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ウーデゴールはアーセナルのシーズンを救うはずだったが、サカ不在で苦戦する理由

ガブリエウ・ジェズスの長期離脱を余儀なくされているアーセナルが、日曜のFAカップでマンチェスター・ユナイテッド相手に再び攻撃力の欠如を露呈したことから、ミケル・アルテタ監督がストライカーの獲得について問われるのは避けられないことだった。

「何か行動を起こせば、必ず良くなると信じなければならない。そのポジションに限ったことではない。他にも問題がある」。 意外にも、マルティン・ウーデゴールもその問題のひとつである。

「彼に何が起こっているのか?」と、元アーセナルのウィリアム・ギャラスは疑問を呈した。「過去2年間、ゲームをコントロールしてきたのと同じ選手に見えない。ケガをしていたのは知っているが、彼にとっては本当にひどい出来だ」

「ここ数シーズン、アーセナルがタイトルを争っていたとき、選手たちは最高の状態でプレーしていた。しかし今シーズンは、平凡なパフォーマンスが多すぎる。彼らはリーグ優勝のチャンスを十分に理解していない。プレミアリーグで優勝を狙うなら、毎試合全力を尽くさなければならないのに、それができていない。アーセナルは目を覚ます必要がある。ウーデゴールも目覚めなければならない」

そう、ギャラスの言うとおりだ。ケガによるタイトル争いのさなかにキャプテンが消えてしまうことについて、ギャラスはよく知っている。

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    プレミアリーグ最高の選手

    ウーデゴールが素晴らしい才能の持ち主であることは明らかだ。彼はここ1年足らずで、プレミアリーグ最高の攻撃的MFとして注目されるようになった。

    「今のナンバーワンはウーデゴールだ」と、元イングランド代表のジェイミー・レドナップは主張する。「普通なら、プレミアリーグだけでなく世界でもケヴィン・デ・ブライネが最高だと言うだろう。しかし、彼には何かが欠けている。思うように試合に出場できていない」。

    「ところが、ウーデゴールには、偉大な選手なら誰もが持っているものがある。ボールを持ったときの動きは、まるで時が止まったかのようだ。彼はキャプテンであり、リーダーだ。ボールを持っていないときは、ボールを取り戻しに行く。彼はアーセナルのチームを引っ張っている」

    もはやそうではない。少なくとも、以前と同じような効果や説得力はない。

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    キャプテン不在の苦悩

    過去数シーズンにわたってプレミアリーグの強豪チームとして台頭してきたアーセナルにおいて、ウーデゴールの重要性は疑う余地がない。 彼の激しいプレスと正確なパスは、アーセナルがボールを持っていようといまいと、アタッキングサードでチームが行うすべてのプレーに欠かせない。 だからこそ、今シーズン初めの2カ月間、国際試合で負った足首の負傷により戦線を離脱した際には、彼の不在が非常に痛手となった。

    アーセナルは主将を欠いた状態でプレミアリーグの7試合を戦い、そのうち4試合で勝ち点を落とした。2024-25シーズンこれまでに喫した2つの敗北は、アウェイでのボーンマス戦とニューカッスル戦だった。

    11月にようやく復帰すると、アーセナルの世界はしばらくの間、すべてがうまくいっているように見えた。ウーデゴールは復帰後最初の2試合となったチェルシー戦とノッティンガム・フォレスト戦でアシストを記録し、その後ウェストハム戦で今季初得点を挙げた。しかし、11月30日のロンドン・スタジアムでのPKが、ウーデゴールにとってプレミアリーグで直近の得点に絡んだプレーであるというのは、それ以外にも多くの活躍を見せているとは言え、あれほど才能ある攻撃的MFとしては物足り無さを感じさせる。

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    サカなしでは同じではない

    ウーデゴールの苦悩が、自身の前に真のワールドクラスのストライカーがいないせいであることは明らかだ。彼の素晴らしいプレーの多くが無駄になっている。また、ブカヨ・サカの負傷離脱は、他のどの選手に対してよりもウーデゴールに大きな影響を与えている。

    ウーデゴールとサカのピッチ上での関係は極めて生産的であるが、同時に相互依存的でもある。スタメンから2人のうちどちらか1人を外すと、どちらもいつものレベルのパフォーマンスを発揮できないように見えるのだ。

    「そういう要素はあるかもしれない」と、アルテタ監督は認めた。「非常に相性が良い選手がいると、その選手が隣にいない場合、何かが違う気がするというのは無理のないことだ」。

    「だが、マルティンはケガから復帰したばかりで、最初の1、2週間は余分なエネルギーがあったが、それから3日おきにプレーしている。彼は1週間以上体調を崩していたし、それも影響している。だから、さまざまな事情があるんだ」

