Klopp Liverpool GFX 2-1Getty Images

リヴァプールは何が間違っているのか?中盤問題にケガ人続出、低調なスターにマネの不在…

昨シーズンとの対比は、これ以上ないほど鮮明だった。歓喜に湧くマンチェスター・ユナイテッドのファンが歌い踊りながらオールド・トラッフォードを後にすれば、リヴァプールのサポーターたちは静かに、長く辛い待ち時間を過ごす覚悟を決めている。

新シーズンが始まって3試合、リヴァプールへの疑問が募っている。開幕戦のフラム戦(2-2)は一瞬の出来事で、クリスタル・パレス戦(1-1)が状況に左右されたとしても、オールド・トラッフォードでの敗北はもっと憂慮すべきものだ。

リヴァプールにとって過去10年間で最悪のスタートであり、近年スリリングなプレミアリーグ優勝争いを繰り広げてきた彼らにまだタイトル挑戦への力が残っているのか、重大な疑問を投げかけるものである。まだ8月だというのに、マージーサイドは何かがおかしい。

今回は、リヴァプールにはびこる重大な問題を取り上げる。

取材・文=ニース・ジョーンズ(『GOAL』リヴァプール番記者)

  • Thiago-Alcantara(C)Getty Images

    離脱者続出

    クィービーン・ケレハー、カルヴィン・ラムゼイ、イブラヒマ・コナテ、ジョエル・マティプ、カーティス・ジョーンズ、チアゴ・アルカンタラ、アレックス・オックスレイド=チェンバレン、ナビ・ケイタ、カイデ・ゴードン、ディオゴ・ジョタ、そしてダルウィン・ヌニェス……。

    悪くないチームだろう? このメンバーでもプレミアリーグを十分に戦えるはずだ。だがこれは、お察しの通り現在リヴァプールの離脱者で組む11人である。今のチームが少々貧弱に見えるのも無理はない。もちろんヌニェスは自業自得だが、ユルゲン・クロップが「魔女が潜んでいる」と言いたくなるのも理解できる。開幕から2週間あまりで、彼のオプションは壊滅的な打撃を受けている。

    特にチアゴの不在は痛烈に感じられた。このスペイン代表はチームのリズムとテンポを作り、どんなに組織化された守備でも風穴を開けることができる。ヌニェスが出場停止で、ロベルト・フィルミーノも苦しむ状況。攻撃面でのオプションは、まだ10代のファビオ・カルヴァーリョしかいないのだ。

    ジョタとジョーンズは月末までに練習に復帰するかもしれないが、チアゴやマティプ、コナテは少なくとも9月中旬まで。オックスレイド=チェンバレンはさらに長い期間離脱する。

    その間、クロップは指をくわえて誰もケガしないことを祈るしかない。

  • 広告
  • James Milner Roberto Firmino Liverpool Manchester United 2022-23Getty Images

    中盤問題

    「どんな選手が足りないのか教えてくれるか? 攻撃的で、195cmの長身で、ボックス内でヘディングできる選手か? そんな“黄金の牛”はすべてを作り出し、ミルクまで生み出してくれるのか?」

    7月初旬、クロップは「新しい中盤が必要ではないか?」と問うた記者にこう返した。ハッキリと、獲得する必要はないと断言したのだ。このポジションの補強の優先度は最も低かったのだろう。

    それから6週間がたった今、彼のスタンスは本当に全く変わっていないのだろうか。彼が挙げた9人のオプションの内4人が負傷し、5人の内2人は調子を崩し、2人は19歳で、1人は36歳で、先発での役割が大幅に減ることを承知の上で1年契約を結んでいる。

    リヴァプールは、ケガ人の穴を埋めるだけのために補強することはしないという自負がある。それが過去に成功した例もある。今回もその姿勢を貫くだろう。

    だが、それは大きなリスクでもある。少なくとも長い期間追いかけていたターゲットにすらアプローチしないのであれば、率直に言って、彼らは仕事をしていないと同義だ。リヴァプールの中盤は、短期的にも長期的にも、この数週間だけでなく長い間ずっと湧き上がっている問題なのだ。

  • Jadon Sancho Manchester United Liverpool 2022Getty

    スロースターター

    試合に勝ちたいのであれば、相手に先制点を与えるのは良いアイディアではない。天才でなくともわかるだろう。

    だが今のリヴァプールがやっているのはまさにそういうことであり、直近のリーグ戦7試合はいずれも先制点を奪われている。特にアウェーでのスタートダッシュは憂慮すべきであり、クロップもフラム戦後に選手たちの「姿勢」を非難した。ユナイテッド戦では心配ないとしたが、ホームチームのインテンシティやフィジカルに苦労した点では確かな類似点もある。

