Milan 2021/22 GOAL

スクデット獲得のミランの選手採点…止まらないレオン、安定のメニャン、反撃のトナーリ

ミランの11年ぶりとなるセリエA制覇は、個よりもチームを優先させることに成功した指揮官ステファノ・ピオリの偉業の成果だった。だが今シーズン中に目覚ましい成長を見せたFWラファエウ・レオンやMFサンドロ・トナーリ、ゴール前で絶対的な安定性を見せたGKマイク・メニャン、シーズンを左右する決定的なゴールを決めたオリヴィエ・ジルーらの貢献も、ミランが19個目のスクデットを獲得する上で重要だった。

  • Maignan MilanGetty

    GKマイク・メニャン…9

    パオロ・マルディーニ(テクニカルディレクター)、フレデリック・マッサーラ(スポーツディレクター)およびジェフリー・モンカーダ(チーフスカウト)ら3人組の直感は素晴らしいものだった。GKジャンルイジ・ドンナルンマの退団を後悔させることなく、ジージョ以上のパフォーマンスを見せることに成功したフランス人GKは、ロッソネーリの19個目のスクデットへと続くウォーク・オブ・フェームにおいて、大きな手形を残した。昨シーズンはリールの一員としてフランス王者に輝いたメニャン。イタリア挑戦の1年目にして再びリーグを制覇すると、セリエA最強GKのタイトルも手にした。まるで猫のような反射神経に加えて、優れた足元の技術や勝者のメンタリティも持つ。ミランおよびフランス代表の現在未来を担うGKと言えるだろう。

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  • Tatarusanu penalty Milan InterGetty Images

    GKチプリアン・タタルシャヌ…7

    “タタ”は昨秋、負傷したメニャンの代役を務めると、ミスはフィオレンティーナ戦のわずか1回のみと、素晴らしい準備ができていたことを示した。またルーマニア人GKが前半戦のミラノダービーで起こした奇跡は、格別に記憶に残るものだった。2021年11月7日のインテル戦の27分、タタルシャヌはラウタロ・マルティネスのPKを見事にストップ。今シーズンのカギとなる1プレーだった。

  • Fode Ballo Toure MilanGetty

    DFフォデ・バロ・トゥーレ…5.5

    すべてのドーナツが完璧なリング状に仕上がるわけではない。おそらくセネガル人サイドバックの獲得がミランのビッグディールとして数え上げられることはないだろう。先発した5試合のうち、特にナポリ戦でのパフォーマンスは残念なものだった。シーズンのほとんどをベンチで過ごし、何度か途中出場したが、アフリカ・ネイションズカップ終了後はほとんど起用されることがなかった。

  • Calabria AC Milan 2021Getty

    DFダヴィデ・カラブリア…7.5

    シーズン前半戦は、MVPの1人だった。だが、ふくらはぎのトラブルにより2か月間戦列を離れ、後半戦のパフォーマンスは低下したように見える。それでもロッソネーリの副キャプテンとして、良いシーズンを過ごしたことには変わりない。彼のユーティリティ性は、ピオリの戦術において極めて貴重な武器となった。対戦相手や試合に応じ、右サイドで高い位置を取って攻撃に参加したり、センターバックと並んでほぼ3バックのような形でプレーしたり、中盤においてほぼインサイドハーフの役割を担ったこともあった。貴重な選手だ。

  • Alessandro Florenzi Verona Milan Serie AGetty

    DFアレッサンドロ・フロレンツィ…7.5

    ミラン加入時はほとんど注目されなかったが、非常に謙虚で無私無欲な姿勢でピオリに尽くした。するとまもなく、ロッソネーリのロッカールームにおいて重要な存在となり、時間の経過とともに、彼の経験と戦術頭脳が際立つようになった。フィジカルトラブルに見舞われたこともあったが、居場所を勝ち取ることに成功する。ヴェローナ戦の極めて重要な勝利を決定づけたゴールは、リーグ戦の歩みを刻む1コマとなった。

