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PSG wing wonders GFXGetty/GOAL

ドリブル突破はやっぱり「楽しい」!PSGが壊す「グアルディオリズム」と証明するサッカーの「多様性」

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プレミアリーグの試合は常に「楽しい」わけではない。毎週末が必ず「スーパー」なわけでもない。6日に行われた第31節のマンチェスター・ダービー(0-0)後、マンチェスター・ユナイテッドのOBであるギャリー・ネヴィルは『スカイスポーツ』でこう嘆いた。

「本当に憂鬱な気分。こんな試合をたくさん見ているからね。プレミアリーグはスリリングであり、ワクワクして、リスクを恐れないものだった。しかし、今日は全く違ったね。本当に残念だよ。私自身もまいってしまった。退屈だったよ……」

「今の選手はまるでロボットのようだ。私生活まで細かく管理され、ピッチでは自分のポジションを自由に離れることを許されない。試合に勝つためにリスクを冒す自由が与えられない。これは現代フットボールの病になりつつあるよ」

しかし、その病はパリ・サンジェルマン(PSG)までは蔓延していないようだ。

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  • FBL-ENG-PR-MAN UTD-MAN CITYAFP

    「粗悪な模倣品」

    今季のプレミアリーグに関して言えば、タイトルレースや残留争いに関する「ドラマ」が圧倒的に不足していることも「つまらない」一因だろう。上位~中位の実力差はますます小さくなり、その証拠にマンチェスター・Uやトッテナムはボトムハーフに沈む一方で、ノッティンガム・フォレストやブライトン、ボーンマス、フラムなどの躍進が目立っている。

    一方でネヴィルが言わんとすることは、主にピッチ上の部分だ。彼は戦術の多様性やリスクを冒したプレー、選手個人の発想に基づく自由なアクションが減少していることを嘆いている。そしてそれは、ジョゼップ・グアルディオラが「ティキタカ」で大成功を収めた影響が大きいと考えているようだ。

    ネヴィルは「今は粗悪な模倣品が至る所で見られるようになったね」と断罪する。

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  • FBL-ITA-CUP-AC MILAN-INTERAFP

    インテルという成功例

    元イタリア代表ジョルジョ・キエッリーニが名付けたこの「グアルディオリズム」に関して、イタリアでは前々から議論が繰り返されてきた。名将ファビオ・カペッロは、ペップの哲学を必死に取り入れようとするあまり、それぞれの国が伝統的に重要視していた価値観やスタイルが失われていると主張している。

    そしてイタリアでは、この「グアルディオリズム」とは違うアプローチで成功を収めるクラブがある。チャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグ、敵地でのバイエルン戦でインテルが見せた姿は見事だった。イタリア伝統の“カテナチオ”を現代的にアップデートし、素晴らしく統率の取れた守備と圧巻のカウンター、そして多彩なビルドアップを織り交ぜた見事な試合運びで勝利を収めている。シモーネ・インザーギは「自分たちのフットボールと原則を信じ続けたからだ。この原則は、ほぼ4年間も我々の主軸としてきたんだ」と語った。

    もちろん、インテルをただの「守備的なチーム」と表現するのは間違いだ。前述の通り非常に魅力的なフットボールでしっかりと結果を残している。しかし「選手の自由度」という部分を見ると、やはり物足りなさは感じてしまう。

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  • TOPSHOT-FBL-EUR-C1-BARCELONA-BENFICAAFP

    「ロナウジーニョは二度と現れない」

    かつてのフットボール界には、ディエゴ・マラドーナやミシェル・プラティニ、ロベルト・バッジョ、ジネディーヌ・ジダン、デニス・ベルカンプ、ロナウジーニョ、フランチェスコ・トッティといったボールに「魔法」をかける偉大な“No.10”が存在した。しかし、現代フットボールでは彼らのような存在は許されない。リオネル・メッシを除き、行動にシステム化された高強度の現代フットボールでは、1人の選手がのびのびと自由にプレーする時間もスペースも与えられない。現代フットボールはもはや、研究室で作り出されるものになってしまったのだ。

    かつてマンチェスター・Uで活躍したパトリス・エブラは、元同僚リオ・ファーディナンドとのポッドキャストでこう語っている。

    「どのチームも素晴らしいプレーをしたいはずだ。だが、ティキタカはペップにしかできない。なぜみんな彼の真似をするんだろうか? もう天才は存在しない。ロボットがいるだけだ」

