Coutinho GFXGetty/ GOAL

フィリペ・コウチーニョの凋落:バルセロナの記録的契約からアストン・ヴィラの望まれない存在へ

草は向こう側でより青くなるとは限らない。

アンフィールドでロベルト・フィルミーノは感動的な見送りを受けたが、アストン・ヴィラの選手としてフィリペ・コウチーニョの姿はそこにはなかった。リヴァプール戦ではベンチ外となり、この5年間でどれだけ自分の株が下がったかを思い知らされることとなってしまった。

30歳の今がキャリアの全盛期であるはずなのに、コウチーニョは負傷し、ヴィラでは人気がなく、リヴァプール時代の輝きを取り戻せないでいる。

彼はどこで道を踏み外してしまったのか。

  • Philippe Coutinho LiverpoolGetty Images

    リヴァプールとの面倒な別れ

    2018年1月にコウチーニョがリヴァプールからバルセロナに移籍したとき、それは誰にとっても良い取引のように見えた。選手は生涯の夢を叶え、大金を追い求め、リオネル・メッシやルイス・スアレスと一緒にプレーするチャンスを手に入れ、バルサは絶頂期の選手、中盤の策士としてアンドレス・イニエスタから学び、そしてそれを引き継ぐことができる最高の技術を持ったテクニシャンを手に入れる。

    一方のリヴァプールは、1億4200万ポンドという史上最高額の移籍金を手に入れ、チームに再投資することができる。コウチーニョは前年の夏、バルサの関心が高まる中、「謎の負傷」を使ってまで、クラブを去る意思を明らかにしていた。当初は移籍を拒否されたものの、リヴァプールは彼の退団に対応でき、さらには退団後も成長できると内部で判断した。

    そして、その通りになった。コウチーニョの移籍金は、レッズが欧州チャンピオン、世界チャンピオン、そしてプレミアリーグのチャンピオンになるためのキープレーヤー、フィルジル・ファン・ダイクとアリソン・ベッカーの獲得に充てられた。

    当時、彼らはブラジル人の退団を嘆いたかもしれないが、その後、彼を思い出すことはなかった。

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  • PHILIPPE COUTINHO BARCELONA LALIGA 30102021Getty Images

    夢は悪夢に

    一見、コウチーニョとバルセロナは完璧にマッチしているように見えた。クリエイティブな選手をどこよりも高く評価するクラブに入団する。何が悪いというのだろう?

    しかし、結果的には失敗だった。バルサでの4年間で、コウチーニョはラ・リーガを2度、コパ・デル・レイ、そしてチャンピオンズリーグを獲得したが、現実は少し異なる。

    まず、チャンピオンズリーグは、カタルーニャで1シーズン過ごした後、レンタルで加入したバイエルン・ミュンヘンで獲得したものである。そして、その2つのリーグタイトル獲得においても、彼はほとんど主要なプレーヤーではなかった、2017-18シーズンの途中から加入し、翌年はメッシ率いるチームが王座を守ったため、34試合でわずか5ゴールしか記録できなかった。

    コウチーニョはバルサで全コンペティションに106試合出場し、そのうち先発出場はわずか70試合だった。28ゴールを挙げ、その中には目を見張るようなゴールもあったが、イニエスタの後を継ぐという点では、全く及ばなかった。

    歴史上3番目に高額な選手であったことを考えると、カンプ・ノウで過ごした時間は壮大な失敗としかいいようがない。

  • Philippe Coutinho Bayern Munich 2019-20Getty Images

    ミュンヘンへの寄り道

    チャンピオンズリーグ優勝を目指してバルセロナに入団したコウチーニョが、レンタル先で夢をかなえたのは、皮肉である。リーグ優勝を果たしたとはいえ、スペインでの最初のフルシーズンは、決して良いものではなかった。リヴァプールに歴史的大逆転を許したチームの一員であり、2019年の夏にはアトレティコ・マドリーからアントワーヌ・グリーズマンを獲得したため、バルサがコウチーニョを起用する意思がないことが明らかになった。