    自己満足なのか、フィットネスなのか、集団的な自信の欠如なのか――恐らくその全てだろうが――早急な修正が必要だ。27日に控えるボーンマス戦では、先制点が不可欠だ。

  • Virgil van Dijk Liverpool 2022Getty

    キーマン

    負傷の危機や新戦力の必要性が叫ばれる中で、現チームのスターたちがここまでベストとは程遠い状態に見えることも無視できない。

    例えばフィルジル・ファン・ダイク。これまでの彼とは全く違う。フラム戦ではアレクサンダル・ミトロビッチに苦しめられ、ユナイテッド戦の先制点でもジェイドン・サンチョを抑えるのではなく、ゴール前に立ちはだかった彼の決断は奇妙だった。これはリヴァプールの問題を象徴するものだ。長い間当たり前のようにできていたことが、何らかの理由で全くできていない。

    また彼だけでなく、トレント・アレクサンダー=アーノルドやジョーダン・ヘンダーソン、アリソン・ベッカー、フィルミーノも同様だ。さらにファビーニョはユナイテッド戦でベンチに座り、アンドリュー・ロバートソンもエネルギーレベルが低下している。

    負傷者の状況にかかわらず、新戦力の加入が事態を好転させることは間違いない。だがクロップは何よりもまず、キーマンたちが自身のフォームを再発見することを必要としている。

  • Sadio Mane Bayern Munich 2022-23Getty

    THE MISSING MAN(E)

    多くの成功が、中心的選手たちの素晴らしく特別な能力によって築き上げられた場合、そのグループの1人がいなくなった後に再調整するのは至難の業だ。

    今夏サディオ・マネが去ったリヴァプールでは、確かにそういったことが起こっているようだ。マネのダイナミズム、フィジカル、メンタリティの代わりを探すことは不可能。だからこそリヴァプールは、理論上ではより自然なストライカーであるヌニェスという別のルートを選択している。

    ヌニェスはリヴァプールで間違いなく成長するだろう。だがパレス戦での暴挙はタイミングも悪く、ジョタが起用できない以上、クロップには選手選考の余地もベンチから試合を変える余地もほとんどない。

  • Luis Diaz Liverpool 2022Getty

    二日酔い?

    クロップや選手たちは否定するだろうが、昨シーズンの山あり谷ありで容赦ない激しさと悲惨な結末が、リヴァプールからどれほどのものを奪っていったのか。考えざるを得ない。

    ある種の「二日酔い」があったとしてもそれは理解できるし、避けられないことだ。63試合すべてが重要であり、その多くがナイフのような切れ味を持っていた。どんなに体力があろうと、どんなにプロフェッショナルであろうと、簡単に切り替えられるわけではない。

    リヴァプールにとって、昨シーズンは苦しみに満ちたものだった。誰よりも欲しがっていた2つのタイトル(プレミアリーグとチャンピオンズリーグ)を目前で逃したのだ。カップ戦2つを獲得してパレードで少々気分は上がったかもしれないが、2021-22シーズンがどうだったのかを振り返らないのであれば、それは人間ではない。

    昨季は22ポイントしか落としていなかったが、今季はすでに7ポイントを落としている。今後数週間でさらに落とすことなど許されない。だが裏を返せば、ここ数年間、自らを落ちた穴から引きずり出す力を示してきたチームと言えば、リヴァプールしかいないだろう。

  • Jurgen Klopp Liverpool 2022Getty

    漂う「一般的な」ムード

    あなたも時々、こう感じることもあるだろう。誰もが緊張し、何かがうまくいかずにただ待っているような、何かが正しくないような……。

    今のリヴァプールはまさにそんな感じだ。長い間幸せに満ちていたが、今はそうではない。ピッチ上で互いに言い争い、監督は(皮肉を込めて)魔女の呪いを嘆き、複数選手の退団希望まで報じられている。

    そしてファンもまた、素晴らしい時代が過ぎ去り、マンチェスター・シティに離され、しっかりと多額の資金を費やして強化してきたチームに追い越されるかもしれないという考えに怯え、心配している。

    もちろん、視野を広げることも必要だ。まだ開幕3試合で、調子を落とすのはリヴァプールだけではない。チェルシーはリーズに0-3と敗れ、マンチェスター・Cもポイントを落とし、ユナイテッドは遅ればせながら努力とエネルギーを見せたからといって、突然世界が変わるわけでもない。だが冷静さと落ち着きを取り戻すために何かが必要だ。

    リヴァプールは今週末、ボーンマス戦で絶対に勝利が必要だ。それは明らかである。だがそれ以上に、説得力のあるパフォーマンスが必要なのだ。それは自分自身のためであり、他の誰かのためでもある。

    【2022-23】プレミアリーグ全試合配信はSPOTV NOWだけ!日本語実況解説は毎節最大6試合。こちらから登録

0