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2022-23シーズンのセリエA予想展望。◎本命、○対抗、▲3番手、△連下、☆注目のクラブは?

昨シーズンは、地元のライバルであるインテルを2ポイント差で退けたミランが、11シーズンぶりのスクデットを戴冠。王者奪還を狙うインテルや4位のユヴェントス、3位のナポリ、ジョゼ・モウリーニョ監督2年目のローマなど、今季は一層と競争力の激しいリーグ戦となることが予想される。今回は、イタリア在住ジャーナリストの片野道郎氏が、◎本命、○対抗、▲3番手、△連下(TOP4候補)、☆注目のクラブを選出し、新シーズンのセリエAを予想展望する。

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    ◎本命:インテル(昨季2位)

    基本布陣:3-5-2

    • GK:ハンダノヴィッチ(オナナ)
    • DF:シュクリニアル、デ・フライ、バストーニ
    • MF:ダンフリース、バレッラ、ブロゾヴィッチ、チャルハノール(ムヒタリアン)、ゴセンス
    • FW:ルカク、ラウタロ・マルティネス

    ロメル・ルカクの帰還――。昨シーズン2位止まりだったインテルを、あえて優勝候補の本命に推す理由があるとすれば、この一点に尽きる。

     監督がアントニオ・コンテからシモーネ・インザーギに替わった昨シーズンのインテルは、最終的に2位に終わったとはいえ、リーグ最多の84得点を挙げ、失点もリーグ2位と、数字の上では優勝したミランとまったく遜色なかった。最終的な勝ち点差2は、直接対決となったミラノ・ダービーでの敗戦によるもの。本当に僅差のスクデット争いだったのだ。

     とはいえインテル自身の勝ち点は前年比でマイナス7。そこに足りないものがあったとすれば、ルカクが保証していた前線の基準点としての機能、そして何よりもゴールの数ということになる。後任としてCFを務めたエディン・ジェコは、組み立てへの参加という点で高い貢献はあったものの、得点は13止まり。パートナーであるラウタロ・マルティネスと合わせた2トップの合計得点も、優勝した20-21シーズンの41から34へとマイナス7の減少だった。

     ルカクの復帰は、彼自身が去ったことによって生じたこの欠落を、最も直接的な形で埋め合わせる補強である。1年前に1億1500万ユーロで彼を獲得したチェルシーが、わずか800万ユーロのレンタル料での貸し出しを承諾したというのは、常識的にはあり得ない話。それを実現したインテルのジュゼッペ・マロッタCEOの手腕は称賛に値する。

     今夏のチーム強化は、その昨シーズンからの継続路線が基本。そして戦力の上乗せはルカクだけに留まらない。レギュラークラスの放出を左WBのイヴァン・ペリシッチ1人に抑える一方で、ルカクに加えて攻撃的MFヘンリク・ムヒタリアン、ビルドアップへの貢献度が非常に高いGKのアンドレ・オナナをいずれもフリーで獲得するなど、総合的に見て陣容は厚みを増している。

     チームの骨格はここ3シーズン大きく変わっておらず、インザーギ体制も2年目を迎えて戦術的な完成度が高まることも期待されるなど、前年比でマイナス要素が見当たらない点は昨シーズンと明らかに異なるところ。プレシーズンマッチを見ても、ルカクはすでにチームに自然に溶け込んでおり、昨シーズンと比べてもセンターラインがより強固になった印象がある。

     唯一の不安要素は、クラブの財政事情から今夏の移籍収支をプラスにする必要があり、今から8月末までの間に、主力クラス放出の可能性が残されているところ。かねてからPSG行きの噂があったCBシュクリニアルは残留が濃厚になってきたが、右WBダンフリースにプレミアリーグの複数のクラブが興味を示している状況。移籍が成立した場合は、後釜の獲得が大きな課題として浮かび上がるだろう。

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    ○対抗:ミラン(昨季優勝)

