Martin Odegaard Arsenal 2023-24Getty Images

「もう優勝しないと満足できない」2季連続2位の悔しさをバネに…アーセナル主将ウーデゴールの決意

昨シーズンの最終節、エミレーツ・スタジアムでのエヴァートン戦は2-1で勝利した。しかし、ピッチ中央に佇むアーセナル主将の顔に笑みはなく、その顔にはプレミアリーグのタイトルを逃した苦痛が浮かんでいた。試合後のセレモニーでは最後の数分まで王者マンチェスター・シティを追い詰めた成果を誇ったが、20年ぶりのリーグ制覇を逃した強烈な失望は、誰の目にも明らかだった。

それから2カ月、ファンの間には未だ失望感が残っている。しかし、キャプテンに後悔はない。あの経験が新シーズンの優勝へ導く原動力になると、本気で信じている。

文=チャールズ・ワッツ

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    「挫折が僕を強くする」

    「あと少しのところまでくれば、それを感じて味わうことだってできるものだ。僕らは大きな夢を抱いていた。最終日にそれを達成できると感じていたし、みんなもそうだったと思う」。ウーデゴールは記者団に語る。

    「試合後にはただただがっかりしたよ。トロフィーは見えていたからね。でも、それと同時にポジティブに考えることも大切だ。今季はさらに強くなり、優勝するためのモチベーションが湧いてくるんだ」

    「どんな挫折だって、自分を強くしてくれる。僕らが今、ここで昨季の失望を語っていること自体が、どれだけ成長してきたのか、何に挑戦しているのかを物語っていると思う。何か特別なものを勝ち取りたい。みんなのメンタリティがそうなんだ。もう、優勝しないと満足できない。だからこそみんなでお互いに高め合って、確実に勝ち取ろうとしている。僕らはシンプルに、もっともっと良くなりたいんだ」

    「全員が優勝したいと思っている。同じことを望んでいる。そして毎日高め合っている。モチベーションを見つけるのは簡単だ。選手、スタッフ、そしてサポーター。全員が同じ方向に向かっていると思うよ。大きな目標があるんだ。毎日小さいことを積み重ねていけば、最終的には巨大な報酬が手に入ると信じているよ」

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  • Arsenal celebrating Martin Odegaard goal Arsenal 2023-24Getty Images

    経験

    アーセナルは過去2シーズン、いずれもマンチェスター・シティにタイトルを譲る形になった。ジョゼップ・グアルディオラのスター軍団と互角に渡り合えることは証明したとはいえ、まだ何も手にしていない。歴史的な4連覇を達成してきたライバルに対し、あと一歩が足りないことは事実だ。

    この若いチームが優勝候補として評価され始めたのは最近のこと。しかし、識者はことあるごとに「経験不足」がタイトルを勝ち取れない理由だと指摘し続けてきた。それでも、この2シーズンには勝利の喜びや自信だけでなく、後悔や挫折など様々な戦いを経験し、多くを学び取ってきた。現在25歳のキャプテンは、こう語る。

    「年齢を重ねると、経験が増えていく。準備が整った感じがするんだ。良いことだよね。チームには若い選手がたくさんいるし、正直言ってもう自分がベテランの1人に感じるよ。気に入っているけどね。過去の経験を、できる限り最高の形で活かしたい。歳を重ねると責任感が増して、ピークに到達したようにも感じる。もっと成長したいけどね。どんな場所であろうと、歳を重ねれば重ねるほど最高レベルに達するために努力を続けたい」

  • プレシーズンの重要性

    ウーデゴールは先週、エミール・スミス=ロウやユリエン・ティンバー、ベン・ホワイトらとともにスペイン・マルベリャでのトレーニングキャンプに参加した。この夏に代表チームでの活動がなかった選手たちのコンディションを高めるよう、ミケル・アルテタ監督とコーチ陣が企画した遠征だ。

    先日には新シーズンのプレミアリーグ日程が発表され、アーセナルは開幕からウォルヴァーハンプトン、アストン・ヴィラ、ブライトン、トッテナム、マンチェスター・シティと厳しい相手との連戦を迎える。だからこそ、開幕を最高の状態で迎えることが重要だ。そしてウーデゴールは、いかにプレシーズンが重要か、シーズンに影響を与えるかを理解している。

  • Mikel Arteta Martin OdegaardGetty Images

    「成長のチャンス」

    来週のアメリカツアーを控え、アーセナル主将はこう語る。

    「良いスタートを切ること、すぐに良い感触を得ることは本当に重要なんだ。今取り組んでいることは、特にシーズン最初にコンディションを上げることを助けてくれるはず。アドバンテージを得るチャンスなんだ。もちろん休暇は必要だけど、普段取り組めないことにチャレンジする良い機会でもある。成長するチャンスだ」

    「(アメリカツアーに)ワクワクしているよ。いつも楽しいんだ。声援は素晴らしいし、各地で色々な人と出会いながら、世界中から集まる一体感を感じるのは最高の経験だね。ビッグマッチを戦えるのが楽しみだ」

  • Riccardo-Calafiori(C)Getty Images

    「今のチームには満足」

    直近2シーズン連続で2位に終わり、あと一歩でタイトルを逃しているアーセナル。新シーズンのタイトル奪還へ向けて当然のように補強は話題となっている。これまでは守護神ダビド・ラヤの完全移籍を決めたのみだが、イタリア代表DFリッカルド・カラフィオーリの獲得は決定的となっており、さらに中盤とウイングの補強も目指している。今後も様々な報道がされ続けるだろう。

    しかし、ウーデゴールはそれほど気にしていないようだ。現チームやアルテタ監督&エドゥSD(スポーツダイレクター)への信頼を強調しつつ、自分たちの戦いに集中している。

    「今のチームには本当に満足だよ。素晴らしいクオリティがあるし、特にシーズン終盤にはそれを発揮できたと思っている。歴史を作ったしね(史上最多リーグ戦28勝)。だからあまり心配はしていない。ミケルとエドゥ、そしてクラブが解決してくれるはずだ。このチームに一員で嬉しいよ」

  • odegaard(C)Getty Images

    プレシーズンツアーへ

    アーセナルは来週末にもアメリカツアーに出発。25日にはボーンマスと対戦し、28日にマンチェスター・ユナイテッド、8月1日にリヴァプールと対戦する。いよいよ新シーズンへ向けた準備が本格化する中、アーセナルのアームバンドを巻く男のモチベーションはかつてないほど高まっている。