    実際、ウーデゴールは、サカがハムストリングの負傷で戦線を離脱する前にも、普段通りの試合で影響力を発揮するのに苦労していた。

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    注目を逃れる

    アーセナルのダイナミックなコンビは12月14日、エヴァートンとのプレミアリーグの試合で先発出場したが、アーセナルは大いにインスピレーションを必要としていたにもかかわらず、司令塔であるウーデゴールが後半途中で交代となった。

    「戦術的な判断で、リズムを変えるためだった」と、試合後アルテタ監督は語った。「特にピッチの反対側で」。 その意味するところは、ウーデゴールが、アーセナルが試合に勝つために必要なスピード、落ち着き、突破力を提供していなかったということだ。今シーズン、26歳のウーデゴールには繰り返しこの問題が指摘されてきたが、ほとんど注目されてこなかった。

    例えば、フィル・フォーデンはマンチェスター・シティでの劇的なパフォーマンスの低下により、はるかに多くの批判を浴びているが、それでも、出場試合数が少ないにもかかわらず、今シーズンのプレミアリーグではウーデゴールよりも多くのチャンスを生み出している。

    また、マンチェスター・ユナイテッドでのブルーノ・フェルナンデスのキャプテンとしての資質を疑問視する声が多いが、アーセナルの勝利につながるPKを外したウーデゴールより、フェルナンデスの方が真のリーダーに見えたのは興味深い。

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    ゲームを変えるような要素の欠如

    もちろん、誰もがPKを失敗することはある。ある意味、マンチェスター・Uに敗れたFAカップは、ウーデゴールにとって楽観的な材料となった。彼はエミレーツで10回ものチャンスを生みだしており、これは、今シーズンのプレミアリーグでひとりの選手が生みだした数としては最多である。このことはまたしても彼が周りの選手たちに恵まれていないことを示唆しているかもしれない。事実、カイ・ハヴァーツ、レアンドロ・トロサール、ガブリエウ・マルティネッリ、ラヒーム・スターリングは、今シーズン一貫して、ゴールを脅かす存在となることに完全に失敗している。また、ミケル・メリーノはほとんどの時間において期待外れであり、デクラン・ライスは攻撃面でほとんど何も提供できていない。

    その状況下で、アーセナルにとって、そしてウーデゴールにとって、サカが長期離脱を余儀なくされただけでなく、爆発力のあるブラジル代表のジェズスが、シーズン後半にゴールを決めるようになるかもしれないと期待された矢先に離脱を強いられたことは、大きな痛手となった。

    しかし、ウーデゴールはここ2カ月、ベストの状態からは程遠い。11月に復帰して以降のプレミアリーグを見れば、チェルシーのエンソ・フェルナンデスの方が多くのチャンスを作っている(24)。また、エミレーツでの彼のスタッツは、アーセナルが延長戦に突入した試合の1時間を10人で戦ったことを考慮する必要がある。

    アーセナルのキャプテンはチームメイトが苦戦している時に鼓舞し、重要な試合で違いを生み出す存在となることが役割であることも忘れてはならない。ウーデゴールはその点で期待に応えておらず、その結果アーセナルのシーズンは崩壊の危機に瀕している。

  • Arsenal v Manchester United - Emirates FA Cup Third RoundGetty Images Sport

    今こそ目覚めよ

    アーセナルが世界トップクラスのストライカー獲得を拒否した奇妙な行動について、ウーデゴールに責任を問うことはできない。また、エミレーツでの戦術的アプローチに顕著な変化が見られることについても、彼に責任があるわけではない。

    負傷による壊滅的な影響についてあれほど話題になっていたにもかかわらず、フルメンバーで戦っている時でさえ、アーセナルには以前のような流動性や自由さが見られず、セットプレーに頼ったゴールが多くなっている。アーセナルに対する否定的な見方や皮肉は、2022-23シーズンの最初のタイトル挑戦時には見られなかったものであり、監督は戦略の顕著な変化とそれに伴うダメージの責任の一端を担っていることを受け入れなければならない。

    しかし、ウーデゴールも批判を免れるべきではない。もし彼が本当にプレミアリーグ最高の攻撃的MFとして認められたいのであれば、実際にチームをタイトル獲得に導くことでそれを証明しなければならない。

    それゆえ、ウーデゴールにはチームをこの最も困難な時期を乗り切らせる責任がある。なぜなら、今シーズンのアーセナルについてわかったことがあるとすれば、それはチームの調子とキャプテンの調子には直接的な相関関係があるということだ。