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テン・ハーグ就任でマンチェスター・ユナイテッドはどうなる?補強リストや放出選手、採用するシステムを考察

ここ数週間、新指揮官探しを強化してきたマンチェスター・ユナイテッドだが、ついに来季からの正式な監督が決定。面接で傑出していた現アヤックス指揮官エリック・テン・ハーグと3年契約を結んでいる。

では、なぜマンチェスター・Uはテン・ハーグ監督を選んだのか? オールド・トラッフォードでどのような戦術的アプローチをとるのだろうか? そして、彼の就任によってクラブはどんな選手をターゲットとするのだろうか? 『GOAL』マンチェスター・U番記者シャーロット・ダンカーが綴る。

  • Erik ten Hag Ajax 2021 Getty

    採用するシステム/戦術は?

    テン・ハーグはキャリアの初期は中盤ダイヤモンドの4-4-2を、その後4-3-3システムへと移行してきた。そして現在は4-2-3-1を採用しており、これは現在のマンチェスター・Uにとっても馴染み深いものだ。

    またテン・ハーグは、ラルフ・ラングニック同様に前線からのプレッシングやポゼッション志向のエネルギッシュなプレーを好んでいる。だが、ラングニックは在籍4カ月でこのスタイルを完全には実践できておらず、チームのフィットネスレベルを疑問視する状況だ。確かに、ラングニックが要求する執拗なプレッシャーを90分間持続できる体力があるようには見えない。

    だからこそ、テン・ハーグ新体制には選手のフィットネスレベルの早急な向上と献身的で意欲的な姿勢を取り戻させなければならない……こう言うのは簡単ではあるが、言うは易く行うは難し。ラングニックとコーチ陣のトレーニングに批判的な選手もいることからも明らかだ。それでも、テン・ハーグが来ればそうした批判的な選手に隠れる場所はない。このオランダ人指揮官の綿密なトレーニングプランは、指揮下の選手たちに非常に好評を得てきた。ビデオによる分析に熱心であり、選手がポゼッションを逃せば突然セッションを止めて指導を行うほどであるという。

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  • kane rice(C)Getty Images

    補強リストは?

    ラングニックが彼の実践するサッカーを実現するため、必要なフィジカルとアグレッシブさを持つ選手の獲得を役員会に要求していることは、少なくともテン・ハーグにはプラスだろう。

    『GOAL』の取材では、クラブはすでに優先順位の高いポジションごとにショートリストを作成していることがわかっている。このショートリストが新監督に提示され、どの選手の獲得に動くかが決定する。そしてテン・ハーグ自身も、求める選手を役員会へ提案することができるとされている。

    獲得候補として、トッテナムFWハリー・ケインが上位に挙がっていることは忘れてはならない。さらにワールドクラスのホールディングMFも優先順位は高く、ウェスト・ハムMFデクラン・ライスがNo.1ターゲットだ。だがウェスト・ハムとの交渉は難航が予想されており、デイビッド・モイーズ監督は1億5000万ポンド(約251億円)以上の入札が必要だと主張している。法外な移籍金を提示することはないだろうが、トップクラブへ挑戦するためには中盤底でゲームを作る選手を見つけなければならない。

  • Cristiano Ronaldo Harry Maguire Manchester United 2021-22Getty Images

    放出される可能性のある選手は?

    現チームでテン・ハーグのプレースタイルに適している選手は誰なのだろうか?

    ブルーノ・フェルナンデス、フレッジ、ジェイドン・サンチョ、スコット・マクトミネイは激しいプレッシャーにも問題なく適応できるはず。ポール・ポグバもフィット可能だが、契約満了に伴い今季限りでの退団は濃厚だ。現在エヴァートンへレンタル中のドニー・ファン・デ・ベークも、恩師の就任で状況が変わることになりそうだ。

    一方で、ベテラン勢は余剰戦力と判断される可能性が高い。フアン・マタとエディンソン・カバーニは今季限りで退団へと向かっており、ネマニャ・マティッチも同じく退団が決まった。

    では、クリスティアーノ・ロナウドはどうなるのだろうか? 彼はテン・ハーグの要求するプレッシングはできないが、現チームのトップスコアラー。そのため、新体制でこのスーパースターをどう扱うか、重大な決断が必要になる。ケインの獲得が実現した場合、退団も十分に考えられる。

    また、今季苦しむマーカス・ラッシュフォードについても決断が必要だ。テン・ハーグがウェスト・ハムで苦しんでいたセバスティアン・アレを復活させたことを考えれば、ラッシュフォードにも同じようなことが起こるかもしれない。

    またディフェンス面も問題があり、特にテン・ハーグのアプローチには攻撃面で秀でるサイドバックが不可欠。アーロン・ワン=ビサカは悩みのタネとなりそうだ。ルーク・ショーはフィットできそうだが、先発の座を守るためにもフォームの劇的な改善は必須となる。

    そして、No.1センターバックのラファエル・ヴァランのパートナーも決めなければならない。ボールプレーについては、ヴィクトル・リンデロフやエリック・バイリーの方が今季度重なる批判を浴びる主将ハリー・マグワイアよりも優れている。

  • Anthony Elanga Manchester United 2021-22Getty/GOAL

    抜擢される若手は?

    テン・ハーグ就任により、若手に信頼を置く彼の信念からピックアップされる選手はいるだろう。

    ラングニックの下でもトップチームにふさわしいことを証明するアンソニー・エランガ、そしてノッティンガム・フォレストで活躍を見せるジェームズ・ガーナーは重宝されるかもしれない。他にもU-23チームには多数のタレントが存在している。

    いずれにせよ、マンチェスター・Uは大改革が必要であることは間違いない。この夏、スカッドの刷新の可能性は高そうだ。