  • Matteo Gabbia MilanGetty

    DFマッテオ・ガッビア…6

    守備陣の大半が不在となった際、ピオリの緊急時のカードとなった。ミランの下部組織で成長した若手CBは、実直なパフォーマンスを見せた一方、フィレンツェの悪夢の夜に代表されるように重大なミスも犯した。彼の本当の実力を測る上でも、今後継続して出場機会を得る必要があるだろう。クラブから寄せられる信頼は厚く、2026年まで延長された契約がそれを物語っている。

  • THEO HERNANDEZ MILAN SERIE A 22092021Getty Images

    DFテオ・エルナンデス…8.5

    驚くべきテオは、さらなる成長の1年を見せた。フランス人DFは、守備において著しく進化し、ステファノ・ピオリとスタッフの用意した戦術への取り組みにより、まるでインサイドハーフのような動きや読みもレパートリーに加えた。彼の成長にはフランス代表指揮官のディディエ・デシャンも納得。ようやく代表招集へと踏み切った。ドリブルを開始した時の勢いは凄まじく、今シーズンもミランの攻撃の主な起点となった。アタランタ戦におけるゴールは、クラブの歴史に残るだろう。

  • Kalulu MilanGetty

    DFピエール・カルル…8

    今シーズンのミランの大きな発見と言える。元リヨンの若きDFは、イタリアでの2年目を迎えると、守備陣の序列を力強く駆け上がった。主将のDFアレッシオ・ロマニョーリを追い越し、DFフィカヨ・トモリのパートナーとしてレギュラーの座を勝ち取った。素早く、正確なインターセプトに加えて、クリアのタイミングも良く、CBとしてのパフォーマンスはほぼ完璧と言える。FWヴィクター・オシムヘンのマークという巨大な試練で見せたパフォーマンスは、今シーズンの絶頂と言ってよいだろう。

  • Simon Kjaer MilanGetty

    DFシモン・ケアー…7

    残念ながら彼のシーズンは、ひざの重傷により一足早く幕を閉じた。だが昨年8月から11月にかけて、デンマーク人DFはいつものようにロッソネーリの守備陣において、リーダーシップを発揮していた。ミランのロッカールームにおけるカギとなる人物であり、彼のサポートは緑のピッチの外においても重要であったと言える。

  • Alessio RomagnoliGetty Images

    DFアレッシオ・ロマニョーリ…6.5

    ミランの主将にとって、簡単なシーズンではなかったはずだ。守備陣の序列においてケアー、トモリ、カルルの下の4位へと滑り落ちたが、おそらく、彼自身の落ち度によるものではなく、チームメートたちの躍進の結果だった。常にCBとしてまずまずのパフォーマンスを示していたが、レギュラーの座を取り戻したかに見えた矢先に、内転筋のトラブルを抱える不運にも見舞われた。

  • Tomori Milan Inter Serie A 07112021Getty

    DFフィカヨ・トモリ…8.5

    パートナーを変えてもパフォーマンスは安定していた。イングランド人DFは、ピオリのチームにおいて最も継続性を示し、頼りになるDFだった。幾度となく素晴らしいパフォーマンスを見せたが、中でもカルルとコンビを組んだナポリ戦は記憶に残るものだった。忘れるべき夜は、敵地でのサレルノ戦およびラツィオ戦くらいで、極めてレベルの高い1シーズンだったと言える。ミランがこれほど高いディフェンスラインを敷いてプレーできるのは、まさにトモリの並外れた身体能力と守備における先読み能力のおかげだ。

  • Tiemoue Bakayoko Milan 2021Getty Images

    MFティエムエ・バカヨコ…5.5

    2度目の挑戦は良かったか? そうとも言えない。昨夏、ナポリからミランへ復帰したMFには、もっと違うものを期待していた。前半戦において、彼の姿を目にすることはできたが、1月中旬以降はトナーリやMFイスマエル・ベナセル、MFフランク・ケシエ、MFラデ・クルニッチの壁に阻まれ、ほとんどピッチに立つことがなかった。チェルシーと結んだ2年間のレンタル期限を待たずに1年早くチームを去ることになりそうだ。

  • Ismael Bennacer MilanGetty Images

    MFイスマエル・ベナセル…8

    出場時間に惑わされてはならない。アルジェリア人MFが先発出場した試合は、ミランのリーグ戦の半分にも満たないが、ピオリにとって重要なメンバーだった。チームのかじを取り、バランスを与え、上質なプレーとパーソナリティを示した。イスマは、カリアリとの敵地での難しい一戦において決勝点を挙げるなど、2022年のディアーヴォロ(悪魔の意味でミランの愛称)の無敗の快進撃において、カギとなる役割を担った。

