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Anthony Martial Man Utd failureGetty

マルシャルの凋落:NEXTアンリがマンチェスター・U“暗黒時代の象徴”になるまで

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2015年の契約の際、マンチェスター・ユナイテッドはアントニー・マルシャルを“NEXT ティエリ・アンリ”と信じていた。しかし今では、彼のキャリアはアンリよりもルイ・サハに近く感じられる。フランス出身の将来有望なアタッカーが、レッドデビルズで数カ月おきにケガを抱えて周りを失望させていく様に既視感を覚えたファンも多いはずだ。

だが、マルシャルとサハには大きな違いもある。サハは自分のピークを過ぎたことを悟ってからすぐにオールド・トラッフォードを去っていった。しかし、マルシャルはサポーターを失望させ続けながら、9年間も残留することができている。ルイ・ファン・ハール監督時代に契約し、5人の指揮官のもとでプレーしてきたが、彼との間に幸せな思い出がある監督はいないだろう。成功するだけの才能があったのは確かであり、公式戦317試合で90ゴール55アシスト。しかしシーズンを通して輝くことは皆無であり、この3年間はフル出場もない。

加入当初は将来を担うストライカーとして大きな期待を集めたマルシャル。しかし、今ではサー・アレックス・ファーガソン退任後の“暗黒時代の象徴”となってしまった。フィットネスを維持できなければ、年間20ゴールも期待できない。シーズン終了後の退団がほぼ決定的となった中で、改めて波乱に満ちたオールド・トラッフォードでのキャリアを振り返る。

文=リチャード・マーティン

  • Anthony Martial MonacoGetty

    予想外の契約

    2015年夏、マルシャルを知っていたユナイテッドファンはほとんどいなかっただろう。モナコでの最初のフルシーズンを12ゴール5アシストで終え、“NEXT アンリ”として大きな脚光を浴びたことは確かだ。しかし、イングランドでその名前を知っている人は少なく、獲得報道が出たときには驚きの声も上がっている。結局ジョルジュ・メンデスを通してフランス代表のキャンプから特別許可を得て離脱し、最終的に契約を結んでいる。

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  • Anthony Martial Man Utd signingGetty

    5800万ポンドの移籍金とバロンドール条項

    確かにモナコでポテンシャルを見せてはいたが、移籍金最大5760万ポンドという金額には疑問の声が続出。前払い金額は3600万ポンドであったが、それぞれ720万ポンド相当の3つの条項が結ばれている。その条項は、ありそうなものから非現実的なものまで様々。1つ目は、「2015年~2019年までの間にプレミアリーグで25ゴールを記録(この条項は2018年10月まで発動しなかった)」。2つ目は、「ユナイテッド在籍中にフランス代表で25試合に出場する」。彼のキャップ数は19でストップしており、達成する可能性は非常に低い。

    そして最も野心的で驚きの条項は、「2019年までにバロンドールを受賞する」だ。サッカー界で最も名誉あるこの賞だが、マルシャルの名前が候補になったことはなかった。最終的にモナコへ支払った金額は4320万ポンドとなっている。

  • Anthony Martial Manchester United 2015-16Getty Images

    夢のようなデビュー戦

    マルシャルのデビュー戦は、宿敵リヴァプール戦。マルティン・シュクルテルをかわして圧巻のシュートを叩き込み、鮮烈な「自己紹介」をしてみせた。翌週のサウサンプトン戦でも2ゴールを決め、夢のようなスタートを切っている。その後も、聖地ウェンブリー・スタジアムでのFAカップ準決勝エヴァートン戦で決勝ゴールを奪い、公式戦17ゴールを記録してシーズンを終えている。その当時はファンのお気に入りとなり、スタジアムではすぐさまチャントが歌われることになった。

  • Anthony Martial Jose MourinhoGetty

    モウリーニョとの衝突

    しかし、状況が変わったのはルイ・ファン・ハールの解任とジョゼ・モウリーニョの就任。ズラタン・イブラヒモヴィッチ加入によりマルシャルの出番は激減すると、さらに背番号を巡って指揮官と対立することに。本人は後に『France Football』に対し、「僕は9番を着け続けたいと伝えたんだ。でもクラブに戻ると、背番号が11に変わっていたんだよ。話は最初からうまくいかなかったね! 率直に言って、彼は僕を見下していたんだ」と振り返っている。

  • Anthony Martial Alexis SanchezGetty

    アレクシス・サンチェスの加入

    マルシャルは、モウリーニョ政権時のプレミアリーグで半分しか先発していない。そして、ポルトガル人指揮官にそのパフォーマンスや態度を何度も公然と批判されている。モウリーニョ2年目は1月までにリーグ戦9ゴールと好調なスタートを切っていたが、アレクシス・サンチェスの加入によりさらに出場時間は減少し、シーズン後半戦は一度もネットを揺らしていない。

    「彼(モウリーニョ)はマスコミで僕のことを話していた。こういったゲームを好む人だけど、同時に対象にする人が誰かもわかっている人だ。2シーズン目、僕はシーズン前半戦のチーム内得点王だった。だけど彼がアレクシス・サンチェスを連れてきて、僕はほとんどプレーできなくなった。その代償は大きかったよ。僕はそこ(2018年のワールドカップ)にいるべきだったんだ」

