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【全対戦国分析】パリ五輪、U-23日本代表に立ちはだかるのは? “黄金世代”イスラエルにモドリッチ想起のタレントら

 U-23日本代表は、パリ五輪本大会でU-23パラグアイ代表、U-23マリ代表、U-23イスラエル代表と対戦する。今回、国内外のサッカーを幅広く取材する河治良幸氏に各国の警戒ポイントを聞いた。【文=河治良幸】

  • 20240723_Paraguay(C)Getty images

    U-23パラグアイ代表

    ・予選成績
    2024 CONMEBOLプレオリンピック大会:1位

    ・過去五輪成績
    銀メダル(2004年)

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  • 南米王者として参戦

     五輪予選でブラジルを破るなど、南米王者として参戦するパラグアイ。銀メダルを獲得した2004年アテネ大会から5大会ぶりの五輪となるが、同じ南米勢のアルゼンチン、開催国フランス、東京五輪で銀メダルのスペインに次ぐメダル候補だろう。

     4-2-3-1をメインとしながらも、3バックのオプションも持つチームだ。カルロス・サギエール監督は堅実な守備とシンプルな展開からサイドを崩す攻撃を植え付けているが、ディフェンス面はオーバーエイジとして32歳のファビアン・バルブエナと36歳のGKガティート・フェルナンデスが加わったことで、さらに強固になったと考えられる。MFディエゴ・ロペスを中心とした攻撃は両翼からディエゴ・ゴンサレスとエンソ・ゴンサレスの“ダブル・ゴンサレス”が高い突破力で高精度のクロスやカットインからのコンビプレーを繰り出してくる。190cmのFWケビン・パルザユクは大会直前にボルドー郊外で行われたウクライナ戦(2−2)でも得点しており、危険な大型ストライカーだ。

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    “メッシの相方”に注意

     攻撃で第一に注意が必要なのはディエゴ・ゴメスだ。MLSのインテル・マイアミでアルゼンチン代表FWメッシとホットラインを形成するタレントで、中盤からワイドなパスと推進力のあるドリブルで違いを見せる。精度の高右足キックを備えており、セットプレーのキッカーも担う。7月18日に行われたウクライナとの親善試合には出場しなかったことが、逆に不気味だ。

     守備ではコパ・アメリカにも出場していたオーバーエイジのファビアン・バルブエナが、日本にとっても厄介な存在になりそうだ。189cmの巨体を誇るセンターバックだが、豊富な経験に裏打ちされたラインコントロールやカバーリングで、南米王者のディフェンスをさらに強固なものにするのは間違いない。銀メダルを獲得したアテネ五輪でもカルロス・ガマーラというオーバーエイジのセンターバックが獅子奮迅の守備で支えたが、バルブエナが同じような役割を果たせば、5大会ぶりのメダルも見えてくる。

  • 20240723_Mali(C)Getty images

    U-23マリ代表

    ・予選成績
    2023 U-23アフリカ・ネーションズカップ:3位

    ・過去五輪成績
    ベスト8(2004年)

  • 欧州育ちがひしめく

     アフリカ勢だが、フランスを中心に育成年代から欧州で活動している選手が大半を占める。バランスの取れたハイラインのディフェンスで効率良くボールを奪い、高い個人能力をベースとする攻撃で押し込もうとしてくる。日本も3月に京都で行われた親善試合では、マリに1−3で敗戦。局面でマリの身体能力に苦しみ、なかなかボールを奪えずに、ずるずると守備が下がってしまったのが要因だった。何より目を見張ったのがシュート力の高さで、枠内シュートの差がそのままスコアに表れたとも言える。マリは6月にはウズベキスタンと2試合を戦い、1勝1分。3月の日本戦は4-2-3-1だったが、五輪では2トップがベースになりそうだ。

     マリも日本と同様に、同年代のベストメンバーを揃えることはできなかった。たとえばA代表でも活躍するアタランタ所属のエル・ビラル・トゥーレなどは招集できていない。それでも2000年生まれのオーバーエイジであるMFサラーム・ジドゥとFWデンバ・ディアッロが加わり、より強力なチームになっているはずだ。

  • 20240723_Boubacar_Traore(C)Getty images

    ウルブスの有望タレント

     3月の日本戦で衝撃的な3点目を記録したブバカル・トラオレは、プレミアリーグのウォルヴァーハンプトンに所属する有望なタレントだ。183cmの長身をしなやかに操り、攻守にハイスケールなプレーを見せる選手で、単騎でボールを奪えば、ダイナミックにボールをバイタルアリアまで運び、ミドルシュートやラストパスに持ち込む。ボランチというよりボックス・トゥ・ボックスのセントラルMFというイメージだが、正確なサイドチェンジなど展開力も備える。

     2022年にA代表デビューを果たしたが、6月はW杯のアフリカ予選を戦うA代表ではなく、U-23代表のウズベキスタン戦に招集された。パリ五輪の中心を担い、秋以降のA代表に繋げていきたいところだろう。オーバーエイジの一人であるMFサラーム・ジドゥとのコンビ形成にも警戒が必要だ。

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    U-23イスラエル代表

    ・予選成績
    2023 U-21EURO:ベスト4

    ・過去五輪成績
    ベスト8(1968年、1976年)

  • 黄金世代で48年ぶり五輪へ

     昨年行われたU-21欧州選手権でベスト4に入り、48年ぶりにして三度目の五輪出場を果たした。そこから多くのメンバーがすでにA代表入りを果たし、“至宝”オスカー・グローフをはじめスタヴ・レムキン、ロイ・レヴィヴォ、ドル・テルグマンなど、主力に定着する選手も出てくるなど、まさしく“黄金世代”だ。EUROの本大会を逃したことで、五輪でのメダル獲得に向けて、ベストメンバーを揃えることができたと見える。

     バイエルン所属のGKダニエル・ペレツが直前の負傷で辞退となったが、オーバーエイジの大型MFオムリ・ガンデルマンと統率力のあるショーン・ゴールドバーグというA代表の中心選手が加わったのは心強いだろう。ガイ・ルゾン監督が3-5-2と4-4-2のどちらを使ってくるかは不明だが、自陣からボールを繋ぎながら、好機を見て屈強なFWドル・テルグマンに縦パスを入れて、鮮やかなワイドアタックを繰り出す。さらに、司令塔の役割を担うグローフに自由を与えてしまえば、起点のパスはもちろん、危険なスルーパスが出てくる。ミドルシュートを狙える選手が多いことにも要注意だ。

  • 20240723_Oscar_Gloukh(C)Getty images

    大きな存在感放つ小兵

     A代表クラスの選手がひしめくイスラエルでも、最も危険な存在がMFオスカー・グローフだ。主にインサイドで攻撃的なMFとして稼働するが、起用法によってはサイドハーフや2トップの一角でもプレーできる。ボールの収まりがよく、狭い局面でもボールを失うことなく効果的なパスをアタッカー陣に配給。ドリブルにも緩急があり、鋭く縦に行くと見せかけて、柔らかいラストパスをバイタルエリアでフリーのアタッカーに送ることもできる。フェイントで相手ディフェンスを外してから振り抜く、狙い澄ましたミドルシュートも危険だ。

     大型選手の多いイスラエルの中で、170cmのグローフは小柄に見えるが、存在感は大きい。クロアチア代表のルカ・モドリッチを想起させるタレントで、日本が最も警戒するべき選手だ。