    基本布陣:4-2-3-1

    • GK:メニャン
    • DF:カラブリア、カルル、トモリ、テオ・エルナンデス
    • MF:トナーリ、ベナセル(アドリ)
    • MF:メシアス(サレマーカーズ)、デ・ケテラーレ(B・ディアス)、レオン(レビッチ)
    • FW:ジルー(オリギ)

    本命ではなく対抗という位置づけに置いたものの、昨シーズンの王者ミランもスクデットの最有力候補の一つであることに変わりはない。補強による陣容の充実度、チームの完成度などを総合的に見ても、インテルとは実質横並びの関係にあると見るべきだろう。 昨シーズンは下馬評でインテル、ユヴェントスに後れを取るという評価だったにもかかわらず、若いチームがシーズンを通して目に見える成長を遂げ、終盤戦に首位に躍り出るとそのままの勢いで逃げ切り。期待を上回る戦いぶりで11年ぶりのスクデットを勝ち取った。

     その立役者であるステファノ・ピオーリ監督の下で4年目を迎えるこのチームの強みは、若さならではの「伸びしろ」の大きさにある。昨シーズン終盤の躍進で主役を演じたラファエル・レオン、サンドロ・トナーリ、テオ・エルナンデス、フィカヨ・トモリといった主力はいずれもまだ20代前半。スクデット獲得という「成功体験」を得て、個としてもチームとしても、彼らの成長曲線がさらに上向きになる可能性は十分だ。

     戦力的に見ると、セントラルMFとしてだけでなくトップ下としても活躍して優勝に大きな貢献を果たしたフランク・ケシエが契約満了でバルセロナに去ったのは小さくない損失。その後釜となるべきフィジカルとダイナミズムを備えたセントラルMF、もうひとつの補強ポイントであるCBの獲得など、補強の動きが後手に回っている点は気がかりだ。とはいえ、強化の全権を握るパオロ・マルディーニTDの優れた手腕を考えれば、最終的な帳尻が合わないという事態は避けられるはずだ。

     戦力的な上乗せという点で最大の補強ポイントだったトップ下には、欧州屈指のタレントという呼び声が高いベルギー代表のシャルル・デ・ケテラーレを獲得済み。この最重要ターゲットの獲得、そしてリヴァプールから加わったディヴォック・オリギという新たなCFの選択肢によって、ラスト30m攻略のクオリティとバリエーションは明らかに上積みされている。

     開幕を目前に控えた現時点で、すでに触れた中盤センターとCBの戦力に十分な厚みが確保されていない点は懸案だが、8月末までにそれが解決されて質・量の両万で陣容が整えば、ピオーリ監督の下でさらに完成度と成熟度を高めたチームがシーズンを通して主役を演じ、連覇を実現する可能性は十分にある。

     最大のライバルであるインテルとはリーグ優勝19回で並んでおり、どちらが先に「2つ目の星★」を胸につけることができるか(優勝10回ごとに★ひとつの権利が手に入る)は、両チームのサポーターにとって大きな関心事。その点でも熾烈な争いが展開されそうだ。

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    ▲3番手:ユヴェントス(昨季4位)

    基本布陣:4-3-3

    • GK:シュチェスニー
    • DF:ダニーロ(クアドラード)、ボヌッチ、ブレーメル、A・サンドロ
    • MF:ザカリア(マッケニー)、ロカテッリ、ファジョーリ(ポグバ)
    • FW:ディ・マリア、ヴラホヴィッチ、コスティッチ(キエーザ)

     2011-12シーズンから前人未到の9連覇を記録し、2010年代のセリエAを文字通り支配したユヴェントスだが、現時点ではチームとしての安定度と完成度、その背景にあるプロジェクトの継続性において、ミラノ勢の後塵を拝していることは否めない。

     マッシミリアーノ・アッレグリ監督を呼び戻して2年目の今シーズンも、開幕を目前に控えてなお、チームの構想が明確に固まらないまま付け焼き刃的な補強に動くなど、チーム強化への取り組みに戦略性よりもむしろ焦りや迷いが見えているところは気掛かりだ。

