マンチェスター・ユナイテッドが最後にアンフィールドに勝利したのは、まだイギリスがEUに加盟しており、プレミアリーグの首位をレスターが快走していたころのことだ。長きに渡って“鬼門”として君臨してきたスタジアムを、レッド・デビルズは近年最高のパフォーマンスでついに攻略している。
『GOAL』は、2-1で終わったプレミアリーグ第8節最大の大一番の注目ポイントを分析する。
Getty/GOALマンチェスター・ユナイテッドが最後にアンフィールドに勝利したのは、まだイギリスがEUに加盟しており、プレミアリーグの首位をレスターが快走していたころのことだ。長きに渡って“鬼門”として君臨してきたスタジアムを、レッド・デビルズは近年最高のパフォーマンスでついに攻略している。
『GOAL』は、2-1で終わったプレミアリーグ第8節最大の大一番の注目ポイントを分析する。
Getty Images Sportユナイテッドサポーターが「彼がチームを立て直すんだ」と歌えば、相手チームのサポーターは散々それを嘲笑ってきた。しかし、この日アンフィールドに詰めかけた約3000人のアウェイサポーターは、今こそこのチャントを高らかに歌うことができただろう。
たとえユナイテッドをプレミアリーグ王者に導けずに退任するとしても、約10年ぶりのアンフィールドでの勝利をもたらしたとして記憶されるはずだ。ジョゼ・モウリーニョ、オーレ・グンナー・スールシャール、ラルフ・ラングニック、エリック・テン・ハーグのいずれも達成できなかった偉業だ。この試合のユナイテッドは、試合開始から終了まで完全に集中し切っていた。追い詰められても萎縮することはなく、すべてを失う可能性のあった失点後も自信と落ち着きを保ち続けた。
そしてこの偉業は、アモリムの采配によってもたらされている。マテウス・クーニャのトップ起用は的中。ターゲットマンとしてではなく、プレーを繋いで攻撃を円滑にしている。またレニー・ヨロではなく、ハリー・マグワイアを起用したことも英断と言える。
この勝利は絶賛されるべきだろう。だが次の問題は、「ユナイテッドがこの調子を維持できるのか」ということ。次節はホームのブライトン戦。オールド・トラッフォードでの過去3試合は全敗だ。彼らが本当に立ち直ったかを判断するには、絶好の試合になりそうだ。
Getty Images Sportリヴァプールの3トップには、イギリス史上最高額の選手であるアレクサンダル・イサクと、プレミアリーグ史上最高の選手の1人であるモハメド・サラーが名を連ねた。後半には、リーグ史上2番目に高額なフロリアン・ヴィルツ、そしてウーゴ・エキティケ、合わせて2億ポンドのアタッカーが登場した。しかし、チームを救うことはできなかった。
おそらくリヴァプールは、“紙面上では”世界最高の攻撃陣を誇っている。しかし、新たな「ガラクティコスはまだ機能していない。イサクは依然としてフィットネスが不足しているし、ユナイテッドとの過去8シーズンで16ゴール6アシストを記録したサラーも絶好機を外した。エキティケはイサクよりも先発に値するだろうが、途中出場では影響を与えられず。そして未だノーゴールノーアシストのヴィルツも、もう言い訳はできない。
この攻撃陣が前半戦のうちに機能しなければ、リヴァプールのシーズンは決して明るくはないだろう。
Getty Images Sport最後にアンフィールドでプレーした際、彼は空いたゴールにシュートを決めることができなかった。しかしフットボールは、時に再挑戦のチャンスを与えるものだ。マグワイアは、それを確実にものにした。あの劇的な決勝点は、チームに勇気を与えている。
