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シェイ・レイシーという“天才”:リヴァプール生まれの18歳がマンチェスター・ユナイテッドで飛躍の時へ!【NXGN】

バルセロナとブラジル代表の伝説、ロナウジーニョ。彼の代名詞とも言える“エラシコ”は、世界中のサッカーキッズを虜にした。そしてそんな偉大なレジェンドの活躍から数年後、リヴァプール生まれの3歳の少年が彼と同じ“エラシコ”で大きな注目を集めることになる。

4歳でマンチェスター・ユナイテッドに加入したシェイ・レイシーは、あれから14年が経過した現在、U-18チームでその華麗なテクニックを披露し続けている。昨シーズン終了後のアジア遠征ではついにトップチームデビューも飾り、先週にはプレシーズントレーニングにも参加。いよいよ、本格的にトップチームに合流することになりそうだ。

今回は、リヴァプール生まれながらマンチェスター・Uでの本格ブレイクが期待される18歳を紹介する。

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    すべての始まり

    父親はイアン・ラッシュやケニー・ダルグリッシュが活躍した時代にリヴァプールのアカデミーに通い、長男のパディもレッズのアカデミー出身、もう1人の兄ルイスもウェールズのリーグで活躍するなど、サッカー一家に生まれたシェイ・レイシー。しかし2007年生の彼は、そんなサッカー一家でも際立った才能を持っていた。兄パディは『GOAL』の取材でこう語ってくれた。

    「裏庭に人工芝とゴールがあった。彼がボールを扱うスキルは、僕や兄貴では到底及ばなかったよ。シェイは3歳でロナウジーニョの“エラシコ”を真似ていて、それが得意技だったんだ。試合のたびにコーナー付近でそれを成功させていたね。リヴァプールに住んでいた頃はそのスキルでちょっと有名だった」

    その後リヴァプール、エヴァートン、ブラックバーン、マンチェスター・シティの練習に参加したものの、父親はマンチェスター・ユナイテッドこそが最適な場所として選んでいる。そこには、クラブの教育に関する姿勢も関係していたという。パディはこう続ける。

    「あるコーチは5歳の頃から『シェイ、ドリブルばかりするな。パスをしろ』と言っていたけど、父は『ドリブルができるならそれを磨け』と考えていたんだ。ユナイテッドは、5歳からでも素晴らしいことがたくさんある。コーチの目をしっかり見ることを教え込まれるし、握手もする習慣を学べるね。そして自分で話すこと、個人としての成長を促される。シェイは内気だったけど、クラブが殻から引っ張り出してくれたんだ」

    「ユナイテッドは常に彼を大切に扱ったくれた。シェイには常にレッドカーペットを敷いてくれたね。すべての年齢層のキャプテンを務めたこともあって、頭の中で『僕はマンチェスター・ユナイテッドなのか、それとも(故郷の)リヴァプールなのか』という葛藤があったみたいだね。そして、彼は暗黒面を選んだんだ!」

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  • Shea LaceyGetty

    ブレイクのきっかけ

    シェイ・レイシーはユースレベルで素晴らしい活躍を重ね続けた。レアル・マドリー、バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、ユヴェントスなど強豪と対戦する大会から帰ってくるたびに、最優秀選手賞を手に帰って来る。ある年には、若きラミン・ヤマルを抑えてMVPにも輝いていた。パディはある日、シェイがトロフィーを持つ写真をSNSに投稿したが、ユナイテッド側から「過度な注目とプレッシャーを防ぐため」に削除を求められたという。パディはそれに従ったが、やがてシェイのパフォーマンスはそれだけでは抑えられないほど注目を集めるようになる。

    15歳の時にはU-18チームでプレーしていたが、ウォルヴァーハンプトン戦で決めた初ゴールとなる圧巻のロングシュートは当時衝撃を与えた。さらにウルブズとの2試合目では、今度は冷静なループシュートでGKを嘲笑っている。そのテクニックには誰もが目を奪われ、世界が無視できない存在になっていった。

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    憧れのトップチームへ

    シェイ・レイシーはU-18での最初の2シーズンで19試合に出場、5ゴール5アシストを記録した。ケガのため長期離脱を強いられたが、それでも素晴らしい成績だ。そして2024年4月、17歳の誕生日直後に初のプロ契約を結んでいる。それからも勢いは留まることを知らず、先日のアジア遠征メンバーにも帯同し、2試合合計45分間プレーしている。初のトップチーム出場となったが、カゼミーロやブルーノ・フェルナンデスといったスターにも臆さず自分のスタイルを主張し、得意のドリブルで何度も見せ場を作っている。

