Best EPL signings GFXGetty/GOAL

ミケル・メリーノ、オマル・マーモウシュ…2024-25シーズンプレミアリーグの移籍ベスト10

プレミアリーグのクラブは2024-25シーズンの夏冬2つの移籍市場で新たな選手の獲得に20億ポンド(約3,870億円)を超える資金を投入し、イングランドが欧州のトップ選手にとってナンバーワンの移籍先であることを再度証明した。しかし、多くのクラブは高額な移籍金と金持ちとの評判に見合った成果をあげられないでいる。

いくつかの移籍は惨憺たる失敗に終わり、また別のいくつかの移籍は安定した成果を出せていない。チェルシーのジョアン・フェリックスとジェイドン・サンチョは前者、マンチェスター・ユナイテッドのオランダ代表コンビ、ジョシュア・ザークツィーとマタイス・デ・リフトは後者だ。また、夏にユヴェントスから移籍したフェデリコ・キエーザのリヴァプールでの初めてのシーズンについては、言わぬが花というものだろう。

しかし、高額な失敗を犯したのはスーパークラブだけではない。ニクラス・フュルクルクとエディ・エンケティアはウェストハムとクリスタル・パレスを大いに失望させ、サウサンプトンのベン・ブレアトン・ディアスやブライトンのフェルディ・カドゥオールもまったくチームに貢献できていない。

また、イプスウィッチのカルヴァン・フィリップスやアーセナルのラヒーム・スターリングなど、レンタル移籍も数多く失敗している。しかし、過去12カ月のプレミアリーグの補強はすべてが悪かったわけではない。高額移籍で加入した選手の中にも新天地でスター選手として定着した者がおり、今シーズンはイングランドのトップリーグの近年の歴史において、最も賢明な補強があった年のひとつとなっている。

予想外の場所から真の価値が見出されたこともあり、最も裕福なクラブが支配的であるのが当たり前な時代に新鮮な変化をもたらした。これらを踏まえ、今シーズンの移籍のベスト10を以下にランキングしてみよう。

  • FBL-ENG-PR-MAN CITY-CRYSTAL PALACEAFP

    10オマル・マーモウシュ(マンチェスター・シティ):5,900万ポンド(約114億円)

    オマル・マーモウシュは、このリストに名を連ねる選手たちの中で唯一、1月に加入した選手であり、このエジプト代表FWはエティハド・スタジアムでの新しい環境にあっという間に適応してみせた。26歳のマーモウシュは、今シーズン前半にアイントラハト・フランクフルトで見せた得点力をそのままマンチェスター・シティに持ち込み、プレミアリーグでの最初の12試合で6得点を記録。そのうちニューカッスルを4-0で破った試合では驚異的なハットトリックを達成した。

    長期的に見れば、複数の攻撃的ポジションでプレーでき、中盤のスペースを有効利用できるマーモウシュは、フリアン・アルバレスの後継者となるだろうが、アーリング・ハーランドの負傷離脱中には、ストライカーとして効果的にチームを牽引できることも証明してきた。また、マンチェスター・Cのチームとしてのパフォーマンスが著しく低下している中で、マーモウシュがああした高いレベルでプレーしていることは好材料であり、ペップ・グアルディオラ監督もそう言っている。

    「彼は今シーズン半ば、チームが調子の悪い時期に加入した。すべてがスムーズで調子の良い時に加入すれば、適応は簡単だ。 しかし、チームの調子が悪い時に加入して適応したのは、大きな評価に値する」

    来シーズンのマーモウシュの活躍が大いに期待できることは間違いない。

  • 広告
  • Crystal Palace FC v Aston Villa FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    9イスマイラ・サール(クリスタル・パレス):1,300万ポンド(約25億円)

    ワトフォードにいた頃のイスマイラ・サールはプレミアリーグで特に目立つ活躍はしなかったが、セネガル代表の若手選手として大きなポテンシャルを秘めていることは明らかだった。そのポテンシャルは昨シーズン、マルセイユで徐々に開花し、クリスタル・パレスはこの衝撃的なFWをイングランドに呼び戻したのだった。現在はオリヴァー・グラスナー監督の攻撃的な戦術にスムーズにフィットし、チームに貢献している。

    イーグルスことクリスタル・パレスのセンターFWジャン=フィリップ・マテタの下でプレーするサールは、エベレチ・エゼと絶妙な連携を築き、トップリーグで11得点を記録している。ボックス内に遅れて入ってくるサールの動きはクリスタル・パレスの攻撃をこれまで以上に危険なものとしているし、守備を突破する高速ドリブルは攻守の切り替えに不可欠な要素となった。