     アンドレア・アニエッリ会長の下で経営と強化の実務を担うマウリツィオ・アリーヴァベーネCEOとフェデリコ・ケルビーニFDは、昨シーズン半ばからチームの大幅な改造に手をつけている。

     1月に、ドゥサン・ヴラホヴィッチというセリエA屈指のCFをフィオレンティーナから引き抜くと同時に、デヤン・クルセフスキ、ロドリゴ・ベンタンクールという伸び代を残したMFをトッテナムに放出。今夏も、背番号10を背負ってきたパウロ・ディバラとの契約を更新せず、さらにアルバロ・モラタも買い取りオプションを不行使とする一方で、アンヘル・ディ・マリア、ポール・ポグバというワールドクラスをいずれもフリーで獲得。攻撃陣の顔ぶれは1年前と比べてほぼ一新された。

     さらに最終ラインも、世界屈指のCBに成長するポテンシャルを持つマタイス・デ・リフトをバイエルンに売却し、同じCBでもまったくタイプの異なるブレーメルをその後釜に獲得するなど、ジョルジョ・キエッリーニの退団と合わせて、顔ぶれは大きく変化している。

     大きく刷新されたこの陣容を預かるアッレグリ監督は、特定のシステムにこだわらず、選手の個性や相性に応じて柔軟にメンバーや配置を替えながらチームを構築していくタイプ。今夏はヴラホヴィッチを1トップ、ディ・マリアを右ウイングに配した4-3-3を基本にチームを仕上げてきているが、開幕前最後のフレンドリーマッチでアトレティコに0-4の惨敗を喫して、チーム構想そのものが揺らいでいる印象もある。クラブが慌ててフィリップ・コスティッチ、メンフィス・デパイの獲得に動いたあたりも(前者はすでに契約済み)、冒頭で触れた焦りや迷いの表れと見ることが可能だ。

     戦力的には、ヴラホヴィッチ、ディ・マリアと共に攻撃の中核を担うべきフェデリコ・キエーザ(膝の手術による長期離脱中)の戦列復帰がW杯明けの1月までずれ込みそうなのに加え、ポグバもやはり膝を痛めて9月までは欠場見込みと、不確定要素が少なくない。

     序盤戦はまず、新陣容によるチームの土台を固めてプロジェクトを軌道に乗せ、優勝戦線から大きく遅れを取ることなくW杯による中断にこぎ着けることが目標だろう。W杯明けの1月以降、チームが固まり戦力的にも本来の陣容が整った段階で優勝戦線に残っていれば、3年ぶりのスクデットも現実味を帯びてくるはずだ。

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    △連下:ローマ(昨季6位)

    基本布陣:3-4-2-1

    • GK:ルイ・パトリシオ
    • DF:マンチーニ、イバニェズ、スモーリング
    • MF:カルスドルプ(チェリク)、ワイナルドゥム(クリスタンテ)、マティッチ、スピナッツォーラ(ザレウスキ)
    • MF:ディバラ(ザニオーロ)、ペッレグリーニ
    • FW:エイブラハム

     今夏の移籍マーケットで特に積極的な動きを見せ、実質的な戦力の上乗せにも成功したのが、ジョゼ・モウリーニョ体制2年目のローマ。セリエA屈指のテクニックとファンタジアを誇るパウロ・ディバラ、ダイナミズムと攻撃力を武器とする万能型MFジョルジニオ・ワイナルドゥムと、スター性のあるトッププレーヤー2人が加わり、何よりも個のクオリティという面で戦力が大きく高まった。

     昨シーズン後半から採用されている3-4-2-1は、2ライン間のやや右に開いた位置で前を向いた時に最も持ち味を発揮するディバラを活かす上では、理想的なシステム。ボール支配に強くこだわらず、重心を低めに構えた守備から縦に速い展開で前方のスペースを広く使い、個人能力に依存して局面を打開しようとするモウリーニョの戦術もまた、ディバラのような「ソリスト」にはぴったりだ。

