして結束するわけにはいかず、2024-25 シーズンのセリエ A 開幕7試合で1勝しか挙げられず、チャンピオンズリーグとの両立に苦戦したが、10月29日のカリアリ戦で2-0の勝利を収めたことで、運命の転機を迎えた。

ボローニャはヨーロッパの舞台から早期に敗退したが、クラブキャプテンのルイス・ファーガソンが重傷から回復したことを追い風にして、徐々にトップ4争いに再浮上。ファーガソンとフロイラーは中盤で素晴らしいコンビネーションを見せ、ピッチの上端ではリカルド・オルソリーニ、ダン・オドイエ、サンティアゴ・カストロが素晴らしい連携プレーを披露した。

2月から3月にかけて9試合中7試合で勝利を収め、4位入りを確実にしたボローニャだったが、終盤で失速。しかし、コッパ・イタリア決勝でACミランを1-0で下し、51年ぶりのタイトル獲得という救いの手をつかんだ。適応力と冷静さを兼ね備えたイタリアーノにとって、これは大きな功績だった。前任のフィオレンティーナ時代には3度の決勝敗退を経験していただけでなく、ボローニャが「一発屋」として見なされるのを防いだからだ。

ハウは2021年11月にニューカッスル監督に就任以来、素晴らしい仕事をしてきた。サー・ボビー・ロブソン時代以来初めてチャンピオンズリーグの試合を戻すなど、チームを再建してきた。しかし、今シーズンの開幕前には彼の立場に疑問の声が上がっていた。その理由は、マグパイズが2023-24シーズンにプレミアリーグで7位に沈んだためで、サウジアラビア資本のオーナーグループが持つ豊富な資金力を活用してトロフィーを獲得する適任者ではないとされていた。

しかし、今では、このイギリス人監督の能力に疑問を呈する者は誰もいない。ハウは、カラバオカップでの優勝により、ニューカッスルが70年ぶりの国内タイトル獲得を達成し、プレミアリーグで5位に入賞してヨーロッパのトップリーグへの復帰を成し遂げた。

彼は、多作なフォワードのアレクサンダー・イサク、ミッドフィールドのメトロノームであるサンドロ・トナーリ、そしてディフェンスの巨人であるダン・バーンに多大な恩義があるが、ニューカッスルの復活の功績の大部分はハウに属している。元ボーンマス監督の戦術の柔軟性は、多くの重要な試合でニューカッスルに優位性をもたらし、選手たちはハウのために壁を突破する意志を示している。

ハウは、ニューカッスルの野心的な「プロジェクト 2030」の指揮を継続する権利を獲得しており、来シーズンの目標はタイトル争いとなるだろう。ただし、マグパイズがイサクをライバルチームに奪われることがないという条件付きではあるが。

コンテはユヴェントス、チェルシー、インテルでタイトル獲得を成し遂げた連続優勝監督だが、トッテナムでの不運な監督就任期間を経て、その評価は大きく損なわれた。イタリアの戦術家は、北ロンドンのトッテナムで「自分かわいそう」という態度をとり、クラブの幹部、選手、ファンから孤立。2023年3月の解任後、オファーが殺到しなかったのは当然だった。

しかし、ナポリは昨年夏、セリエA史上最悪のタイトル防衛劇の後にコンテにキャリアの救いの手を差し伸べた。この挑戦はコンテの情熱を再燃させ、彼はプレミアリーグからスコット・マクトミネイ、ビリー・ギルモア、そしてインテル時代の愛弟子ロメル・ルカクを招き入れ、パルティノペイの再生に取り組んだ。

この3選手がナポリの輝かしい復活の基盤を築いた。元マンチェスター・ユナイテッドのミッドフィールダー、マクトミネイは特に攻撃的ポジションで影響力を発揮し、16得点に貢献してクラブの4度目のスクデット獲得を牽引。セリエAのMVP賞も受賞した。

コンテはアンドレ・フランク・アンギサ、アレックス・メレト、マッテオ・ポリターノらもベストコンディションを取り戻させ、シーズン中盤にスターウイングのフヴィチャ・クヴァラツヘリアを売却した後も、相手のミスを容赦なく突く高強度システムを導入し、インテルに食らいいた。

ナポリを10位から1位に導いたことは、コンテの輝かしいキャリアにおける最大の功績であり、クラブ会長のアウレリオ・デ・ラウレンティスは、ユヴェントスへの復帰噂が囁かれる中、55歳のコンテを留任させるため、あらゆる手段を尽くしている。

スロットがユルゲン・クロップの後任としてリヴァプールの監督に就任。クロップはプレミアリーグとチャンピオンズリーグの両方でレッズを頂点に導き、アンフィールドに「ヘヴィメタル」サッカーをもたらし、毎週ファンを驚かせた愛される存在だった。