    最終的にゴールを決める力も劇的に向上しており、今シーズン、クリスタル・パレスの選手の中で最も多くのビッグチャンスを創出している。サールは自分の居場所を見つけたようだ。サールがこのペースで成長を続けるならば、2025-26シーズン、グラスナー監督のチームはプレミアリーグで欧州の大会への出場権獲得を目標に据えるべきだろう。

  • evanilsonGetty Images

    8エヴァニウソン(ボーンマス):4,000万ポンド(約77億円)

    ボーンマスはドミニク・ソランケがトッテナムに移籍した後、チームの移籍金記録を更新してエヴァニウソンを獲得したが、ポルトのFWだったエヴァニウソンは、イングランド代表のソランケの穴を埋める素晴らしい仕事をしている。このブラジル代表選手はチェリーズことボーンマスで現在までにリーグ戦10得点という素晴らしい成績を挙げているが、2025年の最初の2カ月を足の骨折で棒に振っていなければ、この数字はさらに増えていたに違いない。

    エヴァニウソンは完全復活後8試合で5得点を挙げ、アーセナル戦でボーンマスの決勝点を決めるなど、絶好調である。アンドニ・イラオラ監督は、エヴァニウソンという優れたフィニッシャー兼ターゲットマンを獲得し、またしても見事な補強を成し遂げたのだった。彼は今後数年間、チェリーズの攻撃を牽引する存在となるだろう。

    「彼はトップクラスのストライカーだ。ゴールマウスがどこにあるかを熟知しており、得点を決められる選手である」と、ウェストハムとアストン・ヴィラでスターだったナイジェル・レオ=コーカーは、エミレーツで輝くエヴァニウソンを見て、BBCラジオ5ライブの『フットボール・デイリー』のポッドキャストで語った。「ボックス内での動きが素晴らしく、生まれついてのフィニッシャーで、典型的なストライカーだ。ボーンマスに移籍して以来、ますます力を増している」。ボーンマスがプレミアリーグのトップ10に食い込んだ主な要因のひとつがエヴァニウソンであることは間違いなく、2026年ワールドカップのブラジル代表への招集を見据えているに違いない。

  • Wolverhampton Wanderers FC v Leicester City FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    7ヨルゲン・ストランド・ラーセン(ウルブス):レンタル移籍

    スペインのサッカークラブ、セルタ・デ・ビーゴにとって2023-24は忘れがたいシーズンだった。ラ・リーガでは2シーズン連続で13位に終わったが、唯一の明るい材料がヨルゲン・ストランド・ラーセンだった。このノルウェー代表選手がスペインの1部リーグで13得点を挙げると、その才能に目をつけたウルブスが彼を獲得。その後、プレミアリーグでも同じ数の得点を記録している。

    ウルブスが降格圏を逃れたことに関しては、マテウス・クーニャがその功績の大部分を担っていると言われているが、ストランド・ラーセンもクーニャより2得点少ないだけで、ボールを保持するプレーにはしばしば卓越したものがあった。ボールがない時もチームの誰よりもハードワークする選手であり、ヴィトール・ペレイラ監督もその姿勢を高く評価している。

    「私のストライカーは戦える選手でなければならない。守備を始める最初の選手でなければならないし、得点することだけに責任を感じていればいいわけではない。彼(ストランド・ラーセン)にはそうした精神と人格があり、私は彼のサッカーに取り組む姿勢を気に入っている」

    モリニュー・スタジアムを本拠地とするクラブは、今夏、ストランド・ラーセンのレンタル移籍を2,300万ポンド(約44億円)で完全移籍に切り替える可能性があると報じられている。これは、特にクーニャの移籍の噂が続く中、ペレイラ監督にとって最優先事項であるに違いない。

  • Crystal Palace FC v AFC Bournemouth - Premier LeagueGetty Images Sport

    6マクサンス・ラクロワ(クリスタル・パレス):1,500万ポンド(約29億円)

    ミカエル・オリーズ、ヨアキム・アンデルセン、ジョルダン・アイェウを含む数多くの主要選手を失ったクリスタル・パレスの今シーズンは、悪夢のようなスタートだった。新加入選手たちの適応に時間がかかり、アンデルセンの代役として加入したマクサンス・ラクロワもそのひとりだった。ラクロワは昨シーズン、ブンデスリーガのヴォルフスブルクで、センターバックとして大活躍した選手であった。