     加入プレゼンテーションイベントで1万人以上のサポーターから熱烈な歓迎を受けたディバラが、その「王子様扱い」に本来のパフォーマンスで応えられるかどうかは、ローマの今シーズンを左右する重要性を担っている。モウリーニョが「熱しやすくキレやすい」という二面性を持つローマの環境をうまくコントロールし、昨シーズン終盤のようにチームをポジティブに後押しする熱狂的な空気を作り出すことができれば、このローマはトップ4入りはもちろん、スクデット争いを引っかき回すサプライズになる可能性をも秘めている。

  • Osimhen(C)Getty Images

    △連下:ナポリ(昨季3位)

    基本布陣:4-2-3-1

    • GK:メレト
    • DF:ディ・ロレンツォ、ラフマニ、キム・ミンジェ、M・オリヴェイラ(マリオ・ルイ)
    • MF:アンギッサ、ロボツカ
    • MF:ロサーノ、ジエリンスキ、クバラチュケリア
    • FW:オシメン

     昨シーズン終盤に一時はスクデットに手が届くかと思わせるほどの躍進を見せたナポリだが、今夏は長年チームを支えてきたロレンツォ・インシーニェ、ドリース・メルテンス、カリドゥ・クリバリが相次いで退団、その後釜には5大リーグでの実績を持たない若手・中堅の無名選手を発掘・補強するなど、世代交代と刷新を強く意識したチームの再構築に取りかかっている。

     最後の一線で敵の攻撃をはね返してきたクリバリ、細かいポゼッションからのコンビネーションによる崩しを担ってきたインシーニェ、メルテンスが去ったことで、チームを率いるルチアーノ・スパレッティ監督は、最大の武器であるCFオシメンの爆発的なスピードを最大限に活かすべく、縦指向の強いスタイルへと舵を切りつつある。

     ナポリがローマ、ラツィオ、アタランタ、フィオレンティーナといったライバルに打ち勝ってトップ4入りを果たすためには、この「モデルチェンジ」に成功しチームが攻守両局面でバランスよく機能することが第一条件。ただ、ファビアン・ルイスもPSG行きが迫っており、戦力的にはビッグ3はもちろんローマと比べても見劣りするだけに、今シーズンはむしろ未来に向けて新たな土台を築く過渡的な1年になるのかもしれない。

  • fiorentina(C)Getty Images

    ☆注目:フィオレンティーナ(昨季7位)

    基本布陣:4-3-3

    • GK:ゴッリーニ
    • DF:ドドー、ミレンコヴィッチ、M・クアルタ、ビラーギ
    • MF:ダンカン(カストロヴィッリ)、マンドラーゴラ、ボナヴェントゥーラ
    • FW:ニコ・ゴンザレス、ヨヴィッチ、イコネ(ソッティル)

    近年ようやく攻撃志向の強いチームが増え始めたセリエAの中でも、際立って大胆かつ思い切りよく人数をかけたスペクタクルな攻撃を展開するのが、ヴィンチェンツォ・イタリアーノ監督率いるフィオレンティーナ。

     昨シーズンは前半戦にヴラホヴィッチを擁して上位戦線で暴れ回り、そのセルビア代表FWをユヴェントスに引き抜かれた後半戦も、勇敢なスタイルを貫いて出入りの多い試合を連発、7位に入って6年ぶりに欧州カップ戦(カンファレンスリーグ)の出場権を手に入れた。

     そのスペクタクルな攻撃サッカーは今シーズンも不変。FWにレアル・マドリーからルカ・ヨヴィッチをレンタルで獲得し、昨冬埋め切れなかったヴラホヴィッチの穴埋めを目論む。思い切って攻撃に人数をかける分、ボールロスト直後のカウンタープレスがはまらないと一気に逆襲を喫したり、ブロック守備の人数が揃い切らなかったりする場面も目に付くが、それもまたチームの個性。

     攻撃と守備、いずれの局面においても後ろ髪を引かれることなく思い切って前に出るスタイルを貫き、失点の多さを補って余りある得点力を発揮、上位陣から勝ち点を奪ってスクデット争いをさらなる混戦に陥れるバランスブレイカーとしての健闘を期待したい。

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