  • Castillejo Tomori Milan VeronaGetty Images

    MFサムエル・カスティジェホ…6

    出場はわずか5試合、2022年に入ってからの起用は一度もない。それでもスペイン人MFは、今年のスクデットに足跡を残した。サムはホームで行われたヴェローナ戦において、PKを獲得し、さらには終盤の相手のOGを誘うなど、ミランの逆転劇をもたらした。直近の2度の移籍市場でオファーが届いたにも関わらず、ミラン残留を強く望んだサム。隅に置かれた1シーズンの中で、太陽が差した瞬間だった。

  • Brahim Diaz Spezia Milan Serie AGetty

    FWブラヒム・ディアス…6

    今シーズンは素晴らしいスタートを切っていただけに、当然、マラガ出身のトップ下には、もっと多くを期待していた。開幕直後の6試合で3ゴールをマークし、アンフィールドにおいても爪痕を残した。その後はおそらく、ユニフォームの重みがプレッシャーとなったのかもしれない。あの背番号10は、経営陣から寄せられた大きな期待を映し出すものだった。才能は十分にある。もっとできるはずであり、もっと結果を出さなければならない。

  • Franck Kessie Milan 2022Getty Images

    MFフランク・ケシエ…7.5

    スーツケースを手にして臨んだ1年。バルセロナ行きの片道チケットは、もう何か月も前から予約してある。コートジボワール人MFの耳には、抗議の口笛の雑音も届いていたはずだが、常にプロ意識の高い振る舞いを見せた。ピオリは対戦相手や試合の解釈に応じて、さまざまなポジションで彼を起用したが、ケシエは指揮官の要求に全面的に応え、全力を尽くしてきた。昨シーズンのように圧倒することはなかったが、常に極めて有益な働きを見せた。

  • Krunic Milan Serie AGetty

    MFラデ・クルニッチ…7.5

    ボスニア人MFは、あらゆる指揮官がチームに欲しがるタイプの選手だろう。ユーティリティ性に加えて、チームに献身的で、余計な言葉を発したり、不適切な態度を示したりすることもない。トップ下、インサイドハーフ、守備的MFをこなし、さらにはサレルニターナ戦のように偽9番や、必要とあればジェノア戦のようにサイドバックも引き受ける。ピオリにとって極めて貴重な人材であり、指揮官自身も元エンポリMFに対する大きな敬意を隠していない。

  • Junior Messias MilanGetty Images

    FWジュニオール・メシアス…6.5

    ブラジル人選手はリーグ戦で5ゴールをマークしたが、明らかに合格点に満たないパフォーマンスと、突然のきらめきを交互に見せ、パフォーマンスには波が見られた。1得点を挙げたマドリーでの忘れられない夜は、間違いなく彼のミランにおける経験、もしくは彼のキャリア自体において、頂点に達した瞬間だったのかもしれない。MFアレクシス・サレマーカーズとのポジション争いは、勝敗がつかないままに終わった。

  • Alexis-Saelemaekers(C)Getty Images

    MFアレクシス・サレマーカーズ…6.5

    ベルギー人MFは昨シーズン、ピオリにとって不可欠な存在となり、さらなる成長のステップを踏むことが期待されていた。だがそのクオリティの飛躍は見られなかった。シーズン中、おそらくメシアスとのポジション争いにも苦しんだだめか、自身に対する自信を失ってしまった。リーグ戦においてわずか1ゴール3アシストでは、昨シーズンに勝ち取ったレギュラーの座を取り戻すには少なすぎる。

  • Sandro Tonali Lazio vs AC Milan Serie A 2021-22Getty Images

    MFサンドロ・トナーリ…9

    今年のスクデットの主役の1人。闘志や強気の姿勢と揺るぎないミラン愛で、文句なしにサポーターの新たなアイドルとなった。1年目の昨シーズンは、大きな飛躍へのプレッシャーに苦しんだが、今シーズンは技術面だけでなく、気持ちの面においても、チームをけん引するリーダーの1人となり、ピオリにとって絶対的に不可欠な選手へと成長した。ラツィオ戦の試合終了間際のゴールや、ヴェローナでのドッピエッタ(1試合2得点)は、ロッソネーリの歴史に残る瞬間になった。キャプテンマークが与えられるのも、時間の問題だろう。

