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マグワイアのユナイテッドでのキャリアが失敗した理由。高額な移籍金、傲慢な姿勢…

マンチェスター・ユナイテッドは、エリック・テン・ハーグ監督の下で成功を収めている。日曜日のアストン・ヴィラ戦に1-0で勝利した赤い悪魔は、チャンピオンズリーグ出場権争いで5位のリヴァプールに7ポイントの差をつけ、ライバルとの試合もまだ残っている。

また、リーグカップ決勝でニューカッスルに2-0で勝利し、6年間続いたトロフィーなしのときに終止符を打ち、サポーターは今、騒がしい隣人マンチェスター・シティとのFAカップ決勝戦を心待ちにしている。

だが、その復活劇の中で、ハリー・マグワイアはほとんど傍観者に過ぎない。

この30歳は今シーズン、ユナイテッドで15試合、そのうちプレミアリーグでは7試合しか先発出場していない。実際、テン・ハーグがルーク・ショーをヴィクトル・リンデロフとともに即席のセンターバックとして再び起用したヴィラ戦では、4分間しか出番がなかった。

マグワイアはまだユナイテッドのキャプテンだが、ブルーノ・フェルナンデスは現在90%の確率で腕章を巻いており、夏には正式な交代が行われるだろう。

また、監督がマグワイアの退団を承認し、オールド・トラッフォードでの長期的なプランにこのディフェンダーが含まれていないとも報じられている。

マグワイアがユナイテッドに加入した当初は、国内最高のCBの一人とみなされていた。それから4年、彼は嘲笑の的となり、大きなステップダウンを余儀なくされているように見える。では、なぜこのような事態に陥ってしまったのか。

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    高額すぎた値札

    マグワイアは2019年、多くのトップクラブに目をつけられ、プレミアリーグで最も安定したパフォーマンスを発揮する選手へと成長していた。

    ペップ・グアルディオラはマンチェスター・シティで彼を望んでいたが、最終的に彼の獲得競争を制したのは、ディフェンダーの世界移籍記録を塗り替えたユナイテッドであった。レスターはユナイテッドから8000万ポンドを引き出し、マグワイアはオールド・トラッフォードで6年契約を結んだ。

    シティはその移籍金が正当な評価だと思っていなかったが、ユナイテッドはオーレ・グンナー・スールシャール監督の最初のフルシーズンに向け、賭けに出たのだった。

    スールシャール監督は「彼は今、最高のCBの一人だ。彼はゲームを読むのが上手で、ピッチ上で強い存在感を放ち、プレッシャーの中でも冷静さを保つことができる」と高く評価していることを明かした。

    マグワイアは、クラブでの最初の2か月間、堅実なプレーで監督の言葉を裏打ちし、「長期的な視点が重要だ。5、6年後に、このクラブで成功したかどうか、その時に判断してくれ」と抱負を語った。そして、高額な移籍金に伴う期待にどう対処するかという質問を受けたが、「まったく気にならないよ」と付け加えた。

    ユナイテッドサポーターは、マグワイアが1年前のリヴァプールでのフィルジル・ファン・ダイクのような変革のサインになることを期待したが、彼はその基準には到底達していなかった。

    そして、彼が何と言おうと、8000万ポンドの移籍金は、初日からマグワイアの首に重くのしかかるものだったのだ。

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  • Maguire-Man-Utd-2020Getty

    早すぎたアームバンド

    マグワイアはオールド・トラッフォードでの生活に素早く適応し、スールシャールはデビューシーズンからわずか6か月で思い切った決断をした。アシュリー・ヤングが冬にインテルへの移籍を決めたため、マグワイアをユナイテッドの正式なキャプテンに指名したのだ。

    当時、リーダー格の選手たちに恵まれていなかったチームだが、ドレッシングルームで最も経験豊富なダビド・デ・ヘアの方が良い選択であるように思われた。

    マグワイアは、腕章を巻くことで生じる余分な責任を負う準備ができていなかったにもかかわらず、この機会に飛びついた。キャプテンとは、他のチームメイトに自信を与え、若い選手たちの手本となる必要があるが、ユナイテッドのシャツを着たマグワイアのパフォーマンスは、フラストレーションがたまるものから、恥ずべきものまで様々であった。