マグワイアはユナイテッドでの7シーズンで17ゴール、アモリム体制では5ゴールを奪っている。常に適切な場所とタイミング、そして試合終盤のゴールは、現チームの大きな武器だ。ユナイテッドの約10年ぶりとなるアンフィールドでの勝利を決めたのが、彼だったことは美しいストーリーだ。彼こそ、忍耐と逆境を跳ね返す象徴である。アモリムも最大限の賛辞を送った。
「彼の経験全ては、あらゆる子どもたちにとって素晴らしいお手本になる」
Getty Images Sportスロットは敗戦後も強気の姿勢を崩さず、ユナイテッドよりも遥かに優れていたと主張した。だが、ブレンダン・ロジャーズ以来となる11年ぶりの4連敗という事実から目を背けることはできない。
試合後に「4連敗すれば懸念は当然だ。だが、このレベルのプレーを続けていれば勝利のチャンスは十分にあるはずだ」と語ったスロット。その言い分も、一定は理解できる。だが問題は、チャンスを活かせなかったことだけではない。今季のプレミアリーグ8試合で、セットプレーから5失点。ここ4試合はすべて先制点を許しているのだ。
OBジェイミー・キャラガーは『スカイスポーツ』で、「彼らが獲得した選手を見ると、サイドバックはみんな小柄だ。身体的な優位性はまったくない。セットプレーに関して、チームには十分な高さがあるのだろうか? セットプレーにうまく対応できず、今のプレミアリーグで流行するスタイルに苦しんでいるようだね」とし、さらなる問題点を指摘した。
「一つの明らかな問題というより、多くの要因が重なっている。昨季の主力選手数名のレベルが落ちており、今のリヴァプールはうまく機能していない。昨季は『無敵』を自認していたが、一度敗れるとすぐに4連敗だ。リヴァプールの内部には、『汚れ仕事はやりたくない』というメンタリティが存在しているようだ」
Getty Images Sportアンフィールドで勝利すれば、通常であれば決勝点を挙げた選手が最も注目を集める。だがしかし、試合終了のホイッスルが吹かれたとき、ユナイテッドの選手が真っ先に駆け寄ったのは、守護神だった。マグワイア、ヨロ、ディオゴ・ダロトはこぞってこの若きベルギー代表GKを祝福している。ユナイテッドでの2試合目ながら、長年この熱狂を経験してきたかのような落ち着きを見せたのだった。
ラメンスはこの試合で5度のセーブを記録しているが、歴史に残るようなスーパーセーブを強いられたわけではない。しかし、GKとして最も重要である「ディフェンス陣に自信を与える」ことを確実にやってのけた。ここ数年のユナイテッドに最も欠けていた役割を、デビュー2試合目で完ぺきにこなしている。
アモリムも試合後、「少し運も味方したし、ポストに当たった2本のシュートは試合の流れを変える可能性もあった。だが、彼は素晴らしいキャラクターとクオリティを示したね。本当に重要だったよ」と称えている。
Getty Images Sport先月リヴァプールがエヴァートンを下した後、アーセナルはマンチェスター・シティと1-1の引き分けに終わった。この週末の結果を受けて、「タイトルレースはすでに終わった」と語る識者も多かった。アーセナルには5ポイント差、マンチェスター・シティには8ポイント差。タイトルは今季もリヴァプールだ――そう思う人が多くても何ら不思議ではない。
しかし、その後の3試合で全く状況が変わった。先月あった5ポイントのリードは、今やアーセナルに4ポイント、マンチェスター・シティに3ポイントのビハインドに変わっている。さらに、伏兵ボーンマスも3位まで浮上し、マンチェスター・ユナイテッドもわずか2ポイント差だ。
まだまだ序盤戦であるし、11月9日のマンチェスター・シティ戦でまた状況は大きく変わる可能性がある。だが、アーセナルは強固な守備とセットプレーで、マンチェスター・シティは“超人”アーリング・ハーランドがいることで、簡単に崩れそうにはない。このビハインドは重くのしかかるだろう。史上最高レベルの投資を行った彼らに対する重圧は、しばらく収まりそうもない。