    しかし、ラクロワはプレミアリーグでも徐々に同じような活躍ができつつあり、マルク・グエイやトレヴォ・チャロバーと共に3バックの要としてプレーしている。11月以降はクリスタル・パレス復活の立役者となっており、マンチェスター・シティ戦でのスリリングな2-2の引き分けの際には素晴らしいゴールも決めている。

    このフランス出身選手はリーグで最も俊足な選手のひとりで(超人的なリカバリーの源)、高いサッカーIQを持ち、パスをミスすることはほとんどない。ラクロワの威厳ある存在感は、オリヴァー・グラスナー監督のチームが強力なチームとなった主な要因のひとつである。セルハースト・パークでの活躍が続けば、トップクラブがこのクリスタル・パレスのスター選手に目を向けるようになるのは時間の問題だろう。

  • Ipswich Town FC v Wolverhampton Wanderers FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    5リアム・デラップ(イプスウィッチ・タウン):2,000万ポンド(約38億円)

    リアム・デラップがマンチェスター・シティで自身の価値を証明する機会をまったく得られなかったのは、本当に残念なことだ。2020年に同クラブのアカデミーを卒業したこのイングランド出身FWは、ペップ・グアルディオラ監督の下でのトップチームでの出場がわずか6試合で、当然ながら今夏、エティハド・スタジアムを去る道を探した。その際、イプスウィッチが即座に獲得に動き、5年契約を交わしたのだった。

    ほとんどのファンが予想していた通り、トラクターボーイズが降格を回避するには戦力不足だったが、デラップの努力は充分だった。21歳のデラップは、チャンスが有り余っていたわけではなかったにもかかわらずイプスウィッチでプレミアリーグ12得点を挙げ、特にアストン・ヴィラと2-2で引き分けた試合での2得点が印象に残る。このパフォーマンスを受けて、リヴァプールの元MFダニー・マーフィーは、『BBC』のマッチ・オブ・ザ・デイ2で、この若手選手はイングランド代表の「ハリー・ケインの後継者」として「明らかに有望」だと評した。

    ストーク・シティの元MFロリー・デラップの息子であるリアム・デラップは、生まれついてのゴール感覚に加え、トップになるための身体能力と技術も備えている。イプスウィッチの唯一の攻撃の武器として活躍してきた彼には、プレミアリーグに残留するに値する。マンチェスター・ユナイテッドとチェルシーが、この才能ある若手選手を獲得するために争奪戦を展開するだろうと報じられている。

  • Tottenham Hotspur FC v Nottingham Forest FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    4エリオット・アンダーソン(ノッティンガム・フォレスト):3,500万ポンド(約67億円)

    ニューカッスルは、プレミアリーグの『収益性と持続可能性に関する規則』(PSR)を順守するため、エリオット・アンダーソンをフォレストに売却せざるを得なかった。この決定は、エディ・ハウ監督には「納得のいかない」ものだった。22歳のアンダーソンが今シーズン、シティ・グラウンドで目覚ましい活躍を見せていることを考えると、ニューカッスルの監督は悔しさを募られていることだろう。

    「あのように若い選手にしては、彼は驚くべき才能の持ち主だ」と、フォレストのヌーノ・エスピーリト・サント監督は 11 月、『スカイスポーツ』で語った。「彼は自分が優秀であると分かっているが、さらに上を目指している。それが第一歩だ。彼が加入して、私たちは大変喜んでいる。これは非常に良い取引だったと思う」。この最後の言葉は、アンダーソンの移籍金が夏以降おそらく2倍になっていることを考えると、控えめな表現である。

    アンダーソンはピッチの中央でもサイドでもプレーでき、フォレストが残留争いからチャンピオンズリーグ出場権争いへと変貌を遂げる中で、ヌーノ監督は彼の多才ぶりを大いに活用している。U-21イングランド代表のアンダーソンは、卓越したパスレンジを持ち、瞬時にディフェンスを突破できる革新的なドリブラーであり、フォレストのユニフォームを着て以降、これまでに6アシストを記録している。得点力さえ身につければ完璧なオールラウンダーとなり、イングランドのフル代表に選出される可能性も充分にある。

  • merinoGetty Images

    3ミケル・メリーノ(アーセナル):3,200万ポンド(約61億円)