    ユナイテッドは2020-21シーズンにプレミアリーグで2位となったが、翌シーズンの前半、マグワイアの欠点が無慈悲に露呈し、歯車が狂いだした。スールシャールはクリスマス前に解任され、後任のラルフ・ラングニックは、ユナイテッドがプレミアリーグ史上最悪の勝ち点を記録する中、流れを安定させることができなかった。

    悪い結果が出た後のマグワイアは、ソーシャルメディアに空虚な謝罪文を投稿して定期的に批判され、イングランド代表として出場した際には、国内のサポーターからブーイングを受けた。

    天賦の才能や個性の強さでは敵わない、ブルーノ・フェルナンデスやラファエル・ヴァランといった選手の加入も、マグワイアに不利な光を当てることに拍車をかけた。

    今シーズン、彼は腕章をかろうじて糸でつないでいるが、もし彼がキャプテンを任されなかったら、ユナイテッドでの時間はもっとスムーズに進んでいたのかもしれない。

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    ミコノス島事件

    マグワイアに対する世間の評価は、2020年の夏、彼がギリシャで不運な家族旅行に出かけたことから変わり始めた。妻、父、兄、妹も一緒にミコノス島へ行き、リラックスした時間を過ごすはずだったのだが、その旅は悪夢と化してしまった。

    マグワイアはバーの外で乱闘した後に逮捕され、二晩にわたって警察に拘留された。その後、法廷で警察官への暴行、逮捕への抵抗、贈収賄未遂の罪で有罪となり、21か月の執行猶予付き判決が下された。

    彼は不正行為を否定しており、口論は2人の見知らぬ人間が妹のデイジーに未知の物質を注射した後に起こったと主張し、警察署に連行された後に殴られたとも語っている。

    マグワイアは控訴を開始し、国際的な有罪判決を無効にし、彼の訴訟は今年6月にギリシャの裁判所で審理されることになっている。

    警察はマグワイアの証言に異論を唱え、ある警官は法廷で、マグワイアが逮捕後にこう言ったと主張した。「俺は大金持ちだ、金はある、マンチェスター・ユナイテッドのリーダーなんだ」。

    マスコミがこの事件を取り巻くあらゆる情報に飛びついたことで、マグワイアはかつてないほど厳しい監視の目にさらされることになり、やがてユナイテッドで復帰した後も、彼のパフォーマンスは低下していった。

    2022年、『タイムズ』のインタビューで、彼はあの夏を振り返り、「信じてくれる人もいれば、信じない人もいる。しかし、ミコノス島について一つ言えることは、後悔はしていないということだ」と話した。

    マグワイアの良心は明確かもしれないが、彼はもう警備チームなしで見知らぬ人だらけの場所に行くことはないだろう。マグワイアはインタビューの中で「自分がスポットライトを浴びていることを、少し自覚するようになったかもしれない」とも付け加えている。

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    ミスの数々

    昨年8月にアラン・チューリング研究所が発表した調査によると、マグワイアはクリスティアーノ・ロナウドに次いで、ネット上で最も罵倒されている選手であるという。

    2022年4月、マグワイアはチェシャーにある自宅に爆破予告を受け、クラブは「一線を越えた」と声明を発表。同僚のルーク・ショーも「これほどの非難はサッカー界では見たことがない」とショックを受けたことを認めていた。

    あのレベルの罵倒は、サッカー界には存在しないし、マグワイアが気に病む必要はない。しかし、ソーシャルメディアの世界では、知名度の高い選手がパフォーマンスを発揮できない場合、常に標的にされる。マグワイアは確かに、あまりにひどい罵詈雑言にさらされる筋合いはないが、彼は自分自身を批評される立場に置いているのだ。

    昨シーズン、彼は失点につながる16ものミスを犯し、2022-23シーズンも同様に信頼できる存在になりえていない。マグワイアは、ボールを持っても持たなくても常に遅く、判断を誤りがちで、ユナイテッドに何度もプレッシャーを与えている。昨シーズンのユナイテッドの苦戦のスケープゴートにされたのは、彼の存在がそれほどに際立っていたからだ。

