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プレミアリーグ開幕節の勝者と敗者:マンチェスター・シティが再び優勝候補に名乗り?ファン・ダイクの苦悩が続く可能性も…

81日間の中断期間を経て、「世界一のリーグ」が帰ってきた。待ち望んでいた世界中のファンは9試合で生まれた23ゴールに熱狂し、また疑惑の判定を巡って様々な声を上げるなど、「プレミアリーグのある日常」が戻ってきたことを実感できる3日間だった。

では、この開幕節での最大の「勝者」と「敗者」は誰だったのか?『GOAL』がピックアップする。

文=トム・マストン

  • Pep Guardiola Manchester City 2025-26Getty Images

    勝者:ペップ・グアルディオラ

    1年前には考えられないことだが、プレミアリーグの優勝予想を行う上で多くの識者マンチェスター・シティを外していた。それほど昨季の「不振」の影響は大きく、またクラブワールドカップでの早期敗退によってペップ・シティの評価は急落していた。

    しかし16日の開幕戦は、こうした評価を覆すものだったかもしれない。タイアニ・ラインデルスは圧巻のパフォーマンスでゴールとアシストを記録し、ラヤン・シェルキも期待に応えるプレーを披露。そしてアーリング・ハーランドも、3度目のリーグ得点王獲得へ見事な2ゴールを奪っている。ウォルヴァーハンプトンを4-0で粉砕したマンチェスター・Cだが、ここに離脱中のロドリやフィル・フォーデン、ヨシュコ・グヴァルディオルらも加わってくると考えると、そのポテンシャルは恐るべきものだ。

    マンチェスター・Cはここからトッテナム、ブライトン、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナルと対戦していく。おそらく、この4試合が真にタイトル挑戦にふさわしいかを見極める材料となりそうだ。それでも、ペップは開幕戦のチームに大満足しているはずである。

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  • Sunderland v West Ham United - Premier LeagueGetty Images Sport

    敗者:グレアム・ポッター

    今年1月にウェストハム指揮官に就任したものの、最初の19試合でわずか5勝しか挙げられなかったポッター。称賛を集めた彼の革新的なフットボールは全くみられず、厳しい見方が広がっている。そうした中で迎えた新シーズン開幕戦は、彼にとって絶好のチャンスのはずだった。しかし昇格組サンダーランドに0-3で完敗。前半は耐えていたものの、61分に最初の失点を許した後は反撃もほとんどできず、チームは崩壊している。

    ポッターは試合後、「基本的なことをもっとしっかりとやらなければいけないのは確実だ。この痛みを伴う教訓から学ばなければならない。学ばなければ、どれだけ良いプレーをしても、攻撃的なスタイルについて語っても、全く意味がないからだ。基本をしっかりできない限り、試合に勝つのは難しい」と断言している。

    しかし、ウェストハム今後4試合の相手はチェルシー、ノッティンガム・フォレスト、トッテナム、クリスタル・パレスと難敵揃い。この内1試合でも勝利できなければ、10月まで指揮を続けられないかもしれない。

  • 勝者:クリス・ウッド

    いわゆる“モダンなストライカー”とは程遠い存在だ。昨季プレミアリーグで奪った20ゴールを「再現不可能」と切り捨てた人も多いかもしれない。ノッティンガム・フォレスト自体ももうすぐ34歳となる彼に頼り続けるのは危険と判断し、先日2700万ポンドを投じてFWアルノー・カリムエンドを獲得したばかりである。

    しかし、ウッドはまだ終わっていない。ブレントフォードとの開幕戦で前半の内に2ゴールを奪い、プレミアリーグ通算100ゴールまであと「9」まで迫った。モーガン・ギブス=ホワイトやエリオット・アンダーソンとの関係性も抜群で、ヨーロッパ大会に挑戦する今シーズンも彼がエースとしてチームを牽引することになるかもしれない。そしてニュージーランド代表のキャプテンとして、来年のワールドカップに最高のコンディションで挑むことを狙っているはずだ。