多くの点で、スロットはクロップの正反対だった。元フェイエノールト監督の彼は、控えめな監督で、冷静な威厳を漂わせ、クロップよりも試合のペースコントロールに重点を置く。目立つものではないが、そのアプローチは、昨シーズンチャンピオンのマンチェスター・シティに9ポイント差で敗れたリヴァプールを、はるかに高いレベルに引き上げた。選手たちはスロットの4-2-3-1システムにシームレスに適応し、プレミアリーグの頂点に躍り出た。11 月 2 日、ブライトンを2-1で破り、その座を堅持している。

リヴァプールは4試合を残してタイトルを獲得し、リーグ最高の攻撃力を誇り、失点数はアーセナルに次ぐ2位だった。スロットはモハメド・サラーの能力を最大限に引き出し、ライアン・フラーフェンベルフ、アレクシス・マクアリスター、コーディ・ガクポ、ドミニク・ソボスライの潜在能力も開花させ、誰もが予想したよりもはるかに早く、クラブはクロップから脱却することができた。

オーナーの FSG は、夏の移籍市場でいくつかの弱点を補強するためにスロットをバックアップする必要があるが、動じることのないオランダ人監督は、リヴァプールを新たな成功の王朝へと導き、世界最高の監督の一人としての地位を確立した。

チャビのバルセロナ監督としての2年間の在任期間は、2022-23シーズンのラ・リーガ優勝を果たした点では決して失敗ではなかった。しかし、クラブの伝説的な元ミッドフィールダーである彼が率いたチームは、エンターテインメント性に欠けるプレーが目立ち、昨年5月に退任した際にはレアル・マドリーの影に完全に隠れていた。その状況を打破するため、バルセロナは元バイエルン・ミュンヘンで3冠を達成したフリックを招聘。彼は以来、バルセロナが誇る華麗なサッカーを復活させ、いくつかの重要な変更を加えている。

その変更点としては、途方もなく高いディフェンスラインと、ポゼッションよりもスピードとパワーで試合をコントロールすることに重点を置いた、より直接的なプレーが挙げられる。その結果、バルサはプレーしやすくなったが、10代のセンセーション、ラミン・ヤマル、復活した元リーズのウイング、ハフィーニャ、ベテランの9番、ロベルト・レヴァンドフスキが、最終ラインで暴れ回る、地球上で最も破壊的な攻撃陣となった。

フリック監督は、レアル・マドリーを含むどのチームよりも得点を上回ることができることをよく理解した上で、大きなリスクを冒している。レアル・マドリーは今シーズン、宿敵バルサとのクラシコで4連敗を喫した。そのうちの1試合はコパ・デル・レイの決勝戦だった。バルサはリーガの王座も当然のように奪還し、準決勝のインテル戦での一連の疑わしい審判の判定がなければ、チャンピオンズリーグも制していたかもしれない。

リオネル・メッシでさえ、このバージョンのバルセロナを「素晴らしい」と形容しており、これはフリックにとって最も高い賛辞と言える。ドイツ人監督はヨハン・クライフのトータルフットボールモデルを現代化し、バルセロナを再び世界地図に載せた。このチームが現在の軌道を維持すれば、新たな王朝が誕生する可能性もある。

PSGはカタール資本のオーナーの下でチャンピオンズリーグ制覇を目指し莫大な資金を投入してきましたが、2019-20シーズンの準優勝を除けば、クラブサッカーで最も栄誉あるトロフィーを手にするまでには至っていなかった。パルク・デ・プランスにはメッシ、キリアン・エンバペ、ネイマール、アンヘル・ディ・マリア、ズラタン・イブラヒモヴィッチ、エディンソン・カバーニなど、数多くのスター選手が次々と加入してきたが、最大の舞台での突破口は開かなかった。これは、どの監督も彼らを真のチームに鍛え上げることができなかったためだ。

ルイス・エンリケもPSGでの初シーズンでその課題をクリアできなかったが、昨年夏にエンバペがマドリードに移籍した後、クラブは重大な方向転換を迫られた。以降、若手選手の育成がビッグネームの獲得よりも優先され、ロッカールームの自己中心的な文化は根絶された。PSGはもはや個人の輝きに頼らず、攻撃と守備を一体化したチームプレーで勝利をつかむようになった。

ルイス・エンリケは、バルセロナで成功を収めたボール支配を重視した4-3-3システムを依然として好んでいるが、パリサンジェルマンを次のレベルに引き上げるため、 調整を加えた。例えば、ウスマン・デンベレを9番の役割に移し、ヌーノ・メンデスとアクラフ・ハキミのサイドバックに攻撃参加の自由度を拡大している。

一方、ジョアン・ネヴィス、デジレ・ドゥエ、ウィリアン・パチョ、クヴァラツヘリアなどへの巨額投資も行われたが、彼らはすべてルイス・エンリケのチームを微調整するために慎重に選ばれた選手たちだ。PSGはシーズン後半戦を通じてほぼ完璧なプレーを披露し、国内ダブルタイトルを獲得し、悲願のチャンピオンズリーグ制覇も成し遂げた。

ルイス・エンリケは自身を「地球上で最高の監督」と称しており、3冠を獲得したいま、その評価は疑いようのないものとなった。