イタリアに新たな価値観をもたらした英雄から、世界中の笑いものへ……マリオ・バロテッリにとって、その境界線は常に低いものだった。21歳で迎えたワルシャワの夜がキャリアの頂点であれば、子供じみたいたずらと無謀さ、無意味な挑発でその頂点から転がり落ちていくのもあっという間だった。
2011年3月、「ただ退屈だった」という理由だけでユースチームの選手に向かってダーツを投げるという暴挙に出た。そのわずか半年後、今度はマンチェスター・ユナイテッドとのダービーの36時間前に、バルセロナで花火を暴発させて40万ポンドの損害を与えている。さらに遡れば、イングランドにやってきた直後、練習に向かう途中でアウディR8を破壊。やってきた警察から財布に5000ポンドが入っている理由を尋ねられ、「俺は金持ちだからだ」と淡々と答えている。
驚くような規律の欠如は、ピッチ外のことだけではない。ディナモ・キエフ戦で食らわせたカンフーキックや、スコット・パーカーの頭部を故意に殴った事件はほんの一部に過ぎない。練習中にも、彼の唯一の理解者であったロベルト・マンチーニを含むチームメイトと何度も小競り合いを起こしている。
そして極めつけは、彼を象徴するもう1つの瞬間である「Why always me?」だろう。マンチェスター・ユナイテッドを6-1で撃破したあのダービーで見せたあのシャツは、フットボール史上最も有名なシャツであるかもしれない。多くの人間は彼の傲慢さを象徴する事象だと思っているが、本人は後に「俺のことを知らないのに悪く言う連中に、ただ『なぜいつも俺なんだ?』と訪ねただけだ」と振り返っている。
本人曰く、あのパフォーマンスがその傲慢さを示すものではなく、平穏を願う訴えであったようだ。だが、容認できないような幼稚な行動を繰り返したのも事実である。自身が作り上げたパブリックイメージによって世界的な名声を手にした一方で、そのパブリックイメージの被害者でもあり続けた。「Why always me?」は修辞的なものではなく、存在論的なものであったのだ。