  • Anthony Martial Ole Gunnar SolskjaerGetty

    スールシャール政権下で2度目の輝き

    モウリーニョの解任を嬉しく思っていたのだろう。マルシャルはオーレ・グンナー・スールシャール監督の初采配となったカーディフ戦で途中出場からネットを揺らした。2019年1月に新契約を結ぶと、翌シーズンはセンターフォワードとして公式戦23ゴール12アシストとユナイテッドでのキャリアハイを達成した。ハムストリングのケガで2カ月離脱したにも関わらず、見事な結果を残している。当然のように、クラブの年間最優秀選手にも輝いた。

  • Anthony MartialGetty

    繰り返す負傷離脱

    キャリアを通じて筋肉系のトラブルに悩まれてきたマルシャルだが、2020-21シーズンはケガを抱えながらプレーしていたことを告白。それがパフォーマンスの低下に繋がり、リーグ戦でのゴールは「4」にとどまった。『France Football』で当時をこう振り返っている。

    「過去2シーズン、僕はケガを抱えながらプレーすることが多かった。スールシャールは僕を必要としたので、プレーした。僕のスタイルを考えると、加速する時に問題があると厳しくなってしまう。そして批判されるんだ。でも、監督はわざわざメディアに話そうとはしなかったね」

    そしてその後、2021年3月の代表活動中に膝の靭帯断裂という悲劇が襲う。

    「僕は永久にケガを抱えることになったしまった。そして戻ってきたら、もうプレーできなくなっていた。最悪だったよ。不公平に感じた。チームのために自分を犠牲にするように求められ、その後にのけ者にされる。僕としては裏切りだった。僕が責められることはあるかもしれないけど、嘘はないよ」

  • Anthony Martial SevillaGetty

    悲惨なセビージャへのレンタル

    マルシャルのケガが完治した時、クラブはクリスティアーノ・ロナウドの復帰とメイソン・グリーンウッドの台頭に湧いていた。当然出番は減少し、2020-21シーズンのリーグ戦でわずか2試合の先発にとどまっていた中、再起を図ってセビージャで後半戦を戦うことを決断する。

    しかし、ラ・リーガでの挑戦は悲惨なものだった。わずか1ゴール1アシストに終わり、ヨーロッパリーグのウェストハム戦では低調なパフォーマンスが激しい攻撃の的に。そしてケガの問題も終わることなく、5カ月間で2度も戦列を離れている。『マルカ』がセビージャ時代を「失敗」と評しただけでなく、セビージャファンからもブーイングを浴びている。

  • Anthony Martial Manchester United 2022-23Getty

    プレシーズンでアピール成功も…

    レンタルから復帰したマルシャルは、プレシーズンでエリック・テン・ハーグ新監督へのアピールに成功。指揮官が売却に反対するほど感銘を与えた。シーズン序盤のビッグマッチでも結果を残し、信頼を取り戻した。しかし、指揮官も徐々にフィットネスを維持できないことに気づいていく。ピッチに立てば好プレーを見せるが、FAカップ決勝戦はケガで欠場。これがシーズンを通じて29試合目の欠場だった。

  • Anthony Martial Manchester United 2023-24Getty

    オールド・トラッフォードのブーイング

    上層部は2023年夏の段階で喜んで売却しただろうが、適切なオファーはなし。予想通りケガも抱えていた。ピッチに立つことは多くないが、その際にはファンの反応も容赦がなかった。ブライトン戦では交代出場時に耳をつんざくようなブーイングで迎えられ、マン・シティ戦も同様だった。

  • Anthony MartialGetty

    悲惨なキャリア

    マルシャルのユナイテッドでの悲惨なキャリアは、9月に起きた事件に集約されているかもしれない。練習開始時刻を間違えて到着し、わずか数分でキャリントンを去っていった。メディアで嘲笑の的になるのは常態化しており、マーティン・オニール氏が「あの態度にはイライラする」と言えば、OBポール・スコールズ氏は「もうユナイテッドでプレーする気力はないんだろう」と語っている。極めつけは12月のニューカッスル戦後、元主将ロイ・キーン氏の言葉だ。

    「リーグのレベルを下げたほうがいい。ユナイテッドは数年前から放出しようとしている。ユナイテッドで判断されるのはビッグマッチでのプレーだが、それに対処できないのであれば、もうユナイテッドの選手ではないんだろう」

  • Anthony MartialGetty

    退団へ

    12月9日のボーンマス戦以降、マルシャルは1度もベンチにすら座っていない。当初は病気によるものだとされたが、先日のトッテナム戦ではウェイン・ルーニーの隣で観戦していた。

    すでに個人トレーニングは再開している。テン・ハーグから単独でのトレーニングを命じられたとの報道もあったが、これはクラブが否定。しかし代理人が股関節の手術を受けることを明かしており、早期復帰の望みは絶たれている。

    契約終了が近づく中、マルシャルがユナイテッドの選手としてプレーするのは残りわずかだろう。1年の延長オプションは行使されず、フリー退団は濃厚だ。“NEXT アンリ”は最後までアンリらしさを見せることなく、レッドデビルズを後にする。

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