このジローナ戦、ソシエダの右サイドはまさに久保のテリトリーだった。彼と同じ背番号を付けていた……というよりも、フットボール界で「14」という数字を特別なものとした故ヨハン・クライフは、かつてこんなことを語っていた。「サイドの選手はボールを持って相手に勝負を挑んでも、ボールを持たないでタッチライン際に張り出していても、どちらの場合でも重要な存在になり得る。サイドに張っていれば内側にスペースが生まれるからだ」。バルセロナの下部組織出身選手はその考え方を完璧に理解し、状況が求める最善のプレーを選択し続けていた。
キックオフから2分後、久保はまずボールとともに輝いた。ペナルティーエリア内右でボールを持ってドリブルを仕掛けると、相対していたロドリゴ・リケルメをあっさりとかわし、彼に後ろから倒されてPKを獲得。これをミケル・オヤルサバルが決め切り、ソシエダは先制した。
久保は輝き続ける。プレーが左サイドで侵攻してるときにもサイドに張り出し、チャンスを待ち続けながら味方選手たちにスペースを供給。そして24分には2点目もお膳立てした。再び右サイドでボールを持った14番は、左足で少しボールを蹴り出して対面するハビ・エルナンデスのマークをずらし、素早く、もう一度左足を使ってクロス。折り返されたボールはスピード、落下地点とともにまさに完璧で、ダビド・シルバが左足で合わせて枠内に押し込んだ。
久保が特別な才能を持っていることは誰もが知るところだが、この試合中にもその“格”を上げたように思えた。2点を導いてからというもの、ジローナは彼のことを本当に警戒するようになった。14番がボールを持てば必ず2選手がマークに付く。だが、そうした状況でも久保は慌てなかった。ボールを足元に置きながら与える圧は凄まじく、2選手は容易に飛び込めない。そこから鋭利なドリブルを仕掛けたり意表を突くスルーパスを出したりと、ジローナにとっての脅威になり続けた。