    この影響でさらに注目が集まることになったが、パディ曰く周りからのそうした声は一切気にしていないという。「シェイは本当に謙虚だし、周りの声は気にしないよ。何の影響もないみたいだ。14歳から彼のプレーやゴールは話題になったけど、ただただトップチームでプレーすることだけを目標としているんだよ」と語っている。

    そんなシェイ・レイシーに、ユナイテッドのレジェンドも期待を込める。同じトリプルSスポーツに所属するウェイン・ルーニー氏は、直接電話で「素晴らしいね。そのまま続けて欲しい」と伝えている。

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    最大の強み

    もちろん、彼の最大の強みはドリブルとパンチ力ある左足だ。だがパディは「すべては彼の状況判断能力化から来ているんだ。シェイがまだ12歳の時、僕はプロとしてプレーしていた。チェスターのノンリーグでプレーしていたし、12歳の少年からタックルで奪うのは簡単だと思っていたよ。でも、彼の判断能力の鋭さにすぐ気づいた。ファールを誘う方法もわかっているし、ボールを奪えない位置に置くのもうまい。そしてあの動きと切り返しは、おとなになっていた僕も驚かされたよ」と振り返っている。

    パディはまた、シェイの運動能力と意識の切り替えは、ボクシング愛からくるものだと主張する。「彼は2年間ボクシングをやっていて、あまりに熱中するから父に止められたんだ。家族の中で最も才能があったし、コーチは彼がもしフットボールを辞めるならば、ボクシングの練習を再開すると言っていたよ。決して教えられないような技術を身に着けていたんだ」と語った。

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    改善の余地

    だがもちろん、成長しなければいけない点は多い。パディは特に、ヘディングと右足を改善すべきと主張する。

    「彼は子供の頃からヘディングで得点したことがないから、その意識を植え付けないといけないね。リオネル・メッシがヘディングで得点するシーンを繰り返し見せて、『彼ができるなら君もできる』と伝えているよ。右足はだんだん改善されていて、得点も増え始めたけど、まだ改善の余地はあるね」

    「彼が成長するにつれ、多くのことが起こるはずだ。年齢を重ねて成熟するにつれ、できることが増えていく。それでも彼の学ぶ姿勢、フットボールへの情熱はいいね。一番最初に練習に来て、一番最後に帰るタイプなんだ。彼の努力は報われるはずだよ」

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    近いタイプは…

    パディは少年時代のシェイについて、「赤ちゃんのことからメッシを崇拝していたよ。いつだって彼のプレーの虜だったね」と振り返っている。実際、そのドリブルスキルから世界最高の選手と比べる声も少なくない。

    しかし本人は、最も近い選手として別の選手を挙げた。同じくマンチェスターのクラブのアカデミーで育ち、トップチームで花開いたイングランド代表選手である。

    「フィル・フォーデンが一番似ていると思う。走り方やボールの受け方もね」

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    飛躍の時へ

    シェイ・レイシーは新シーズン、主にユナイテッドのU-21チームでプレーする予定だ。レンタルの計画もない。だからこそ、プレシーズンツアーの5試合は彼にとって絶好のチャンスとなる。アモリム監督は昨季、エイデン・ヘブンやチド=オビといった10代の選手にも積極的に出場機会を与えていた。彼もまた、同じようにステップアップする可能性は高い。パディもこう続ける。

    「シェイは自分がファーストチームでプレーする準備ができていると思っているようだ。4歳半からチームにいて、ようやくそこに近づいたんだ。トップチームでプレーしている姿は、僕ら家族にとっても現実じゃないように思えたね。でも、本当に起きていることなんだ。成長過程でケガをするのはよくあることだけど、彼はそのことからも学んでいる。野心に満ち溢れているよ」

    またシェイは、身近な人からプロとしての振る舞いを学ぶことができる。パディは「ピッチ外についてはアドバイスも遅れるよ。避けるべきことや態度、ベテラン選手との接し方や、時間厳守なんかはね。彼は素晴らしい選手だし、だからこそ素晴らしいキャリアを築けると自信を持っている」と語っている。

    「でも、彼はプロとして正しい生活を送っている。僕が18歳のこと、飲み歩いていたのは馬鹿げていたね。彼は正反対。派手さはないかもしれないが、それを幸せに受け入れているよ。プレミアリーグで活躍するのはそれが必要だ」

    「ケガをせず、うまくいくことを願っている。ファーストチームに食い込むことをね。彼は何かを与えられる選手なんだ。家族全員が応援するよ。シェイがトップチームでプレーする時、僕らの家族はリヴァプールとマンチェスター・ユナイテッドで真っ二つになるだろうね……でも、本当に心から応援したい」