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松木玖生と荒木遼太郎。FC東京の「ダブルトップ下」が浦和レッズを国立に沈める/翼よ! あれがパリの灯だ

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 国立競技場を高校サッカーの名門出身コンビが沸騰させた。FC東京の松木玖生と荒木遼太郎は3日浦和レッズ戦でも前線でコンビを組むと、0-1のビハインドで迎えた後半、まずは荒木のミドルシュートで同点に追い付くと、58分にはクロスから相手DFを出し抜いた松木が左足で決勝点。パリ五輪を目指すU-23日本代表での活躍も期待される両雄の活躍で、FC東京が貴重な白星を掴み取った。【取材・文=川端暁彦】

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    好対照な二つのゴール

     表記するなら4−2−3−1、あるいは4−4−2となるのだろうが、FC東京の前線は“ダブルトップ下”か“ダブル10番”と言うべき並びである。典型的なセンターFWを起用せず、松木玖生と荒木遼太郎に前線を託す形だ。

     基本は荒木が前で松木が後ろに構えるのだが、ゴールシーンはこのシステムでの役割分担を象徴していると言えるだろう。

     50分、左サイドバックのバングーナガンデ佳史扶が左サイドを破ってのマイナスの折り返しをペナルティーエリアの外で受けたのは、荒木だった。「練習からやってきた形」(バングーナガンデ)というこのボールの受け方は、いわゆる“9番”の選手ではない荒木らしさが出たもの。そこから見事に突き刺した鋭いミドルシュートは、「落ち着いて狙えた」という本人の言葉どおり、名GK西川周作も触れない位置へ見事に突き刺さった。

     一方、58分に生まれた松木の得点はクロスボールに対してマークに付いたDFの前に入り込みながら点で合わせるという“ストライカー”のようなゴール。「ゴール前での感覚が出た」と本人が胸を張ったとおり、得点感覚に優れる松木らしい一撃だった。

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    蘇った青赤の気風

     わずか4日前、川崎フロンターレとの「多摩川クラシコ」にてFC東京が0−3と惨敗した試合で見せたパフォーマンスは驚くほどに低調だった。

     シュートは試合を通してわずかに4本。躍動感などまるで感じさせず、「外回しの攻撃ばかりになってしまった」と荒木が振り返り、松木も「自分とタロウ(荒木)のところにボールが入らなかった」と語ったとおり、二人の個性が活きるシーンは数えるほどしかなかった。

     ただ、雨降って地固まるではないが、この試合が選手たちに危機感を持たせた面もある。

     松木はこう語る。

    「選手同士でミーティングもしましたし、細かいところも、いま思ってる現状についてのところも、みんなから話も聞きました。これが良い方向に今回は働いてくれたと思う」

     チームとしての狙いを再確認しつつ、コンセンサスを取る。次の試合まで練習できる時間はほとんどない中で、あらためて意思統一を図った。

    「(FC東京のサッカーは)ボールを大事にしながらも第一優先でゴールを目指すこと」(松木)

     ボールを失わないように保持することをおろそかにするわけではないが、ロストを恐れてゴールを目指さない、リスクのあるパスを選択せず、安パイのプレーに終始するのは違う。その基本的な部分を確認した。

     加えて徹底したのは前からの守備とハードワークだ。スタメンの平均年齢が川崎F戦の27.45歳から22.73歳まで一気に5歳近く若返った影響もあったかもしれない。

    「今日は平均年齢がめちゃくちゃ若かったんですよね。みんなフレッシュなので、『今日は走り勝とう』ということはみんなで言っていたので、そこが出たのかな」

     荒木がそう振り返ったとおり、ウイングに入った21歳の安斎颯馬と19歳の俵積田晃太、そして21歳の荒木と20歳の松木の4人の攻撃陣は激しくプレスをかけ、またキッチリと戻りといったタスクを遂行。後半はオープンな展開になってボールが両陣を行ったり来たりする流れもあったが、まさにそこで走り勝ってみせた。

  • 20230425-U23japan-araki-matsuki©Kenichi Arai

    さらに上を目指して

     荒木は今季を前に鹿島アントラーズから期限付き移籍してきた。以前から「FC東京ではサッカーができているので」と笑顔で語ったとおり、出場機会への飢えを満たされる中で、自身の個性を発揮してきた。

     ここまで5得点という数字も残しているが、東福岡高校からプロ入りして以来初めてとなる完全な主力として定着した状態で送るシーズンは、特別に充実したものとなっているようだ。

    「本当に良い関係でみんなとやれている。本当に楽しくやれてます。(監督からの信頼に)結果で応えようと思っている。もっともっと結果で応えて、もっともっと勝ちたい」(荒木)

     一方、キャプテン役の一人にもなっている松木にとっては、ある種の試行錯誤をしながらのシーズンにも見える。ただ、多摩川クラシコの惨敗を受けて臨んだこの試合で見せた闘争心あふれるリーダーシップと勝負どころの得点力は青森山田高校時代から際立つものがあったが、ここに来て「戻ってきた感覚がある」と本人が言うのは、まさにこうした部分だろう。DF長友佑都や森重真人のような頼れるベテランがピッチにいなかったことで、リーダーとしての松木の存在感がより際立つ形になった面もあるかもしれない。

     今日4日にはU-23日本代表のメンバー発表も行われる。パリ五輪に向けてアジアからの生き残りをかけた真剣勝負に、この二人の個性は不可欠に思える。タフに戦い、華麗に決めて、シビアに勝ち切る。この日のような別のユニフォームでも観られることを期待しておきたい。

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