Anfre Onana Manchester United GFXGOAL

マンチェスター・Uがオナナ獲得に全力を注ぐべき理由。ポテンシャルを引き出すカギに

ダビド・デ・ヘアはマンチェスター・ユナイテッドに忠誠を誓い、クラブ史上最高のゴールキーパーの一人である。このスペイン人GKはクラブによく仕え、最も暗い時期にはしばしばヒーローとなり、チームが奈落の底に落ちるのを防いだセービングマシーンだった。

しかし、エリック・テン・ハーグ監督の下で将来を見据えた2022-23シーズンのユナイテッドは、デ・ヘアの能力がクラブの足かせとなっていることが次第に明らかになっていった。シュートストップの能力が批判されるようになったのは、防げると思われた失点を何度も許したからだが、最大の懸念は、後方からプレーしてユナイテッドがポゼッションを維持できないことだった。

ブレントフォード、ニューカッスル、セビージャ、マンチェスター・シティといった強豪に高い位置からプレスをかけられ、ミスを強いられたり、スタンドや相手の足元へのロングボールを誘発されたりして、スペイン人GKは格好の標的となった。

他方、チャンピオンズリーグ決勝のシティ戦では、インテルのGKアンドレ・オナナがプレッシャーを受けながらもボールをコントロールし、配給するという堂々たるプレーを披露した。もし、ユナイテッドがテン・ハーグの下で成し遂げた進歩をさらに発展させたいのであれば、このカメルーン人GKを獲得する必要がある。

  • Andre Onana Inter 2022-23Getty

    大舞台でも超冷静

    オナナは惜しくも敗れたが、チャンピオンズリーグ決勝で傑出したプレーヤーの一人であり、多くの観衆が一方的な試合になるだろうと予想していた試合を覆した重要なファクターであった。

    マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督は、決勝戦の前に何度もオナナのクオリティーについて語っていた。試合前の記者会見では、インテルで最も危険な選手は誰かという質問に、ラウタロ・マルティネスやエディン・ジェコ、ロメル・ルカクといったフォワードを挙げるのではなく、オナナを挙げて「ビルドアップのポジションを取る類まれなGK。本当に、本当にいい選手だ」と話した。

    『CBSスポーツ』のインタビューでは、インテルとユナイテッドのプレースタイルを対比させながら、オナナがインテルの後方からのプレーを助けていると再び称賛した。

    「オナナは、ハイプレスを仕掛けるのが本当に難しい。彼らはボールキープの達人であり、ラウタロ、ジェコ、ルカクといった攻撃陣のすぐそばまでボールを運んでくる。

    「例えばユナイテッドを見れば、ロングボールになってしまう。そこに向かって(マーカス)ラッシュフォードともう一人(フォワード)が走り込む。でもインテルは違う。ボールをキープできるんだ」

  • 広告
  • Andre Onana Inter 2022-23Getty

    MFに匹敵するパス能力

    オナナはグアルディオラの“期待”に応えた。決勝戦の開始1分、彼はエリア外、センターバックの前でドリブルを披露。その数分後、ベルナルド・シウヴァがエリア内でオナナにプレスをかけようとしたとき、フェデリコ・ディマルコに淡々とボールを渡した。

    前半終了間際、オナナの前にはシティの選手が5人いて、選択肢はひとつだけだったが、彼はそのままマルセロ・ブロゾビッチに対し、トップクラスのホールディングMFのように簡単にパスを出した。

    試合終盤、インテルが必死に同点ゴールを追っていたとき、多くのGKはボールを素早く前方に放り出すという手段をとっただろう。しかし、オナナは冷静さと勇気を失わず、足元にボールを持ったままエリア外に飛び出し(自分のエリアよりもハーフウェイラインに近い)、ルカクを見つけ、危険なインテルの攻撃を開始する前に、アーリング・ハーランドを相手にした。

    プレッシャー下でのショートパスは、オナナの唯一の持ち味ではなく、後半にはカウンターアタックの起点となるカーリングパスでシティの選手7人を棒立ちにした。90分間を通して、オナナはパスとドリブルで、かつて世界最高のビルドアップ能力を持つGKと評価されたエデルソンを陰に追いやった。

  • Andre Onana Erik ten HagGetty

    アヤックスにおけるテン・ハーグ黄金時代のカギ

    バイエルン・ミュンヘンやレアル・マドリーといったヨーロッパの強豪がシティに打ち砕かれた一方で、インテルはグアルディオラ率いるチームをあと一歩のところまで追い詰めた。しかし、ユナイテッドがこのGKを獲得すべき理由はそれだけではない。

    オナナはアヤックス時代の大半をテン・ハーグのNo.1で過ごし、その間にエールディビジで3度の優勝を果たし、チャンピオンズリーグでは準決勝に進み、レアル・マドリーを圧倒し、ユヴェントスをノックアウトした。

    バルセロナのユースからオランダの名門、ヨング・アヤックスに移籍したオナナは、テン・ハーグの下でアヤックスの成功のカギとなった。プレーメイカーのフレンキー・デ・ヨングを見つけて攻撃の起点となることが多く、守備陣がプレッシャーにさらされるたびに、ピンチを脱する方法を提示した。

    オナナは2021年から2022年にかけて、禁止されている利尿剤フロセミドをパラセタモールと間違えて摂取し、ドーピング禁止処分を受け、9か月間プレーできなかった。しかし、再びプレーできるようになると、テン・ハーグは徐々に彼をチームに復帰させ、復帰当初は批判から擁護し、「見事なGK」と称した。

