フットボールにおいて、「シュート」は特別なプレーだ。ある時は選手を“神”とするし、ある時は笑いものにもする。西ドイツ代表ヘルムート・ラーンは1954年ワールドカップで伝説的なシュートを叩き込んだ。彼の同胞であるマリオ・ゲッツェも同じことを語れるだろう。一方でロベルト・バッジョは、1994年ワールドカップ決勝戦で放った1本のシュートが未だに悲劇として語られ続けている。
そして、アドリアーノ・レイテ・リベイロまた、「シュート」によって永遠に人々の記憶に残りづつけている。それはポジティブな意味でも、ネガティブな意味でも。ロナウドの後継者として、そして“皇帝”としてファンの熱狂的な人気を集めた男。当時のブラジル代表指揮官カルロス・アルベルト・パレイラが「フットボールの歴史を描く」と称賛した男。彼の左足は素晴らしく、残酷で、強烈だった。
そんな“皇帝”は、フットボールにおけるすべてを手にする才能があった。しかしリオデジャネイロのスラム街で生まれ育った男は、アルコールに溺れ、うつ病に苦しみ、この世界から姿を消していったのだった。