    ミケル・メリーノは、昨夏、アーセナルのファンが最も望んでいた魅力な補強選手ではなかった。レアル・ソシエダでスターだったメリーノは、スペイン代表としてEURO2024の優勝に貢献した直後にエミレーツ・スタジアムに加入したが、批判者の中には、ミケル・アルテタ監督はMFではなく新たなストライカー獲得に巨額を投じるべきだったと指摘する者もいた。

    しかし、結果的にメリーノはアーセナルにとってFWとMFの両方を備えた選手となった。28歳のメリーノはシーズン前半はケガでなかなか試合に出られなかったが、後半にはカイ・ハヴァーツやガブリエウ・ジェズスの長期離脱を補うセンターFWの役割を任され、間違いなくアーセナルで最も重要な選手となった。

    アルテタ監督のアーセナルでメリーノがプレミアリーグで決めた6得点のうち5得点は年明け以降に記録されたもので、その中にはチェルシーとのロンドン・ダービーでの決勝点も含まれる。元ニューカッスル所属のメリーノは試合を読む能力に長けたテクニシャンだが、空中戦での強さを武器にアーセナルの前線に新たな次元をも開いた。彼の多才さがなければ、チームは5位争いに巻き込まれていたことだろう。

  • DEAN HUIJSEN BOURNEMOUTH Getty Images

    2ディーン・ハイセン(ボーンマス):1,300万ポンド(約25億円)

    「彼は本当にクールで、冷静沈着だ。サッカーをこんなに簡単に楽々とやれるのは彼だけだ」と、リヴァプールとトッテナムでスターだったジェイミー・レドナップは、ボーンマスがアーセナルとのアウェー戦に勝利した試合でディーン・ハイセンのプレーに圧倒された後、『スカイスポーツ』で語った。 「20歳でこのレベルでプレーするなんて、彼のようなプレーをする選手はヨーロッパのほぼすべてのクラブが欲しがるだろう。この若者は選手として完璧だ」。レドナップのハイセンに対する評価は的を射ており、ハイセンはバイタリティー・スタジアムでのデビューシーズンで夢のような活躍を続けている。

    ユヴェントスはハイセンを安価で手放したことを後悔しているに違いない。彼はその後、ヨーロッパで最も注目される若手のセンターバックとして台頭し、スペイン代表にまで招集された。今夏にはレアル・マドリーが争奪戦を制した。

    ハイセンは攻撃的なDFで、バックラインからボールを繋ぐプレーが得意である。その素晴らしいパスワークは、今シーズンのボーンマスの成功の鍵となっている。また、アタッキングサードでも活躍しており、エミレーツでの初めての点を決めた見事なヘディングは、チェリーズでのプレミアリーグでの3得点目となった。

    イングランドのメディアは有望な若手選手を過大評価する傾向があるが、ハイセンの将来が無限大なのは事実だ。レアル・マドリーでさらに飛躍していくことは間違いない。

  • milenkovicGetty Images

    1ニコラ・ミレンコヴィッチ(ノッティンガム・フォレスト):1,200万ポンド(約23億円)

    ミレンコヴィッチは2024-25シーズンにプレミアリーグへ移籍してきた中で最高の選手であるだけでなく、リーグ史上においても最高の選手のひとりである――特にコストパフォーマンスの面において。フィオレンティーナ所属のセルビア代表としてEURO2024で輝かしい活躍を遂げた後、シティ・グラウンドにやってきたミレンコヴィッチは、フォレストの守備の要としてムリージョと鉄壁のコンビを築き、プレミアリーグで最も危険なストライカーたちを次々と封じ込めている。

    フォレストは昨シーズン、守備においてイングランドのトップリーグで5番目に悪い記録をマークしており、特にセットプレーが弱点だったが、195cmのミレンコヴィッチはそれらの問題を完全に解決した。今シーズンのヌーノ監督のチームはプレミアリーグでわずか45失点しかしておらず、ミレンコヴィッチが地上と空中の両方で危険を未然に防いでいる。

    リヴァプールのレジェンド、ジェイミー・キャラガーが「マン・マウンテン」と称するミレンコヴィッチは、強靭な体格、スピード、冷静さ、そして試合を読む能力に長けている。27歳の彼は相手のボックス内でも大きな脅威となっており、フォレストでリーグ戦4得点を挙げ、彼ひとりでチャンピオンズリーグ出場の可能性を支えている。

    ミレンコヴィッチはまさに圧倒的な存在で、彼の成功を見れば、数年前、彼との契約を取りざたされていたマンチェスター・ユナイテッドやトッテナムのようなチームが、なぜ彼の獲得に動かなかったのだろうと思うばかりである。