  • Andre Onana Ajax 12232018ProShots

    テン・ハーグの望むプレーを可能に

    テン・ハーグが率いたアヤックスは、ユナイテッドとは全く異なるスタイルのサッカーをしていたが、その重要な違いのひとつは、アムステルダムでは最後方にオナナがいて、マンチェスターではデ・ヘアということだ。実際、監督はプレシーズンでデ・ヘアにもっと足を使ってプレーするよう求めたが、シーズン第2戦のブレントフォード戦で0-4という衝撃的な大敗を喫し、そのうちの2失点に絡んだ後、監督はポゼッションをベースにしたサッカーをする計画を放棄し、チームは主に現実的なカウンターサッカーをすることでシーズンを好転させることに成功した。

    4月のウェストハム戦での失態やFAカップ決勝での納得のいかないプレーの後も、テン・ハーグはデ・ヘアを支持し、公の場で彼を擁護してきた。しかし、3月のレアル・ベティス戦の後、「彼のミスを無視することはできない」と語ったように、デ・ヘアの足元の能力に対する懸念を認めることもある。

    シティに敗れたカップ戦の後、デ・ヘアのボール奪取能力について具体的に聞かれると、オランダ人指揮官は「我々は正しい方向に向かっている。しかし、次のステップに進み、トロフィーを獲得したいのであれば、間違いなく改善しなければならない」と答えた。

    オナナとの契約は、ユナイテッドが次のステップに進み、テン・ハーグの下で真のポテンシャルを引き出すカギとなるかもしれない。マドリーやユーヴェを打ち倒し、世界中のファンを獲得したアヤックスの自由で流れるようなサッカーを再現することができる。

    また、オナナはアヤックス時代のチームメイト、リサンドロ・マルティネスと再びコンビを組むこともできるだろう。

  • Jordan Pickford 2022-23Getty

    他の候補者より良い、または安い

    オナナは5000万ポンドの移籍金がかかると報じられている。クラブがワールドクラスのストライカーとセントラル・ミッドフィルダーも獲得しようとしていることを考えれば、決して安い額ではない。

    しかし、デ・ヘアの後釜となりうる他の候補者と比べれば、インテルが27歳のオナナに要求する移籍金はリーズナブルに見える。そしてユナイテッドは、チェルシーがカメルーン人選手の獲得をもはや考えていないという報道によって、彼との契約獲得に弾みをつけている。

    ユナイテッドはジョーダン・ピックフォードとの契約を模索していると報じられているが、イングランド代表のNo.1はオナナほど完成されていない。ロングパスやカウンターの起点となるプレーには長けているが、プレッシャーを受けながら後方からプレーするのは苦手で、欧州での経験も少ない。ピックフォードの評価額は約4500万ポンドだ。

    ダビド・ラヤはそのボールプレーの能力で称賛を集め、ブレントフォードのプレミアリーグ昇格の鍵となり、トップリーグでの2シーズンとも素晴らしいパフォーマンスを見せた。彼はオナナよりも安く、3000万ポンド程度で獲得できるだろうが、トップレベルの経験がなく、これまでも多くの優秀なGKが中堅クラブからプレッシャーのかかるクラブへの飛躍に苦労している。

    ACミランのキーパー、マイク・メニャンは世界最高のGKの一人と評価されているが、報道によれば、このフランス人選手は8000万ポンドかかるという。ポルトのディオゴ・コスタも契約解除条項が6400万ポンドと高額だ。

    オナナには、他の候補者と比べてもうひとつ有利な点がある。彼は2022年のワールドカップでリゴベール・ソング監督と対立し、カメルーン代表を引退した。つまり、他のチームメイトが代表チームに合流するために世界中を飛び回っている間、彼はクラブに100%集中し、フレッシュさを保つことができるのだ。

  • Andre Onana Inter 2022-23Getty Images

    今こそ獲得すべきとき

    ユナイテッドは何年もの間、新しいGKを獲得することを躊躇してきた。来年、誰がクラブのオーナーになるかがまだ不透明なことも、移籍ビジネスをより困難なものにしている。

    しかし、GKはあまりにも長い間放置されてきた分野であり、デ・ヘアをNo.1としてきた12年間、彼にまともなライバルを与えたことは一度もない。その理由のひとつは、2019年に彼をプレミアリーグ最高額の選手とし、週給37万5000ポンドの契約を結んだほど信頼しているからだ。デ・ヘアにこれだけの出費をした以上、彼に引けを取らないような質の高いキーパーをもう一人獲得する意味はほとんどなかったわけだ。

    彼が事実上クラブでのキャリアを終えた今、シティが2017年にエデルソンを、リヴァプールが2018年にアリソンを獲得したときのように、クラブは次の4、5年を見据えた大型契約を結ぶ必要がある。

    オナナは現代のGKに必要なスキルをすべて備えており、チャンピオンズリーグ制覇まであと一歩と迫ったことで、最高レベルで成功する力を持っていることを証明した。

    長期的なGK探しで満足することを許したユナイテッドは、野心とリーダーシップを発揮してオナナをクラブに招き入れ、彼が最初に真の可能性を示した監督と再会させるために全力を尽くす必要がある。そうすれば、オナナもユナイテッドに貢献できるはずだ。