    「ロナウジーニョのような選手は二度と現れないだろう。フットボールはストリートから生まれたものなのにね……」

  • FBL-EUR-C1-MAN CITY-REAL MADRIDAFP

    不確実性の排除

    そして失われた“No.10”と同じく、ここ数年間はサイドを独力でこじ開けるウイングの存在も危惧されていた。偉大なフットボール哲学者でもあるホルヘ・バルダーノは、昨今のアカデミーの状況について「ワンタッチ、ツータッチでのパス回しが多用される一方で、フェイントやドリブルなどファンをワクワクさせるような予測不可能な瞬間が失われている」と語っていた。

    もちろん、ペップがフットボールを殺したわけではない。彼が作り上げたバルセロナに魅了されなかったものはいないはずだ。問題は、彼のフットボールの本質を見極めもせずに表面だけを模倣した結果、あまりに窮屈かつ予測可能で退屈なチームが量産されてしまったことだ。

    だが、今季のチャンピオンズリーグでは「フットボールの楽しさ」を思い出させてくれるチームがいる。

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  • FBL-EUR-C1-PSG-PRESSERAFP

    ルイス・エンリケの哲学

    ペップと同じくバルセロナで歴史的な三冠を達成したルイス・エンリケだが、彼は「グアルディオリズム」よりもよりダイレクトで縦の速さに特化したチームでそれを成し遂げた。そして、それはPSGでさらなる進化を遂げている。

    現在彼が指揮するPSGは、3トップ全員にウインガーを起用。サイドにはフヴィチャ・クヴァラツヘリアとデジレ・ドゥエ(もしくはブラッドリー・バルコラ)が並び、最前線にはウスマン・デンベレが位置している。さらに、アクラフ・ハキミとヌーノ・メンデスも事実上ウイングとして振る舞っている(両選手ともアストン・ヴィラ戦の平均ポジションは相手陣内のタッチライン際だった)ことを考えると、エンリケがいかにピッチを広く使うことと選手の個人技を重要視しているかが明白である。

    3-1で見事な勝利を収めたホームでのチャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグ後、エンリケは記者から「前半にドゥエのドリブルが失敗した場面で苛立っているように見えたが?」と指摘された。しかし、彼は「いや、それは違う」と断言。こう続けている。

    「選手がドリブルしても怒ることはない。ドゥエは1対1のスペシャリストだしね。PSGでプレーするためにすべてを備えているよ」

    あの試合で生まれたドゥエとクヴァラツヘリアのゴールは、いずれも圧倒的な個人技から生まれたものだった。このウインガーの自由な発想とプレーを許す彼のスタイルが、最終的にPSGへ悲願のビッグイヤーをもたらすかはまだわからない。だが少なくとも、ファンを熱狂させるスタイルでも欧州最高の舞台で結果を残せることは証明している。

  • Paris Saint-Germain v Aston Villa FC - UEFA Champions League 2024/25 Quarter Final First LegGetty Images Sport

    フットボールの「楽しさ」

    そして、ウイングが躍動するチームを作り上げているのはエンリケだけではない。

    ルイス・デ・ラ・フエンテ率いるスペイン代表は、ラミン・ヤマルとニコ・ウィリアムズを最大限に活かすプレーコンセプトでEURO2024を制した。またハンジ・フリックのバルセロナは、そのヤマルとハフィーニャが躍動している。さらにレアル・マドリーに圧勝したアーセナルにも、ブカヨ・サカという存在がいる。

    またプレミアリーグ優勝が目前に迫るリヴァプールでも、アルネ・スロットはモハメド・サラーとの契約延長後にこうした傾向に触れている。

    「今週のチャンピオンズリーグを見ると、各チームはこれまで以上に低い位置でブロックを組むことを好んでいた。だからこそ、ウイングの重要性はますます高まっているね。ヤマル、クヴァラツヘリア、ドゥエ、サカ、(ガブリエウ)マルティネリ……彼らはDFラインを突破し、チャンスを作り出せる選手だね」

    今週のセカンドレグでは、とりわけPSGが、選手個々が躍動する姿が「楽しい」ことを、フットボールの多様性を証明してくれるだろう。「ドリブル」という芸術は死んでいない。そしてネヴィルが「退屈」と評した現代フットボールに、新たな息吹を吹き込んでくれるはずだ。

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