  • Enzo Maresca Chelsea 2025-26Getty Images

    敗者:チェルシー

    「世界王者」

    本拠地スタンフォード・ブリッジに詰めかけたチェルシーファンはこうしたバナーを掲げていた。確かに昨季終盤、カンファレンスリーグ優勝とパリ・サンジェルマンを撃破してのクラブワールドカップ制覇は大きな衝撃を与え、今季のプレミアリーグ優勝候補に挙げる声も決して少なくはなかった。

    しかし、クリスタル・パレス相手にホームでスコアレスドローに終わったことは、タイトルレース挑戦者として理想的なアピールにはならなかっただろう。ボール保持率は70%を記録したものの、枠内シュートはたった3本のみ。「ボールを持たされる」時間が長く、効果的な攻撃はあまりみられなかった。また、エベレチ・エゼのFK弾がVARで取り消されたのは「幸運だった」と言える。

    エンツォ・マレスカ監督は、過去にもボール保持の効果について批判されている。4人のアタッカーが加入した今季は、彼らのポテンシャルを早々に引き出さなければならない。

  • 勝者:リシャーリソン

    過去3シーズンは70試合で16ゴール、6000万ポンドの投資は「効果的ではない」とされ、ある意味「失敗」の烙印を押されてきた。だが、今シーズンは彼に対する評価を大きく変えるものになるかもしれない。

    トーマス・フランク新監督の信頼を掴み、UEFAスーパーカップに続きプレミアリーグ開幕戦でも先発すると、その期待に応えるようなパフォーマンスを披露。素晴らしい2ゴールを奪ってみせた。そして2ゴール目は、ブラジル代表として2022年ワールドカップのセルビア戦で決めた衝撃のオーバーヘッドを彷彿とさせ、ベストフォームを取り戻したことを感じさせる一撃だった。

    フランク監督も、「PSG戦も今日も高いワークレートでチームを牽引し、プレーをつなぎ、ボールをキープし、2つのフィニッシュを決めてみせた。非常に良かったね。エヴァートン時代から気に入っていたよ。最近はケガに苦しんでいたため、ケアしながらさらに成長する必要はある。だが、最初の兆候は良いものだね」と満足気に語っている。おそらく、次節マンチェスター・シティ戦がリシャーリソンにとっての試金石となるだろうが、新エースとして奮起できるだろうか。

  • Virgil van Dijk Liverpool 2025-26Getty Images

    敗者:フィルジル・ファン・ダイク

    開幕戦でボーンマス相手にまたも劇的勝利を飾ったリヴァプールだが、フィルジル・ファン・ダイクは決して「最悪の選手」なんかではなかった。しかし、今夏のプレシーズンからコミュニティ・シールド、そしてリーグ開幕戦を見るに、このチームが連覇できるかどうかは、再び主将が最高のパフォーマンスを維持できるかにかかっていることが明らかになっている。

    開始60分ほどは2点リードで進めていたリヴァプールだが、その間も何度も危険な場面を迎えている。そしてアントワーヌ・セメンヨに2ゴールを許し、残り12分で同点に追いつかれている。その後はフェデリコ・キエーザ、モハメド・サラーのゴールで勝ち越したものの、やはりこの試合のテーマは「リヴァプールがいかにオープンだったか」に集約される。

    今夏の移籍市場では大型補強を敢行し、サイドバックも入れ替えることになった。しかしジェレミー・フリンポンとミロシュ・ケルケズは、いずれも攻撃に特徴のある選手だ。さらにイブラヒマ・コナテがいつも通りアグレッシブにボールへ行き過ぎていたため、ファン・ダイクは頭を悩ませたに違いない。出場停止から返ってくるライアン・フラーフェンベルフがDFラインの前で守備陣を助けてくれるかもしれないが、彼の復帰だけでは問題は解決しないだろう。これから対戦するニューカッスルとアーセナルは、王者がこの問題を修正しきれないまま激突することを望んでいるはずだ。