    それでも、バイエルンへの移籍は多くの人を驚かせた。ブンデスリーガ王者は800万ポンド弱を支払って、彼をレンタルしたのである。コウチーニョは「新しい挑戦」と言い、バルサは「彼のキャリアの新しいステージでベストを尽くしてほしい」と願った。

    すると、そのシーズンのチャンピオンズリーグ準々決勝でバイエルンとバルセロナが激突。新型コロナウイルスのパンデミックにより、一発勝負となった大会で8-2とバイエルンが勝利し、コウチーニョは2得点を挙げた。それからわずか10日後の決勝戦では、後半に交代出場してパリ・サンジェルマンに勝利し、優勝メダルを手にした。

    しかし、バイエルンはコウチーニョを買い取ることはなかった。

  • Philippe Coutinho Steven Gerrard Aston VillaGetty Images

    ジェラードのギャンブル

    バルセロナに復帰したコウチーニョは、ベストなパフォーマンスを発揮することができなかった。2020-21シーズンは、レギュラーポジションを確保するのに苦労し、全コンペティションでわずか14回しか出場できず、翌年も同じような状況で、1月にはクラブが彼を見限った。

    そんな中、リヴァプール時代のチームメイトであるスティーブン・ジェラードからの電話で、プレミアリーグへの復帰を決断。アストン・ヴィラは、コウチーニョが29歳でプレーすることを想像していたクラブではなかったが、ジェラードの存在と、かつて活躍したリーグでキャリアを復活させるチャンスに恵まれ、コウチーニョは当初6か月のレンタルで契約した。

  • Philippe Coutinho Aston Villa 2022-23Getty Images

    一貫性を保つのに苦戦

    コウチーニョはミッドランドで幸先の良いスタートを切った。デビュー戦のマンチェスター・ユナイテッド戦で得点し、当初はジェラードとともに大成功を収めたかのように見えた。おなじみのドリブル、キラーパス、ロングレンジのシュートが復活し、笑顔とハングリー精神も戻ってきた。

    昨夏には約1700万ポンドで完全移籍が決まったが、それ以来、ほとんど活躍の場を失ってしまった。ジェラードは10月に解任され、コウチーニョの調子を上げることができなかったことが、解任の主な要因の1つに挙げられた。後任のウナイ・エメリは、このブラジル人選手をほとんど起用していない。エメリ就任以来、コウチーニョが先発したのは、1月のFAカップでリーグ2のスティーブネージに敗れたときと、2月のアーセナル戦で2-4と敗れたときだけだった。

    結局、ヴィラファンに姿を見せたのはこれが最後となった。先週末のトッテナム戦の後、エメリ監督はコウチーニョが故障したことを明らかにし、残りのシーズンも棒に振ることになるだろう。

  • Philippe Coutinho Aston VillaGetty

    次はどこへ?

    ヴィラでのコウチーニョはもう見納めなのかと思うのは当然である。トップレベルにあるコウチーニョを最後に見たのはいつだろうか。

    彼はまだ30歳だが、安定したパフォーマンスを発揮していたのは、少なくとも3年は前だ。リヴァプールでの最後の3シーズンは38ゴールを挙げ、エリート攻撃的ミッドフィルダーとしての地位を確立したが、それ以降の6シーズンは43ゴールにとどまり、その名声は大きく損なわれている。

    今夏の移籍市場で、高給取りで契約期間が3年残っているコウチーニョが売却される可能性は高い。問題は、誰が彼を獲得するかということだ。誰が、彼の魔法を信じることに賭けてくれるのだろうか。

    それは間違いなくリヴァプールではないだろう。フィルミーノ、ジェームズ・ミルナーらが感情的に別れを告げたあのとき、コウチーニョがアンフィールドを照らしていた時代は、とうの昔に終わっていることを強く感じさせたのだった。