    ユナイテッドのレジェンド、ネマニャ・ヴィディッチはリオ・ファーディナンドのYouTubeチャンネル「FIVE」の中で、マグワイアの問題を指摘している。

    「マグワイアが問題なのは、彼が良いパフォーマンスをしないことだ。パフォーマンスが良くないと、誰かにどうすればいいかを言うのは難しい。リスペクトを得られないからね。一般的に、キャプテンは誰よりも先に行動し、模範を示さなければならない。そうすれば、他の選手もそうしてくれるだろう」

    マグワイアは最近でもヨーロッパリーグ準々決勝セカンドレグセビージャ戦でも脆さを露呈した。テン・ハーグ監督は、後方に多くの負傷者がいたため、彼を起用せざるを得なかったが、大舞台で彼を信頼できないことは、もうわかっていたはずだ。結局のところ、彼はユナイテッドに到着したときから、マグワイアの存在をユナイテッドの最大の弱点として認識していたのだ。

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    序列の低下

    マグワイアはシーズン序盤、ブライトン、ブレントフォードとの対戦で、夏に獲得したリサンドロ・マルティネスと一緒にスタメンに選ばれたが、低調なパフォーマンスによってテン・ハーグのオーディションで見事に失敗してしまった。

    その後、ホームで行われたリヴァプール戦では、ヴァランがユナイテッドを勢いづかせた。それ以来、マグワイアは交代要員に甘んじなければならず、フェルナンデスは彼の不在中にキャプテンとしてチームを牽引し、素晴らしい結果を残している。

    マグワイアがプレーしていないときのユナイテッドは、単純に良いチームである。マグワイアがボールを奪われたり、安易なビルドアップがなければ、敵が突く隙間ははるかに少なくなる。

    指揮官はそれを知っているからこそ、ヴァランとマルティネスが負傷で残りのシーズンを欠場することになった今でさえ、ショーをマグワイアの代わりに使っているのだ。

    クラブはこの夏、最終ラインさらに強化しようと考えており、ナポリのキム・ミンジェ、モナコのアクセル・ディサシ、そしてアヤックスのユリアン・ティンバーをターゲットとしていることが伝えられる。

    マグワイアはまだ2025年まで契約を残しているが、ポジション争いが激化すれば、彼がここにとどまる意味はほとんどないだろう。テン・ハーグはメディアの前では彼を支持するかもしれないが、明らかに彼を今後のユナイテッドにとって不可欠な選手だとは考えていない。

  • Harry Maguire react Manchester United Sevilla second leg 2022-23Getty Images

    傲慢な姿勢

    マグワイアは、ユナイテッドで過ごした期間中、その応用力の高さには文句のつけようがなかったが、変化をあまり受け入れなかった。デビュー以来、ディフェンダーとしての能力は向上しておらず、自分自身の能力に対する誤った自信が、彼の足かせになっている。

    11月、自分の弱点について質問されたマグワイアは、次のような答えを返している。

    「クリスティアーノ・ロナウドは、サッカー界で最も偉大な選手の一人であり、彼が批判されるのを毎日見てきた。それもサッカーの一部だ。僕は自分自身に大きな信念を持っている。トレーニングのピッチに入り、全力で働き、自分の力を出し切るだけだ」

    また、イングランド代表での地位が彼に誤った自信を与えている。彼は2022年のカタール・ワールドカップでも存在感を示し、準々決勝進出に貢献。2024年EURO予選の開始時にも、ガレス・サウスゲイトのチームに選ばれている。

    ユナイテッドでレギュラーになれないことが、マグワイアをあまり悩ませていないのは、自分には大きな改善点はないと確信しているからだ。その傲慢な態度は、結局のところ、オールド・トラッフォードでのキャリアを好転させる妨げとなった。最高のプレーヤーは進歩し続けるために、自分のプレーに欠けているものを得るためにたゆまぬ努力をするものだ。

    ロナウドほど向上心を持ってトレーニングに取り組む選手はおらず、マグワイアが彼と自分を比べることはお門違いだ。つまりマグワイアはユナイテッドのようなクラブで成功するために必要なメンタリティを持ち合わせてはいなかったのだ。

    クラブは夏に彼を放出する際には、投資に対する大きな損失を受け入れなければならない。しかし、可能な限り高い水準を要求するクラブと監督の価値観を共有できない選手を残すよりも、ちっぽけなプライドを捨てたほうがいい選択になるだろう。