Mohamed Salah Liverpool Arsenal 2022-23Getty

リヴァプールを悩ます“サラーPK問題”:直近の成功率は63.6%…代わりに蹴るべきは?

モハメド・サラーは過去にPKを“嫌い”と語ったが、もうその心配はいらなくなるかもしれない。

このエジプト代表スターのPK失敗は、リヴァプールに多大な損害を与えている。9日のプレミアリーグ第30節、首位アーセナル相手に見事な反撃で2-2に追いつきはしたものの、サラーのPK失敗がなければ努力に見合うだけの3ポイントを手にしていたはずだ。右ポストを大きく外した後、顔をシャツで覆ったが、それは全員の気持ちだったかもしれない。過去4試合で2度目のPK失敗。先月のボーンマス戦(0-1)でも的を外している。

当然だが、クロップはアーセナル戦後にサラーを責めることはなかった。しかし今、彼は次のPKを誰に蹴らせるべきなのか、決断を迫られているのは間違いない。

取材・文=ニール・ジョーンズ(『GOAL』リヴァプール番記者)

  • Mohamed Salah Liverpool 2022-23Getty Images

    サラーのPK成功率

    アンフィールドでのサラーのPKスタッツは、一見するとそれほど悪くはない。成功率は「82.76%」で、スティーブン・ジェラードやロビー・ファウラー、ジョン・バーンズ、フィル・ニールといったレジェンドを凌駕している。

    しかし、直近のデータは芳しくない。サラー過去5回の失敗のうち、4回は2021-22シーズン以降のものだ。そのシーズンから11回PKを蹴ったが、そのうち4回で失敗。成功率はわずか「63.6%」である。2021年9月のチャンピオンズリーグ・ミラン戦ではGKマイク・メニャンに阻まれ、プレミアリーグでも同年12月のレスター戦でGKカスパー・シュマイケルにストップされると、チームも敗れた。そしてこの敗戦は、シーズン中に喫したたった2敗のうちの1つ。結局、この失敗は大きな代償を支払うこととなった。

    今回も、同じようなことが起きてしまうかもしれない。ボーンマス戦とアーセナル戦の失敗は、リヴァプールに貴重な勝ち点を獲得する機会を奪い、トップ4争いに重大な打撃を与えることになった。サラーが決めていれば、2試合共に勝利していたことは想像に難くない。

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  • Ramsdale-Salah-Liverpool-ArsenalGetty

    枠すらとらえず

    さらに残念なのは、過去2回とも枠すらとらえられていないことだ。

    あの2回の失敗の場面も、サラーに余裕はあったはずである。GKネトは違う方向を予測しており、GKアーロン・ラムズデールは中央に飛んでくるシュートを予測していたように見えた。しかしどちらの場面でも、サラーは枠を外している。

    これは非常に憂慮すべき傾向だ。昨年3月、エジプト代表として戦ったワールドカップ予選プレーオフのセネガル戦でもバーの上へ飛ばし、敗退につながっている。その夜はレーザーポインターによる妨害に苦しんだとはいえ、この1年間で3回もPKで枠を外したということは、控えめに言って「心配」である。

  • Mohamed Salah scores a penalty for Liverpool against Atletico Madrid in 2021-22Getty

    特徴的な蹴り方

    サラーのPKは独特だ。ボールを置いた後に正対して立ち、増えが吹かれると右へ移動し、一気に近づいて左足で蹴り込む。元リヴァプールDFスティーヴン・ウォーノックは『BBC』で「あの助走は好きじゃないね。ぎこちないし、彼が狙える場所は1つしかないように見える」と語っている。

    ウォーノックはGKから見て右へ外した過去2回の失敗を指しているのだろうが、サラーのPKはまちまちだ。例えば彼が初めて成功した2018年1月のハダースフィールド戦は、GKから見て左側へ成功。もっとプレッシャーのかかる場面、2019年のチャンピオンズリーグ決勝トッテナム戦では、GKの左へ叩き込んだ。そして昨季のリーグカップ決勝戦のチェルシー戦では、右へ飛んだGKケパ・アリサバラガの逆を取って左ポスト内側に決めきっている。

