PEPE_22Getty

“アーセナル史上最高額の男”ニコラ・ペペは、いかにして116億円の悪夢となったのか

ニコラ・ぺぺは移籍市場の最終盤にアーセナルを去ることになるかもしれない。

ペペがリールから7200万ポンド(約116億円)とクラブ史上最高額でやってきたのはわずか3年前だが、実を結ぶことなく、今夏終わりを迎えようとしている。

アーセナでペペは遠征メンバーから外れ、レンタル移籍成立のためにニースと長期にわたって話し合いを続けている。しかし、週給14万ポンド(約2200万円)とも言われるペペの高給が、最終合意へのネックとなり、契約はまだ結ばれていない。それでも、両クラブともに移籍市場が閉まるまでには正しい結論が出ることを望んでいるだろう。

では、なぜアーセナルは、わずか3年前に移籍記録を塗り替えた選手を放出することに前向きなのだろうか?『GOAL』では番記者チャールズ・ワッツが考察していく。

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  • Raul Sanllehi Arsenal

    ヒエラルキーの変化

    これは、ペペにとって大きな出来事だった。

    着任とほぼ同時に、彼を連れてきた大物たちが皆、クラブを去ってしまったのだ。

    この時期にフットボール部長を務めていたラウール・サンレイヒは、コートジボワール代表ウインガーをクラブに呼び寄せるのに大きな役割を果たした。

    ウナイ・エメリ監督は、本当はクリスタル・パレスからウィルフレッド・ザハを求めたのだが、それが却下され、代わりにペペを獲得したのである。

    サンレイヒはこの取引を行った人物であり、アーセナルの契約交渉の責任者であったフース・ファミーは、ペペと話し、すべての詳細を調整した人物であった。つまり、2人ともこの移籍に大きな関心を寄せていたのである。

    だが、クラブが大きく変化するときに2人は去っていった。

    エドゥーはテクニカル・ディレクターとして自身の考えを持ち、アルテタはエメリに代わって新しい哲学を持ち、どのようにプレーしたいかを語ってくれた。

    そしてすぐに、ペペがその条件に当てはまらないことが明らかになった。

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  • Nicolas Pepe of ArsenalEddie Keogh/Getty Images

    一貫性の問題

    ペペがアーセナルで完全に失敗したと言うのは、不公平だろう。

    アルテタが就任した最初のシーズンの終盤、FAカップでアーセナルの成功に重要な役割を果たし、決勝戦ではゴールもお膳立てするなど、良い瞬間もあった。

    2020-21シーズン、ペペは全コンペティションで16ゴールを決め、そのうち最後の11試合では8ゴールをマークした。

    しかし、このウインガーの大きな問題は、一貫性を欠くことである。7200万ポンドもする選手としては、これでは十分とは言えない。もっと期待を背負うべきなのだ。

    また、彼のベストパフォーマンスはカップ戦で発揮されているようで、プレミアリーグで発揮されることはほとんどない。アルテタのような厳しい監督がいる場合、それは常に問題になりそうだ。

  • Mikel Arteta Arsenal 2021-22Getty Images

    守備意識の欠如

    ペペが抱えているもうひとつの問題は、守備がうまくできないことだ。

    アルテタは、ボールを持っていないときに、そのままのポジションでいることを許すような監督ではない。彼は常に、選手たちに守備へ戻り、プレスをかけ、ディフェンスを助けることを望んでいる。

    しかし、ペペのディフェンスはそれには程遠く、アルテタがサイドからペペを見ていると、そのフラストレーションが伝わってくるようだ。試合中ほとんどペペを指導し、常にどこにいてほしいかを正確に伝えなければならない。

    昨シーズン終盤、アルテタがペペに抱く不満を集約した瞬間があった。

    アストン・ビラ戦で1-0とリードしていた最後の数秒、後半に投入されたこのウインガーは、危険なエリアでのフリーキックを与えるために怠惰なプレーをした。アルテタが7200万ポンドのペペに激怒したのは、そのときが初めてではない。

  • Bukayo Saka Arsenal 2022Getty

    サカの急浮上

    このことも、ペペがなかなか活躍できない大きな要因となっている。

    サカがアーセナルの下部組織でプレーしていた頃は、その活躍ぶりに注目が集まっていたが、これほど早くトップチームで活躍できるようになるとは誰も予想していなかった。

    しかし、この若きウイングは初先発を果たした瞬間から、先発メンバーとしてほぼ不動の地位を築き、スタメンのワイドポジションの一角を奪った。

    この瞬間から、ペペに後戻りはできなくなった。

    サカがあらゆる面で明らかに優れていたため、彼は常にバックアップのオプションに過ぎなかったのだ。

  • Arsenal and Ivory Coast winger Nicolas Pepe.Getty.

    システムにフィットしない

    リールから移籍してきたペペは、カウンターの名手という評判とともにやってきた。

    フランスでの最後のシーズンは22得点を挙げ、その多くはスペースに走り込み、スピードに乗ったときに生まれた。しかしアーセナルでは、彼が在籍している間、カウンターを重宝するスタイルではなく、ほとんどそれができなかった。

    アルテタ就任直後、アーセナルがよりカウンターアタック的なスタイルでプレーしていた時期に、彼のベストフォームが生まれたことは注目に値する。

    FAカップの成功で最高潮に達した2019-20シーズンのその終盤、アルテタが手塩にかけたものを最大限に生かすべく、ペペは主役を演じた。

    しかし、アルテタが望む選手が入り、チームが自身の望むスタイルでプレーするようになってから、ペペの出場機会はますます限られてきている。