  • Giroud Milan Getty

    FWオリヴィエ・ジルー…8.5

    王者であり勝者。フランス人FWは、経験とメンタリティ、そして特に重要な局面における決定力をミランにもたらした。インテル戦でのドッピエッタは、スクデットの行方をミランへと傾かせ、ナポリ戦のゴールで「直接対決でほぼ無敵」というミランのステータスを確固たるものにした。そして最後にレッジョ・エミリアでの2ゴールでスクデットのミッションを完了させた。ピオリのチームにおけるオリヴィエの価値は、今シーズンの14得点をはるかに超えるものだろう。

  • Ibrahimovic Udinese MilanGetty Images

    FWズラタン・イブラヒモヴィッチ…7.5

    スウェーデン人スーパーヒーローが自身の年齢に向き合わざるを得なかったのは、おそらくキャリアで初めてのことだろう。度重なるケガの影響を受けたシーズンではあったが、フィジカルが耐えうる間は、ズラタンがミランにおけるトップスコアラーだった。2022年以降の出場はわずかだったが、前半戦は11試合で7ゴールをマーク。またローマでのラツィオ戦のように途中出場であっても、ただピッチ脇にいるだけでも、彼の存在感はチームにとって重要だった。

  • Rafael Leao AC Milan 0522Getty

    FWラファエウ・レオン…9.5

    2021-22シーズンのセリエAでMVP、もしくは個人技で最も決定的なプレーを見せた選手だったと言ってよいだろう。ポルトガルのフェノーメノ(怪物)の台頭は、彼の高速ドリブルと同様に止めることはできない。彼がどこへ進もうとしているのかを、誰もが分かっているが、止められない。もはや1対1においては、ヨーロッパ最強クラスと言える。ラファにとって、限界は空のかなたにある。フィニッシュの際により冷静によりシニカルにプレーできれば、神々の最高峰を目指すことも本当に可能であるはずだ。

  • Daniel Maldini Spezia Milan 25092021Getty Images

    FWダニエル・マルディーニ…6

    パオロの息子にとって、見習いとしての1年だった。罠が潜む敵地でのスペツィア戦において、先発デビューを飾ると、プロとして初得点をマークする満足感も得た。出場機会はわずかだったが、特にシーズン中の最も難しい時期においては、経験豊かなチームメートたちから多くを学び取ることができたはずだ。

  • Ante Rebic MilanGetty Images

    FWアンテ・レビッチ…6.5

    クロアチア人FWは昨シーズン、チャンピオンズリーグ出場権獲得の主役の1人となったが、今シーズンは度重なるケガの影響やレオンのブレイクもあり、ほぼ準主役の立場に徹するしかなかった。だが彼が唯一、リーグ戦で挙げた2得点(9月のユヴェントス戦および2月のサレルニターナ戦)は、極めて重要なものだった。

  • Stefano Pioli Milan Fiorentina Serie AGetty

    ステファノ・ピオリ…10

    監督のキャリアで初めてのタイトルをつかんだ。わずか3年足らずで華々しい仕事を成し遂げ、世界有数の名門クラブの歴史に名を刻んだ。ピオリは厳格な戦術論に縛られることなく、チームに明確で崩れることのないアイデンティティを与え、イタリアのカルチョ界において最もヨーロッパに近い指揮官として認められることになった。

    両SBの動きから中盤の流動性に至るまで、絶えず模索とテストを続け、もはや彼の4-2-3-1のシステムは、新たな境地を開拓するためのスタート地点でしかない。トップチームの選手全員の成長を引き出し、リスペクトと信頼を獲得することにも成功した。そして最後に、ミラネッロへ到着してから取り組んできた並外れた仕事の成果を刈り取ることになる。ミランの19個目のスクデットを手にしたピオリは、ファンが歌うチャントのように、かつてないほどに“オン・ファイヤー”だ。