    サラーがアイヴァン・トニーやジョルジーニョ、ブルーノ・フェルナンデスのような繊細なキックを選ぶことはない。GKの動きを待って調整することもない。自分で場所を選び、ほとんどの場合サイドキックで強く蹴り込む。

    そのため、正確なシュートを放つことができた。だが、ここ数週間は何故か枠へ飛ばないのだ。

  • 20221211 Harry Kane missed penaltyGetty Images

    ハリー・ケイン効果

    先日、クラブ公式チャンネル『LFCTV』でレジェンド、スティーブン・ジェラードと行ったインタビューの中で、サラーがPKについて興味深いことを語っている。彼がPKを蹴り出したのは、2017-18シーズン、ハリー・ケインとのプレミアリーグ得点王争いに巻き込まれたからだったようだ。

    「僕が加入して最初の頃は、(PKキッカーの)1番目でも、2番目でも、3番目でも、4番目でもなかったと思う。よくわからないけどね。ケインが21、22ゴールと決めていた。1ゴール差だったんだ。そしてハダースフィールド戦があった」

    「(ジェームズ)ミルナーも出場していたんだけど、僕は強烈に意識していたわけじゃなかった。でも『よし、蹴るぞ』という感じで彼に声をかけたんだ。何人かの選手が僕のところへ来たんだけど、『僕が蹴らなきゃいけないんだ。ゴールを決めないと。もう差がついているんだからね』と言った。そしてミルナーは『蹴れよ』と言ってくれた。そして成功し、ケインと並んだんだ」

    ミルナーは実際、2018-19シーズンもリヴァプールのファーストキッカーとしてパリ・サンジェルマン、フラム、カーディフ戦と決定的なPKを成功させた。だが彼のチームでの地位が確実ではない中で、サラーがより大きな責任を負うことになっている。

    チャンピオンズリーグ決勝では蹴ったが、それでもミルナーがピッチに立っている時にサラーがPKを蹴ることになったのは、2020年10月のアンフィールドでのFCミッティラン戦が最初である。そしてこれは、2017年10月~2021年9月まで17連続PK成功のうちの1つだ。ミルナーはその間、10回中9回を成功している。

    だが最高のPKキッカーでも、もちろん失敗はあるものだ。ミルナーはリヴァプールで2回失敗し、ケインはイングランド代表として戦ったワールドカップ準々決勝で枠の上へ飛ばした。いつも完璧なトニーだって、先週末のニューカッスル戦ではGKニック・ポープの牙城を崩せなかった。たった12ヤードだが、あそこからのシュートは想像以上に難しい。

  • Fabinho scores for Liverpool against Chelsea in the 2022 League Cup finalGetty

    誰が代わりに蹴るべき?

    クロップは当然ながら、ほとんど何も語らなかった。サラーがPKを蹴り続けるかとの質問にも「これから話すよ。ここじゃないけどね!」としか答えなかった。しかし、サラーの苦闘はリヴァプールに変化が求められていることを意味している。そして、選択肢はあるのだ。

    例えばファビーニョ。昨季サラー不在時には3回PKを成功、チェルシーとのリーグカップ決勝戦では“パネンカ”を披露している。また、トレント・アレクサンダー=アーノルドほどキレイなキックを見せる選手はいない。彼はまだリヴァプールでPKを蹴っていないが、PK戦では3回成功した。さらにコーディ・ガクポは、今季すでにPSVで2回成功。ダルウィン・ヌニェスもキャリアで11回成功し、完璧なスタッツを保持している。

    そして短期的なプランとして、絶対的に信頼できるミルナーがいる。その成功率は「90.48%」で、(5回以上蹴った選手の中で)リヴァプール歴代5位の記録だ。ここ数年はプレー機会が減少し、契約も今季限りで満了となる。だが、もしこの37歳がピッチに立っている時にPKを獲得したのであれば、彼がペナルティスポットにボールを置くことを期待したい。